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June 1, 2023
カテゴリ： 海外の絵本・童話・児童書・ティーンズ小説
みなさんこんばんは。米国の人権報告書がロシアの戦争犯罪、中国のジェノサイドなどとともに日本の入管問題にも言及しました。今日もロバート・ウェストール作品を紹介します。
海辺の王国
The Kingdom by the Sea
ロバート・ウェストール
徳間書店
『機関銃要塞の少年たち』同様、戦争のただ中で子供時代を過ごす少年の物語。灯が飛び交う中少年と犬のシルエットが書かれた表紙絵は一見華やかだが、灯は高射砲である。つまりは戦時下ということだ。
空襲で家と両親と妹を失った12歳のハリーは、イギリスの北の海辺を犬ドンとともに歩いていた。わずかな食べ物を犬と分けあいながら、生活の場を探し続けるハリー。
ついさっきまで傍にいた家族と家が、空襲によって一瞬にして消え失せる場面は、今ロシアの攻撃を受けているウクライナの風景に重なる。大人だろうと子供だろうと容赦なく戦争は襲い掛かる。そして貴重な子供時代を奪ってしまう。一瞬にして庇護を失ったハリーは、一方的に庇護すると言うよりはバディのような存在としてドンとの絆を深めていく。言葉でコミュニケーションを取るわけでもないのに、ハリーの危機を何度も救うドンの誠実さは、同時代の大人に見習わせたい。孤児と見れば弱いと見下して、物を奪ったりいじめようとする輩も少なからずいるからだ。
ラストに衝撃を受けた読者が多いようだ。普通なら辛い体験をして大人になって帰ってきた息子と、まさかの再会をすれば、喜びに満ちた家族の団らんになるはずだ。空襲を受けたとはいえ、自身のよく知る世界から一歩も外に出なかった三人と、自分一人で他人の中で過ごしてきたハリーの差は今だけのものなのか。これからも広がっていくのか。『機関銃要塞の少年たち』の父とは対照的な描かれ方だけに、父と息子の仲がこの先どうなるかが心配でもある。
海辺の王国 [ ロバート・ウェストール ] 楽天ブックス
海辺の王国
The Kingdom by the Sea
ロバート・ウェストール
徳間書店
『機関銃要塞の少年たち』同様、戦争のただ中で子供時代を過ごす少年の物語。灯が飛び交う中少年と犬のシルエットが書かれた表紙絵は一見華やかだが、灯は高射砲である。つまりは戦時下ということだ。
空襲で家と両親と妹を失った12歳のハリーは、イギリスの北の海辺を犬ドンとともに歩いていた。わずかな食べ物を犬と分けあいながら、生活の場を探し続けるハリー。
ついさっきまで傍にいた家族と家が、空襲によって一瞬にして消え失せる場面は、今ロシアの攻撃を受けているウクライナの風景に重なる。大人だろうと子供だろうと容赦なく戦争は襲い掛かる。そして貴重な子供時代を奪ってしまう。一瞬にして庇護を失ったハリーは、一方的に庇護すると言うよりはバディのような存在としてドンとの絆を深めていく。言葉でコミュニケーションを取るわけでもないのに、ハリーの危機を何度も救うドンの誠実さは、同時代の大人に見習わせたい。孤児と見れば弱いと見下して、物を奪ったりいじめようとする輩も少なからずいるからだ。
ラストに衝撃を受けた読者が多いようだ。普通なら辛い体験をして大人になって帰ってきた息子と、まさかの再会をすれば、喜びに満ちた家族の団らんになるはずだ。空襲を受けたとはいえ、自身のよく知る世界から一歩も外に出なかった三人と、自分一人で他人の中で過ごしてきたハリーの差は今だけのものなのか。これからも広がっていくのか。『機関銃要塞の少年たち』の父とは対照的な描かれ方だけに、父と息子の仲がこの先どうなるかが心配でもある。
海辺の王国 [ ロバート・ウェストール ] 楽天ブックス
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