『自殺クラブ』 (The Suicide Club) 謎の組織自殺クラブにまつわるエピソード。 「クリームタルトを持った若者の話」 (Story of the Young Man with the Cream Tarts) 例によってお忍びでロンドンのバーで飲んでいたフロリゼル王子とジェラルディーン大佐は、無料で店中の客にクリームタルトを配る青年を見かける。青年は客に断られる度にタルトをペロリ。興味を持った2人は、タルトを食べる代わりに青年を夕食に招く。青年は年収三百ポンドを相続してから、決闘つきの冒険を体験してきた。しかしある女性に恋をした時、手持ちの金が四百ポンドを切っていた。これでは恋なんかできないと絶望、散財に走る(をい)。更に手持ちの金がなくなり(当たり前だ)とうとう八十ポンドに。四十ポンドをある目的のためにとっておき、残りの四十ポンドでタルトを買ったという。四十ポンドは「自殺クラブ」のためにとっておいたと知り、2人はクラブに興味を持つ。自殺願望者を装った王子と大佐は、自殺クラブ会長と対面して入会。トランプのゲームで殺される者と殺す者を1人ずつ選び出すという恐るべき秘密クラブだった。その夜「処刑人」に選出されたのはクリームタルトの青年。翌日の新聞で2人は死のカードスペードのエースをひいた犠牲者の「事故死」を知る。2人は再び会合に訪れ、その日スペードのエースが配られたのはフロリゼル王子。王子が殺人者になるのか?王子いきなり危機一髪!
「医者とサラトガトランクの話」 (Story of the Physician and the Saratoga Trunk) パリに滞在中のアメリカ人観光客サイラス・Q・スカダモアは、美しい若い婦人(ここ大事!)から秘密めいた約束を持ち掛けられる。しかし明くる夜、指定の場所に彼女は現れず、落胆してホテルの自室に戻るとベッドに死体が横たわっていた。サイラスは嵌められたのだ。向かいの部屋に住む元ロンドンの開業医だったノエル博士は彼を助けようとひと肌脱ぐ。
「若い聖職者の話」 (Story of the Young Man in Holy Orders) レイバーンの屋敷に間借りしていたサイモン・ロールズ師は、前話でハリーがドジこいて、ダイヤモンドをぶちまけた騒動の顛末を偶々目撃し、殆ど地面に埋もれていたラージャのダイヤモンドを発見。その輝きに魅了され、ついポケットに入れてしまう。警察の取り調べも何喰わぬ顔で切り抜け、自室でその輝きを見つめる内に、将来への無限の妄想が広がっていったが、これまでに収めた学問は、ダイヤ処分には役立たず。ロールズ師はダイヤモンドを切り分ける技術を身に付けようという結論に至り、旅に出る前にクラブに行くと件の紳士(実はフロリゼル王子)とトマス・ヴァンデラー卿の弟ジョン・ヴァンデラーが会話している場面に遭遇
「緑の日除けがある家の話」 (Story of the House with the Green Blinds) エディンバラの誠実、温厚な銀行員フランシス・スクリムジャーは高名な弁護士から呼び出しを受けた。さる高貴な人物が彼に年額500ポンドの手当てを支給したいと申し出ているという。条件は指定された日にパリのコメディ・フランセーズに行き、用意された席に座っている事と、指定された相手と結婚する事だ。フランシスは今まで父親と信じていたスクリムジャー老が実の父親ではなく、この依頼が実の父親からのものらしいと知り大ショック!パリで劇場の入場券を受け取る際、これを預けた人物がたった今去ったばかりであり、その人物が刀傷のある老人だと聞き後を追う。そして特徴が合致するジョン・ヴァンデラーとロールズ師が言い争う場面に出くわす。
「フロリゼル王子と刑事の冒険」 (The Adventure of Prince Florizel and a Detective) ヴァンデラーがロールズ師から強引に奪い取ったラージャのダイヤモンドは、ヴァンデラーの娘から密かにスクリムジャーの手に渡り、更にフロリゼル王子に手渡されていた。王子はジョン・ヴァンデラーを激しく難詰し、ヴァンデラー嬢との結婚をスクリムジャーに勧めた。最後にロールズと二人で歩きながら、彼にオーストラリアに渡って全てを忘れ開拓者になるよう忠告。ところが、ヴァンデラー兄弟が窃盗のかどで王子を告発して。