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January 12, 2016
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カテゴリ: 抜き書き
植木  そもそも、弥勒信仰というのは小乗仏教で始まります。大乗でも、この信仰を採り入れたところもある。ガンダーラでは弥勒信仰が盛んだった。

弥勒菩薩はサンスクリット語でマイトレーヤ(maitreya)といいますが、これはイランのミトラ(mitra)神と語源が同じです。つまり仏教が、外来の神格を採り入れたわけです。「お釈迦さまがこの世にいなくて寂しい。何か代わり信じられるものがほしい」と思っていたところに、未来仏としての弥勒信仰が入ってきたので、みんなが飛びついた。

しかしこれに、批判的な人びともいたようです。ガンダーラでつくられた仏典には、弥勒菩薩が将来現れるまでに生き長らえようと、なかなか涅槃に入らない高僧が、弟子たちにたしなめられるという話があるとすでに紹介しました。そして、『法華経』や『維摩経』をつくった人びともおそらくそう思っていたのではないか。『維摩経』は『法華経』以上に、弥勒菩薩に対する痛烈な皮肉が書いてあります(植木訳『梵漢和対照・現代語訳 維摩経』一四一~一四七頁)。そういう背景もあって、弥勒菩薩を道化役にしたんでしょうね。


橋爪  日本では弥勒菩薩が広く親しまれています。大乗の中に、弥勒菩薩を持ち上げている経典はありますか。


植木  かなりあるようです。弥勒という名前の付いた教典だけで、少なくとも三七あります(松本文三郎著『弥勒浄土論・極楽浄土論』三二頁)。


橋爪  なるほど。


植木  法華経は、いろいろな教団でバラバラに説かれていたブッダを、釈尊に一本化するねらいがあります。「原始仏教に還れ」という主張とも言えます。それは久遠実成を明かすことによってなされました。その久遠実成が説かれるためのきっかけをつくる質問役に抜擢されたのが、弥勒菩薩でした。


【ほんとうの法華経】植木雅俊・橋爪大三郎著/ちくま新書





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Last updated  January 12, 2016 07:21:02 AM
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