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2016.08.14
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カテゴリ: 映画/戦争・史実
【硫黄島からの手紙】
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「諸君、いよいよ我々の真価が問われる時が来た。日本帝国軍の一員として、誇りを持って戦ってくれ。(中略)本土のため、祖国のため、我々は最後の一兵になろうともこの島で決死敢闘すべし。者ども、十人の敵を倒すまで死ぬことは禁ずる。生きて、再び祖国の地を踏めることはなきものと覚悟せよ。予は常に諸子の先頭にあり。天皇陛下、万歳!」
今年で戦後71年が経過した。
ずいぶん長い年月が巡ってしまった。
大正13年生まれの父も出征し、終戦とともに疲労困憊と飢餓状態で帰国したとのことだったが、戦争のことは多くを語らなかった。
テレビで戦時下の場面が出たり、戦争映画が放送されたりすると、スーッとどこかへいなくなってしまったし、ふだんの話題にものぼらなかった。
父の中で、あの戦争にどんな思いが錯綜していたのかは、今となっては聞く術もない。

『硫黄島からの手紙』は日本側から見た硫黄島の戦いになっていて、他方の『父親たちの星条旗』はアメリカサイドから見た内容となっている二部作である。(ウィキペディア参照)
どちらもクリント・イーストウッドがメガホンを取ったのだが、何に驚いたかと言えば、あの奇妙な違和感が全く感じられなかったことである。
それは、だいたいハリウッドが描く日本というと、やたら富士山やゲイシャが登場し、おかしなイントネーションの日本語で興ざめするのがほとんどだからである。
それなのに『硫黄島からの手紙』では、そういう不自然さがまるで感じられず、安心して視聴することができたのだ。


栗林忠道は長野県長野市松代町出身で、陸軍士官学校卒。
アメリカにおいては、太平洋戦争における日本軍人の優秀な指揮官として名前があげられる人物である。(日本においてはこの作品が公開されるまで、さほどの知名度はなかった。)
名将・栗林は限りなく劣勢であるにもかかわらず、持久戦のかまえでアメリカ軍に多大な損害を与え続けた戦略家である。
だが、『硫黄島からの手紙』を見る限り、栗林の神がかりな戦術などには触れておらず、淡々とした作品となっていた。

ストーリーはこうだ。
2006年、硫黄島において軍事史研究家たちが地中から数百通もの手紙を発見した。
それらはかつて、この島で散っていった兵士たちが、家族に宛てて書き残したものだった。
1944年6月、小笠原方面最高指揮官・栗林忠道陸軍中将が硫黄島に降り立った。
アメリカ留学の経験を持つ栗林は、島中にトンネルを張り巡らし、地下要塞を作り上げるという画期的な防衛戦略を立てた。
ところがその斬新な戦略は、古参の将校たちの反発を招いてしまう。
一方、元パン職人である陸軍一等兵の西郷は、上官による理不尽な体罰に嫌気がさしていた。

徐々に退却を強いられていく日本軍にあって、玉砕を求める部下を一蹴し、最後の最後まで戦い抜けと命令する。
硫黄島での日々に絶望していた西郷は、栗林の出現により少しずつ意識を新たにしていくのだった。

作品は徹頭徹尾、淡々としている。
見ていて気持ち悪くなるようなグロテスクなシーンもない代わりに、胸をすくような輝かしい戦闘場面もない。
モノトーンに近い映像で、始終、陰気である。

「反戦」を訴えるものではない、「史実」である。
[こういうことが起きたのだ。それは紛れもない事実である。時間は巻き戻せない。肝に銘じよ。]
というテーマとして、私個人は受け留めた。
むやみやたらに「戦争反対!」と声高に叫ぶより、「天皇陛下、万歳!」と言って最後の突撃に向かうシーンの方が、よりインパクトがある。

主人公・栗林忠道に扮するのは渡辺謙。
圧倒的な存在感と、安定した演技力にほぼ満点をあげたい。
最後まで生き残る兵士・西郷役は、ジャニーズの二宮和也。
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映画の中といえども死んだりしたらファンが号泣するといけないので、生き残らせることにしたのだろうか?
まさか、そんなことはあるまいが。(笑)
日本側の視点でアメリカ人のクリント・イーストウッドが冷静で客観的にとらえた、見事な作品である。
併せて『父親たちの星条旗』も見てみたい。

2006年公開
【監督】クリント・イーストウッド
【出演】渡辺謙、二宮和也


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最終更新日  2016.08.14 07:30:31
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