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July 4, 2019
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カテゴリ: 山田風太郎
みなさん、こんばんは。九州の方は大変そうですね。
こちらも雨が降っています。

今日も山田風太郎作品を紹介します。

山田風太郎忍法帖短篇全集 (8) 武蔵忍法旅
山田風太郎
ちくま文庫

1914年6月28日、ボスニアのサラエボで、オーストリア皇太子がセルビアの青年に狙撃された。これが第一次世界大戦の発端となったのは、世界史の教科書を一度でも読んだ者なら誰でも知っている。日中全面戦争の始まりである盧溝橋事件もまた、昭和12年(1937年)7月7日の一発の銃声から始まる。

この発砲は、中国、日本、いずれから始まったのか、未だに謎とされているが、実は発砲騒ぎはこれ以前にも何度か起きていた。たまたまこの日、大事となったのは、日本兵1名の行方不明報告が、これと結びつけられたせいだった。しかし、昭和16年(1941年)4月22日、松岡外相を迎える途上にある車の中で、『近衛忍法暦』の近衛首相は驚くべき事実を明らかにする。行方不明とされた兵士は用便中だった。「砂利穴に落ちて失神していた」という説もあるが、どちらも当事者達が想像した事態とは、大きくかけ離れている。もちろん開戦に至る伏線はその他にもあったが、ドミノ倒しの最後の一つを押したのは、たった一人の『或る』行動だった。傍迷惑にしては、その迷惑の及ぶ範囲が期間(8年間)においても、戦闘範囲においても広すぎる。けれどその種の出来事は、残念ながら、歴史上に往々にしてある。そしてこれもまた残念な事に、前者のサラエボ事件は、でかでかと扱われるが、後者の行方不明の真相のような出来事は、極力歴史から隠される。そして実は、隠されている内容の方に、真実が含まれている事が多い。

関ヶ原の戦いにおける、小早川秀秋の裏切りもまた、ドミノ倒しの最後の一手として名高いが、山風はそこに至るまでの過程に、『豊臣家は私のもの』と主張する淀君と高台院(北政所)の女の戦いを絡ませる。賢夫人として描かれる事が多い高台院が、本作では、淀君に負けず劣らずエゴの強い女性として登場する。そして彼女のその姿は「天井裏の散歩者」となった大谷刑部と猿飛佐助、そしてもう一人にしか明らかにされない。だから歴史書には残らず、後世では、「淀君は愚かな女で高台院は賢女。淀君がもっと賢ければ、豊臣家は滅びずとも済んだ。」という認識が浸透する。歴史は敗者にとっては、斯様にとことん理不尽である。そしてその理不尽を今も生み出しているのは、「人は変わらない。そして、おそらく人間の引き起こすことも」(『戦中派不戦日記』の文章より)と山風に見切られている人間そのものである。


近衛首相は、上機嫌で立川に松岡外相を迎えに行くが、迎えられた松岡の方は、すこぶる不機嫌である。その不機嫌にむっとした首相は、これから宮城に行く彼とは別行動を取ると言ってしまう。この何気ない、喧嘩とも言えないすれ違いが、後にどういう結果を生むか、後世に生きる身は知っている。「もう一度最初からやり直せたら!」と叶わぬ願いに地団駄を踏みたくなる。けれど、「人は変わらない。そして、おそらく人間の引き起こすことも」。哀しくも現代にも通じてしまうこの言葉を証明するかのように、松岡の車は、破滅への道を粛々と進んでゆく。
何とも皮肉にして淡々とした、出来過ぎの幕切れは、良薬の如く、口に苦い。
昭和を過ぎ、平成、そして次の世になっても、未だ同じ過ちを繰り返す人間達を、天井裏ならぬ何処かから、こっそりと山風が見て、さぞや笑っているだろう。


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最終更新日  July 4, 2019 12:00:23 AM
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