浅きを去って深きに就く

PR

Keyword Search

▼キーワード検索

Freepage List

March 17, 2016
XML
カテゴリ: コラム
ズボンのポケットに入れた携帯電話のかすかな振動に、体がこわばった。20代の男性にとっての1カ月ぶりの休日。恐る恐る画面を見ると、会社幹部からのメールだ。「売上を上げろ」「売る気ないのか」。死ねば楽になる―。男性は2014年、自殺を考えるほど追いつめられていた。

男性は10年春に大学を卒業。就職活動で数十社受けたが、リーマンショックの影響もあり、内定を得られなかった。

同年秋、インターネットの求人サイトで「アットホームな職場」と紹介されている会社を見つけた。大手コンビニのフランチャイズ店を関東地方で十数店舗経営。求人には社会保険の加入のほか、自動車運転免許の取得補助もあると書かれていた。とんとん拍子手入社が決まった。

違和感はあった。入社後、実際には自分が社会保険に加入していないことを知る。同僚も次々と辞めたが、「就職氷河期だし、わがままを言ってはいけない」と自分に言い聞かせ、仕事を続けた。

入社1年後に店長に。売上報告やシフト作成など仕事量は激増した。午前7時から午後10時過ぎまで働き、休みは月1日だけ。給にアルバイトが休み、32時間連続で働いたこともあった。

実体は権限や裁量のない「名ばかりの管理職」で、給料は店長になる前と同じ約20万円。残業代は出ない。休日も、幹部からメールと電話で問い合わせや指示を受けた。

おでん、おせち料理、母の日セット…。毎月のノルマを達成するため、自ら購入する“自爆営業”を月数万円もしていた。大学時代に給付を受けていた奨学金の返済もあり、半年分の住民税を滞納することもあった。

帰りの電車で立ったまま寝てしまい、終着駅近くのネットカフェで朝を迎えた日も。絶望感を染めていったが、「ここをやめたら次はない」「他の仕事はもっと厳しい」とひたすら耐えた。

ついには手が震え、夜も眠れなくなった。14年6月、精神科で「うつ病で1カ月の療養が必要」と診断されたものの、1週間休んで復帰。回復していないのは分かっていたが、人手が足りず休める雰囲気ではなかった。病状はさらに悪化し、15年2月から休職した。



ブラック企業という言葉が広がるきっかけになったのは、居酒屋チェーンを経営するワタミ子会社の女性社員=当時(26)=が08年に過労自殺した問題。両親が損害賠償を求めた訴訟は15年12月、ワタミ側が責任を認めて謝罪し、遺族側に約1億3千万円を支払うことで和解は成立した。過重労働を許さないという機運が高まりつつある。

男性の家族は昨年2月、労働関係のNPO法人に相談。会社側と相談した結果、同12月に未払いだった残業代を支払うことで合意した。男性はこの会社を退職。新しい仕事を探すため職業訓練を受けるつもりだ。

男性は訴える。「あの時、休職していなかったら死んでいたと思う。これ以上ブラック企業の犠牲者が出てほしくない。身の危険を感じたら関係機関に早めに相談してほしい」


働く者の権利
27条●すべての国民は、勤労の権利を有し、義務を負ふ。
    賃金、就労時間、休息その他の労働条件に関する基準は、法律でこれを定める。
    児童は、これを酷使してはならない。
28条●勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する。
【憲法のいま 交付70年】京都新聞2016.2.13





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  March 17, 2016 06:32:39 AM
コメントを書く
[コラム] カテゴリの最新記事


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

Calendar

Favorite Blog

まだ登録されていません

Comments

聖書預言@ Re:池上兄弟とその妻たちへの日蓮の教え(10/14) 神の御子イエス・キリストを信じる者は永…
背番号のないエースG @ 関東大震災 「福田村事件」に、上記の内容について記…
とりと@ Re:問われる生殖医療への応用の可否(04/03) 面白い記事なんですが、誤字が気になる。
とりと@ Re:●日本政策研究センター=伊藤哲夫の主張(03/21) いつも興味深い文献をご紹介いただき、あ…
三土明笑@ Re:間違いだらけの靖国論議(11/26) 中野先生の書評をこうして広めていただけ…

© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: