2026.09.08
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カテゴリ: AI小説



今日は天気も良くなって暖かくなりました。
暖かいと眠くなるね、朝は少し寝坊してしまったよ。
こないだストーブつけたのに今日はまた扇風機を回すことになった。

今日は何の日

国際識字デー
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タイトル『十二時のない村』

 民俗学者の久世透がその集落を訪れたのは、地図から名前が消えて十二年後のことだった。
深い杉山の奥にある、旧・時守村。

 かつて村人たちは毎月一度、丑三つ時になると山中の祠へ赴き、赤い木の実を十二粒供えたという。
その夜だけは、時計を見てはならない。
鐘が鳴っても数えてはならない。
もし十二回まで数えてしまったら、その者は翌朝から「いなかったことになる」。
戸籍からも、写真からも、家族の記憶からも消える——そんな禁忌が残されていた。
過疎化で最後の住人が麓へ移ってからも、なぜか山のどこかで月に一度、鐘の音だけは鳴り続けているらしい。

「機械仕掛けなら、とっくに止まっているはずなんですがね」
麓の役場で久世を迎えた老人は、そう言って古い鍵を渡した。
「村の最後の巫女が持っていたものです。あの娘も、山へ入ったきり帰らなかった」
「名前は?」
老人はしばらく考え込み、首をひねった。
「……妙ですね。知っていたはずなんだが」
鍵には、細い赤紐が結ばれていた。

村へ着いたのは夕暮れだった。
朽ちた家々の軒下には、文字の消えかけた布が垂れている。道祖神には太い注連縄が幾重にも巻かれ、人の形というより、何かを縛りつけているように見えた。
その傍らに、古びた提灯を持つ若い女がしゃがんでいた。
ぼろぼろの着物。泥に汚れた頬。髪には枯葉が絡み、腕には山で摘んだらしい草束を抱えている。
女は木箱から赤い実を一粒ずつ取り出し、道祖神の前へ並べていた。
「十一……」
そこで手を止め、久世を見た。
「数えちゃだめ」
「今、あなたが数えていたでしょう」
「十一までならいいの」
女は当然のように答えた。
「十二は、あの方の数だから」
久世は山の奥を見た。
霧の向こうに、不自然に高い石造りの塔が立っている。四方を蔦に覆われ、その頂上には大きな時計がはめ込まれていた。
二本の針は、十一時五十九分を指したまま止まっている。
「あなたが、最後の巫女ですか?」
女は首を傾げた。
「最後かどうかは知らない。私はずっと、ここにいるから」
「名前は?」
女の表情が、わずかに曇った。
「名前を呼ぶと、時計が動くよ」

祠の内部には、十二枚の木札が円を描いて掛けられていた。
一枚目には「水」。
二枚目には「火」。
三枚目には「山」。
古い信仰で世界を構成するものが、順に刻まれている。
しかし十二枚目だけは裏返され、壁に釘で打ちつけられていた。
久世が手を伸ばすと、女が袖を掴んだ。
「見ちゃだめ」
「十二番目は神の名ですか?」
「ううん」
「妖怪?」
「違う」
女は提灯を足元に置いた。
「人間」
久世は木札を裏返した。
そこには、いくつもの名前が重ね書きされていた。
墨の薄れた古い名。まだ新しい筆跡。幼名、戒名、女の名、男の名。百人以上の名が、一枚の板を真っ黒にするほど刻まれている。
その最下部だけが空白だった。
「村では昔、大きな山崩れがあったの」

女が語り始めた。
「十二人が生き埋めになった。でも食べ物は十一人分しかなかった。だから村人は、一人を最初からいなかったことにした」
救助されたのは十一人。
死者はゼロ。
村の記録には、そう残された。
見殺しにされた十二人目は、名前さえ記録されなかった。
以来、村では不可解なことが起きた。
子供が一人消えても、誰もその子を思い出せない。
葬式の棺が一つ増えても、誰の葬式なのか分からない。
家族写真には、いつも人ひとり分の隙間ができた。
村人たちは悟った。
十二人目は、自分と同じ「いなかった者」を増やしているのだと。
そこで時計塔を建て、失われた者の名を十二枚目の札へ刻んだ。月に一度、赤い実を十一粒供え、十二個目だけを空の箱に残す。
「これはあなたの分です」と、忘れた者へ示すために。
「でも、さっき箱には実が十二粒入っていましたね」
女は黙った。
「誰かを新しく十二人目にするつもりだった」
久世は壁の木札を見た。
最下部の空白は、人名一つ分。
そして老人から預かった鍵の赤紐には、小さな紙片が縫いつけられていた。
雨で滲んでいたが、目を凝らせば読めた。
——久世透。
その瞬間、塔の時計が動いた。
巨大な分針が、軋みながら真上を指す。
ゴーン。
一度。
ゴーン。
二度。
女が提灯を持って逃げ出した。
久世も祠を飛び出す。
鐘を数えてはならない。
十二回まで数えた者は、いなかったことになる。
だが、久世は走りながら笑った。
この禁忌には矛盾がある。
いなかった者を忘れるのなら、なぜ村人たちは「十二人目」の存在を知っていたのか。
ゴーン。
九度目。
時計塔の下へ辿り着いた久世は、老人から渡された鍵を差し込んだ。
鍵はぴたりと合った。

扉の奥には鐘を鳴らす機械などなかった。
ただ、古い座敷があった。
囲炉裏を囲み、十一人の村人が座っている。老人もいた。役場で会ったときと同じ服装のまま、青ざめた顔でこちらを見ていた。
彼らの前には、赤い実が一粒ずつ置かれている。
「やはり、村は廃村になっていなかったんですね」
久世は言った。
「毎月、旅人を十二人目にしていた。誰か一人を“いなかったこと”にすれば、残る十一人は歳を取らずに生きられる」
老人が唇を震わせた。
「仕方がなかった。供えなければ、今度こそ山に村ごと呑まれる」
「違いますよ」
久世は木札を卓上へ置いた。
「山崩れで見捨てられた人間なんて、最初からいなかった」
木札の古い文字を提灯の光に透かすと、重ね書きされた名前の下から、一つの文章が浮かび上がった。
十二人揃えば、ひとり帰れる。
これは供養ではない。
山に隠された者たちが、地上へ戻るための順番待ちだったのだ。
最後の鐘が鳴った。
十二度目。
部屋の十一人が、一斉に久世を見た。
その顔から怯えが消え、代わりに期待が浮かんだ。
十二人、揃った。
「これで誰が帰れる?」
老人が囁いた。
久世は答えず、祠で拾った赤い実を床へ置いた。
一、二、三。
数えながら、十二粒すべてを円の外へ弾き出す。
すると、部屋の隅に立っていた巫女が、初めて嬉しそうに笑った。
「やっと数えてくれた」
時計塔が激しく揺れた。
老人たちの身体が霧のように崩れ、杉林の闇へ吸い込まれていく。床板も壁も消え、気づけば久世は、何もない森の中に立っていた。
巫女だけが残っていた。

「あなたが、最初の十二人目だったんですね」
久世が尋ねると、女は頷いた。
「これで村に帰れる」
「村はもうありませんよ」
「あるよ」
女は山の下を指した。
霧が晴れた先に、明かりの灯る集落が見えた。
つい先ほどまで廃墟だった家々から炊事の煙が上がり、子供たちが道を走っている。
久世が役場へ戻ると、職員は誰一人として「時守村が廃村だった」という記録を知らなかった。
ただ、村の人口台帳には奇妙な点が一つあった。
住民は十二人。
最後の一人は、昨日転入したことになっている。
氏名——久世透。
そして職業欄には、彼の知らない筆跡でこう記されていた。
十二代目・時守。
役場の柱時計が鳴った。
久世は反射的に、一つ、二つと数え始めた。

十一回目の鐘が終わる。
長い沈黙のあと、背後で巫女の声がした。
「ねえ。十二回目は、誰にする?」

おわり







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最終更新日  2026.09.08 18:46:07
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