2005年06月15日
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(2005年6月5日 読売新聞朝刊大阪版)より

不可欠な共生のルール

「迷惑かけぬ」義務自覚を

 ペットを飼った経験も、飼う意思もない者として、少々引っかかる。
府が、府営住宅や住宅供給公社住宅での犬猫の飼育を、条件付きで〈解禁〉する。近く要綱をまとめ、各団地に周知するのだという。ブームに背中を押されての方向転換だが、様々な人たちが暮らす集合住宅で、ペットとの共生は可能なのだろうか。答えを探して歩いた。(曽根文朗)

 5月末、〈解禁〉を見据え、動物愛護団体が吹田市内で開いたセミナー。約70人が集まった会場から、次々と手が挙がった。

 「自治会の役員から、愛犬を手放すよう迫られている」「しつけをしない飼い主がいて、ちゃんと飼っている自分たちまで白い目で見られる……」

 団地でペットを持たない人とどう付き合うか。そんな悩みとともに、解禁後への期待の声も聞かれた。

 現在、府営住宅(13万8000戸)や公社住宅(2万3000戸)での飼育は禁じられている。が、府が2003年に府営住宅の居住者約2100人に聞いたところ、16%が「飼っている」と回答した。

 黙認から公認へ。現実を踏まえてカーブを切った府は、その条件を定めた。

 〈団地ごとに飼い主らが「ペットクラブ」をつくり、飼育できる動物の大きさや数、ふんの処理などに関して自主ルールを定め、住民全体の合意を得る〉



 東京都は都営住宅の2団地で試験的にペット飼育を認めているが、公営住宅全体に可能性を開く試みは初めてだ。府住宅管理課の担当者は言う。「府は、賛否どちらにも、肩入れできない。飼いたい人たちに、自ら、周囲の理解を得る努力をしてもらうしかない」

     ***********************

 セミナーで出会った女性を府北部の府営住宅に訪ねた。63歳。同居しているのは1匹の犬と猫たちだ。

 戸建て住宅から移り住んで4年。「引っ越しの時は昼間に荷物を入れて、夜を待ってこっそりワンちゃん運び込んで」。猫はその後拾った。小学生に池へ放り込まれたり、高架下に捨てられていたり。迷わず駆け寄り、去勢・避妊手術を受けさせて引き取った。

 私のひざに、ノートを取る手に、じゃれついてくる猫に戸惑いつつ、なぜ飼うのか、女性に尋ねた。

 「ペットのいない生活なんて考えられへん。私の張り合い、生きがい」

 何か心細くて、老後の不安を覚える時、見ているだけで気持ちが和むという。

 外に出さない。吠(ほ)えさせない。迷惑をかけないよう細心の注意を払ってきたが、飼い主のマナーへの不満を耳にすることもある。

 「不快に感じる人がいるのは、わかっている。もっと努力しないと」。だから率先してペットクラブ結成を呼びかけたい。飼い主こぞってルールを守れば、きっと周囲に認めてもらえると思う。「でも、どこから手をつけたらええんか。やぶ蛇にならんやろか」。女性はため息をついた。

     *************************

 ペットフード工業会(東京)の推計によると、全国のペット飼育数は昨年、犬1245万匹、猫1163万匹と、いずれも過去最多を更新した。あの女性のように、その存在が自らの生活と切り離せないという人も少なくないようだ。



 ペットを心の支えにする人は、今後も増え続けるだろう。それを権利とみなすなら、行使できないのは不合理に違いない。が、同時に、迷惑をかけない義務を求めてもいいはずだ。

 飼育を望む人も、望まない人も、「権利」と「義務」をそれぞれの立場で考え続けること。共生への道筋は、そこにしかない。







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最終更新日  2005年06月15日 14時27分20秒


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