下巻は映画の山場となったシーンが続々と登場する。まず、ロレンスが途中ではぐれた仲間を探しに一人で戻るエピソード。この出来事は映画でも10分程度描かれ、「はぐれた男はもう死んでいるはずだ(運命は変えられない)」と皆が言った時に、ロレンスが言った台詞が「Nothing is Written=運命は変えられる」と訳されている。この後は、生きていると信じて探しに行ったロレンスが、仲間を連れて来た事で喝采が起きるという、いかにも映画的な展開になっているが、実際にはロレンスは叱られた。沙漠のような刻々状況が変わる場所で、はぐれた仲間を探す時間というロスを生じさせたことと、その間に英国側として作戦を指揮するロレンスに何かあれば、影響は計り知れないからだ。そしてこの場合、ロレンスを止めた者たちの意見が正しかった。Nothing is Written。かなり意訳になるが、書かれていたことが全てではないという意味にもなる。