《櫻井ジャーナル》

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2011.05.31
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カテゴリ: カテゴリ未分類
 現在、ドイツやオーストリアでは、ナチス時代に広く行われていた儀礼、つまり挨拶として右手を斜め上に差し出す所作は犯罪とみなされている。第2次世界大戦で敗北するまでの日本では、「国民儀礼」として宮城(皇居)遙拝、「御真影」への敬礼、そして君が代斉唱と日の丸掲揚が強要されていた。日本とドイツ、いずれのケースでも支配者/システムに服従させる心理的な仕組みとして実施されていた。

 最高裁第2小法廷(須藤正彦裁判長)は5月30日に出した判決の中で、学校式典における君が代の起立斉唱は「慣例上の儀礼的な所作」だとしたうえで、そうした行為を強制する校長の職務命令は違法でないと主張したようだ。

 かつて、日本の支配層はアジアを植民地化する過程で、君が代斉唱や日の丸掲揚は重要な儀礼だと認識していた。現在、日本国内でそうした「皇民化政策」が推進されつつあり、そうした政策を最高裁が認めたというように見える。

 ちなみに、最高裁第2小法廷のメンバーは、竹崎博允(現最高裁判所長官)、古田佑紀(元最高検次長検事)、竹内行夫(元外務事務次官)、須藤正彦(元日弁連綱紀委員会委員長)、千葉勝美(元仙台高裁長官)の5名だ。

 今年2月、同小法廷は納税をめぐる裁判で物議を醸している。サラ金の大手「武富士」の武井保雄会長と妻は1999年、長男の俊樹専務に外国法人株を贈与したのだが、その際に約1650億円の申告漏れがあったと指摘され、約1330億円の追徴課税処分を受けた。長男は処分の取り消しを求めて訴えていたのである。

 問題の外国法人とは保雄会長が買収していたオランダの会社で、大量の武富士株を保有していた。この法人株を「香港に在住」していた俊樹専務に売却し、相続税を免れようとしたのである。当時、海外居住者への海外財産の贈与は非課税扱いだった。裁判ではこうした取り引きが「節税」なのか、「脱税」なのかが争点で、俊樹専務の拠点は日本なのか香港なのかが争われた。

 2審までは処分を適法としていたのだが、第2小法廷は原判決を破棄、つまり処分は違法だとする。金持ちが行う「贈与税回避スキーム」(須藤裁判長の表現)は適法ということだ。その結果、納税分に還付加算金(利子)を加えた約2000億円が長男側に支払われることになった。

 おそらく、こうしたスキームは富裕層の中で広く行われていた。武井親子のケースが違法ということになると、その影響は計り知れない。富裕層はパニックになっていたかもしれない。そうした意味で、最高裁第2小法廷の判決は富裕層に「安心安全」を与えるものだっただろう。

 福島第1原発の事故で原子力をめぐる利権構造が注目されているのだが、一部の富裕層が庶民の富を吸い上げるという点で、武井親子の相続税問題も根は一緒だ。そうした支配構造を維持する上で、君が代斉唱や日の丸掲揚の強要は重要な意味を持つ。君が代の起立斉唱を命令しても「合憲」だと判決した裁判官が武井親子の相続税問題でも富裕層に有利な判決を出している事実は、現在の日本を象徴している。






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最終更新日  2011.05.31 14:57:35


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