森田理論学習のすすめ

森田理論学習のすすめ

2016.06.26
XML
私たちの頭の中の容量を仮に100%としよう。

つまり注意や意識は自己内省的に片寄っている。
本来こなさなければならない仕事、勉強、家事、育児は放棄されている。
観念上の悪循環が行動上の悪循環を呼びこんでいる状態である。

これは雪道でタイヤがスリップして空回りしている状態に似ている。
アクセルを吹かして前進しようとすればするほど、空回りして、車体は勝手に左右に振られる。
これが仮に坂道で起きたとすれば、生きた心地はしない。
事実事故につながる可能性が高い。動揺してやることなすことがすべて裏目に出てくる。


70%、60%、50%と下げていくのである。
50%ぐらいに下がってくると、不安を抱えたまま、仕事、勉強、家事、育児などがこなせるようになる。
20%ぐらいに下がって、考えることなすことが外向きになり、物事本位の生活ができるようになる。
その時点では神経症的な悩みは霧散霧消している。

問題はどうしたら比率を下げることができるかということである。
入院森田療法を行っておられた鈴木知準先生は次のように説明されている。
森田療法では、相当期間その不安、苦しみを持ったままの絶対臥褥と、その遮断の環境で、同じ症状を持った人たちと、目の前の必要なことに、すっと入る動きを通して、その態度の基礎を打ち出そうとする。

普通一般にいわれているような「あるがまま」という概念を、知的に解釈させるだけでは、安定した、自由な心の態度を展開させることはほとんど不可能である。
この点が森田療法の実際において、最も大切な重点と思われる。
この点が十分でないので、神経症の治療がうまくいかないのである。

我々は外来で2、3年にわたって、2週間に1回ぐらい、30分ぐらい面接し、言葉による治療をする。

特に「あるがまま」などの言葉を口癖のようにいう患者は多いけれど、心の自由になる展開はきわめて少ない。このことは注目しなければならない事実である。
しかし外来面接の医師の努力は相当なものである。
しかし、そのような患者でも3ヵ月くらいの遮断の環境の治療をすると、その全治の基礎の出来ていくことがきわめて多い。
このようなことを多数我々は経験している。
同じ不安と症状をもった人達との、遮断の環境での、臥褥療法と作業期の動きの入院生活では、現在になりきる心の態度が、展開しやすいことは確かである。

この遮断環境での治療は、森田先生の傑作と思われる。
我々は過去30年のあまりの神経質の人たちの治療の経験から、誤りないものと考えている。

ちなみに鈴木先生の病院では、追体験の入院を勧めておられた。
これは50日以上入院した人達に1カ月に一回、土、日曜日に入院させて、以前の入院で体験した生活態度を崩さないようにするためのものだった。
このようにして治療を進めると、1年目の全治者は20%未満であるが、4年目ぐらいから平均すると50%から70%に跳ね上がる。5年目以降の全治者の割合はとても高くなる。

この事実をどうとらえるのか。現在は原法にのっとった入院森田療法は皆無のような状態である。
一方森田理論は当時とは考えられないぐらいに理論化されてきた。
しかし、それを学んで観念的に理解しただけでは不十分であるということだ。
森田療法は自分の身体で体得していくことが不可欠ということだ。
不安を抱えたまま行動していく態度を身につけること。
事実に服従して生の欲望に邁進していく態度を養成していくこと。
これなくして森田理論学習を続けることは猫に小判、豚に真珠を与えるようなものである。
神経症回復の理論化だけではなく、体得のための理論化も進めていく必要がある。
(神経症はこんな風に全治する 鈴木知準 誠信書房参照)





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2016.06.26 06:53:45
コメント(2) | コメントを書く
[治るとはどうゆうことか] カテゴリの最新記事


■コメント

お名前
タイトル
メッセージ
画像認証
上の画像で表示されている数字を入力して下さい。


利用規約 に同意してコメントを
※コメントに関するよくある質問は、 こちら をご確認ください。


森田の理解と体得  
香菜子 さん
香菜子です、いつも森田療法を勉強させて頂いています。「あるがままなどの言葉を口癖のようにいう患者は多いけれど、心の自由になる展開はきわめて少ない。」というご説明にどきっとしました。私も森田先生の森田療法を少しずつ勉強していて、あるがままなどのキーワードは理解したのですが、森田の体得ができていないのだと思います。だから、いつまで経っても、自由が人格障害・パーソナリティ障害、精神疾患になってしまうとか、周りから非常識人・人格障害者扱いされて嫌われているといった被害妄想で頭がいっぱいになるのではと感じています。森田を体得するのは自己流では難しいのでしょうか。香菜子 (2016.06.26 09:24:40)

森田を身につける方法  
香菜子さんへ

森田を体得するのは自己流では難しいのでしょうか。
という質問ですが、森田理論そのものはそんなに難しくはないのですが、自己流は難しいというのが実感です。

というのは、神経症の成り立ちには愛着障害、過保護、過干渉、ネグレクトなどが関係しているからです。
そのために、普通の人と違ってさまざまな心の痛みを抱えているからです。

心の痛みを分かち合える仲間が必要だと思います。
あるいは自分をサポートしてくれる先輩が必要だと思います。
カウンセラー、精神科医でもいいと思います。
手っ取り早いところでは集談会のような自助組織に参加することです。

そういう温かい人間関係に身を置いて、危機に陥った時に援助を受けられる体制にしておくことが必要です。

森田理論を学習する以前の問題です。

私もそういう人が集談会で身近にいて、批判は一切しないで支えてもらっていたので、神経症から回復できたのです。

今では支える側に回っています。
(2016.06.26 10:26:44)

【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

PR

Keyword Search

▼キーワード検索

Favorite Blog

知らぬ間に立派な大… 楽天星no1さん

泉佐野フィルムフェ… へこきもとさん

激しい運動の後、疲… メルトスライム25さん

神経症を克服します♪ ROSE33333さん
「私」がいる幸せ えみこた2さん

Profile

森田生涯

森田生涯

Comments

kurokawa@ Re:感情と行動を分離して行動する(11/11) New! 申し訳ございません。生涯森田様でした。
kurokawa@ Re:感情と行動を分離して行動する(11/11) New! 障害森田様 この記事の中で「心とは裏腹…
楽天星no1 @ 早速のご返事感謝 森田生涯さんへ 早速のご返事ありがとう…

Calendar


© Rakuten Group, Inc.

Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: