森田理論学習のすすめ

森田理論学習のすすめ

2025.02.26
XML
帚木蓬生氏の著書の中に「ネガティブ・ケイパビリティ」があります。
ネガティブというのは、否定的、消極的という意味です。
ケイパビリティは、能力や才能という意味です。
この本の副題は、「答えの出ない事態に耐える力」です。
オックスフォード英語辞典によると、「分からない状態や不確かさを受け入れる能力」とあります。

帚木蓬生氏がこの言葉に出会ったのは、九州大学医学部を卒業し、精神科医になって6年目の頃、治療の難しさに自信を失い始めた時期に、ハーヴァード大学の論文の中からこの言葉を発見された。
この言葉に出会った時の衝撃は今日でも鮮明に覚えていると言われている。

帚木蓬生氏は次のような治療体験を語っておられます。
患者Aの場合、血液系の癌を宣告されている。

このところ著名に進行はない。しかし、せいぜい数年の命らしい。
日常生活においても、死の恐怖について来院のたびに訴えられている。
帚木蓬生氏は、「免疫力を高めるために、元気に満ちた明るい毎日を送りましょう」と、患者さんを慰めるくらいしかできない。
このような身の上相談のような患者さんは多い。
手のつけどころの内悩みが多く含まれている。
主治医としての私は、この宙ぶらりんの状態をそのまま保持し、間に合わせの解決で帳尻を合わせず、じっと耐えていくしかありません。
耐える時、これこそがネガティブ・ケイパビリティだと、自分に言い聞かせます。
すると耐える力が増すのです。ネガティブ・ケイパビリティを知っていなければ、私とっくの昔に患者さんから逃げ出していたでしょう。

答えが見つからない問題は身近にたくさん存在しています。
原因や対策が見つからない精神的に不安定な状態に置かれるのは居心地のよいものではありません。
帚木蓬生氏は、内面で模索や葛藤を続けることは、あきらめや思考停止、問題から目を背けることではなく、むしろ熟慮のプロセスに通じるものがあると言われている。


上智大学の佐藤卓己教授は著書「あいまいさに耐える」の中で、真偽の定かでない情報に接したときに、すぐに反応せずやり過ごす忍耐力のことを「ネガティブ・リテラシー」と呼んでいる。
(朝日新聞 2025年1月6日社説)

森田先生は森田全集第5巻(764ページ)で次のように説明されている。
我々は何かにつけて、疑問と不安は絶えず出没して、一つ一つこれを解決して、しかる後初めて安心する事のできるものではない。
ただ我々は疑問は疑問として、これが解決の時節を待つよりほかにしかたがなく、日常の生活は周囲の刺激から、次から次へと目まぐるしく引きまわされて、不安も不安のままに、いつまでも執着していられるものでもなし。


これは「無所住心」の学習の中で出てきます。





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2025.02.26 06:42:15
コメント(0) | コメントを書く
[森田理論の基本的な考え方] カテゴリの最新記事


■コメント

お名前
タイトル
メッセージ
画像認証
上の画像で表示されている数字を入力して下さい。


利用規約 に同意してコメントを
※コメントに関するよくある質問は、 こちら をご確認ください。


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

PR

Keyword Search

▼キーワード検索

Favorite Blog

知らぬ間に立派な大… 楽天星no1さん

泉佐野フィルムフェ… へこきもとさん

激しい運動の後、疲… メルトスライム25さん

神経症を克服します♪ ROSE33333さん
「私」がいる幸せ えみこた2さん

Profile

森田生涯

森田生涯

Comments

kurokawa@ Re:感情と行動を分離して行動する(11/11) New! 申し訳ございません。生涯森田様でした。
kurokawa@ Re:感情と行動を分離して行動する(11/11) New! 障害森田様 この記事の中で「心とは裏腹…
楽天星no1 @ 早速のご返事感謝 森田生涯さんへ 早速のご返事ありがとう…

Calendar


© Rakuten Group, Inc.

Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: