しあわせのかたち

しあわせのかたち

2004/11/28
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テーマ: 戦争反対(1263)
カテゴリ: カテゴリ未分類
(1)は27日の日記にあります。どうぞそちらからご参照ください。異常に長くて、もう校正とかできるわけもなく。


>もちろん、文明の特性に優劣を付ける気はありませんが、しかし、長生きする個体が、短命の個体に優る
>何らかの要因があるように、文明に関しても同様の事が言え、少なくとも長生きする秘訣を学ぶ事こそ重
>要であると考えるのであります。

 文意には首肯するのですが、例がよくない。生物学の世界で、例えばゾウガメや丹頂鶴の生態研究が人間の医学的考察にほとんど役に立たないのと同じです。我々が他文明から学ぶべきは「長生きの秘訣」ではありません。その理屈だと「切腹文化」はどうなってしまうのでしょうか。ひとつの文化、政権を終わらせた「明治維新」は?

>文明の特性などという物は、虚学の学問の対象には成り得ても、実学的にあまり利益があるとは思えませ
>ん。そもそも分析的に文明の特性を完全に捉える等という事は、人間には無理でしょう。

 これもムチャです。『文明論之概略』を記した福沢諭吉が聞いたら鼻血ブーでしょう。一身独立して一国独立す、は虚学だったのですか?
 諭吉ともども「実学的にあまり利益があるとは思えません」、「文明の特性を完全に捉える等という事は、人間には無理でしょう」と切り捨ててよいのならば、それはそれでひとつの「覚悟」と言えなくもないですが……。その論理に賛成してくれる人は少ないと思いますよ。それこそまさに、「紙幣なんて紙切れにすぎない」という論理です。私はそれはそれで一知見として尊重しますが、たぶん諭吉が聞いたら怒ると思います。


>東方への視野が広がった為に、キリスト教以外の価値も認めようという認識になっていますが、いわ
>ゆる地中海世界が「世界」であった時代には、哲学は、その中で、価値の相対性を保っていたはずです。

 がびーん。
 上記のあたりは、非常に傲慢な感じがして大変申し訳ないのだけれども、興味が続くのであれば哲学史を学んでみてください、としか言いようがありません。鳩さんにはちょっと信じられないかもしれないのですが、文化における価値相対主義が「主流」となったのは、哲学界でもほんのここ40~50年の話なのです。
 大航海時代を経ても、帝国主義時代を経ても、ベトナム戦争を超えてさえ、(哲学界を含む)人間社会で「文化(価値)相対主義」が主流となったことはなかった。う~ん、信じられません? 信じられませんよねえ。私もたぶん論敵から指摘されたら、そんなことあるかいボケ、と言っていたでしょう。だからこれは本を読んでいただくか、鳩さんご自身が「この人がこう言っているのなら」と思う方に直接聞いてもらうしかないとも思うのです。

 ですからこれはもうほとんどROM向けの「説明」になってしまうのですが、一応書いてみます。

 例えばですね、米軍がファルージャやナジャフにガンガン空爆をする。その映像を街行く人々に見せつつ、「どう思いますか?」とレポーターが聞いたりする。すると、「アメリカの言い分もわかるが、イラク人の心情にも考慮すべきだ」とか、普通の人が言ったりしますよね? こういうことを言う人は、実は昔からいることはいました。それこそソクラテスとかプラトンの時代から、「ギリシャ人の言うこともわかるし、ローマ人の理屈もわかるよね」という人はいた。

 しかし、(これが文化相対主義の決定的なポイントのひとつなのですが)、同じ事象でも「ギリシャ人に見える景色」と「ローマ人に見える景色」は、違うものだ、と、こう主張する人はほとんどいなかった。「見え方が違うのだから、価値基準が違う。だからそれに優劣は付けられない」という考え方をする人は、哲学の世界でもほとんどいなかったのです。

 これまた例えを持ってきますが、例えばイラクでモスクがバンバカ爆撃されている。その映像が世界中に配信される。米国人にとっても日本人にとっても、「モスク」が持つ神聖性や象徴性はいまいち理解できない。民家だってオフィスビルだって「建物」という括りでは一緒じゃないか。そう思うのですが、CBSのダン・ラザーあたりが「これはイスラム教圏ではやってはならない、重大な【戒】となります」と言われると、ははあ、そうなんだ。そりゃイカンことをしたなあ。と思うのでしょう? 確かに同じ「建物への爆撃」でも、「単なる高層マンション」と「伊勢神宮」だったら、腹の立ち方も違うわなあ。うんわかるわかる、と。

 つまり「敬虔なイスラム教徒のイラク人」が見るのと、「中産階級サラリーマンでロマン派ウヨク日本人の私」が見るのと、同じ「モスク爆撃」でも見え方がまったく違うわけです。この、現代ではほとんど常識となったような「ものの見方」が、哲学の世界ですら「常識」となったのはほんのここ40~50年、一般に膾炙したのはここ20~30年のことなのです。


 ちょうど少し前のログで「アルジェリア独立戦争」(1954~1962年)のことがチラッと出てきたので説明するのですが、サルトルはこの戦争について、独立を狙う武装勢力側を支持しました。「フランスの帝国主義的支配に対抗する、民族自決を主張するゲリラたちの言い分は圧倒的に正しい!」と主張した。つまり、内戦を含む「戦争」においては、どちらかに必ず「正義」があると確信していた。サルトルでさえ、いやサルトルですら、「相対的」ではなく「絶対的」に判断していたわけです(ちなみにサルトルはその基準を「歴史」に置いていました。「歴史が彼らを正義と認めるだろう」と)。
 これはベトナム戦争時の米国側にも、もちろんホーチミンらにも言えることです。米国人たちは「自分たちはドミノ理論によるアカの跋扈を防ぐための正しい戦いをしている」と、今考えると冗談みたいな理由で枯れ葉剤を平気で巻いていた。当然、同じ理屈で今でも彼らはいわゆる「ヒロシマ」、「ナガサキ」を正当化しています。死ねといいたひ。

 さておき。そのいっぽうでサルトルは、当時盟友であり、ともにナチス占領下でレジスタンスとして戦ったアルベール・カミュ(1913~1960)というオッサンを、アルジェリア独立戦争の時に激しく非難します。カミュは当時、「アルジェリア人の民族自決の志もわかるが、フランス人の帝国主義的知見もわかる。私にはどっちが【より正義か】なんて判断は下せない」と発言していました。当時隆盛を極めていたフランス思想界で、ほぼ孤立無援で。

 それに対してサルトルは、「キミは知識人としての階級的責務を怠った。キミがキミ自身であり続けたいのであるならば、どちらかが正義だと判断すべきだ。キミは(かつてフランス人としてナチスと戦った時とは)変化すべきことを恐れたのだ!」と、知的誠実さにおいて断罪したわけですな。で、ま、これも将来的にはこの時のサルトルの態度・思想はレヴィ・ストロースによって木っ端微塵にされるわけですが、それはここでは置いておきます。


 で、ですね。上記のような、まあ「哲学史」と呼んでいいのかよくわかりませんが、思想史については、知っていても知らなくてもいいことです。鳩さんのように「専門ではない」と、「好きではない」という意味なのでしょうが、そういう方に対して別に知っているからといって威張るつもりもない。この点について、「だから間違っている。お前の論理は全般的に間違いだ」と声高に主張する気もありません。鳩さんのログに一定以上の価値を認めています(だからこそこんなに長々お返事を書いているわけですが)。

 ウェブログの利点は、特に詳しいわけでもなく様々なことを言えることだと考えていますし、事実私だって聞きかじりの生齧りで思想を語っています。そもそもイラクにおける占領統治を語る上で、上記のような思想論議がそれほど重大なファクターになるとは思えないし、第一私より詳しい方が出てきて「お前(ショータ)の思想史の理解、まったく見当外れ」とか言われてしまうかもしれません。

 じゃあなんでこんなことを長々語ったのかといわれると、まあそれが私が好きな分野でもあるし、実はこうした思想的観点から考えると、イラクでの米国の占領統治はまったく、少しも、1ミリも弁護の余地がない「暴力的侵略侵攻占領政策」にほかならないわけです。
 私はGHQによる日本占領統治計画が大嫌いですし、それ以前の東京大空襲、広島・長崎への原爆投下について、思想的にはいかなる「正義」もないし、正当性もない。微塵もない。そう断言します。そのためには、キッシンジャーやらブレジンスキーやらの論理を「文明論」と言祝ぎ、「思想」として担ぎ上げる行為には熱心に反論せねばならんのです。

 そんなわけで、「思想的」な部分についての反論は取り急ぎここまでとします。
 続いて「実践的」な部分への返信となるわけですが、さすがに長く書き過ぎてちょっと疲れました。というか、誰かこれ、最後まで読むのか? まあいいや。締め切りを破って伸ばすのは得意技なので、実践的な部分については、う~ん、なんとか今週中には書きたいな、と思っています。

 最後に。

>「とことん話し合い、それが決裂すれば、一気に叩きのめすべし。正当な理由無く、刀を抜いてはならぬが、
>又、正当な理由無く刀を納めてもならぬ。」

「正当」という文言は、勝者のものだけではありません。それを我々日本国民は、大東亜戦争で学んだはずでしょう。

 願わくば、鳩さんのこれからの学識が曇り無きものであるよう、僭越ながらお祈り申し上げます。





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Last updated  2004/11/28 04:16:58 PM


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