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April 23, 2012
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カテゴリ: 山田風太郎
山田風太郎さんが滝沢馬琴の『南総里見八犬伝』を自分流にアレンジしたらこうなる、という作品です。

山田風太郎
八犬伝


かれこれ20年も前、昭和58年4月2日から11月16日まで朝日新聞で連載されたこの作品が、活字で山風作品を見た最初である。

安房の里見義実は、隣国の安西景連に責められ、落城の危機に。義実は17才の娘・伏姫になつく犬・八房に「景連の首を取ってきたら、伏姫をお前の花嫁にしてやる」と戯れに言うが、その夜八房は景連の首を持ってくる。「約束を違えたくない」という伏姫の意向で姫と八房は山に隠り、姫は身ごもる。伏姫は自害し、その時8つの珠が天に飛び散る。それから十数年後、体のどこかに痣がある8人の犬士達が、不思議な運命に導かれて出会い、里見の危難に立ち上がる。

『里見八犬伝』という物語の中に、なぜ作者である馬琴の日常が出てくるのか?毎日少しずつの連載なので、先の展開や全体が見えているわけでもない。物語の部分『虚の世界』著者馬琴の世界『実の世界』が交互に登場し、最後は『虚実冥合』になる展開が、非常にややこしく感じられた。前の話を覚えていられずにこんがらがり、やたら「わかりにくいなぁ。」とぼやきつつ、物語の方を面白がって読んでいた。
ただ、切り絵みたいな挿し絵が美しかった事は覚えている。

物語が面白かったのは、当たり前だ。これは馬琴オリジナルのカタい所を抜き取って見せ場をうまく前面に出し、後はうまくはしょってまとめている。もしオリジナルの方を先に読んでいたら、決して私は全部を読み通す事などできなかっただろう。

今読むと、奇妙な事に、面白いと感じる部分が逆転した。今度は『実の世界』が俄然面白い。執筆に何年もかかっているから、聞き手や登場人物がころころ変わる。山東京伝、渡辺華山、舞台の奈落から、逆さまににゅっと顔を出すといういかにもな登場の仕方をする鶴屋南北。この時の木戸番をしていた青年が、あっと驚く人物なのはご愛嬌。そして画狂人であり馬琴の『虎』に対して『竜』に例えられる、実の世界の副主人公、葛飾北斎。そして、滝沢馬琴という希代の伝奇小説作家の向こうに、山風その人が見えてくる。「水滸伝を書こうとしてこの八犬伝を書いた」という台詞を聞けば、「水滸伝を書こうとして忍法帖が出来た」という氏の言葉を思い出させるし、あるいは、馬琴のこんな台詞がある。

最後の一文なんぞは、まんま氏が伝奇小説で守っているポリシーだ。馬琴だけではない。彼と北斎が『東海道四谷怪談』を見に行くくだりがあり、そこで
「なぜ忠臣蔵という実の話に四谷怪談という話を組み込んでしまったのか?」と聞かれ、鶴屋南北がこう語る。
「いわば実の世界と虚の世界とを重ねることで、ただの加え算じゃなく、掛け算のような妙な味が出てきやせんかと、あたしは考えたわけで…」
この答えは、『虚』と『実』入れ替わりの本篇執筆の動機を匂わせているようだ。
伝奇小説とは何か。なぜ人は、現実ではない架空の物語を欲するのか。これらが南北、北斎、馬琴の会話の形で語られる項は、なかなか興味深い。20年ぶりに読んだ本書で、虚と実の世界のその先にもう一つ、見えた。
馬琴という作家の口を借りて語られた、作家・山田風太郎の姿である。最後4行で、私は馬琴・山風、似た者同士の二老人を、誠に可愛いと思った。











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最終更新日  June 13, 2018 04:25:59 AM
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