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July 30, 2024
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みなさんこんばんは。パリオリンピック、スケートボードの男子ストリートで、25歳の堀米雄斗選手が2大会連続となる金メダルを獲得しました。
今日もゾラ作品を紹介します。

ルーゴン=マッカール叢書第5巻
ムーレ神父のあやまち (ゾラ・セレクション)​
La Faute de l'Abbé Mouret
エミール・ゾラ
藤原書店

セルジュ・ムーレは第4巻『プラッサンの征服』の主人公フランソワ・ムーレ、マルト・ルーゴン夫妻の次男にあたる。前作では狂信的なフォージャ神父がマルトを洗脳し、ムーレ家を破滅に導く。

 セルジュは財産を全て兄オクターヴ(『ボヌール・デ・ダム百貨店』のタイトルロール)に譲り神学校に進み、寒村レザルトーの神父となる。22歳ながら子供っぽい妹デジレと住んでいる。彼の叔父が『パスカル博士』のタイトルロールのパスカル・ルーゴン博士だ。


「その顔には、聖なるみことばに自分は恥じることはないという表情が、その口には、自らの信仰告白にはなんのためらいもないという表示が、そしてその心中には、自分の心はただ神のものであるという思いがつよくあらわれていた」
周囲の人も
「まるで六十年配の聖者様ってところだ。だが、生きてるって感じはないし、なにもご存じない。まったく無邪気な、かわいい子供の天使みたいなお方だ」

年齢とのちぐはぐさを見抜いている。
 前任者とも親しかったアルジャンジア修道士もまた、穢れを徹底的に嫌うタイプだ。
「女ってものは体に悪魔がとりついている。脚にも、腹にも、いたるところ悪魔の臭いがぷんぷんだ。だからばかな男はみなそれにひっかかるんだ」


 一方で、妹デジレは生き物が大好きだ。兄の好意で裏庭を自由に使わせてもらい、動物や植物を育てている。泥だらけになることを厭わず、動物は簡単に死ぬし、生殖行為も行うことを嬉々として語る。だからセルジュは、デジレの話が始まると気持ちが悪くなる。動物達の気配も嫌いだ。

 無理していたセルジュは病気で倒れ、彼を心配したパスカル博士によって、彼はパラドゥーに連れてこられる。世話をするのは、野性的な少女アルビーヌだ。元はいいうちの令嬢だったが、世間に迎合することを好まないジャンベルナ老人に育てられて、すっかり野生児になっていた。とはいえ彼女は16歳でセルジュは25歳。どうかなってもおかしくない年頃で、後の展開からすれば、保護者二人がこの辺りをどう考えていたのか気になる。セルジュの潔癖さがそう簡単に崩れるはずはないとみていたのか。

 セルジュがエデンの園でリンゴを食べて追放されたアダムに擬せられている。アルビーヌのいる地域一帯はパラドゥーといい、パラダイスを思わせるが、同時にエデンの園でもある。外壁に囲まれていて、外からは見えないし、他人もめったに訪れない。ただ、外界と全く遮断されているわけではなく、壁には覗き穴もある。つまり、蛇の入る隙間はある。
「パラドゥーのすべてがふたりのものだった。彼らはパラドゥーの完全な支配者であり、一隅たりとも彼らのものでない場所はなかった」

二人きりでパラデューを散策するシーンはまさにエデンの園を楽しむアダムとイヴだ。自然は二人の愛を祝福する。しかし、人間は二人の関係を、汚らわしいものとして唾棄する。その最たる人が、アルジャンジア修道士だ。


「永遠に自分のそばにおき、自分のものにしておきたいと願うほど、たえず彼のことを気遣い、どこへでもついてまわり、すこしの不実もゆるさぬほど、積極的に彼を愛していた。どんな女にもまして、天のごとく深く無窮で青の愛でやさしく彼を愛していた。これほど心惹かれる女主人公がどこにいるだろう。」

彼女と男性として結ばれることまで夢みながら、一方で
「わたしは五歳のままでいたいのです。あなたのお姿に口づけする子供のままでいたいのです。」
と祈ったり、感情と肉欲のアンバランスを抱えている。その後に生き生きしたアルビーヌとの出会いがあるのだから、彼の精神はもうぐちゃぐちゃだ。女性は怖いということで、今度はイエスに傾倒する。宗教は救いを求めるというが、セルジュの場合はほぼ逃げだ。逃げた挙句にまた、生々しさを拒絶した世界に閉じこもろうとする彼が、この先社会と折り合いをつけられるのか。


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最終更新日  August 27, 2024 10:25:43 PM
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