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August 16, 2023
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みなさんこんばんは。台風7号により高校野球の試合が順延されましたね。今日も戦争に関わる小説を紹介します。

弟の戦争
Gulf
ロバート・ウェストール
徳間書店

 これもまた意味深な表紙絵だ。二人の少年の姿が被っている。一人は青色、もう一人はグレイで、左側の少年が持っているのは銃だ。

 トムの弟アンディは心の優しい子だ。弱っている動物や、飢えた難民の子供の斜視を見ると、まるで取り憑かれたようになって「助けてやってよ」と言う。人の気持ちを読み取る不思議な力を持っている。そんな弟が、ある時奇妙な言葉を喋りはじめ「僕はイラク軍の少年兵だ」と言い始める。アンディは12歳。1990年、湾岸戦争が始まった夏の事だった。

 湾岸戦争は、お茶の間に戦争がやってきた戦争だった。クウェートから撤退しないイラクへの国連の強制措置として多国籍軍が派遣された。現在のロシアのウクライナ侵攻とは異なり、国連の意見は一致していたのだ。1990年から1991年と一年余りで集結した事も、視聴者として戦争を見ていた人達が、迷いや罪悪感を抱く余裕を生まなかった。自分達の乗っかった側が正義だと疑わず、トムの父ホースィーも平気でこんな事を言っていた。
「フセインめ、考えちがいもいいとこさ。冷戦が終わったんだから、アメリカはヨーロッパにおいてある武器をぜんぶイラク相手につぎこむぞ。ソ連を食い止めるために持ってたやつを残らずだ。みんなきちんと作動するかどうかはわからんがな。ちゃんと動けば、フセインもおだぶつさ。」

そして子供達は、ミサイル攻撃をゲームの延長として受け入れていき、正義がどこにあるかの判断を自分ですることなく、大人達に従った。しかし、アンディはそうではなかった。

 アンディが湾岸戦争の前線にいるイラク兵ラティーフだと思い、様々な言動が目に付くようになると、普通ではない子供にホースィーは戸惑い、息子を怖れるようになる。州会議員をしてリベラル派を標榜する母親は、好戦的な父親をたしなめはするものの、何一つ悪いことをしたことのない、人助けに熱心な自分に、どうしてこんな事がふりかかるのかと被害者の立場を抜けられない。冷静に物事を見ているのは、アンディを診察してくれたラシード先生だ。彼はアラブのホモと揶揄されながらも、流されない大人としてトムにアドバイスする。
「わたしはね、トム、世界の半分は気が狂ってると思う。でもきみをその数のうちに入れるつもりはないよ。」
「この戦争は、何人殺したかを口にするのがはばかられる初めての戦争だ。一般市民はテレビで小ぎれいな映像を見せられて、これが戦争だって信じてるんだろうか。みんな小さな子どもみたいに、おとぎ話を信じてるって言うのか。それとも真実から目をそむけたいんだろうか」

 アンディ(アンドリュー)が本名だが、語り手の兄トムはずっと弟の事をフィギスと呼ぶ。それは、弟が生まれる前の、トムのイマジナリー・フレンドの名前だった。フィギスという名前は、良心を持ち、他人の痛みに同調できる、繊細で無垢な少年の象徴である。だから、この体験を経て、もう一人のホースィー・ヒギンズになった弟の事を、トムは二度とフィギスと呼ぶことはない。フィギスを永遠に失ったのは、アンディだけではないのかもしれない。


シェフィールド児童文学賞受賞。ランカシャー児童書賞第一位。イギリス児童書連盟賞部門賞受賞。カーネギー賞特別推薦。ウィットブレッド賞推薦。


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最終更新日  August 16, 2023 12:00:20 AM
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