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April 28, 2017
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カテゴリ: 紙上セミナー

三重総県農漁光部長 田村甚二郎

スーパーマーケットに並ぶ野菜。最近は、産地に加えて生産者の名前や写真が表示されているものが増えています。見た目が同じような商品であったとしても、生産者の“顔”が見えることで、消費者は一段と安心を得られるのでしょう。

私は、創価学会の農漁光部のメンバーとして、 40 年余、多くの農家や、農村行政に携わる人と交流してきました。

とりわけ力を入れてきたのが、生産者と消費者の相互交流・相互啓発です。こうした取り組みは、職業や立場の違いを超えて、多様な人材からなる学会ならではのものであり、これまでの「農漁村ルネサンス・フォーラム」などを通して、地域の農業関係者からも注目されています。

仏法で説く食物の徳性

私たちの生命を支えている食物。仏法では、食物の徳性について、五つ挙げています。

第一に、生命を維持し、寿命を保つ。

第二に、精神と身体の生命力を増大させる。

第三に、身体の輝きや活力ある姿を生む。

第四に、憂いや悩みを鎮める。

第五に、飢えを癒し、衰弱を除く、というものです。

文字通り、人類の歴史とともに歩んできた食物ですが、時代の変遷とともに、人々が植物の求めるものに変わってきています。

とりわけ、近年、人々が食物に求めるのは、「安心・安全」でしょう。消費者の意識の変化に歩調を合わせるように、生産者の意識も変わってきており、安心・安全な食材をいかに提供していくかに努力を惜しまないようになりました。

「食の安心・安全」を実現しようとする時に、欠かせないのが、生産者と消費者の信頼関係です。しかし、もとより、生産者と消費者、それぞれのよって立つ前提は異なります。

例えば、これまでも農畜産物の日本への輸入に際して、高い国産品と安い外国産品が著しい価格差であったことから、消費者の間に“高い国産品を買わされてきた”という非難の声が上がったことがあります。

消費者は安い商品を求めます。しかし、安い輸入品が入ってくれば、価格競争力の劣る、国内の農家は窮地に立たされます。このように、消費者にとって有利なことでも、生産者にとって不利となることが、往々にしてあります。

そうした意味で、お互いが相手の置かれた“立場”を知ることが大切です。

消費者は、生産の現場における工夫や労苦を知るだけでなく、常に変動する農産物の価格や鳥獣害を含む自然災害のリスクにも関心を持ってほしいと思います。

生産者も、消費者の関心や要望に耳を傾け、時代のニーズに合ったものを提供する努力をすることは、経営上のプラスになります。

そうした意味から、生産者と消費者が向き合う交流の場が求められるのです。

農業に取り組むメンバーと共に

私は、大学で農業を学び、学問を現場で生かそうと、郷里の三重県の経済農業協同組合連合会(当時)に就職。その後、中央会に移りました。世界的な食糧問題が課題となり始めていましたが、そのさなかに創価学会の三重県漁村部(現・農漁光部)が結成され、私はその中心者に。仕事でも、創価学会の活動においても、多くの農家と関わってきました。

その後、農村部では、 1993 年(平成 5 年)の全国的な凶作に際し、農漁業を営む全ての人々に勇気と希望を送ろうと、“体験談大会”を各地で開催。三重県農村部も、県内各地で行ってきました。

その後、農村部では、 1993 年(平成 5 年)の全国的な凶作に際し、農漁業を営む全ての人々に勇気と希望を送ろうと、“体験談大会”を各地で開催。三重県農漁村部も、県内各地で行ってきました。

さらに 2010 年から、三重県農村部として新たな試みとなる「農漁村ルネサンス・フォーラム」をスタート。これまでに 5 回、開催し、定着しています。

参加者は、農漁業者のアシスタント。農漁業者のアシスタントというのは、農業改良普及員、また農協の営農指導員、行政の農漁業関係職員、さらに農漁業関係団体の人々などです。このほか、加工・流通業者も参加しています。

フォーラムの成功の鍵は、何といってもテーマの設定です。

日頃から、農漁光部メンバーと語り合う中で、社会の動向と生産者の具体的な関心をつかみ取ります。ちなみに前回のテーマは、「高まる自然災害へ、農と食の対応!」でした。

フォーラムでは、まず農業の体験主張に始まり、次に私がテーマに沿った基調報告を。そして、生産者の代表から課題克服への取り組みを報告していただき、消費者からもコメントしてもらいます。

フォーラムに参加して触発を受け、新たな作物の生産に取り組み始めた農家もいます。生産者と消費者が、互いの顔の見える交流をすることで、生産者の労働意欲が刺激された結果です。

参加者からも、“皆が生き生きと農業に取り組んでいて、表情もとても明るい”といった声が寄せられています。

門下からの白米を“あなたの命”と

池田先生は、「農業こそ、『自然』と共生し、『文化』を培う根本の大道」であると述べられ、さらに広く文化について「文化の真髄は『生命を大事に育てる心』である。だから、生命を守り、一生懸命、育てている人が文化人である」と呼びかけられています。

農漁業に従事する人々にとって、何よりも励みになる言葉です。

鎌倉時代当時、門下から届けられた白米の供養に対し、日蓮大聖人は、こう仰せになっています。

「白米は白米にはあらず・すなはち命なり」(御書 1597 頁)——あなたの心が込められた、この白米は白米ではありません。あなたの一番大切な命そのものであると受け止めております、と。

人々を支える食物を生産し、人々の命を支えていく尊い使命が、農漁業従事者にはあります。農漁業従事者も、食の消費者として、自らを生かしてくれる尊い食物への感謝の心を忘れることはありません。農漁業従事者は、“あらゆる生命を尊んで感謝できる社会”を作り上げていく担い手でもあるのです。

“地域社会を照らす灯台に”——これが農漁光部の使命の一つです。農漁光部として、ますます郷土の繁栄に貢献したいと願っています。

【プロフィル】たむら・じんじろう 三重県農業協同組合中央職員、また農協常勤幹事を務めた。この間、農協監査士、中小企業診断士、農業改良普及員の資格を取得し、県内の農業・農協の発展に携わってきた。 72 歳。 1963 年(昭和 38 年)入会。南勢創価圏副圏長。

【紙上セミナー「生活に生きる仏教」】聖教新聞 2017.4.1






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Last updated  April 28, 2017 04:44:19 AM コメントを書く
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