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August 4, 2016
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みなさん、こんばんは。
いよいよオリンピックが近づいていますね。高校野球も始まりそうです。

さて、皆さんは旧約聖書のソロモン王の話をご存知ですか?

この話の中ではソロモン王は脇役です。

ビルキス、あるいはシバの女王への旅
Le Voyage de Bilqis
アリエット・アルメル


 「シバの女王」と聞くと年配の方などは「♪私はあなたの愛の奴隷」という歌を思い出すだろう。また吹奏楽に詳しい方ならば、レスピーギの曲を想起されるかもしれない。だが、シバの女王がどのような人物で何をしたのか、という点について、残念ながら広く認知はされていない。

 旧約聖書に彼女が登場する場面はごくわずかだ。イスラエルのソロモン王に会いに来て、彼の英知に感嘆する。一国の女王なのに、まるでソロモンのヨイショ要員のような扱いだ。



 フレスコ画の作者となるピエロ・デッラ・フランチェスカは壁画制作に倦みローマへ行こうとする。しかし妻シルヴィアは夫を止めようと、自らシバの女王ビルキスの物語を夫に語って聞かせる。

 邦題がシバの女王「への」旅となっているのは意図がある。ビルキスは父の急死により突然王位を継ぐことになる。当然覚悟もなければ経験もなく「名実共に女王である」とはとても言えない状態だ。唯一他人と異なる点は幻視が出来ることで、これが「やがてイエスの十字架となる運命を持つ木を見分ける」聖書の逸話に繋がっていく。国を統治することや、イスラエルとの戦争が始まるかもしれないという不安を抱え、未熟な自分を自覚しながらも、やがてビルキスは自らの進むべき道を見出していく。

 現在パート(ピエロ&シルヴィア)と過去パート(ビルキス)が並行して進み、男と女、太陽が絶えず照りつける沙漠とオアシスVsピエロ達の住む寒く薄暗いイタリアの田舎町、ピエロを巡るモデルの愛人とシルヴィア等々、いくつもの対立図式が登場する。ビルキスの心情が聞き手のピエロや語り手のシルヴィアによって変化することもあれば、ビルキスの物語を紡ぐうちに、ピエロとシルヴィア、双方の関係も変化する。つまり、フィクションとノンフィクションが互いに影響を与えあう構成となっており、このアンサンブルが素晴らしい。

 ピエロ・デッラ・フランチェスカのフレスコ画には、後のフェルメールに見られるような極端な影はない。皆に等しく光が当てられ、人間でさえも神々しい。そんな彼の作風をも反映したストーリー構成になっている。更に「ピエロ・デッラ・フランチェスカに妻がいた史実はない」ことを踏まえると、もう一つ深読みができそうだ。



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最終更新日  August 4, 2016 12:03:39 AM
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