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キリストは預言者と宣し自ら神の子といい、それを認めない者に救いはないとした。かくてキリストは、自己を預言者、神の子として受け入れるかどうかにクリスチャンの救済がかかっているとすることによって自らの位置を定めた。
イスラム教の預言者モハメッドは神によって遣わされた預言者であると自ら宣した。更に彼は二つの条件を受け入れる者のみが救われるとした。即ちイスラム教に救いを求める者はモハメッドを神の預言者として受け入れ、彼が最後の預言者であることを受け入れねばならない。モハメッドは自らの位置と救済は彼を神の預言者として認めるかどうかにあるとすることで確かなものとした。
ブッダはこのような条件を全く認めなかった。彼はスッドーダナとマハーマーヤーとの間にできた普通の人間以外の何者でもないといった。ブッダはキリストやモハメッドのように彼を救済者と見做すという条件を設けることで自分を自分の宗教の特別な位置に置かなかった。
◇
ここに彼は救済を約束していないということが明白に述べられている。彼は道を示すだけなのだ。では救済とは何なのか。モハメッドとキリストの場合、救済とは預言者の取り成しで魂を地獄へ送らず救ってやるということを意味する。ブッダの救いとは、涅槃であり、涅槃とは情念の全き統御である。このようなダンマにどのような救いが約束されうるのか?
◇
彼は、自分は諸々の人間の一人であり自分の教えは人間に対する人間の言葉なのだと明言した。彼は自分の言葉の不謬性など決して求めなかった。彼が求めたのは、彼の言葉をさとった救済に到る唯一真実の道だ、ということであった。そしてそれは人間の普遍的経験に基づき、誰しもがその教えに疑問を持ち、確かめどのような真実が潜んでいるかを見出すことができるものだといった。自分の宗教をかくも大胆な挑戦に晒した開祖はかつて存在しない。
【ブッダとそのダンマ】 B ・ R ・アンベードカル著 山際素男訳/光文社新書
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