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July 22, 2012
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二日続けて東京は涼しいです。皆さんのところはいかがですか?こんなに寝やすいと、夜でも本を読みたくなります。というわけで、今回は恩田陸さんの作品を紹介します。
今は辻村深月さんや東野圭吾さんの作品が映像化されてますが、ひところ恩田さんの作品も映像化されたものです。ドミノが映像化されないかなぁ。この作品も映像化してもよさそうなんですが。

黄昏の百合の骨
恩田陸

監視カメラが設置され、軍事衛星が飛ぶ現代において、「誰にも見えない所」や「誰にも見られないもの」なんて、おそらく存在しまい。また、今まで都市伝説や怪奇現象と見なされて来た事も、その方面の研究が盛んになれば、原因解明までの道のりが短縮される。一旦白日のもとに晒されれば、それまでの恐怖も好奇心も途端に引く。何もかもが明るみに出る現代を舞台に設定して、読者の「恐いもの見たさ」を満たすホラーを書くのは、随分と難しい。そんな中で、唯一の未知の領域-人間の心-を描く事に関心が向き、サイコ・ホラーが全盛となった。しかし、中には文章の描写力によって、今では到底あるとは思えない屋敷や共同体を、読者の頭の中に作り出す事のできる作家がいる。恩田陸さんも、そんな作家の一人である。

水野理瀬をヒロインとした三部作の第一作「麦の海に沈む果実」では、北国の湿原に突如現れる陸の孤島「青の丘」にある学園が登場する。更に学園では、「三月以外に入ってくる者があれば、そいつがこの学校を破滅に導くだろう。」という言い伝えが、まことしやかに囁かれている。最初は、こう考える。「今どき、世俗から隔絶された学園なんぞ日本にある?また、今どきの少女達がこんな言い伝えを信じる?まさかね。」けれど実際に三月以外の時期に転入してきた理瀬の登場で物語があらぬ方向に向かい始めると、猜疑的な考えはどこかに行ってしまった。謎めいた登場人物と文章力によって、物語に、どっぷりとのめりこんで行ったからだ。

本作も、謎めいた遺言と白百合荘が出てくる。「『魔女の家』と二十一世紀にしては随分とレトロなネーミングされるような家、今どきないよ。」最初は思う。ところがまず百合の香り、家、窓、家の中の百合、部屋、そして部屋にいる少女の描写まで続くI章を読み進むうち、もう私は「あり得ない」家の中に引き入れられていた。ここまでの文章の流れは、まるで映画のキャメラみたい。家にいるのは、理瀬とは血の繋がらない二人の叔母。恩田作品では、「祖母の前夫の息子の娘」や「祖父の前妻の娘」のように、一言では説明できない血縁関係がよく登場する。「木曜組曲」では四人の女性と亡き作家との関係を、数回頭の中で整理したものだ。「木曜組曲」同様、本作でも、登場人物達は本来の謎以外に、もう一つの謎-相手の事も解き明かしていかなければならない。誰もが自分の内面を隠そうとし、相手の内面を暴こうとするが、表面上はそんな事おくびにも出さない。その時、全くの他人ではないけれど、何でも言い合えるほど親密でもない微妙な距離感が、簡単に謎が明かされないための、いい楔として機能する。

前作のタイトルでも、実りのイメージ「果実」と暗いイメージの「沈む」という対照的な言葉を使ったが、今回も純潔を花言葉に持つ「百合」と「骨」が登場する。物語中でも、対照的なものが、背中合わせ又は隣り合わせに存在しており、理瀬も又、棘を持つ美しき薔薇である。今回も一つ所にとどまれない「つかの間の転校生」だったが、理瀬が今のままの状態=少女でいられるのも、長い人生からすれば、やはり「つかの間」だ。おそらく最後の猶予期間であるこの「つかの間」でもう一方の存在を感じながらも、「結局自分の決められた道はこうだ」と覚悟を決める理瀬。今回は「恐ろしい事を受け止める、または処理する」事で自らの恐ろしさを証明して見せた彼女だが、三部作最後の「薔薇のなかの蛇」では、いよいよその手を悪に染め、自らの恐ろしさを証明するのだろうか。
その行く末を、見たいような、見たくないような。



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最終更新日  February 26, 2022 06:43:03 AM
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