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今の政治やマスコミは、確率の発想があまりないことが問題だと思います。
「犬が人間を噛んでもニュースにならないけど、人間が犬を噛んだらニュースになる」との言い方があるように、政治でもマスコミでも、めったに起きないことの方が、注目されるわけです。そこで確率のひくいことばかり注目するから、大事な問題が置き去りにされる、といったことが起きているのだと思います。
例えば、自殺の問題にしても、そうしたことが起きています。
確かに子供の自殺は深刻な 問題です。特にお子さんをお持ちの親御さんにとっては、本当に心が傷むニュースでしょう。
しかし、 文部科学省を見ると、小中学生の自殺は、この 20 年以上、年間 1000 人を超えたことがありません。それに対して高齢者は、 60 代だけで年間 6 千~ 7 千人が自殺で亡くなります。
「日本人の自殺を減らす」という課題に対して、純粋に数字で考えるならば、高齢者の自殺の対策は緊急の問題だ、という考えがあってもよいはずです。しかし、子どもの自殺の方が、めずらしくショッキングなニュースですから、どうしても、それに「とらわれる」ということが起きてしまいます。
こういうことは政治やマスコミのせかいでは往々にして起きています。
以前も、教育再生会議という、ゆとり教育による学力低下の対策を話し合う会議が立ち上げられた事がありました。そのとき、たまたま同時期に福岡でいじめが原因の中学生の自殺が起きました。
その影響で、本来は学力の低下について話し合うために始まった会議が、いじめをなくすための会議に化けてしまったのです。そして、肝心の学力低下の問題は、ないがしろにされてしまいました。
確かにいじめによる自殺は、年に 10 人、 20 人と起きることがあります。それが深刻な問題であることは間違いありません。
しかし、子供の学力低下は、日本人すべての将来にかかわる大きな問題です。それなのに、そのための取り組みの過程で別の事件が起こると、そこに気持ちが全部行ってしまうといったことは、往々にして起こるわけです。
もちろん、政治やマスコミの世界で生きていくためには、それが正解なのかもしれません。めずらしい話題を大きく取り上げることで、視聴率が稼げたり、それが票になったりするのでしょうから。
しかし、ビジネスをする人が、確率の低いことに悩んでいて、確率の高い方に気持ちを向けられないなら、間違いなくその人は仕事で成功できないでしょう。
私が、政治家やマスコミに本当に望むのは「問題が起こる確率はこれくらいで、優先順位の高い問題はこちらですよ」と国民に理性を取り戻させるような発言をしてほしい、ということです。
しかし、そこで政治家もマスコミも一緒になって神経症的に確率の低いことに大騒ぎをするようなことが増えているせいで、なおさら神経症的に悩む人が増えているように思えてなりません。
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