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「おい。右の側切歯が行っちまうって話聞いたか?」
「誰に物言ってるんだ。もう40年近くも一緒に仕事してるんだ。知らない訳ないだろ?」
「で、お前その相棒の為にこれから身を削られるって言うじゃないか。」
「だから何だって言うんだ。アイツの分も頑張るのが名誉じゃないとでも言うのか?」
「そうムキになるなよ。送別会でもやってやろうかって思ったんだからさ。」
「へっ。情け深いみたいな事言うなよ。お前が側切歯を抜く決定を下したんだろ。」
「しょうがないさ。あんなにボロボロじゃ、周り迄炎症起こしたかも知れないしな。」
「ま、俺迄ボロボロになっちゃアンタもホルンなんか吹けなくなるだろうしな。」
「お前がどれだけアイツの分も支えられるか疑問だけどな。」
「相変わらず偉そうじゃないか。ホルンなんてもう吹きたくない癖に。」
「ゴタゴタ言わずに、送別会の手伝いでもしろよ。」
「俺に何が出来るって言うんだよ。さっさと買い物にでも行けよ。」
これから側切歯の分も頑張らなければならない犬歯にこう言われちゃ、愚図愚図している訳にも参りません。大きなスーパーで色々見ているのですが、なかなか送別会に相応しいものが見付からないのです。
「何が食べたいんだか側切歯に訊いてみな。」
「瀕死の奴に訊いたってろくな答え返って来ないさ。」
「お前が明日抜かれるって言われたら、最後に何をやっつけたい?」
「そうだなー、奥の奴が出来ない仕事したいよな。」
「おい、見ろよ!旬の玉蜀黍だぜ!」
「これなら、俺達にしか出来ない仕事が山程あるな。」
「そうだ。これならアイツだって思い残す事ないさ。」
決まった決まった。序にじゃが芋とラム・ステーキ買うよ。
「宴会だ、宴会!ワインはどうした?」
「アンタ、明日麻酔が効かなくなったらどうするつもりさ?」
「あの頃よりは、麻酔の技術だって進んだろうさ。医者だって大丈夫って言ってたぜ。」
「俺ね、これから戦友を亡くすんだぜ。宴会宴会って、アンタ喜んでるみたいだな。」
「喜んでる?冗談じゃない。明日が怖くてしょうがないのさ。」
「へっ。だらしねーな。大の大人が歯医者怖がってどうする。」
貴方達ね。何時迄言い争ってるのよ。
ま、ワイン買うには買って、無事に抜歯が終ってから飲んでも良いしね。
側切歯はずっと黙っています。
今日は思いっきり貴方を使って食べますからね。覚悟しなさいよ。


蓋をして沸騰させた後、鍋ごと保温調理器に閉じ込めます。
「良い匂いだな。もう始めようか。」
「お前ね。幾らなんでも30分じゃ未だ固過ぎるよ。」
「どの位待たなきゃいけないんだ?」
「じゃが芋がそれ程でかく無かったから、後30分位で大丈夫だろ。」
「お前、犬歯の分際で詳しいな。」
「お前こそ帯状回の分際で知らなさ過ぎなんだよ。」
未だ懲りないよ、この二人。
アイロンでも掛けてれば30分なんてあっと言う間だから、大人しくしてなさい。
「もう30分経ったってば!」
「おい、最後の仕事が待ってるぜ。大丈夫か?」
「瀕死の奴に訊くなって言ったのお前じゃなかったか?」
「煩いんだよ。」
ホカホカだよ、お二人さん。玉蜀黍も良い色に蒸し上がってるよ。

「お前、泣いてるのか?」
「冗談言うな…。ほら、コイツの頑張る姿見てみろよ。」
「エライな。玉蜀黍の皮が挟まってても構わず働いてるぜ。」
「茶化す位なら、送別会なんかするなよ。」
「悪い悪い。それにしても、プチプチして旨いな。」
「だろ?俺達居なきゃ、アンタも能無し、否、脳無しってか?」
「犬歯ごときに言われるこっちゃないね。」
あーあ。全く何時迄続くんだか。
言っとくけどね、お二人さん。今日はワイン開けないよ。
開けたい所だけどね。
この側切歯に単冠被せた時は、医者が私の意に逆らって形を変えちゃったから、ホルンが初心者レベルに戻っちゃったんだよね。それをある程度吹ける様に戻すのに丸々1年間掛かった。その苦労は何の為だったんだろうね。今度の医者が、もう少し物分りが良いと良いけれどね。
いやぁ。
美味しかったです。
本当に長い間、良く働いてくれました。
側切歯さん、お疲れ様でした。
++この日の「 チーム・マイナス6%
保温調理60分+余熱調理10分=70分 レンジの省エネ
665gのCO2削減
38.5円の電気代節約
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きちんとオリーブチキン。 2013/01/20
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