森田理論学習のすすめ

森田理論学習のすすめ

2017.05.28
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森田先生は人間関係は「不即不離」の態度で接するようにするとよいと言われている。
相手の喜ぶときには近付き、相手の迷惑のときにはちょっとその場を外す。
また一方には、恐ろしいために、離れていても、離れきりにはならないで、ちょっと相手の話し声がするとか、暇な時があるとかいうことを、極めて微妙に見つけて、直ちにその近辺に近づいていくという風に行動する。
つまりひっつきすぎるのでもなく、離れるのでもなく、常にその駆け引きが、自由自在で、極めて適切な働きができる。「親しんでなれず、敬して遠ざからず」という風になるのである。

犬を連れて散歩するときに、犬は主人の側ばかりにくっついて歩くのは、退屈でたまらないから、何かを見つけてはさっさと駆け出していく。見失いはしないかと心配していると、また、どこからともなく帰ってきて、飼い主の足元へ絡みついてくる。これが犬の自然の心で、いわゆる「不即不離」の働きである。
すなわち犬は退屈のために主人から離れるが、そうかといって、絶えず主人を見失いはしないかと言うことが気に掛かるから、決して離れてしまう事はない。

これは子育てで言うと、過保護でもいけないし、放任でもいけないし、その中間どころが子育てのコツというところだろう。面白い実験がある。
初めて注射に連れてこられた赤ん坊とその母親を観察して、赤ん坊が早く泣き止むのは、母親がどういう対応をした場合であるのかを調べた実験だ。
すると、最も早く泣き止むのは、赤ん坊を慰める時間が短くても長くてもダメで、ほどよく慰めた後に、気持ちをそらせるように働きかけた時であった。

赤ん坊を落ち着かせると言うこと1つをとっても、程よい塩梅が必要だということがわかる。
どちらかに偏るということは、大抵のことで、よい結果になるよりも有害な結果になることが多い。

子供に過保護で過干渉な親は、子供にとっては侵略的で、支配的になりやすく、子供のペースで主体的な関わりを楽しむのではなく、母親が一方的に関わりを押し付けるという状況が起きる。
こうした強制された関係は、共感的な心を育てるというよりも、親は自分を支配して、親の思い通りにコントロールするものだという、本来の相互性とは正反対なものを子供に植え付けてしまう。
そうした養育を受けた子供は、自分の要求や苦痛といった感覚を認識したり、それを他人に伝えたり、それによって相互性の中で自分をコントロールする能力が育たず、相手の顔色や反応ばかりに過敏になり、支配-被支配の関係になりやすくなる。

次に乳幼児の時期に構ってもらうことがなく、放任状態におかれると、最初は母親を求めて泣き叫ぶ。
ところが、いつも構ってもらえないと、そのうち子供は泣きやみ、かまってもらうことを諦めてしまう。
そういう子供が大人になると、他人への信頼感が持てなくなり、他者との関わりを持とうとしなくなる。
他人が近づいてきても拒否したり、他人の言動を悪意として受け取るようになる。

子供が産まれてから1年6カ月の間に、母子密着の期間を過ごすことによって、その後の人間関係の信頼感が形成されるという。
ただし、その間、完全な母子密着がよいかというと、必ずしもそうではないようだ。

気持ちを読み取り損なったり、子供の望んでいることとズレていたり、注意や関心が他にそれていたりということが結構起きているのである。完璧を求めるよりも、ほどほどが大事なのである。
むしろズレが起きてしまっても、更にコミュニケーションをとることで、それを埋めることを学ぶことが大切だと言える。
(愛着崩壊 岡田尊司 角川選書参照)





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Last updated  2017.05.28 07:41:44
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