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《染人百話》より《香樹院師厳訓》
香樹院師の随筆の中に、第一心得べきは、後生に少し志も出来、少し振り向くと、僧分から安心まえを教えて覚えさせ、もう何時死んでも案じはないほどにと往生の印可をなす。それゆへ喜んで早や往生は定まりたり。この上は報謝は他力より勤めさせて下さるるからは、此方から励ませば却って自力になると思い、後には称えもせず参りもせず、唯こういうものが浄土参りと心得るばかりにて、喜びもせずに居る信者が多い。もとが後生が大事ではない故に、唯死ぬ時の用心に聞いておこうというような聞き心の処へ、こうさえ思うて居れば一念の御約束で済んだとばかり心得て、嬉しくもなければ有り難くも思われぬ、それゆえ地獄ならで行方のない私を、たのむ一念の御たすけと疑いはれて喜んでをりますると云うた安心と、あとの報謝相続が木に竹接いだような不釣り合いなことになる。それを僧分や物知ったものはかざりたてて、ここかしこの御言葉を無理にまげて、信心をこしらえなす証文とし、剰え他の真実に喜ぶ報恩の称名起行作業までも、自力策励の執心などとおとしめあざけり、我も惑い人をも惑わすは無間の大罪にて、最も恐ろしきことなり。よくよく心得べし。
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