《櫻井ジャーナル》

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2010.09.06
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カテゴリ: カテゴリ未分類
 1983年8月31日から9月1日にかけて、大韓航空のKE007は航路を大幅に逸脱してカムチャツカ半島とサハリンを横断、その際にソ連の重要な軍事基地上空を飛行し、撃墜されるという出来事があった。

 その間、アメリカの緩衝空域、飛行禁止空域を横断しているわけで、NORAD(北米航空宇宙防衛軍)は当該機へ即座に呼びかけ、近くのFAA(連邦航空局)へ知らせなければならなかったのだが、何もしていない。その理由はふたつしか考えられない。担当官が怠慢で任務を遂行しなかったのか、飛行禁止空域への侵入が許されていたかである。ちなみに、担当官が処罰されたという話は聞かない。

 KE007はサハリンの西側で撃墜されたことになっている。迎撃機のパイロットは右に旋回しながら降下していると報告しているが、レーダーの記録では左に旋回している。パイロットが右と左を間違えたのか、レーダーが故障しているのか、パイロットが見ていた航空機とレーダーが追っていた航空機は別なのか、原因は不明だ。

 サハリンの沖、モネロン島の近くで撃墜されることが予定されていなかったと仮定するならば、撃ち落とされなければ、そのまま飛行を続けた可能性がある。この事件を調べている人でも、撃墜されなければ左に旋回して日本海を南下し、ソウルに向かったと思い込んでいるようだが、そうしたシナリオの根拠は全くない。それまで通りに飛行を続ければ、ウラジオストックに到達する。当時は閉鎖軍港であり、ソ連軍の重要な拠点だった。

 ソ連の迎撃機が当該機を「軍用」だと表現したのはカムチャツカを横断した後、サハリンに近づいているときである。その時の時刻は世界時で18時4分。すでに迎撃機はKE007と思われる航空機を視認している。

 迎撃機はロックオンしたまま、IFF(敵味方識別装置)で呼びかけているが、反応はない。18時17分に航空機は再びソ連領空を侵犯、撃墜命令が出るものの、19分には着陸させろとも命じている。

 18時20分に航空機の前方に向かって迎撃機は機銃を発射して警告、反応がないため18時21分にミサイルの発射が命じられる。目標機がレーダーのスクリーンから消えたのはその直後だった。そして18時23分に迎撃機はミサイルを発射すると通信、その3分後にターゲットを破壊したと報告している。

 この間に行われたコックピット内の会話が興味深い。18時4分:税関を通過するのは、かなり面倒なことになりそうだ。18時5分:まだ向かい風を受けている。18時11分:ドルから韓国の通貨へは問題ない。当時、ウォンをドルに交換することは制限されていたのだが、ドルをウォンに交換する際に制限はなかったはずで、会話として不自然だ。そして18時15分にモールス信号が始まり、20分まで続く。爆発音らしき音が録音されているのは18時26分だ。

 この事件の後、アメリカのある退役将校は「自爆説」を主張した。おそらく、「ノースウッズ作戦」を連想したのだろう。そして2001年9月11日、再び航空機が軍事的な緊張を高めることになる。





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最終更新日  2010.09.07 00:30:07


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