帰還: 父と息子を分かつ国 The return:Fathers,sons and the land in between ヒシャーム マタール 人文書院
モノクロの写真に写っているのは、カラッポの椅子。そこに座るべき―かつて座っていた―人は、今はいない。どこにいるのかもわからない。「おそらくあの日に死んだ」と複数の人が言うものの、誰も死んだ現場を見ていない。せめて手を取り顔を見ることができたなら、気持ちに区切りをつけることができるのに。息子の心は、父が消えた日から、ずうっと宙ぶらりんのままだ。そして、そんな息子と父は、一人ではない。原題サブタイトルは「Fathers,sons and the land in between」と複数になっている。