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様々な想いを抱え、ボタンをかけ違えたり、すれ違いながらも同じ大学に通う仲間たち。一人の孤独に耐えきれなくなった青年は、罪の意識に苛まれる共犯者と殺人ゲームを始める。連続殺人事件と絡まりながら、一つの歪で悲しい恋に結末が訪れる…。そして、壮絶な過去をはらんだ事件の真相が明かされる。辻村作品に超優秀な人、まっとうな感覚を持つ人、ちょっと悪いように見える人、片親や両親がいない人、いじめや虐待にあった人、優しい人、女同士の歪な、ある意味依存しあった関係やコンプレックスが強すぎて(プライドが高くて嫉妬のあまり)食い違ったまま泥沼にはまったままの関係、…という人物設定が多いのは、伝えたいメッセージがそこに強くあるということか。作者が教育学部卒業しているというのも、作品に多くの影響を与えているのだろう。~ネタバレ~狐塚孝太~D大学工学部。卒業後院へ。母・日向子、義父がおり、月子(実は妹)を支える。 想い人は白根真紀。罪を犯した浅葱に代わり、留学することに。狐塚月子~D大学教育学部。秋山ゼミ。幼稚園教諭免許取得を目指す。 想い人の浅葱の犯行を知っても尚、彼をこちらに引き戻そうとする。 浅葱に傷つけられながらも彼のことを想い、 彼の為、大学入学以降の記憶をなくす。木村浅葱~D大学工学部→院へ。 二年前、自分を抜いて交換留学生の権利を得ながら正体不明の「i」を捜す。 「i」として論文を書いたのはC大の上原愛子。 浅葱に好意を持ち、「藍」のふりをする。だが、正体を告白後、殺される。 その時に眠っていた主人格の浅葱が「i」として目覚める。 「i」に幼い頃、自分を守ってくれた双子の兄・藍だと告白され、 彼の求めるまま殺人ゲームに参加。 森本夏美、萩野清花、片岡紫乃を殺し、真相を知った月子をも、 想っても孝太の彼女だと勘違いして自分のものにはならないという孤独もあり 手をかけてしまう。 実は過去に母、双子の兄をも殺してしまった後、人格交代していた。 様々な虐待、いじめ、壮絶な過去を持っている。 再び起こった交換留学生の権利を得るが、犯行発覚。 罪を犯した「i」も「θ」も浅葱。月子を傷つけ、自分が「i」でもあったと気付き 皆の知っていた浅葱は消える。 自分が殺した兄と同じ左目を潰し、倒れたところを孝太と恭司に助けられる。 逮捕後脱走。恭司を名乗り、月子に最後のあいさつをしに現れる。石澤恭司~右瞼の上と舌にピアス。D大工学部卒業後、就職するも短期でやめ、フリーターに。 孝太の同居人。困りごとなどの解決のために暴力をふるうことあり。 飛行機事故で死んだ両親と弟・誠司がいた。 孤児となり、父の知人に引き取られて育つ。 何にも執着できないままだと取り返しのつかないことになると“健全”な孝太を ストッパーにし、月子のことも大切にするように。 浅葱を殴りつつも、月子に最後に会わせる優しさもある。 そんな恭司の考えに浅葱も影響を受ける。萩野清花~D大学工学部陣内研究室の先輩。浅葱に殺される。 孝太をずっと想うが、孝太には想い人がいると秘めたままだった。 月子とプレゼントしあう写真はおそらく「凍り~」の芦沢光の写真だろう。秋山一樹~D大学教育学部教授。専門は児童心理学。妻あり。 身内(自分の生徒など)に甘い。 浅葱をかばう瀕死の月子に能力を使うも(他人のために命をかけた月子に)敗北。片岡紫乃~華やかな女子大生。月子の親友。 月子へのコンプレックスからか、月子のことを認めず、ある意味彼女を縛る。 浅葱に殺される。白根真紀~D大学教育学部。秋山ゼミ。 付き合った相手に利用され、鼓膜を破られる。 それを知った秋山は声(能力)を使い、その元彼に出来ない条件を提示し、 姿を消させる。坂本警視~失踪した赤川翼の事件担当。秋山の元教え子。(文学部卒)D大付属幼稚園の佐野先生は、(わざわざ名前が出てきたが)どこか他の作品に出てたかな???
September 22, 2010
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・蒼空時雨ある夜、舞原零央はアパートの前で倒れていた女、譲原紗矢を助ける。帰る場所がないと彼女は居候を始める。猜疑心に満ちた零央だったが、次第に心を解いていった。やがて零央が紗矢に惹かれ始めた頃、彼女は黙していた秘密を語り始める。その内容に驚く零央だったが、しかし、彼にも重大な秘密があって…表紙でついつい借りてしまう。インディゴの夜シリーズも同じイラストレーターだな。ワカマツカオリだったかな?・永遠虹路何を考えているかわからない舞原七虹をめぐる物語。悪魔みたいに綺麗で、だれもが羨むような才能に恵まれ、ボーカルを担当していたバンドがデビュー目前であったのに突然歌うことをやめた彼女が求めていたものとは―。・吐息雪色ずっと二人で生きてきた、引きこもりのダメな妹・真奈を守り、いとしく思う結城佳帆はある日舞原詩季ゆかりの図書館で見かけた舞原葵依(図書館長)に恋をする。ぶっきらぼうな葵依にめげずにぶつかっていく佳帆。だが、葵依には四年前、山で失踪した最愛の妻・雪蛍がいた。雪蛍への思いごと葵依の幸せを願う佳帆に心動かされた葵依は、現実と向き合い、妻の死と向き合うことに。叶わなくても想うこと、幸せを願うことはできる。そんな佳帆にも抱えきれない悲しい思いがあって…それぞれの思いから佳帆の恋を応援する図書館員楠木風夏(蒼空時雨にも登場してたはず。蒼空時雨はずいぶん前に読んだのでうろ覚え)逢坂星乃叶~舞原本家次期跡取りの姪っ子。七虹も。 備考:本家の本妻の子・雪蛍。兄だが不義の子・吐季。~ネタバレ~毎回ちょっとしたどんでん返し(?)があるので、真奈がすでに亡くなっていることには途中で気付ける。真奈が外へ興味を持つようにと想定した架空の佳帆の思い人像にぴったりの容姿を持つ葵依を見つけ、もし彼に振り向いてもらえたら妹についた嘘が真実となり、妹の優しい思いがもう一度息吹くのではないか、と思ったのが葵依を好きになるきっかけ。・初恋彗星幼馴染で、兄妹のように育った逢坂柚希と美蔵紗雪。ある日、転校生の舞原星乃叶が異様な行動を取るのを止める。そのことがきっかけで、彼女は紗雪の家で居候を始める。柚希のことが好きだという星乃叶と付き合うことに。彼女に積極的にアピールする嶌本琉生も交じることが多くなる。そして、四人で次の彗星を一緒に見ようと約束を交わす。星乃叶は引っ越していき、彼女との長い遠距離恋愛が始まる。だが―~ネタバレ~設定としては一番無理がある気が。相手を密やかに想い、相手の幸せを願う紗雪、星乃叶から、紗雪へと想いをうつし、彼女の計画に協力する琉生。星乃叶を想い、疑うことを知らずに過ごす柚希。植物状態になった星乃叶は植物人間状態になったのちに目覚めるが、子供のような状態に。それを隠し続けた紗雪、真実を知ったときの柚希の行動は早い。星乃叶は吐息雪色に出ていたが、そんなことがあったとは。読む順番、逆だったな…。ひたすらひそかに思い続ける者の想いが叶うシリーズという気がする。紗矢、七虹、紗雪…あ、でも、佳帆はちょっと違う、か。でも、相手の全てを受け止めようとする姿勢は同じだとおもう。
July 20, 2011
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LETTUCE FRY今回もシリーズ読者には嬉しい、ご褒美のような番外編あり。これだから森作品短編集は侮れない!読了後、思いだしニヤつきが止まりませんでした(笑)ラジオの似合う夜(A radiogenic night)・辞表を出したが認められず、長期海外出張の話が回ってきた。出向いた国はまだ色々なものが整っていない国。歓迎されているようだが監視されているようでもある。そこで再会した、かつて日本に研修に来ていた女性 X・J。彼女から最近この国で起こった美術館で起こった盗難事件、強盗が残したという金庫の指紋、炭水機関車から姿を消した強盗の話を聞く。彼の滞在中起こったのは美術館の壁に穴が開く事件。何のために?―とある人物の話。彼女らからの国際電話あり。彼の心情、彼女達への思い(スタンス)が知れる貴重な一編。さりげなく、"彼"ともすれ違っていることも判明するし。謎で分かったのは炭水機関車の事件くらいだった。X・Jって誰だろう?分からなかった。檻とプリズム(A prism in the cage)・檻には入っていると感じている僕。自我と外界と上手く接触できない僕がいつも一緒にいた三歳年上の彼。小さな女の子が殺される事件が相次ぐ中、彼に興味を示し、僕に近づいてきた彼女は彼が犯人だと疑っているようだった…証明可能な煙突掃除人(Provable chimney sweeper)・お化け煙突から落ちて死んだ父。図らずも彼の後を継いで町一番の煙突掃除人になった僕にお化け煙突の掃除依頼が来た。他の煙突よりも格段に高く、大きい煙突。父はそこで地獄の深さを見、笑い声を聞いたといった。それを僕も知ることが出来るだろうか?皇帝の夢(The imperial dream)・夢で見た地を訪ねた僕。あれは夢の中の僕が生まれる前の胎児の夢?彼はこの地の皇帝だった?―生まれれば落ち着くことが出来るし、死ぬことも出来る。(生まれなければ何も始まらない)という言葉が響くショート・ショート。私を失望させて(Drive me to despair)・「面白い話」をするといってミィが始めたのはお兄さん、お姉さんが桃を拾った桃太郎の話?―御伽噺は現代に置き換えない方が良いかも?という教訓…な、わけはない。麗しき黒髪に種を(Seeds for her lovely tresses)・街を行く女性の髪が風に靡くのをみるたびに思い出すのは子供会の引率に来た女性に「くっつき虫」(植物)を子供たち皆でつけて泣かせてしまったこと。髪をゴーカートに巻き込まれて亡くなった女性と彼女がだぶる―コシジ君のこと(My most unforgettable figure)・小さくて、失敗が多くて、眼鏡をかけていて、虐められていたコシジ君。中学に上がってからは接点もなかったのに、彼は僕の夢の中の住人だ。砂の街(The sandy town)・いつの間にか砂だらけになっていた故郷。―映像で観てみたい一作。刀之津診療所の怪(Mysteries of katanotsu clinic)・山吹早月と海月及介の故郷を彼らと共に訪れた加部谷恵美は山吹の実家の旅館へ。西之園萌絵は同じ島にある伯母の佐々木睦子の別荘に。海月と萌絵、初めての出会い編。でも、あっさり。島にはいくつかの謎があった。一、診療所を覗いた後に病気になり、その後も体調を崩すようになった男の子の(病気の)謎。二、診療所内の着物姿の女の幽霊。三、診療所の前の森に立っていた白い女。四、お爺さんを脅した振袖の女。五、診療所へ定期的にやってくる長身の男。六、その男ががけから投げた白い刀。どれも謎の中心には診療所があるらしい。診療所を訪れた一行は「刀つのPQR」という落書きも発見。この意味は?推理をめぐらすも八方塞。恵美と萌絵は診療所の医師に直接話を聞き、あらかたの謎は解けたが、二、四、落書きの謎は残った。でも、電話で話した犀川はあっさり謎を解き、萌絵は知らないから分からない、佐々木睦子は分かると謎の言葉を残すのだった。真相は?―ある人との嬉しい再会あり。そこがメインでもあるから、山吹と海月は早々に退場。単独の短編としても楽しめるが、シリーズと今までの短編を読んであると色々な所にニヤリと出来て面白さ倍増である。本当にこれがあるから短編集だからといって見逃せない!(単独短編も面白いので、シリーズ番外編がなくても結局は読むのだけれど)~以下、大いにネタバレを含む妄想と感想~(シリーズと他の短編集にも及んでいるので、読んでない方はご注意ください)林さんの断らない(断れない)態度を読んで思った。今回は紅子と離婚して5年後くらいの設定(多分)だから、X・Jとの間の、ではないだろうが、海月君って林さんの子供だったりして?と。積極的な女性に好かれるところがあるし、ありえるかなーと。きっと妄想だけど。彼が紅子の元で紅茶を飲んで落ち着く風景は良い。診療所の医師となった練無、彼のもとを訪れるのは紫子さん!一緒にいる(彼が身内と入っているので結婚したのだろう)のと、紫子さんが今でも男の人に間違えられているのがなんだか嬉しい。でも、練無が今でも女装(診療所内での振袖女性)してるって…睦子伯母と年同じ位だろうに…睦子と練無、紫子の出会いはどの短編集だったか…「ぶるぶる人形の夜」だったかな?へっ君との再会編もあったらいいのに!
March 5, 2006
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「死んでるみたいに生きたくない」蝉と岩西のなれそめ編。全6巻。waltzは小説版がない(はず)ので、漫画版で補完。漫画版「魔王」は読んでないのだが、小説版とどのくらい違うのか気になってくる。蝉と岩西の関係ってもっとドライだと思っていたが、印象が違うのもまた楽しかった。グラスホッパーやマリアビートルも漫画化されるのだろうか?名も呼ばれず、家でも学校でもどこでも一人で居場所がなく、力任せに生きていた彼が岩西と出会い、人殺しからプロの殺し屋”蝉”になるまで。帽子卿、首折り男、チクタク、フロイライン(令嬢)、劇団、スズメバチ・・・小説でその後を知っている人々がいたり、彼らのその後の運命を思い起こしたり…これ読んでからグラスホッパー読んだら、違う感じ方しそうだな。----------------------------ジャック・クリスピン曰く・・・気に食わなければ依頼者をも殺し、仲介業者からも忌み嫌われていたが、岩西と出会い、反発しながらも彼からの依頼をこなすことになった蝉。ターゲットは首折り男だったが、邪魔が入り、彼らに危機が次々迫る。首折り男(大藪)にそっくりないじめられっこの高校生・苺原は巻き込まれ、うろたえるばかりだったが、人を殺す反動か誰かの役に立ちたい病の大藪に憧れ、勇気をだし、彼に協力。連続殺人鬼(女性の首を斬り、帽子をかぶせる)帽子卿とチクタク(時間通りに任務を遂行する大陸系集団。帽子卿が不要とする死体の臓器売買を手掛ける)が手を組み、首折り男を狙う。ターゲットがかぶったチクタクと岩西・蝉の戦い、チクタク駆逐を狙うフロイラインが絡んで来たりする。岩西(・蝉)―フロイライン(資金提供)―スズメバチ(まだ少女。岩西が依頼)vs チクタクチクタクに手を引かせたのち、帽子卿vs首折り男(協力・苺原)vs蝉。岩西への依頼者は帽子卿に影響を与えた男。帽子卿、依頼者が倒れた後の結末、首折り男と蝉は引き分け。ラストシーンが魔王につながっているのかな?数年後、21歳の蝉が安藤に「刺しにきた」と宣言するところでラスト。情報屋の桃が美しかったり(最後には巨体になっているが)。大藪の頼みで苺原を最初に保護する老夫婦はあの夫婦だったりしないかな?とあれこれつながらないか考えてみたりするのも楽しい。
June 21, 2012
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CERISIER CENTER 1990 (スリジエ=桜)バチスタシリーズは終了したというのは、やはり宝島社刊行分ということかな。こちらは講談社刊。ブレイズメス1990の続編、源流はブラックペアン1988世良のその後は→極北ラプソディーにみることができ、高階病院長にまつわる因縁はここからというのが分かると、バチスタシリーズ最終巻→ケルベロスの肖像の補足にもなるかな。過去があって今があり、これからがあるという感じの過去編かな。極北~を読んでいるので結末はこのあたりだろうとわかりながらの答え合わせ的一冊。まぁ、過去でつじつまを合わせまくっていると言えなくもないが・・・。招かれざる異端児であり、天才外科医・天馬雪彦が目指す革命は実現するのか・・・東城大学医学部総合外科学教室、通称佐伯外科4年目の若手外科医である世良は、天城の担当するスリジエセンター創設業務の手伝い用員としてへとレンタルされていたが、突如終了、高階講師の研究室に戻ることに。だが、所属は高階の研究室に戻るが、通常業務は従来通り天城の手伝いに。さらに4年目ではありえない佐伯外科の医局長も任されてしまうことに。世良は天城と命より金を優先させる天城を認めず、スリジエセンター創設阻止を宣言する高階の間で揺らぎ、佐伯の医療改革発表によって病院内の勢力図も揺らぎ、それに翻弄されるように世良と花房の関係も揺らいでゆく。ジェネラルルージュの伝説も垣間見れる。1990年はバブルがはじけ、国内外ともに激動の時代。1991年は政界に絶大な影響力を誇った日本医師会のドン・野村参蔵が亡くなり、厚生省官僚が医療費亡国論を発表。登場人物メモは→コチラ
January 29, 2013
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ようやく第1弾。(2~5は既読)とはいえ、アニメをみてたので内容は知っているけれど。あらためてアニメは原作にほぼ忠実につくられていたのだなと感じてみたり。映像化される前に原作を読んでいたら、また違った感想を抱いたかもしれないけれど。世界を旅する姉・供恵に存続を命じられて神山高校古典部に入部した折木奉太郎。省エネ主義、やらなくてもいいことなら、やらない。やらなければいけないことは手短に。をモットーとする奉太郎は、部に入ったと言っても、籍を置いて存続させるだけ、誰もいない部室で、たった一人の部員として高校生活を謳歌しようと思っていた。が、鍵のかかった部室を開けるとそこには古典部に入部したという千反田えるがいた。一身上の都合で入部したという彼女は、自分が入った時には空いていた部室(地学講義室)が、奉太郎が入るときには鍵がかかっていたという事態が気になり、奉太郎と様子を見に来た友人で似非粋人・福部里志に解明を迫るのだった・・・。*備考里志命名の桁上がりの四名家:荒楠神社の十文字家、書肆百日紅家、豪農千反田家、山持ちの万人橋家。それに対抗できるとされるのは病院長入須家、教育界の重鎮遠垣内家。----------------------------部室に鍵がかかった謎は、用務員さんがマスターキーでまとめて開けておそらく点検をし、まとめて鍵をかけた。その合間に千反田が部室に入っていた。耳の良い千反田がロック音に気づかなかったのは、外に意識がそれていたから。奉太郎の謎解きに感心した千反田。経緯を楽しんだ里志も他と掛け持ちで古典部入部。この時から千反田の好奇心にあらがえず(逸らす方が面倒になることを悟り)、謎解きをすることになる奉太郎の図式ができる。10月の文化祭に文集を出すと言い出す千反田。*ちなみに神高文化祭では伝統的に模擬店禁止。5日間行われ、文化部活躍。過去の内容を知るために(2年間古典部には部員がいなかったため、それを知る先輩居らず)バックナンバーを探すことに。図書室で当番をしており、奉太郎と小学校以来9年間暮らすも一緒だった腐れ縁で、里志に思いを寄せる伊原摩耶花に聞くもわからず、司書の糸魚川養子先生を待つことに。神山高校文化祭の俗称はカンヤ祭というらしい。待つ間に、金曜日の昼休みに貸し出され、放課後に返却される「神高五十年の歩み」の謎を解くことに。鼻の良い千反田の証言から、美術の授業でモデルが持っている本だったことを推理する奉太郎であった。*本の1972年のページで、当時1年生の大出尚人が事故死している記事があるが、 古典部顧問の名も大出。いつかこれに関わる何かがあるだろうか?日曜日、千反田に呼び出された奉太郎は、彼女の7年前から行方不明で失踪宣告間近の伯父・関谷純が古典部に入っており(33年前)、彼女が幼稚園児の頃に伯父に聞いた古典部にまつわる話を聞いて泣いてしまった理由を思い出させてほしいと頼まれる。*成績はパーツではなくシステムを知りたいという好奇心旺盛な千反田はトップクラス、 漫研部員でありながら里志を追っかけて古典部にも籍を置いた摩耶花は、人にも自分にも厳しく、 ミスが不安で乗り越えようとする完璧主義にも近い努力型で成績上位。 自分が関心あることだけに知識が豊富な汎用馬鹿で、 興味を示さぬ(積極的無関心により)学業成績は良くない里志、 350人中175位というジョークのような平均にいるのが奉太郎。姉の手紙から古典部の文集は元部室の薬品金庫の中にあると知った千反田、摩耶花、奉太郎。元部室である生物講義室は現在壁新聞部の部室となっていた。部室にいた3年の遠垣内の怪しいそぶりから、彼の隠したいことに気付き、一計を案じる奉太郎。教育界の重鎮遠垣内家の一員であるからこそ隠したかったのは喫煙していたこと。彼をちょっと脅迫することになってしまったが、文集は無事手元に。文集「氷菓」2号には郡山養子なる人物が関谷純についてふれていたが、肝心の創刊号が見当たらない。静かな闘士、やさしい英雄で、文集を「氷菓」と命名した関谷純が英雄から伝説になったが、あれは決して英雄譚ではなかったとある。事態が起きたのはその前の年だということから33年前のことを調べることに。千反田は伯父のことを里志と摩耶花にも話し、協力を仰ぐ。そして、それは今年の文集のネタにすることに。夏休みに集まり33年前のことを調べ発表、推理する検討会。皆の発表、推理を経て、奉太郎は33年前、学力重視を打ち出した校長に起こった生徒は非暴力不服従の抗議活動により文化祭縮小を回避。だが、その代償として文化祭後に運動の中心人物だった関谷純は退学になったと推理。積極的に推理した奉太郎に何のためだったかと問う里志。省エネ、灰色(の学校生活)と言われた奉太郎は、無駄が多くても楽しそうに見える皆を見て、(灰色にも飽き)隣の芝生は青く見えたから推理でもして皆のやり方に一枚かみたかったのかもと答える。一件落着に見えた推理だが、供恵からの電話で関谷純のことは悲劇で、俗称・カンヤ祭は禁句だと聞いた奉太郎は欠けているピースがあると気付く。最後の推理の答え合わせは司書の糸魚川(旧姓・郡山)養子がしてくれることに。関谷純は望んで全生徒の盾になったわけではなく、実際の運営は別の人で、貧乏くじを引かされて部活連合のリーダーに。授業ボイコットの間にボヤ騒ぎが起き、結果、そのことの(見せしめとして)責任を取らされて文化祭後に退学になった。カンヤ祭のカンヤは関谷という字をあてていた。英雄を称えてのことだったのだろうが、彼が望んで英雄になったわけではなく、欺瞞だとわかっている人間はカンヤ祭とは呼ばないのだ。「氷菓」と関谷純が命名したのは、氷菓=アイスクリーム=I scream 千反田は伯父に「氷菓」の意味を問い、弱いと悲鳴も上げられなくなる日が来て、生きたまま死ぬと言われ、泣いたことを思い出す。文化祭目前、文章を書くのが苦手らしいと判明した里志が摩耶花にせかされている。2人はそれぞれが思うところの古典について書くらしい。奉太郎は千反田協力の下、33年前の事件をいかに追ったかをまとめた。奉太郎は姉に手紙を書く、どういうつもりで古典部にすすめたのか・・・すべては偶然だろうが・・・アドバイスの礼も。この小説は6割創作、残りは史実に基づいているそうな。いかにもありそうななりゆきを記した部分が創作、どうにもご都合主義っぽい部分が史実だと。興味深い。
January 23, 2013
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シリーズ完結編。坂東武者の家に生まれた草十郎は、平治の乱に源氏方として加わり、源氏の御曹司・義平を将として慕い、戦う。だが、源氏軍は敗走し、京から落ちのびることに。草十郎は義平の弟・幼い源頼朝を助け、一行から脱落。そして、頼朝を逃がし、賊に捕まるが、そこの頭・正蔵に腕を買われる。草十郎は一人野山で笛を吹き、その周囲に動物が集まることも多かったが、ある日、喋るカラスが「鳥の王(鳥彦王)」を名乗り、彼に同行することに。そして、再び京に足を踏み入れた時、義平は獄門に首をさらされていた。絶望する草十郎は、六条河原で死者の魂鎮めの舞を舞う少女・糸世の不思議な力に目を奪われる。引き寄せられるように笛を吹く草十郎。舞と笛が出合い、二人は惹かれあう。しかし、二人の特異な力は死者の魂を送り、生者の運命をも変えうる強大な力を持っていた。自由に、静かに暮らしたいと願うが、自分の寿命を延ばすために利用しようとする上皇後白河への舞で変化する未来に気を取られた一瞬のうちに糸世は姿を消す。別の世界で待っている糸世を取り戻すため、草十郎は糸世が戻ればまた未来が変わると怖れる上皇の追手をかわしながら鳥彦王と共に旅をする。人間の心を学んで王の資格を完全のものとした鳥彦王と共に鳥の王の称号を得た草十郎は、鳥たちの協力を得て、熊野の聖地で笛を吹き、異界で舞う糸世を取り戻す。だが、引き換えに鳥彦王の声を聞き分ける精妙さを失う。鳥彦王は去り、草十郎は糸世は共に生きていく。空色勾玉の鳥彦の子孫が登場。糸世が飛ばされた異界は現代らしく、二人と日満(糸世につき従う者)が新しく生きていくのは熊野らしい。・・・。もしかして、糸世と草十郎の子孫は「RDG」の泉水子に、日満の子孫、もしくは日満が元となった山伏が雪政、深行の立場につながるのか・・・?舞がポイントとなっているのが糸世=泉水子(姫巫女)か?とも思わせるが、それは違う…だろうと思う。異界でも糸世は糸世の記憶があるし。そう考えると、姫巫女が糸世と同じように異界に飛ばされる時が来るのは何を暗示しているのか、また、和宮(「RDG」)がカラスの姿を取ることは、鳥彦王とかかわりがあるのか。そうならば、深行と草十郎にも何かつながりが出てきたりするのか・・・昔のシリーズだが、現行シリーズのベースとなるべき世界のように思えて、色々考えてしまった。
May 15, 2011
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短編集。忍び寄る気配が不気味。~ネタバレメモ~・鈴虫昔死んだSの死体が見つかった。現場を見ていたのは鈴虫だけ―全ての罪をかぶる私だが、Sを本当に殺したのは、当時彼と付き合っていた私の妻だった・・・・(ケモノ)家で落ちこぼれの僕。ある日、刑務所作業製品の椅子にあるメッセージに気付き、そのメッセージを残したSの事件を調べると・・・不自由な身体になった父、祖母のため、義母と子をなしたSはそれを知られることの内容に家族を殺し、刑務所内で自殺していた。妹と処理された実の子は脳に障害があり、それをSは罪だと感じ、自分の中のケモノを解き放ち、犯行に及んでしまった。事件の真相に辿り着いた僕だが、その中で気付いた"やり直すべき、家族と話し合うべき"という結論それは、ケモノを解き放ち、家族を殺してしまった僕には遅すぎる結論だった。・よいぎつね20年前の祭りの日、狐の面を持った私はSの提案に逆らえず、罪を犯した。そして、それと同じ光景が目前に―あの日殺したのは誰だったか、埋めたのは誰だったか、埋められている私をを見るあの顔は―・箱詰めの文字妻子を事故で亡くしたSの書いた小説を盗作し、小説家になった僕。Sのメッセージが入った箱を僕の家に盗みに入った青年が返しに来る。実は、青年はSの弟で、Sの部屋に僕の小説と同じ内容の原稿用紙があったことから不審に思ってきたのだった。…と思わせておいて、実は青年はSの家に盗みに入り、そこで自殺死体と原稿用紙を見つけ、Sの弟になりきり僕の前に現れ、僕に言いくるめられたまま、口封じに殺されたのだった。結局、青年は何がしたかったのか、面白さを求めて―?細かいどんでん返しの連続。僕は連続通り魔殺人事件の犯人でもあった。・冬の鬼春琴抄のような話。ひどい火傷を追い、身寄りを亡くした私に献身的に尽くしてくれるS。彼を思いながらも不安の尽きない私の願いをSは叶えてくれた。一生私の顔を見ないでという私の願いを―・悪意の顔夫も赤ん坊も、うるさい鴉も、片足もキャンバスに入ってしまったという女性。僕の不安もキャンバスは吸い取ってくれるという。女性の思い込みで、ただどうにかはしてくれると感じた僕は、僕に嫌がらせするSを彼女に会わせる。だが、キャンバスにSの悪意は吸い取られ、女性はキャンバスの中へ。・・・女性の荒唐無稽な話は本当かと思わせながらも、お約束のどんでん返し(床下から死体が?)を匂わせるラスト。僕が転校しなければ、もっと恐ろしいラストが待っていたようにも思う。
August 9, 2009
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交渉人 真下正義に続き、踊る大捜査線からのスピンオフ企画第2弾。これは「交渉人~」が映画化されたあとにスペシャルドラマとして地上波で放映された事あるので(観るの)2回目。これは時系列としては「交渉人~」直前の事件。エンディングに使われるのは「交渉人~」の映像である。「自分の勘は外れた事がない」と言い切る、強面だが、気はやさしい警察官・木島が大活躍!家族はいなくて家にいるのは猫(タマ)だけで、友達もいない…!?SIT課長・木島丈一郎(寺島進)は交渉課準備室課長・真下(ユースケ・サンタマリア)を押しのけ、人質となった少年を無事助け出す。別の事件の重要参考人だといわれた少年は連行されそうになり、木島に助けを求める。訳も分からぬまま、少年を連れ出す木島だったが、その裏には(木島とは同期の)稲垣管理官(段田安則)が指揮をとる、会計課の警察官(台東署のフルタ)殺害事件が絡んでいた。木島行きつけの居酒屋の女将ミツコ(森口瑤子)と木島とのやり取りが良い。以前、人質となった美津子を助けるも、PTSDに彼女が苦しんだのは口下手で交渉に向かない自分のせいだと彼女を見守りながら責めていたと言う木島。そんな彼を慕う美津子。爆弾処理班の基本だと居酒屋にも裏口から入る、爆発物処理班班長(松重豊)を初めとする班員が酒盛りしながら盛り上がるのは"黒ひげ危機一髪"!「交渉人~」で勘に物を言わせて爆弾処理した班長だったが、二者択一となったゲームではあっさり負ける。やはり緊張感は本番にとってあるってことだろうか?(笑)新幹線は使わず、"夜汽車"を使い、追い詰められたら部下を人質に取ったりする。青森まで逃亡する木島たちがヒッチハイクするのはカエル急便。(「交渉人~」で犯人が使用していた車と色は違うが同業者。細かいところをつなげてくる。)木島に「オマエは裏の裏を読むと昔から言っていた」とアドバイス(!?)する元警察で今は青森の農家の住む先輩(梅宮辰夫)。「交渉人~」で木島は「(相手が)裏の裏なら、こっちは裏の裏の裏の裏を読む!」って言ってた気が…。初めはぎこちない少年と木島だったが、いつしか友情が芽生えるシーンはベタであればあるほど心和む。ラストに黒幕は言う「上からの指示だった」と。これはもっと先がありそうなのだけど、どうだろうか?陰で活躍した交渉課準備室は評価され、今後、増員が決定したようだ。
October 20, 2006
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SOUTHBOUND自称小説家で普段は家でぶらぶら、役人、警官を毛嫌いし、国民保険勧誘員は弁舌で追い返し、家庭訪問に来た若き担任・南先生には天皇論をふっかけ、修学旅行積立金が不明瞭に高いと学校に乗り込む。そんな困った父・上原一郎に頭を抱えつつ、喫茶店を営む母・さくら、父と仲が悪く、ほとんど帰らない姉・洋子、小学四年生の妹・桃子と暮らす二郎は小学六年生。親友の淳と中野ブロードウェーで遊び、印鑑屋の息子で妙に物知りで大人びた向井、医者の息子・リンゾウと女風呂を覗きに自転車を走らせてみたり、中学生の不良・カツと子分のような同級生・黒木にたかられ、反抗してみたり、そんな生活を送っている。昔、刑務所に入ったこともあり、父と駆け落ちした母の実家は四谷の呉服屋。初めて会う祖父母、叔父夫婦、従兄弟に喜びながらも生活・感覚の差を感じる二郎。そんな時、昔、活動家だった父を頼って居候になったアキラが反対派のリーダーを殺害。大家に更新を切られ、中野にいられなくなった一家は自立した洋子を除いて父の故郷、沖縄・西表島へ。と、言う第一部。第二部は沖縄では父の先祖が琉球政府などに抵抗した英雄だということもあって歓迎され、周りの暖かい支え、ユイマール(助け合い)精神に助けられ、何にもない廃屋を建て直してみな生き生きしていく。初めは帰りたいとぐずった桃子も5人しかいない小学校でも、友達が出来て喜び、変な外人・ベニーや、夜な夜ないろいろな差し入れを持って集まり、酒盛りを繰り広げる住民達に馴染んでいく。二郎自身、唯一の同級生で不登校児で東京からきたという帰国子女・七恵や困った父でも鷹揚に対応してくれる教師などに安心する。不倫相手と別れた洋子も来て益々充実した日々となっていく。だが、一家が住んでいた廃屋はリゾート開発の予定地となっていた。反対派と開発派の火種が飛び交う中、どちらにもくみしないが、御嶽を壊し、開発しようとする権力者が相手じゃ父が黙っているはずがない!マスコミ、公安、警察が出張る中、最後の戦いが始まる―両親が元活動家で今は一匹狼(どこにも属せず、自分の信念で間違っていると思うことには立ち向かう)でも、公安警察にマークされてたりとちょっと社会は設定はあるのだけれど、(権力に立ち向かっての)大立ち回りあり、微笑ましい笑いあり、ぐんぐん読み進めてしまう不思議な一冊。八重山諸島(石垣島や西表島など)と宮古島が仲が悪いと実際、沖縄旅行中に聞いた事があるが、その発端も知ることが出来た。沖縄の島々の中でも歴史の軋轢がある。本島も加わったらなお複雑。でも、すべてを飲み込んだおおらかさが沖縄の人々にはあると思う。そんなことを思い出させ、感じさせてくれもする。やらなければいけないことはあるけど、それが通るとは限らない。それでも、そういう姿勢を示すことが大事と身体を張る両親に心奪われ、結束力を固める家族。東京ではバラバラになりかけていた家族が一つに。現代の色濃いファンタジーというには無理があるかもしれないが、何かそんな夢物語的な要素もある。突然、引っ越すことになった時に二郎が思う"子供には、過去より未来の方が遥かに大きい。センチになる暇はない。"という言葉が残る。
March 30, 2006
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唯一の神の御名短編…中編集なのかな?・朝は紅茶の香り朝が苦手だったが、龍と透子の二人の仲に割り込むため、お茶を運ぶライラ(ライル)。・終わりなき夜に生まれつくとも龍の過去話。イエスの死後、砂漠をさまようリュウ(本当の名はない)。そこに現れたアダムの最初の妻と名乗る女・リリトは、彼をラハブ(ヘブライ神話の混沌の怪物)と呼び、イエスのための復讐をそそのかす。ティベリウス皇帝を殺害。自分の血を狙うリリトとの因縁はここから始まる。古代ローマ帝国が最も盛んだった時代、イエス死後から約100年の時を経て再びこの国を見たリュウ。そこにいたのは病みながらも偉大であったハドリアヌス皇帝だった。またもや現れたリリトを退ける。(皇帝に)自身の血をわけ与えようかと提案するも、病の快癒だけではとどまらず、不老不死になる可能性もあると聞いた皇帝は、その提案を断る。皇帝に仕える少年・トートもリュウの記憶に残る人物。・唯一の神の御名キリストの血をかすめ取った悪霊を追い、倭の国にたどり着いたリュウ。推古帝の治世のもと、リュウは摂政である厩戸皇子(聖徳太子)と出会い、主の面影を持つ皇子に惹かれ、羅?と名付けられ、彼につき従うようになる。帝の後継を巡り朝廷内の政争が激化。仏教推進派の皇子と対立する蘇我氏の血を引く、皇子の息子でもある山背大兄は異教・?教に取り憑かれてしまう。邪神に転んだことがあり、自身の肉体を捨て、邪神降臨を阻止するためにリュウと手を組む鴉登場。皇子を守り、またもや血の提供を拒まれるリュウ。その姿勢を潔いと思いつつも、彼の逝去を悼み倭を離れる。最後の、のちのイスラム教の預言者ムハマンドの妻にあったこともある、というくだりは必要なのか・な?まぁ、すべての宗教は創始者の思いとはことごとく別の形となってしまっているということを言いたいのだということはわかるけれど。・夜のやさしい獣200年前にリュウに血と名を与えられ、縛られてそばにいるというライルは、透子にリュウの血をもらい、自分たちとずっと一緒にいてほしいと告げる。透子は人間としてそばにいようと思う。
January 10, 2012
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妄想炸裂京大小説!これは2作目かな?さりげなく他の作品とリンクする人物が暗躍するも、これも妄想とファンタジー(!?)いっぱいなので、何がなにやら…なんでもあり?同じ展開を用いつつも、別の道を歩んだらどうなっていたかが描かれていながら、それぞれがリンクしていたりしている。第一話 四畳半恋ノ邪魔者映画サークル「みそぎ」に足を踏み入れ、人の恋路を邪魔しまくりつつ、三回生となった私。サークルも辞め(自主退会・放逐)、その後もサークルに君臨する城ケ崎先輩へ嫌がらせをしたり、神を名乗る小津の師匠(樋口)にであったり、謎の老占い師に占ってもらったりと不毛な日々。別の道(サークル)を選んでいたら輝かしい学生生活を送れたのでは?だが、占い師の言った「コロッセオ」をきっかけに運は開けた…か?とりあえず、蛾を嫌いな後輩・明石との恋路はうまくいったらしい。小津~同じサークルに所属した工学部電気電子工学科学生。フットワーク軽く、人の不幸が好き。 憎らしくも私の唯一の親友。他のサークルにも所属。彼女あり。相島先輩~サークルでは城ケ崎の右腕猫ラーメン~美味しいらしい 第二話 四畳半自虐的代理代理戦争「弟子求ム」のチラシにより、下宿部屋の上階に住む樋口の弟子となってしまった私も三回生。樋口師匠の無理難題に兄弟子・小津、妹(?)弟子・明石と応え、師匠の友人(?)で歯科医衛生士の羽貫と酒を飲み、顔を舐められそうになったり、樋口VS城ケ崎の自虐的代理代理戦争に巻き込まれたりと不毛な日々。第三話 四畳半の甘い生活ソフトボールサークル「ほんわか」に所属するも、宗教がかっていたことが分かり退会した私も三回生。映画サークルの城ケ崎先輩のラブドール・香織を盗んだ小津から預かるはめになったり、本に挟まっていた住所の女性と文通したり、小津や上階の住人・樋口と知り合いの歯科衛生士・羽貫と酒を呑みに行ったり、引きこもりつつも巻き込まれる不毛な日々。第四話 八十日間四畳半一周秘密機関の下部組織幹部・相島先輩に声をかけられ、入会した私も三回生となる。有無を言わさずパートナーになった小津の暗躍っぷりについていけず、樋口からは図書を回収できず、城ケ崎の失脚を狙う相島の命令にそむいたことから避難する羽目になったりする不毛な日々。ある日、自室の四畳半のドアを開くとそこに続いていたのは同じ部屋。どこまでも続く部屋を彷徨う中で、所々今選んだ現実ではない自分の生活も垣間見、どんな選択をしても変わり映えしないことに気付いた私。自分自身を受け入れた所で部屋から脱出。再会した明石と恋を愛でつつ、日々を歩む。~優秀な学生を軟禁状態にしてレポートを大量代筆させる 図書館の返却期限切れの図書を強制回収する キャンパス内の自転車を整理することに奉仕するなどがある 情報機関でもある、らしい。違う設定で同じ展開をみせつつ、最終話では同じで違うオチを持ってくるとはなかなか。きつねのはなし 太陽の塔 夜は短し歩けよ乙女 [新釈]走れメロス
June 29, 2007
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「鴨川ホルモー」の続編というか番外編短編集。ホルモーに関わる人々の様々な悩み、付き合い、日常生活が描かれる。ホルモーを知らぬ人にホルモーのことを伝えるのは至難の業。知られず、難を逃れて生きるのはなんと可笑しく見えることか。改めて「鴨川ホルモー」も読みたくなった。----------------------------------・鴨川(小)ホルモー京都産業大学玄武組、二人静と呼ばれた定子と彰子の話。理由は様々だが、彼が出来ない二人は"北山議定書"を交わす。だが、誕生日の日に定子がバイト先の一条にデートに誘われたことから二人の仲に変化が。彰子は定子に(小)ホルモーを挑み、二人は戦う。戦った後、和解するも、うっかり鬼を全滅させてしまったため、「ホルモー」の雄叫びをすることに。彰子が好きなのは第四百九十九代京都産業大学玄武組会長・清森平。「鴨川~」の"京都府立植物園ホルモー"で連勝していた京大青竜会に玄武組が敗北を帰した理由がここで明らかに!・ローマ風の休日凡ちゃんこと楠木ふみがイタリアレストランでバイト。慣れぬ接客業で周囲にも馴染まぬが、緊急時に華麗な指示を出し信頼を勝ち取る。そんな彼女に心惹かれる高校生が語り手。"第17条"発動のペナルティ時期に当り、ふみが夜を怖がる場面あり。・もっちゃん随分昔。ホルモーに関わる安倍が、友人のもっちゃんのラブレター作戦に付き合う話。もっちゃん=「レモン」の梶井基次郎。彼の時計を貰った安倍が、八瀬ホルモーの時の会長・立命館の和泉にその時計を貸す。それから、その時計は四条烏丸で戌の刻を宣言する時に使われることに。その頃の"告げ人"は室町通六角にある和菓子屋沙狗利主人。もっちゃんの時計は菅原に続き、幹事となってしまった安倍(「鴨川~」の主人公)の手に。・同志社大学黄龍陣憧れの桂先生に教えてもらうため、浪人してまで同志社大学に入学した巴が主人公。何だか分からないが、「ホルモー」なるものの復活を目指し奔走する巴。芦屋満の元彼女でもある。(芦屋の嫌な男っぷりがまざまざと描かれてもいる)知らずに二人静の(小)ホルモーとすれ違ってもいる。(芦屋の現彼女が安倍の家に行くきっかけの話もここで明らかに)ここではホルモー復活は果たせてないが、「もっちゃん」のラストで安倍が「(宴会参加者が)10人多いらしい」と言っている。巴、シンガポールの留学生ウー君たちが復活に成功したということだろう・・・か。・丸の内サミット東京で働く二人は合コンで再会する―同僚の酒ちんの誘いを受けた龍谷大学朱雀団第四百九十八代目会長・井伊直子と同じく同僚の忠やん(本多)に誘われた京都産業大学玄武組第四百九十八代目会長・榊原康は合コンの席で再会。会長としての責務、好敵手だった戦いの場ではない所であった二人は互いの印象を変える。そして、平将門の首塚からあふれ出るオニたちを鎮めていたのは酒ちん(青竜お茶の水)と忠やん(白虎一橋)だった。東京でも行なわれていた「ホルモー」!それぞれが大学時のサークルを「アウトドア」「イベント」みたいなものと称しているところにそれぞれの苦心が垣間見れる。・長持の恋立命館大学白虎隊第五百代会長・細川珠実が主人公。「ホルモー」の雄叫び後、なぜかバイト先の長持をかいして過去の人物なべ丸と文通するはめになった珠実。自動車教習所であった同じく「ホルモー」の雄叫び後、ちょんまげになった高村とも交流。その後、なべ丸が信長の家臣で、本能寺の変で死んだこと、その生まれ変わりが高村だったことが判明する。くすりと笑えて、ほのぼのした話ばかり。
January 13, 2008
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今年も見ました箱根駅伝!とはいえ、ずっとTVにかぶりつきは出来なかったので、BS日テレでやっているハイライトもみながら再び心躍らせ中。三浦しをんの描いた箱根駅伝小説「風が強く吹いている」を思い起こしつつ、ちょびっと増えた箱根駅伝の知識も動員して今年も楽しく観戦。でも、事実は小説より奇なり。小説も胸躍らせたが、それ以上のドラマが今年もありました!最終順位は以下のとおりだけれど、飛躍的に順位を上げた学校、ブレーキにより、号泣する選手、ライバル、記録と見所たくさんで手に汗握る。三年連続で区間新記録をたたき出し、自校に優勝をもたらした山登りのスペシャリストである順大・今井選手なんてアナウンサーに「現人神」「(箱根の・山の)神様」とまで称されていた。その表現は大げさなんだけど、山登りにもかかわらずあそこまで綺麗に走り、その上、4分もあったトップとの差を逆転し、さらにその後1分引き離すという離れ業を見せ付けられるとちょっと神様降臨発言も受け入れちゃったり(笑)今年で今井選手は卒業。来年は新たなスペシャリストが登場するのだろうか?往路順位1位 順天堂大学2位 東海大学3位 日本体育大学4位 早稲田大学5位 日本大学6位 中央学院大学7位 駒澤大学8位 専修大学9位 山梨学院大学10位 東洋大学11位 明治大学12位 城西大学13位 亜細亜大学14位 中央大学15位 大東文化大学16位 法政大学17位 神奈川大学18位 國學院大学19位 国士舘大学20位 関東学連選抜区間賞◆1区 東海大・佐藤悠基(2年)が1時間1分6秒の驚異的な区間新記録で入った。2位の東洋大との差は4分1秒。◆2区 区間賞は1時間7分46秒で早大・竹沢健介(2年)。◆3区 中大・上野裕一郎(3年)が最初からとばし、17位で受けた順位を一時は10人抜きの7位まで上げた。1時間2分50秒で区間賞もゲット。◆4区 区間賞は55分30秒で順大・佐藤秀和(2年)。◆5区 区間賞は1時間18分5秒で順大・今井正人(4年)。5位で襷を受け、箱根の山であっさり全員抜き(襷リレーした時点でトップ・東海大との差は4分9秒だった)、順大に往路優勝をもたらした。前年出した自分の記録を抜いた区間新をたたき出した。三年連続区間新を樹立。 復路は→コチラ
January 2, 2007
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東京バンドワゴンシリーズ第7弾。齢80になっても勘一は元気でほっとする。適当に見えて、いつでも我南人がいち早く真相にたどり着き、暗躍(!?)しているのもいつものこと。バンドワゴンシリーズ→1、2、3、4、5、6、…8----------------------------冬~雪やこんこあなたに逢えた・亜美の弟・修平と女優・折原美世(本名・三迫佳奈)結婚。・棚の一角に入っていた本をごっそり買っていった客は、高校時代に藍子にふられた三石。 病院の行き帰りに店をのぞいたが藍子のことを聞くのも気恥ずかしく、 また、長い入院生活に何か本を読むのもいいかとごっそり買っていった。 買った本棚の場所が高校時代の席順。・本を一冊ずつ売りに来る男は、勘一に足しげく会いに来ていたように見える池沢百合枝の 先輩格の女優・奈良勢津子の息子・前田茂治。 堀田家の〈呪いの目録〉の原稿を60年前に当時奈良の劇団のパトロンとなってくれた 草平(勘一の父)から預かっており、当時の話を持ち込んでも大丈夫な家か様子見していた。・勘一は我南人に家族の百合枝に対して他人行儀だと諭される。・我南人のミュージシャン仲間で故・淑子(勘一の妹)の隣人・龍哉の同居人の酒井光平と千田くるみが家に来る。最近、研人が龍哉のスタジオによく行くらしい。春~鳶がくるりと鷹産んだ・花陽高校合格。研人は中2に。我南人のことを馬鹿にされた研人は部活の先輩を殴って家出。 だが、その先輩の前で殴ったことは謝るが、義父のことを詰るのは許せないと亜美が 見事なドラムさばきを披露。亜美は高校時代にガールズバンドで鳴らし、 我南人の大ファンだったという経緯からも格の違いを見せつける。・M大学の通称〈山端文庫〉の書誌学の教授が勘一に恨みを持っているらしいと木島が忠告に来る。・カフェライブもするミュージシャンの中川が、認知した娘が大きくなり会いに来るが、 会社の社長をやっていると嘘をついてしまったため会えないと協力を仰いでくる。 嘘につきあう一同だが、中川は娘に真実を告白。夏~思い出は風に吹かれて・花陽と研人とマードックはイギリスへ。・数年音信不通だったすずみの友達・長尾美登里が訪れるも、蔵の本を盗む。 男で作った借金返済のために働く美登里がせっぱつまっての行動だった。 すずみは美登里に金を渡し、美登里は借用書を書く。・〈山端文庫〉の醍醐教授は以前、宝蔵のような堀田家の蔵に盗みに入って撃退されたことから勘一を恨んでいた。 だが、〈山端文庫〉にはサチの父親・五条辻の蔵書があるらしかった。 我南人は東京古書組合会長の大沼岩男に仲介を頼み、ライブ開催と引き換えに 五条辻家の蔵書から一冊だけ本を欲しいと交渉。・青は百合枝に、自分の母は堀田秋実ただ一人だが、娘・鈴花に百合枝をおばあちゃんと呼ばせていいかと確認。百合枝は快諾。・真奈美出産。名付け親となった勘一は、真幸と命名。秋~レディ・マドンナ・秋実と同じ施設で育ち、今では園長となっている智子が閉園の報告に来る。・愛人だった亡き母との思い出深い家に住み、母との関係から前にすすめない龍哉とくるみのことで光平が相談に来る。・淑子の遺言から、葉山の別荘は勘一が受け継ぐことに(名義は最初から勘一になっていた)。 龍哉の家と淑子の別荘を交換、龍哉の家は売却し、 智子の施設の改装費用と運営費用にしたいと提案。 提案を受けた龍哉とくるみは結婚。・研人と同じくかんなにもサチの姿が見えるようだ。
August 13, 2013
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「告!栗橋北中学校・三年A組卒業生の選ばれ死君たち」10年前、タイムカプセルを埋めたメンバーのもとに次々届く手紙。「郵便」と告げながらも、それが届くのは真夜中だったり、行動を監視しているような状況下だった。タイプカプセルに賛同しつつも、当日は入院中で(タイムカプセルを埋める立会いには)不参加だった石原綾香は現在駆け出しのカメラマンとなっており、独自に卒業生に会う企画を考えていた。取材対象をタイムカプセルを埋めたメンバーに限定し、それぞれに再会していく。メンバーは当時学級委員長だった湯浅孝介、副委員長の冨永ユミ、株のプロの鶴巻賢太郎、ボーイッシュな三輪美和、医者のどら息子・佐々倉文雄、転校生の石原綾香、不登校児の不破勇と、同じく不登校児の大河原修作、付き合いで担任の武田先生の9人。彼らの元に次々届く奇妙な手紙。「ホール」という言葉に過剰反応を見せるメンバー。タイムカプセルを埋める日前後に何かあったのか?取材中、本人に会えなかったのは、メンバーの一人でありながら、不登校児だったため、在学中から誰も姿を観たことのない不破勇、同じく不登校児だった大河原修作の二人。過去と現在が織り交ざり展開する物語。そして、迎えるタイプカプセル掘り出しの日―だいたい予想は付く展開なのだけど、防空壕探険とか、謎の一人とかひっそりと忍び寄る影のような恐怖は効果的。あとがきで作者が祖母から聞いたという先祖の墓を掘り起こした時に砂のように崩れ去った遺体の話のほうが現実にあった出来事らしいだけに一層緊張感が高まっていたような。~ネタバレメモ~手紙の犯人は大河原の両親。いじめられていると思い込み、不登校となった息子は10年前、「クラスメイトを謝りに来させる」という武田先生の言葉を信じ、引きこもりに。誰かが彼の下を訪ねてくれれば息子は外に出るだろうという過剰な愛情から、湯浅監禁まで発展。真相に気付いた綾香によって彼は助け出され、また、修作も外に出るように。綾香入院中、メンバー(孝介、ユミ、美和、佐々倉、鶴巻)により行なわれた卒業記念の夜の防空壕(ホール)探険。そこで彼らは6人目の声を聞き、慌てて外に出、入口をふさぐ。それ以降、誰かを閉じ込めたのではないかと言う恐怖にさいなまれていた。6人目は探険の話を聞き、追いかけてきた不破勇だった。彼女はその後、用務員さんに助けられており、その後、そのことをネタに小説を書いていた(編集担当は冨永ユミ)
April 29, 2007
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ruokala lokki(フィンランド語)映画を見る前に本が来た。「人生すべて修行」が口癖で、古武道の達人の父を持つサチエは38歳。サチエは12歳の時に事故で母を亡くし、その後一斉の家事を切り盛りするようになり、食物科の学校、料理教室を経て、「素朴でいいから、ちゃんとした食事を食べてもらえるような店」を持ちたいと思うようになる。開店資金を貯めるため、弁当開発部に10年以上勤め、父のフィンランド人の門弟・ティモさんの協力も得、自分の運の良さに賭けて当てた宝くじでフィンランド(ヘルシンキ)にひっそりと"かもめ食堂"を開く。フィンランドに行く前日に事の流れを知った父親は「人生すべて修行」と、行事のたびに作ってくれたおにぎりを持たせ、サチエを送り出す。開店当初、近隣の人々は「東洋人の女の子」が一人で切り盛りしている「こども食堂」と呼び、気になりつつも遠目からうかがうばかり。広告も宣伝も打たず、はじめは誰も立ち寄らない「かもめ食堂」のメニュウは”ソフトドリンク、フィンランドの軽食、煮物、焼き物などの日本食、夜はアルコールも出し、あとは味噌汁と、サチエの一押しであるおにぎり(おかか・鮭・昆布・梅干)”。最初のお客さんは日本のアニメーションに興味を持ち、市民講座で日本語を勉強し、「ガッチャマンの歌」の歌詞を全部知りたいと言うトンミ・ヒルトネンという青年(学生)だった。早くも常連となったトンミくん以後も、近隣の人々は遠目から眺めていたが、じんわりしみこむように人が訪れ始める。それでもおにぎりはなかなか馴染まなかった(中もんに躊躇された)が、かもめ食堂には常連さんもくるように。「ガッチャマンの歌」の全歌詞に頭を悩ませるサチエはアカデミア書店2階のカフェでミドリと出会う。ミドリは親の言うまま生きてきて、天下りの多い会社に就職した。独身のまま40過ぎまでのんびりした仕事をやってきて、両親を介護付き老人ホームに入れたころ、会社が解散。すでに家庭を持っている兄弟たちがミドリを不良債権扱いするのに腹を立て、「したいことがある」とつい発言。外国へ行ってやろうと思い立ち、目をつぶって指で差し当てたフィンランドへきたという。(兄弟らにはフィンランド語を勉強したいからと伝える)来てみたが、何をしていいか見当がつかず、本屋に入ったところでサチエと出会ったのだ。そんなミドリを(ガッチャマンの歌のお礼に)自分の家に誘うサチエ。初日こそ観光するミドリだったが、サチエの手伝いを申し出る。サチエは快くミドリを受け入れ、メニュウにイラストを入れては?という彼女のアドバイスにも耳を傾ける。居座って、コーヒーをサービスしてもらうことの多いトンミくんに複雑な思いを抱いたり、利益をあげるためにフィンランド人好みの具を入れたおにぎりを作るのに難色を示すサチエに思う所はあったのだが、彼女が大金を持っていることを知り(こだわりを通すだけのお金を持っている)、ミドリはサチエについていく決意をする。様子見だけだった近隣住民もぽつぽつやってくるようになり(注文するのはフィンランドの軽食が主だったが)、穏やかに時は過ぎていく。ある日、店内を睨みつけるフィンランド人のおばさんと、次の日には東洋人のおばさんが増えているのを見つける。50代の東洋人のおばさんは日本人のシンドウマサコでフィンランドに着いたはいいが荷物が届かないのだと困り果てていた。荷物が届かない不安な数日をかもめ食堂で過ごす。彼女は独身のまま親の介護をしていたが、両親が次々に亡くなり、弟が事業に失敗し、住処を追われ、住むところは別に確保してあり、大丈夫だったのだが、腹が立って気晴らしに介護中にニュースで見たフィンランドに行こうと決めたという。連日、店内を睨みつけていたフィンランド人のおばさんもある日、挑むように来店し、お酒を一気飲みしてぶっ倒れる。介抱したサチエらに彼女・リーサは夫が浮気して出て行ったこと、いつも心の中から笑っている「かもめ食堂」の人達が気になったこと、自分はお酒がほとんど飲めず、注文したコスケンコルヴァは夫がいつの飲んでいたものだったこと、愛犬も死んだことなどを語る。介抱をきっかけにリーサも店に立ち寄るようになり、また、マサコも手伝いを申し出る。ある日、見慣れない、身なりもあまり良くない初老の男性が来店し、彼を追ってきた中年の男が不穏な誘いをかける。彼らは強盗らしいのだが―おにぎりはその家の味がする。形じゃなく、そこにこもる何かがある。ロハスとか、スロウフードなんてこじゃれた言葉を出さなくても、本来、私たちが、家庭が持っていた何か、を思い起こさせる言葉だ。「自然に囲まれている人が、みな幸せになるとは限らない。どこに住んでいても、どこにいてもその人次第」「周りのせいじゃなく、自分のせい」という言葉が響く。どこでも、今いるところ以外を羨むのはないものねだりだったりするのだろう。おおらかで、なんだか暖かい気持ちにさせてくれる小説。小林聡美、片桐はいり、もたいまさこ出演で映画化されている。さっぱりさくっとしているサチエは小林聡美にピッタリだろう。マリメッコグッズも馴染んでいるそう。とても観たい!公開されてから大分経っているので、終わるまでには映画館に行かねば!と誓いを新たにす。
May 23, 2006
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「邪なことをすると―死ぬよ」東京―大磯・平塚、警察上層部だけが知るらしい毒薬の特性から連続とみなされた殺人事件。手がかりが不明瞭の中迷い込んだ先に待っているものとは―一方、益田は榎木津の従兄・今出川からの依頼で榎木津の縁談が次々に断られた裏に隠される理由を探っていた。点と点をつなげているのは邪な想いか?「雫」とは?今回は主要メンバーの"らしくない"一面が次々に披露される。そのせいか、はたまた妖怪談義がほとんどなく、あると言えば「昔話・民話(民俗学)・伝説」の違いや「桃太郎―吉備津彦命」あたりの話(悪くはないのだけれど、どちらかというとQEDっぽかった)だからか、魅力ありながらも京極堂シリーズとしては停滞気味だった気がする。邪魅が魑魅の類というところを拡大解釈して、世間と社会、世間と個人、社会と個人など大きなカテゴリーとその一部という構成がなされている。その点でも、今回は無理矢理「妖怪」を当て嵌めた感あり。ちょっと残念。次回は有名な「鵺(ぬえ~予告では空に鳥の漢字が用いられている)」が来るので期待したい。発売時におまけで人物相関図などがついたのは過去の事件に関わった人物(主に警察官)が多数登場したことにも理由がありそうだけれど、それならば読者が皆見れるように巻末に付けてくれれば尚親切だったのにと思ってしまったのは、図書館で借りた本についてなかった(立ち読みの時に見てるので概要は知っているけれど)からだろうか。いやいや、あくまで「ご好意」でついた企画なのに、そこまで求めるのは我儘だろうか?でも、ただでさえ登場人物が多いのに、東京で殺された澤井健一の名前が17章の途中(単行本で465頁あたり)でいきなり"澤田"になったのには驚いた。次に出てくるあたりでは"澤井"に直っていたけれど、名前の誤字は辛い。別人か?と一瞬惑わされた。そういえば、新聞や本に誤字脱字はないものだと子供の頃は信じて疑ってなかったなぁ…。~ネタバレがあったりなかったり~関口と同じ属性を持ちつつも消化(発散)・表現の方向が違う事が判明する益田。体調が良いせいかいつになく(彼にしては)明瞭でしっかりしているように見える関口。榎木津とまともに喋るのは今回が初めてらしいのに、上手くやれそうな所を見せる青木。いつもの如く幕引時には出てくるが、出番が少ない京極堂(存在感だけは大きい)。いつもの調子を出せず、テンション落とし気味の(理由はあるが)榎木津。"先輩不良刑事"木場の薫陶を受け、着実に成長している青木が活躍、かな。榎木津に秘密のまま調査する"探偵見習"益田は調子が出せないなりにどんどん真相に近づいていく。表と裏のようにお互いの存在、関係を補完しあっている憑き物落し(京極堂)と探偵(榎木津)のやりとりはいつもいい。榎木津を思いやり、「(前回)唆されたお返し」としながらも(幕引きに)出てくるところとか。榎木津の周囲に対する心配り(?)もチラリと。真面目になると本名をしっかり覚えているところを出すのは心憎い。事件のつながりや展開はよめないが、黒幕が誰かだけはすぐ分かる。箱根事件(鉄鼠の檻)を担当した益田のかつての上司でもある山下刑事が憑き物を落とされたような人となって再登場。石井刑事もちらりと出てくる。青木のかつての同僚(本庁勤務)の木下もチラリ、陰摩羅鬼の瑕の大鷹刑事も登場。そのほかにもどこかで見かけた刑事がちらほら。京極堂・榎木津に出会った刑事(だけではないが)の多くが人生、自分の価値観の崩壊にも繋がる衝撃を受けている。頑張れ!警察(官)!毒薬と帝銀事件。関係ないけれど、早瀬乱「三年坂 火の夢」の大火の話をそのうち京極さんが(巷説あたりで)書かないかなと思った。十二研、京極堂とも顔見知りの公安刑事・郷嶋など今後も出てきそうなキャラも登場する。あるはずのない毒の存在を知っていたという解剖医って、よく出てくるあの人(名前忘れた、里村??)だったのでは?登場人物などのメモ→メモ1民話・昔話などについてのメモ→メモ2
November 7, 2006
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戯言遣いの弟子青色サヴァンと戯言遣いシリーズ クビキリサイクル→メモ クビシメロマンチストに続く第3弾。人類最強の請負人・哀川潤に騙されるように私立澄百合学園(別名・首吊高校。お嬢様学校&名門新学校と噂でココの制服を玖渚は欲しがっているらしい)に女装(セーラー服を着て)して潜入したいーちゃん。哀川潤の仕事は「紫木一姫という生徒を救い出すこと」だという。どこか玖渚を彷彿とさせる一姫は子荻をはじめとする生徒らに追われていた。合流した潤と彼らが見つけたものは理事長のバラバラ死体。子荻らが恐れるの使い手とは?潤は任務遂行できるのか?赤神、謂神、氏神、絵鏡、檻神~四神一鏡の末を司る血流。この学園は日本のER3といわれる神理楽(ルール)のプログラム制度ようなもの。~ネタバレあり~ぼく(語り部)~いーちゃん。戯言遣いにして傍観者で詐欺師。19歳。誕生日は3月。 あらゆることから逃げることを考えて生きている。 未成年だが、税金は払っている。学費も自分で払っているらしいし、資産あり。 何か分からないことを待つのは苦手。何も施さず、受け取らず、が信条。 ・何もせずとも周りが勝手に狂いだす。無闇の為にのみ絶無の為にのみ存在する・子荻談 ・彼の欠けてる部分の多さが、周囲の人間に自分の欠点を指摘されたような落ち着かない(不安な)気分にさせることで敵味方問わず相手に隙ができる。 影響を受けないのは全く同一な零崎のような人間だけ・哀川談 今回の推理の一端は自分の周りに可愛くか弱く可哀想なだけの登場人物など存在しないという確信から(笑) 事件後、見舞いに来た玖渚が昔の友達に連れてきてもらっていたのが面白くないような。 哀川潤 ~請負人。名字で呼ぶのは敵のみ。身内に甘い。理事長のノアとは二年前に決別。 最強だが、唯一の盲点は(身内の)裏切りではなく、騙し。だが、弱点ではない。紫木一姫 ~依頼人。私立澄百合学園高校2年生。 5年前、潤と遊馬に助けられたことあり。二人を慕う。 玖渚友にちょっと似ていた? どこかに遊馬の影を見たのか、いーちゃんのことを「師匠」と呼ぶ。 で教師らも殲滅させたが、潤によって倒される望みは果たせず、受けた攻撃で怪我と記憶障害を負う。 市井遊馬 ~曲絃師のなり損ない?。学園の教師にして一姫の師匠だったが、死亡。萩原子荻 ~3年生。一姫に殺される。西条玉藻 ~ナイフの達人。1年生。一姫に殺される。檻神ノア ~理事長。子荻の母。39歳。檻神一族の傍系。 1年半前、首を吊って死んだ母の後を継ぐ。一姫に殺される。~おまけ~いーちゃんのアパートの住人(3階建て)1F 七々見奈波(浪士社大学3回生。引っ越してきたばかり。頑なでいーちゃんとの相性悪し?)2F いーちゃん・みいこさん3F 世捨て人で伴天連趣味のおじいさん・家出中の15歳(石凪萌太・ヤバ系)と13歳(闇口崩子・清純派)の兄妹~いーちゃんの本名を考える~ニックネームはいーたん、いっくん、いのじ、いー兄、いーの、いのすけ、戯言遣いなど。名前をローマ字で表記した場合、母音が8、子音が7あを1、いを2、~んを46、と数字に置き換えた場合の総和は134。いーちゃんの本名を呼んだ人間は今まで3人。すべて死んだか、死んだような状態。井伊遥奈(いいはるかな) ・いーちゃんの妹。飛行機事故で死亡。玖渚友 ・いーちゃんが壊した?想影真心(おもかげまごころ)・人体実験されたあげく焼け死んだ?適当に考えたのは妹の名前から、井伊遥(いいはる)を名字と仮定。(井伊が名字だとその後の仮定が膨大になりすぎて面倒臭いから。と考えるところがすでに当てる気ないってことか?・笑)いーのというニックネームから"の"を採用してみる。I Iを使うとすると、子音の数から、一文字は"CHI”か"SHI”だと思われる。I I HA RU NO SHI2 2 26 41 25 11=107 134―107=27合計が27になる二文字で面白い読み方になりそうなものを当て嵌めてみた。こんなのはいかがだろう?I I HA RU NO NA SHI KA2 2 26 41 25 21 11 6=134井伊遥のなしか(言い張るの無しか)という戯言遣いに皮肉を送る名前にしてみた。"のなしか”なんて名前がある訳ないと分かっておりますです。でも、読みようによっては”のーなしか”となり、(言い張る能無しか)と自虐的に使えてまた面白いかと。はい、お遊び終了でした。
March 23, 2007
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