《櫻井ジャーナル》

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2010.04.14
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カテゴリ: カテゴリ未分類
 アフガニスタンのハーミド・カルザイ大統領は、アメリカ政府が作り上げた「傀儡」のはずだった。何しろ、カルザイはアメリカ系の石油会社UNOCALの顧問だったとされる人物(本人と会社側は全面否定しているが)で、米石油産業の代理人だと考えられていたのである。そのカルザイが自立する姿勢を見せ始めた。その背景には勿論、アメリカ軍による住民虐殺がある。WikiLeaksが暴露したような出来事はアフガニスタンやイラクで頻発しているわけで、日本のマスコミが沈黙しても、WikiLeaksを沈黙させても本質的な解決にはならない。

 実は、タリバーンの誕生にもアメリカ政府は関係している。ソ連軍が撤退して無政府状態になっていたアフガニスタンを安定化させるため、1994年にISI(パキスタンの情報機関)とCIAが事実上、組織したのである。ソ連の消滅で「空白状態」になったカスピ海周辺の油田地帯を欧米の巨大企業が目をつけ、進出しようとしていたことと無関係ではない。ジョージ・W・ブッシュ政権で大統領補佐官を務めたコンドリーザ・ライスはこの地域に詳しい学者で、1990年代の初頭にシェブロンが雇っている。

 1996年にタリバーンは首都カブールを制圧しているが、イスラム諸国内では、その残虐性から人気はなく、むしろアメリカのエリートたちが擁護していた。例えばCFR(外交問題評議会)のバーネット・ルビンやRAND研究所のザルマイ・ハリルザドはタリバーンと「イスラム過激派」とは関係ないと強調している。リチャード・ヘルムズ元CIA長官の義理の姪、ライリ・ヘルムズがタリバーンのロビイストだったことは有名だ。

 ところが、タリバーンは実権を握るとアメリカとの距離をおくようになる。そして、トルクメニスタンからのパイプライン敷設計画ではUNOCALでなく、アルゼンチンのブリダスを選んでしまったのだ。タリバーンとアメリカとの関係が悪化していくのは必然だった。

 2001年10月、アメリカ政府はアフガニスタンを先制攻撃する。その前の月にウォール街の超高層ビルに航空機が突入し、国防総省も攻撃されるという衝撃的な出来事があったのだが、ブッシュ政権はすぐに「アル・カイダ」が実行したと断定、そのアル・カイダを匿っているという口実で攻撃したわけである。

 すぐにタリバーン政権は崩壊した、と言うより戦術的な理由から首都を撤退した。近代兵器で武装した軍隊と真正面から「正規戦」を挑むのは愚の骨頂。この政権崩壊を「アメリカの勝利」と勘違いした人もいるようだが。

 そしてUNOCALの顧問を務めていたというカルザイが登場するのだが、タリバーンは戦術的な理由から首都を撤退したわけで、首都を離れればアメリカ軍が支配できていない状態。つまり、カルザイ政権の影響下にはなかった。当初、カルザイの周辺はアメリカ軍の特殊部隊が警護していたが、後にアメリカの傭兵会社が引き継ぐことになる。この時からアメリカの戦争ビジネスは急拡大していく。

 ところが、アメリカ/NATO軍の民間人虐殺はカルザイを「敵」にしつつある。大統領である以上、アフガニスタン国民の怒りを無視するわけにはいかない。アフガニスタン政府とタリバーンとの和平交渉をアメリカ軍が妨害していることもカルザイ大統領を怒らせているようだ。病院で子どもの犠牲者を見舞ったときにカルザイ大統領は、本当に怒っていたともいう。アメリカの「傀儡」だったはずの男が自分を操る糸を切りつつあると言う人もいる。カルザイの場合、日本のエリートたちとは違い、いつまでもアメリカの「傀儡」でいるつもりはないようだ。

 ロバート・ゲーツ米国防長官はWikiLeaksのビデオ公開を「無責任」だと非難しているが、無責任なのはアフガニスタンやイラクに住む普通の人々をハンティングのように殺しているアメリカ軍である。傭兵たちは、このアメリカ兵よりも残虐なことをしているとも言われるだけに、イラクやアフガニスタンの状況が改善される見込みは薄い。アメリカの巨大企業や投機家は大儲けしているのだろうが、戦争がアメリカという国を疲弊させ、崩壊させる日が近づいている。





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最終更新日  2010.04.16 03:29:56


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