《櫻井ジャーナル》

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2011.04.13
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カテゴリ: カテゴリ未分類
 福島第1原発が事故を起こした後、世界的に原子力発電を見直すべきだとする意見が強まっているのだが、例外的な存在が日本。アメリカではジョージ・W・ブッシュ政権が原発推進策を再スタートさせ、バラク・オバマ政権もその政策を引き継いでいるのだが、一般市民の間では原子力発電と決別すべきだとする声が高まっている。

 日本の場合、「原子力」が一貫して国策として推進され、その国策に庶民はしたがってきた。世の中の「流れ」を見抜き、逆らわないという処世術が古来、日本では幅を利かせてきたが、明治時代に自由民権運動が潰されて以来、特にそうした雰囲気が強まり、国策に逆らうのはごく少数にすぎなくなる。そうした雰囲気が原子力利権を支えてきたことは否定できない。その利権には核武装したいという支配層の思惑も結びついている。

 そうした「国策」は1954年3月に始まる。中曽根康弘が原子力予算案を国会に提出、修正を経て4月に可決されたのである。

 ちなみに、中曽根が政界で頭角を現してくる切っ掛けは1950年6月のスイス旅行。CIAのダミー団体と見られているMRA(道徳再武装運動)の世界大会へ出席することが目的だった。政治家としては岸信介もこの団体と結びついている。その3年後、中曽根は「ハーバード国際セミナー」に参加している。このセミナーの責任者はヘンリー・キッシンジャーだった。

 原子力予算が通った翌年、1955年12月に原子力基本法など原子力3法が成立、翌年の4月には通産省工業技術院に原子力課が新設され、経団連は「原子力平和利用懇談会」を発足させた。日米原子力協定が結ばれたのは6月で、アメリカは原子炉と濃縮ウランを日本に提供することが決まった。

 中曽根は両院原子力合同委員会の委員長を務め、1956年1月に原子力委員会が設置されると、正力松太郎が初代委員長に就任している。言うまでもなく、正力は読売新聞の社主で、日本テレビを創設した人物。この時点から、マスコミは原子力推進の宣伝装置としての役割を果たすことになった。

 そして1957年5月、首相になって間もない岸信介は参議院で「たとえ核兵器と名がつくものであっても持ち得るということを憲法解釈」として持っていると答弁、1959年3月には参議院予算委員会で「防衛用小型核兵器」は合憲だと主張している。

 1964年、中国が始めて核実験を実施すると、日本政府の内部で核武装を目指す動きが出てくる。当時の首相は岸信介の実弟、佐藤栄作だ。当時の米大統領、リンドン・ジョンソンはそうしたプランに反対したという。1967年には「動力炉・核燃料開発事業団(動燃)」が設立されているが、アメリカの情報機関、CIAはこの組織が核兵器開発に関係していると強く疑っていた。

 ただ、調査ジャーナリストのシーモア・ハーシュによると、リチャード・ニクソン政権で補佐官を務めたキッシンジャーは日本の核武装を中国との交渉で「切り札」として使ったとも言われている。つまり、当時のアメリカ政府は日本の核武装をある程度、容認していた可能性が高い。



 核兵器を実用化するためには、核爆弾を作るだけでなく運搬手段も必要。ロケット技術の開発がこうした核武装計画に無関係だとは言えないだろう。

 原爆の原料として考えられていたプルトニウムは日本原子力発電所の東海発電所で生産できると考えていた。この原子力発電所はGCR(黒鉛減速炭酸ガス冷却型原子炉)で、高純度のプルトニウムを年間100キログラム余り作れると見積もっていたという。高速炉の「もんじゅ」や「常陽」も核兵器製造システムに組み込まれていると疑われてきた。常陽の燃料を供給していたのが臨界事故を起こしたJCOだ。東海再処理工場の付属施設として建設されることになったリサイクル機器試験施設(RETF)も注目されている。現在、日本が核武装計画を放棄していることを示す証拠はない。

 日本が原子力発電を放棄するということは、巨大な利権を手放すというだけでなく、核武装という一部支配層の「夢」が打ち砕かれるということでもある。核武装に否定的だった西ドイツ(現在はドイツ)が自然エネルギーへシフトし、核武装に憧れていた日本が原発に執着していることを偶然で片づけることはできない。





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最終更新日  2011.04.13 17:01:53


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