いつも一緒に遊んでいたトミーだからこそ気づいた、ジーニーへの 手がかり。一歩先んじたかと思いきや、自分の感じた不安やその 根拠を明確に言葉にできないために、助けを求められないという、 子供ならではのデメリットが足枷となり、結局プラスマイナスゼロに、という 状況設定がうまい。そういえば、同じウールリッチ原作「裏窓」でも、 外から様子を覗けるメリットと、覗いている本人が車椅子で自由が効かない というデメリットが相殺されていた。 かてて加えて犯人側には強い味方がついている。時間、そしてこの場合は体力。 犯人が一歩も二歩も先んじたこの状況を、どうひっくり返すのか? トミーより状況を説明でき、父親より情報に先んじている私は、 心地よい緊張感の中で、時間を忘れ、先を争うように ページを繰っていた。 ほぼ女性の一人称によって、ある事件の様相が語られる 舞台向きの題材だと思った「Waltz ワルツ」、「うーん、 そうきましたか。」とラストに唸った「After Dinner Story 晩餐後の物語」、 ヒロインと相手役の関係がいかにもその時代っぽいなぁと思った 「Dime a Dance踊り子探偵」「The Case of the Killer-Diller黒い旋律(初訳)」、 他 「Oft in the Silly Night騒がしい幽霊(初訳)」 「You'll Never See Me Again妻がいなくなるとき」 「The Gate Crasher舞踏会の夜」を収録。 8編中初訳が3編。しかし、いずれの短編にも、昼より夜がよく似合う。 門野集訳。小池真理子の特別寄稿エッセイを収録。