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清水君が無事に土地を手に入れました。その土地には木が生えていて、果実が取れるとします。それを見ていた三島さんは果物が惜しくなり、こんなことを言い出しました。「清水君、あなたは土地が欲しいと言っていた。ということは 契約の内容は土地のみであり、果実は入っていない。 よって果物は私の物だ。もし欲しければ一個につき1000円払え」さて、清水君が果物を取れるのは当たり前のような気はしますが、どうやって反論したら良いのでしょう?実は、ちゃんと条文があるのです。まず、木は土地にくっついていますから木は清水君に所有権があります。ここで、所有権の内容を確認しましょう。(所有権の内容)第二百六条 所有者は、法令の制限内において、自由にその所有物の使用、収益及び処分をする権利を有する。所有権者は、その物を使用・収益・処分できるとあります。つまり、清水君は自由に木から収益をあげることができるのです。しかし、この条文だけでは清水君は木そのものから収益をあげられると言うことしか分かりません。一応木とは別物の果実を取っていいのか分かりません。そこで、この条文をご覧ください。(果実の帰属)第八十九条 天然果実は、その元物から分離する時に、これを収取する権利を有する者に帰属する。「元物」とは果実を生み出す物を言います。ここでは木をさします。「収取」とは収益とほとんど同じ意味です。つまり、果実は木から収益する権利のある人に帰属することになります。本件では清水君に木の収益権がありますから、その果実も清水君が得られることになります。三島さんの言い分は通りません。みなさんも安心して果実を取りましょう。
2004年06月30日
登記所の係官は一々実際のところまで調べられませんから、登記申請書に不備が無ければ嘘の登記は簡単にできてしまいます。ということは、蒲原達樹が所有者なのに三島さんに所有権があるかのような登記をすることは可能なのです。その登記を清水君が信じてしまい、清水君と三島さんに売買契約が結ばれたらどうなるのでしょうか。もちろん、三島さんと蒲原の間には、売買契約を結ぼうと言う真意がありませんから、売買契約が無効であり(民法94条1項)、三島さんは全くの無権利者となります。ということは。清水君は無権利者から土地を手に入れたことになります。ここで、「即時取得」を思い出した方、かなり鋭いです。では、即時取得の要件を見てみましょう。1、動産であること(=不動産でないこと)2、売買などの取引行為によって占有をすること(=売買などで物を手に入れること)3、相手方が無権利者であること(*相手方が無権利者でなければ通常の売買です)4、平穏・公然・善意・無過失であること1が問題ですね。即時取得は動産にしか成立しません。つまり不動産には即時取得が成立しません。しかし、三島さんはあえて嘘の状態を作り、清水君はそれを信じただけですから、清水君がかわいそうです。そこで、こんな条文があります。(虚偽表示)第九十四条 相手方と通じてした虚偽の意思表示は、無効とする。2 前項の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない。まず1項からご覧ください。「意思表示」は約束のことですから、虚偽の約束は無効となり、登記があったとしても無効となります。しかし、2項(○2)をご覧ください。虚偽の約束は「善意の第三者に対抗することができない」となっています。「善意」とは知らなかったことをいいます。そして「第三者」とは学問上「虚偽表示の当事者及びその包括承継人以外の者であって、虚偽表示に基づいて新たに独立の法律上の利害関係を有するに至った者」を言います。早い話、「ウソの状態を真実であると思って行動してしまった者」を言うと思ってください。本件では清水君がウソの登記を信じてしまい、三島さんと売買をした場合、嘘の登記をした蒲原と三島さんは本当は蒲原が所有者であることを清水君に主張することができません。ということは清水君・三島さん・蒲原の間では三島さんが所有者となり清水君に所有権が移ることになります。登記とはこのように強い効力があるのです。
2004年06月29日
土地を引き渡そうと思ったら何とその土地の一部は他人の物だったらどうなるのでしょう。例えば清水君は三島さんと土地の売買契約をしたのに、その一部は草薙充のものでした。この場合、どうなるのでしょうか。この場合も条文があります。(権利の一部が他人に属する場合における売主の担保責任)第五百六十三条 売買の目的である権利の一部が他人に属することにより、売主がこれを買主に移転することができないときは、買主は、その不足する部分の割合に応じて代金の減額を請求することができる。2 前項の場合において、残存する部分のみであれば買主がこれを買い受けなかったときは、善意の買主は、契約の解除をすることができる。3 代金減額の請求又は契約の解除は、善意の買主が損害賠償の請求をすることを妨げない。まず、1項から見てみましょう「売買ノ目的タル権利」とは売買の内容となっている物です。この場合は土地をさします。つまり、売買の内容となっている物が一部他人の物であったら「代金ノ減額ヲ請求」ができるということなのです。また、2項・3項を見ると「善意の買主」つまり一部が他人の物であることについて知らなかった買主は「解除」「損害賠償の請求」ができるとあります。とすると、1項には「善意」と書いていませんから、一部他人の物であることについて知っていても代金の減額を請求できると言うことになります。これは何故でしょう。なんで一部他人の物であることについて承諾して売買をしたのにあとになって代金の減額を請求できてしまうのでしょうか。それは、契約の内容が「今は他人の物だけどいずれ何とかするからその分を見越してお金を払いましょう」と言うものである場合もありうるのです。例えば、三島さんの土地のみならず草薙の土地も欲しい清水君が「三島さん、僕は貴方の土地とそれに隣接する草薙氏の土地も欲しいんだ。 隣人のよしみで三島さんが草薙氏に交渉してよ」といって三島さんと草薙氏の2つの土地の分のお金を予め支払うこともありえます。そうして、草薙氏との交渉が決裂した場合、三島さんが「清水君、申し訳ない。草薙氏との交渉は決裂した。よって私の土地だけで勘弁してくれ。もちろん、草薙氏の土地分のお金はお返しする」と言えば誰も損するわけではありません。このような場合を想定して563条1項は善意で無くても適用されるのです。ところで、2項・3項の損害賠償・解除をみて「何だ債務不履行か」と思った方もおられるかもしれません。しかし、ちょっと違います。債務不履行の条文である415条と比較してみてください。(債務不履行による損害賠償)第四百十五条 債務者がその債務の本旨に従った履行をしないときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。債務者の責めに帰すべき事由によって履行をすることができなくなったときも、同様とする。563条2項3項には415条のように債務者の責めに帰すべき事由によってなど「債務者のせいで」と言う意味の言葉がありません。つまり、債務不履行の場合は債務者のせいで債務不履行にならないと解除や損害賠償ができません。しかし、563条の場合は債務者のせいで一部他人の物となったりしなくても適用されるのです。ということは債務者(売主)のせいでなくても563条の場合は解除や損害賠償ができることになります。これは公平のためだといわれています。仮に債務者(売主)のせいでなくても一部他人の物であればその分債権者(買主)は損していることに変わりは無いですし、債務者(売主)は他人の物についてもお金を貰い得していることになるからです。法律も結構考えているのです。
2004年06月28日
三島さんが清水君に土地を売った後、蒲原にも土地を売ったらどうなるのでしょう。不動産編第2章で申し上げましたとおり不動産も約束と約束の一致で成立しますから、不動産も動産と同じく二重売りをしようと思えばできてしまうのです。では、対抗要件は何でしょうか。動産は引渡しでしたが、不動産は何が対抗要件でしょうか。この条文をご覧ください。(不動産に関する物権の変動の対抗要件)第百七十七条 不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。何書いてあるかわかりませんが、初めに「不動産に関する物権」と書いてあって、最後に「第三者ニ対抗スルコトヲ得ス」と書いてありますから、これが不動産に関する対抗要件を定めている条文なのです。「物権」とは所有権などを指すというのは前もやりました。「得喪及び変更」というのは得たり、失ったり、変更されたりすることです。これらは変動と言う表現にまとめてしまいましょう。つまり、不動産の所有権などの変動は登記をしないと「第三者」に対抗できないのです。そして、「第三者」とは、動産の対抗問題のときに申し上げましたとおり、「登記の欠缺を主張する正当の利益を有する者」であり、早い話、当事者以外で全くの無関係者で無い者と思っていただければ十分です。本件では土地と言う不動産の所有権がどちらに動くかという問題なので「不動産に関する物権の得喪及び変更」にあたります。そして、清水君と蒲原が互いに「第三者」であることは動産の時と同じです。よって、清水君と蒲原のどちらに土地が最終的に帰属するかは登記によってかわります。皆さんも不動産を売買したらすぐに登記をしましょう。
2004年06月27日
不動産売買において契約はいつ成立するのでしょうか。動産のときには約束と約束が一致すれば成立すると申し上げました。では、不動産ならどうでしょう。もう一度動産の時の条文をご覧ください。(売買)第五百五十五条 売買は、当事者の一方がある財産権を相手方に移転することを約し、相手方がこれに対してその代金を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。実は動産と不動産を区別していませんね。そうです。不動産であっても約束と約束が一致すれば契約が成立してしまうのです。やはり印鑑も契約書も不要です。不動産であっても契約はあっさり成立するので気をつけてください。
2004年06月26日
今まで動産の話をしてきて、動産とは不動産で無いものと言ってきました。では、不動産とは一体何なのでしょう。この条文をご覧ください。(不動産及び動産)第八十六条 土地及びその定着物は、不動産とする。「土地」は文字通り土地です。「定着物」とは土地に定着した物のことを言います。具体的には、土地にくっついた石垣、などが挙げられます。ここまで申し上げると、「あれ?建物は不動産じゃないの?」と思う方がおられると思います。実は、建物は条文で不動産と定められているのではありません。別の法律で建物は土地とは別個の不動産となります。ここで、建物は「定著物」じゃないの?と思った方がおられるでしょう。しかし、建物は土地の「定著物」であるとすると、土地を譲渡するときは必ず建物も譲渡することになり取引上不都合です。なので、建物は「定著物」になりえないのです。
2004年06月25日
時効は、権利の上に眠る者は保護に値せずという観点・立証の困難の救済という観点がその根拠であります。ということは、権利の上に眠るものでない場合・立証の困難が無い場合であれば時効を成立させるべきではないということを昨日申し上げました。それが、「時効の中断」です。では、条文を見てみましょう。 (時効の中断事由)第百四十七条 時効は、次に掲げる事由によって中断する。 一 請求 二 差押え、仮差押え又は仮処分 三 承認まず「請求」からいきましょう。普通、請求というと「払って」と一言言えば足りるようにも思えます。しかし、「払って」と一言言うだけでは権利行使の手段としてはあまりに軽くまだまだ権利の上に眠っていると評価せざるを得ません。そこで、「請求」とは裁判に訴え出るという重い手段を行使してはじめて権利の上に眠るとはいえなくなります。「差押、仮差押又ハ仮処分」はそのままの意味ですし、結果的には裁判を伴うでしょうから「請求」もすることになり、あまり問題になることはありません。「承認」は「請求」と違い、立証の困難が無い場合にあたります、債務者が認めている以上物証がほとんど要らないからです。ですから、「承認」は必ずしも裁判でなされる必要はありません。例としては、「待ってくれ」と言ったり、利子を払ったり、一部だけ払うことが「承認」に当たります。本件の場合、清水君が三島さんから訴えられたり、差押えを受けたり、「ちょっと待ってくれ」と言ったり、利子を払ったり、一部だけ払ったりすると時効は中断されます。そして「中断」した場合今までの権利不行使期間は無かったことになり、「中断」されたときからまた10年経過しない限り時効は成立しません。時効は問答無用で進むイメージがありますが、簡単に中断できるのです。
2004年06月24日
清水君が履行期になっても100万円を支払わず、のらりくらりしていたとします。もちろん、払うまでは清水君の100万円を支払う義務が消えるわけでは有りません。ですが、100万円を払わないまま長期間が過ぎた場合でも三島さんに請求されたら清水君はなお100万円を払わなくてはならないのでしょうか。きっと一度は聞いたことがある、「時効」が問題となります。ここでは100万円の金銭債権が問題となりますから、以下の条文が適用されます。(債権等の消滅時効)第百六十七条 債権は、十年間行使しないときは、消滅する。つまり、10年間債権を放置すればその債権は消滅します。これを「消滅時効」と言います。本件の場合、清水君が10年間100万円を払わなければ三島さんの債権が消滅し、清水君は100万円を支払う必要がなくなります。ところで、何故放置するだけで権利が消滅してしまうのでしょう?契約した以上、何があろうと履行するのが筋と言うものではないでしょうか。というのも、民法では、権利を持っている者は積極的に権利を行使しなければならないと考えられています。なぜなら権利とは行使されることによって意味があるからです。行使しようとしない場合は権利を放棄したとみなされます。また、実質的にも長年権利を行使してこなかった場合、権利の証明が困難なのです。契約書は風化しているでしょうし、記憶もあいまいとなります。つまり、権利の上に眠る者は保護に値せずという観点と、立証の困難の救済という観点から消滅時効が定められているのです。ということは、権利の上に眠っていない場合・立証の困難の救済が無い場合であれば消滅時効を成立する根拠に欠けることになります。それが「時効の中断」です。それについてはまた明日と言うことにしましょう。
2004年06月23日
壷を買うときには、壷が上等な箱に入っており、清水君は当然箱も入っているつもりで契約しました。ところが、その箱が上等なため三島さんは箱が惜しくなり、こんなことを言い出しました。「清水君は『壷』が欲しいと言っていた。だから契約の内容は あくまで『壷』のみであり、壷の箱は契約に入っていない。 壷の箱が欲しければ別に10万円払え」三島さんの言い分は一応筋が通っている気がします。しかし、こんな条文があるのです。(主物及び従物)第八十七条 物の所有者が、その物の常用に供するため、自己の所有に属する他の物をこれに附属させたときは、その附属させた物を従物とする。2 従物は、主物の処分に従う。まず、○2(第2項)から見ましょう。「従物」は「主物」と共に所有権などが移るということを言っています。では、「従物」「主物」とは何でしょうか。第1項は「従物」の定義が書かれています。読みにくいので箇条書きにしてみましょう。1、物の常用に供される物 ある物の利益のために用いられる物をいいます。そして利益を受ける側の物を「主物」と言います。2、特定の主物に付属してるといえる程度の場所的関係にあることつまり、主物と場所的に近いものでなければ従物にはなりえません。というか、従物にする必要がありません。従物は主物と一緒に所有権などが移るのですから、場所的に近くなければ誰も所有権を移したいとは思わないからです。3、主物と従物が独立の物であること独立でなくくっついていれば、必ずくっついている物と一緒に所有権が移りますから、わざわざ87条を適用する必要もありませんし、そもそも問題になりません。4、主物・従物が同一所有者に属すること従物とされた場合、主物と一緒に所有権が移りますから、主物と従物が別人所有であればその別人の関知しないままに所有権が移転してしまい、別人を害してしまいます。ですから、いくら1から3を満たしても主物と従物が別人所有ならば87条を適用して主物と一緒に所有権を移すわけには行きません。本件の場合、壷の箱は壷を保護するという目的があるので壷の利益のために用いられます。そして壷は箱の中に入っていますから、主物たる壷に付属しているといえる程度の場所的関係にあります。また、壷と箱はくっついていませんから独立の物といえますし、壷も箱も三島さんの物です。よって、87条2項により壷が売られた以上、その箱も清水君の物になります。みなさんもこういう屁理屈を言う者には法律で対抗しましょう。
2004年06月22日
もし、清水君が全くの無関係者である蒲原達樹に100万円を支払ってしまったらどうなるでしょう。例えば、三島さんからの債権譲渡通知を偽造して清水君に送った場合、清水君は信じて蒲原に払ってしまったらどうなるでしょうか。騙された清水君が悪いから、清水君は三島さんにもう一度100万円支払わねばならないという考えもあります。しかし、そうなると清水君のみならず世の中の債務者はお金を支払うときに相当の注意を払わねばならず、経済がスムースに動かなくなってしまいます。そこで、こんな条文があります。(債権の準占有者に対する弁済)第四百七十八条 債権の準占有者に対してした弁済は、その弁済をした者が善意であり、かつ、過失がなかったときに限り、その効力を有する。「債権の準占有者」とは、債権者で無いのに債権者のように振舞う人を言います。また、「善意」とは単に知らなかっただけでなく、積極的に「債権の準占有者」が真の債権者であると信じたことを言います。もし、積極的に信じてないのであればちゃんと調べるべきだからです。つまり、1、履行した物を受け取った者が債権者で無いのに債権者のようにふるまっており、2、履行した人が、履行した物を受け取った者を真正の債権者であると積極的に信じ込んでいればその履行は有効です。本件では、蒲原が債権者のように振る舞い。清水君も蒲原が真正の債権者であると信じ込んでいた場合には蒲原に対してなした100万円の支払が有効となり、三島さんに再度100万円を支払う必要はありません。では、三島さんは泣き寝入りでしょうか。そんなことはありません。蒲原には本来100万円を受け取る権利が無かったのですから、三島さんは蒲原に対し、「貴方の受け取った100万円は本来私の物だ」と言って返還を請求できます。これが一番妥当な結論でしょう。
2004年06月21日
契約では壷と100万円を同時に交換することになっていたのに、三島さんが壷を引き渡さないまま清水君に100万円支払えと言って来た場合にはどうなるのでしょうか。感覚的には清水君は100万円支払を拒めそうな気がします。でも、三島さんが以下のように反論してきたらどうしますか?「確かに私は壷を引き渡していない。しかし、415条を見てほしい。『第四百十五条 債務者カ其債務ノ本旨ニ従ヒタル 履行ヲ為ササルトキハ 債権者ハ其損害ノ賠償ヲ請求スルコトヲ得』 100万円に関しては私は債権者であり、清水君が債務者だ。 そして、415条は債務者が履行しなければ損害賠償できる、 と書いてあり『債権者が履行した上で』などと言う条件は一切無い。 したがって債権者である私が履行しようとしまいと債務者の清水君は100万円を払わないかぎり、私は損害賠償請求できるのだ」屁理屈ですが、条文を根拠にしている以上清水君は条文で反論しなくてはなりません。そこで、法律はこんな条文を作りました。(同時履行の抗弁)第五百三十三条 双務契約の当事者の一方は、相手方がその債務の履行を提供するまでは、自己の債務の履行を拒むことができる。ただし、相手方の債務が弁済期にないときは、この限りでない。「履行を提供する」とは
2004年06月20日
契約が無事に結ばれ、履行期が来ても清水君は100万円を用意できなかったらどうなるでしょう。もちろん、債務不履行ですから三島さんから解除される可能性が有ります。でも、清水君は解除されたくありません。そこで清水君は現金百万円の代わりに100万円相当の車で支払いたいと考えました。このように現金の代わりに物で支払うことを「代物弁済」と言います。では、清水君は代物弁済できるのでしょうか。実は条文があります。(代物弁済)第四百八十二条 債務者が、債権者の承諾を得て、その負担した給付に代えて他の給付をしたときは、その給付は、弁済と同一の効力を有する。言っていることは単純ですが、念のため箇条書きにしてみましょう。1、債権の存在(債権がなければ代物弁済の必要がありません)2、本来の物と異なる物を引き渡すこと(「本来の物」と言っていますが、「本来の金銭」でもかまいません。 なお本来の物と同じ物は普通の弁済であり、代物弁済ではありません)3、給付が弁済に代えてなされること(弁済の変わりに物を渡すことが「代物弁済」なのですから当たり前です。)4、債権者の承諾があること1から3は至極当たり前のことを書いているだけですから、注目すべきは4ですね。結局債権者の承諾が無くては代物弁済はできません。なぜなら、お金が欲しいと思って契約しているのに、いくら相当の価値があるとはいえ勝手に別の物にされたら契約の意味がありません。なので法律に書いてあるからといって絶対に代物弁済できるというわけではなく、債権者の承諾が必要です。つまり、いくら清水君が車で払うことを望み、その車が中古車価格で100万円を下らないものであったとしても、三島さんが承諾しない限り代物弁済はできません。
2004年06月19日
債権も売買できる以上、動産と同じく、債権も二重売りできることになります。例えば、三島さんの持っている清水君に対する債権を蒲原達樹と草薙充の両方に売ろうと思えば売れてしまいます。つまり、蒲原と草薙は動産の二重売りと同じく対抗関係にあります。この対抗関係はどう処理すればよいでしょうか。動産ならば、引渡がある方に対抗要件があるとしていました。それは、動産は形があるからです。形があるからこそ引渡しが意味をなすことになります。しかし債権は必ずしも形がありません。契約書があれば形に残っているともいえますが、契約書が無い場合もあります。(契約は単に約束するだけで成立するので、債権も約束だけで成立することになるからです)ですから、動産と同じように引き渡すことが対抗要件になるとするわけにはいきません。では、どうすればよいのでしょうか。この条文をご覧ください。第四百六十七条 (指名債権の譲渡の対抗要件)第四百六十七条 指名債権の譲渡は、譲渡人が債務者に通知をし、又は債務者が承諾をしなければ、債務者その他の第三者に対抗することができない。2 前項の通知又は承諾は、確定日付のある証書によってしなければ、債務者以外の第三者に対抗することができない。(「指名債権」とは、単なる債権と同じ意味だと思ってください。)実は、昨日の条文と同じなんですね。「第三者に対抗することができない。」とありますから、この部分は対抗関係の処理を定めた条文と言うことになります。(蒲原と草薙はお互いが第三者同士です)ということは、やはり譲り渡し人の通知か、債務者の承諾があれば対抗要件を備えたことになり、債権は通知又は承諾で新債権者とされた人に帰属するようにも思えます。しかし、○2と書かれた部分を見てください。○2とは第2項を示します。「前項の通知又は承諾」は「確定日附のある証書」でなければ、「第三者に対抗することができない。」とあります。そして、「確定日附のある証書」とは内容証明郵便ということだと考えていただければ十分です。つまり、通知・承諾は内容証明郵便でなければ第三者への対抗要件にならないということです。このように、内容証明という厳格に形が残る物によって対抗要件になります。しかし、内容証明は厳格ですが送ろうと思えば何通でも送れます。ですから、対抗要件も蒲原と草薙両方が備えてしまうこともありうるのです。その場合はどうしたらいいでしょうか。実は、債務者に到達した時期によって決めるしかありません。というのも、債務者のためです。到達時を基準にすれば債務者は一番初めに来た内容証明郵便に書かれている新債権者に払えばいいことになります。つまり、清水君は蒲原が債権者とされている内容証明と草薙が債権者とされている内容証明が来たとしても、先に来た方に書かれている債権者のほうに払えばいいことになります。もしこれが内容証明郵便を作った日付などになると、必ずしも一番初めに来た内容証明郵便を優先させるわけには行きません。これでは債務者にいらぬ面倒をかけることになります。そこで、債務者のために一番初めに来た内容証明郵便のみに払えば足ります。ところが、到達すら同時と言うこともありえなくはありません。そんな場合はどうなるのでしょう。もはや優劣は決められません。蒲原と草薙で仲良く分け合うことになります。形の無い債権はこんなにややこしいのです。お疲れ様でした。
2004年06月18日
昨日申し上げましたとおり、いくらお金に困っても二重売りをしたら犯罪(横領罪)になってしまいます。とすると、履行期が来るまでは三島さんは何らお金を得る手段が無いのでしょうか。ちょっと考えてください。もし、三島さんが貴方に「履行期はまだ来ていないけど、履行期がくれば100万円支払ってもらえる債権を私は持っている。そこで、この債権を90万円で買ってくれないか?私は今すぐお金が必要なんだ」といってきたらどうしますか?履行期まで待ちさえすれば貴方は10万円の儲けになります。三島さんは10万円損してますが、自分で納得済みなので問題はありません。清水君は支払う相手が代わっていますが、金銭的な損害はありません。このように、債権を売ったとしても誰も損害を受けることがありません。誰も損害を受けることが無いのなら認めてもよさそうです。そこで、法律も債権を売ることを認めています。これを「債権譲渡」と言います。(売ることも「譲渡」といいます)(債権の譲渡性)第四百六十六条 債権は、譲り渡すことができる。ただし、その性質がこれを許さないときは、この限りでない。2 前項の規定は、当事者が反対の意思を表示した場合には、適用しない。ただし、その意思表示は、善意の第三者に対抗することができない。このように債権は譲渡でき、債権の売買は通常の売買と同じように成立します。ということは、債権は債権を売る人と買う人が承諾すればよく、その債権についてお金を払う人(債務者)が全く関知しなくても債権の売買自体は成立します。本件の場合、三島さんと貴方が売買を承諾すればよく、清水君は関知しなくてもいいのです。とすると、新しい債権者が貴方になり、清水君は貴方に支払わねばならないところ、清水君は依然として三島さんが債権者だと思い込んでいて三島さんに100万円を支払ってしまうかもしれません。そこで、債権譲渡時には債務者の関知は不要ですが、債権譲渡後には何らかの方法で債務者に債権譲渡を知らせる必要があります。(指名債権の譲渡の対抗要件)第四百六十七条 指名債権の譲渡は、譲渡人が債務者に通知をし、又は債務者が承諾をしなければ、債務者その他の第三者に対抗することができない。「譲渡人が債務者に通知」するか、「債務者が承諾」しなくては、債権譲渡を債務者に対抗できないとあります。「対抗できない」というのは主張できないということです。つまり、「譲渡人が債務者に通知」か「債務者が承諾」が債務者に対する対抗要件なのです。まず「通知」について考えてみましょう。「譲渡人」とは債権を「譲り渡した人」ですから、債権を売った人です。もう一度言います。債権を「売った」人が債務者に通知しなくてはなりません。本件の場合、三島さんが清水君に「債権を譲渡しました」ということを通知しなくてはならないのです。貴方が清水君に「債権譲渡を受けました」と言っても無意味なのです。ということは、かつて流行った架空請求詐欺が全く的をはずしたことをしていると言うことになります。なぜなら、大抵の架空請求詐欺は「A社の貴方に対する債権を私どもが譲り受けました」と言うことが書いてあるからです。もちろん、債権を譲り受けたこと自体嘘であることがほとんどです。しかし万一債権を譲り受けていたとしても、その通知は譲り渡し人、つまりA社の方からしなくてはならないのです。A社のほうから通知しない限り万一債権譲渡は本当でも払う必要はありません。架空請求葉書をまだお持ちの方は一度ご確認してみてください。笑ってやりましょう。ただし、いきなり「○○裁判所へ来い」とか、「支払督促」とかいてあった場合は無視してはいけません。ところで、なぜ譲り渡し人が通知しなくてはならないのでしょう。架空請求詐欺でもわかります通り、譲受人が通知できるとすると嘘をつけてしまうからです。債権を譲り受けてもいないのに「債権を譲り受けました」といわれると債務者は信じてしまいます。そこで、債務者が騙されないように譲り渡し人だけが通知できるとしたのです。逆に「承諾」については、ちょっと違います。通知は債権譲渡を知らない債務者のためにいろんな制約がありました。しかし、承諾は債務者がすることですから債権譲渡を債務者が知っていると言うことです。債権譲渡を債務者が知っているならば特に制約を設ける必要はありません。そこで、承諾の場合は譲り渡し人に承諾してもいいし、譲り受け人に承諾してもかまいません。さて、ここまで読んで、債権も売れるなら、動産と同じように債権も二重売りできるのではないか?と考える方もいるでしょう。実は、債権の二重売りもできるのです。明日は債権の二重売りについて考えましょう。
2004年06月17日
契約が問題なく結ばれてても、履行期まで時間があいていて壷は未だに三島さんの手元に有る場合があります。そんなとき、お金に困った三島さんが「壷は確かに清水君に売ったけど、現実に壷はここにある。そうだ、この壷を蒲原達樹にも売って蒲原からはすぐに現金をもらおう」などと邪な考えを持ち、実際に蒲原達樹に売ってしまったらどうなるでしょうか。ここで、「契約によって所有権は清水君に移ったんだから、三島さんは無権利者となる。ということは蒲原達樹が即時取得しない限りは壷は清水君のものではないのか?」と考えた方、私の文章を本当によく読んで下さってまことにありがとうございます。確かに、即時取得の要件は1、動産であること(=不動産でないこと)2、売買などの取引行為によって占有をすること(=売買などで物を手に入れること)3、相手方が無権利者であること(*相手方が無権利者でなければ通常の売買です)4、平穏・公然・善意・無過失であることであり、即時取得が成立するようにも思えます。ですが、この場合は三島さんは全くの無権利者ではないのです。所有権は契約によって一応清水君に移るのですが、引渡しをするまでは三島さんにも所有権が残っていると考えられています。ということで、三島さんは無権利者ではなく即時取得は成立しません。では、どうなるのでしょうか。清水君はもちろん所有権を手に入れています。そして所有権を持っている三島さんから壷を手に入れた蒲原達樹も所有権を手に入れています。どちらも所有権を手に入れていますが、壷は一つです。一体最終的にはどちらに壷を帰属させれば良いのでしょうか。このように、どちらも所有権を有していて対立している状態を「対抗関係にある」といいます。では、この対抗関係をどう処理すればよいのでしょうか。(動産に関する物権の譲渡の対抗要件)第百七十八条 動産に関する物権の譲渡は、その動産の引渡がなければ、第三者に対抗することができない。「動産」は不動産で無いものを言います。そして「物権」はここでは所有権のことをいいます。とすると、動産の所有権は引渡しが無ければ「第三者」に対抗できないと言うことになります。では、「第三者」とは誰を言うのでしょう?判例は「当事者もしくはその包括承継人以外の者で物権の得喪および変更につき引渡しの欠缺を主張する正当の利益を有する者」と言っています。早い話、当事者以外で全くの無関係者で無い者と思っていただければ十分です。本件では、壷は不動産で無いので「動産」です。そして、今は壷の所有権が問題になっているので「物権」です。また、清水君は三島さんと契約したのですから、清水君にとって当事者は三島さんのみです。そして蒲原は三島さんと契約したのですから壷について全くの無関係者ではありません。よって清水君にとって蒲原は「第三者」です。逆に、蒲原からみれば清水君も「第三者」となります。ということは、清水君も蒲原も、壷の引渡しがあれば相手方に対抗できることになり、壷が最終的に帰属します。このように、対抗できるようになる手段のことを「対抗要件」といい、動産では引渡しが対抗要件であると言うことになります。本件では蒲原が壷の引渡しを受けていますので、対抗要件が蒲原にあることになります。よって壷も最終的には蒲原に帰属することになります。このように、契約で所有権は移転するのですが、引渡しを受けるまでは二重売りをされる可能性があります。みなさんもお気をつけください。
2004年06月16日

契約が問題なく結ばれた場合、三島さんは清水君に「100万円払え」と言うことができます。これを「三島さんは清水君に対し100万円の金銭債権」があると言います。では、たまたま清水君は三島さんに100万円貸していて、清水君が三島さんに対し100万円の金銭債権を持っていたらどうでしょうか。 もちろん、清水君が現金100万円を用意して三島さんに払い、三島さんが現金100万円を準備して清水君に払えば何の問題もありません。しかし、面倒くさいですね。いっそのことチャラにしようと考えたくなるでしょう。そこで、法律もチャラにする手段を準備しています。これを「相殺(そうさい)」と言います。(相殺の要件等)第五百五条 二人が互いに同種の目的をを有する債債務を負担する場合において、双方の債務が弁済期にあるときは、各債務者は、その対当額について相殺によってその債務を免れることができる。ただし、債務の性質がこれを許さないときは、この限りでない。ちょっとややこしいですから箇条書きにしてみましょう。1、債務の対立があること債務の対立があるということは、お互いに義務を負っていることになり、お互いが何らかの物を得られると言うことです。つまりお互いが債権を持っているということです。お互い債権を持っていなければ相殺する必要がありません。2、債権が同種であること債権の中身が同種であることが必要です。基本的にはお互いの債権が金銭と金銭であることが必要です。3、債権が弁済期にあること弁済期に無いのに相殺するということは弁済期前に支払を強制したのと同じで弁済期を定めた意味がなくなるからです。4、債権の性質が相殺を許さないものでないこと*これは難しいので割愛します。基本的に4が問題になることはほとんどありません。このように1から4の要件を満たせば相殺できます。
2004年06月15日
今まで「真意でない契約は無効である」と言ってきました。しかし、真意の契約であっても成立させるべきではない契約もあります。それは、犯罪のための契約などです。例えば清水君が犯罪を企てており、三島さんに「人殺しをしたいから凶器として壷を売ってくれ。上手くいったらお礼はたっぷりする」といった場合はどうでしょう。そして三島さんはとんでもないと思いつつもお金が欲しいから売買を承諾してしまったらどうなるでしょうか。清水君は壷を欲しいことには変わりありませんから真意の契約に変わりはありません。しかし、こんな契約を成立させるべきではないでしょう。法律もこのような契約を無効としています。(公序良俗)第九十条 公の秩序又は善良の風俗に反する事項を目的とする法律行為は、無効とする。「公の秩序又は善良の風俗に反する事項」なんて難しく書いていますが、結局、反社会的な契約は無効ということです。犯罪のための契約は反社会的ですから無効なのです。ですが、無効ということは契約が無かったことになるだけです。本件の場合、お金を返して壷を取り返せることになり、三島さんは差し引き0になるだけです。とするとどうでしょう。三島さんはお金が欲しいのですから、「とりあえず契約を結んでおいて、もしばれたら壷を返してもらえばいいじゃないか。ダメでもともとだから、お金のためには殺人のための契約でもとりあえず結んでしまおう」と考えるかもしれません。そこで、三島さんが契約を承諾しないようにする手段が必要です。そうしないと、反社会的な契約を阻止することができないからです。そのために、こんな条文があります。 (不法原因給付)第七百八条 不法な原因のために給付をした者は、その給付したものの返還を請求することができない。ただし、不法な原因が受益者についてのみ存したときは、この限りでない。不法な原因のためにとは字面から何となく想像がつくように、不法なことをするため、すなわち「反社会的な行為をするため」と言うことになります。ということは、本件のように殺人の凶器として壷の売買をした場合、清水君が壷だけ受け取ってお金を払わない時でも、壷は「不法な原因のために給付をした」ことになってしまいますから、三島さんは「お金を払わないなら壷を返せ」とは言えないことになります。そうなると、そもそも三島さんは「殺人の凶器として壷の売買をするのは損する可能性があるから止めよう」と考えるようになります。このようにして90条・708条が共同して反社会的な契約は排除されていきます。
2004年06月14日
第2章の2で真意でない契約の例として詐欺を挙げました。しかし、実は詐欺以外にも条文で定められている例があります。今日はそのうちの一つ、「錯誤(さくご)」を取り上げます。まずは条文を見てみましょう。(錯誤)第九十五条 意思表示は、法律行為の要素に錯誤があったときは、無効とする。ただし、表意者に重大な過失があったときは、表意者は、自らその無効を主張することができない。意思表示について要素に錯誤があれば無効となっています。そして、意思表示は約束のことであり、契約の要件ですから契約の要素に錯誤があれば契約が無効となるということになります。では、「要素に錯誤」とはどういうことでしょう。判例上、「要素」とは重要な部分であり、具体的には1、この点について錯誤が無ければ意思表示(=契約)をしなかったであろうし、2、意思表示(=契約)をしないことが一般取引の通念に照らして至当と認められるものをいうとされています。つまり、値段を言い間違えたり、契約の物について間違いがあった場合をいいます。とすると、例えば清水君は壷Aが欲しかったのに、間違って壷Bを買ってしまった場合も要素に錯誤があることになります。とすると無効主張ができそうです。しかし、よく条文をご覧ください。「但表意者に重大な過失があったときは、表意者は、自らその無効を主張することができない。表意者とは意思表示をした者をいい、契約をした者を言うことになります。つまり、重大な過失があれば例え錯誤があっても無効主張できないことになります。相手方が偽物販売などしてあえて勘違いさせようとしていた場合を除き、品物を間違えることには重過失があると言わざるを得ません。ということで、錯誤による無効主張が認められる要件をまとめると、1、この点について錯誤が無ければ意思表示(=契約)をしなかったであろうし、2、意思表示(=契約)をしないことが一般取引の通念に照らして至当と認められる3、そして、重過失がないことということになります。ところで、清水君が壷を買う動機に錯誤がある場合はどうなるのでしょうか。例えば、壷Aを買おうと思った動機は100万円で買って200万円で転売するつもりだったけれど、実はやっぱりその壷には100万円の値打ちしかなく、転売できる物ではなかった場合はどうなるのでしょうか。もちろん、三島さんには何ら騙す行為が無かったと考えてください。清水君は一応壷Aを買う意図をもった上で壷Aを買ったのですから厳密な意味で錯誤とはいえません。なので動機に錯誤があることを厳密な意味での錯誤と区別して「動機の錯誤」といいます。しかし、動機の錯誤も良く考えれば真意でない契約ですから、成立させるべきでは有りません。そこで、判例は動機を相手に表示した場合に限り動機も「要素に錯誤」があるとして扱うことにしています。ですから、本件の場合契約時に清水君が三島さんに「200万円で転売するから、100万円で売ってください」と言っていれば、転売したいという「動機の錯誤」も「要素に錯誤」があることとされて、無効主張できます。まあ、「200万円で転売するから100万円で売ってくれ」と言ってなお売ってくれる人がいるのかは分かりませんが・・・。
2004年06月13日

第1章~第5章では「清水君」が「清水君のお金」を払い、「三島さん」が「三島さんの壷」を渡すという売買契約を例に出しました。お金も壷も他人の物ではなく、それぞれ本人が扱っています。他人の物だった場合は問題になるということは第5章の2でお話しました。確かに、勝手に他人が契約をしてはいけませんが、あえて本人が他人に契約を任せてはいけないのでしょうか。例えば、三島さんは気が弱く値段交渉に向いていないとします。そんな時、三島さんは値段交渉の得意な安倍淳氏に、「私の代わりに壷を売ってきてくれ。値段や履行時期についても貴方を信用して一任するから」というのは認められないのでしょうか。この場合は誰も困りません。なので法律上もちゃんと認めています。 それが代理という制度です。条文を見てみましょう。(代理行為の要件及び効果)第九十九条 代理人がその権限内において本人のためにすることを示してした意思表示は、本人に対して直接にその効力を生ずる。かなりややこしいので、学問上の定義を示しておきます。代理制度とは、「代理人が本人のためにする事を示して相手方に対して意思表示をなし、また相手方から意思表示を受けることによって、その法律効果がことごとく本人に帰属することを認める制度」をいいます。「法律効果」とは契約の結果ということです。この場合は、「三島さんが清水君に対して壷を渡す代わりに100万円払えと言える」と言うのが契約の結果であり法律効果です。これでもややこしいので代理制度の要件を箇条書きにしましょう。1、代理権の存在(=本人が代理人に「代わりに契約してきてね」とお願いすることです)2、代理人による意思表示または意思表示の受領(=代理人による契約と考えれば十分です)3、代理人が本人の名を示すこと(顕名)(=これが「本人のためにする事を示して」ということです)本件では、本人の三島さんが、代理人の安倍淳氏に「代わりに契約してきてね」とお願いし、安倍淳氏が三島さんの真意に従う契約をし、その際に安倍淳氏が本人である三島さんの名前を示せば有効な代理がなされたといえ、「法律効果」すなわち契約の結果が三島さんに帰属します。この場合は、「三島さんが清水君に対して壷を渡す代わりに100万円払えと言える」とことになるのです。今日は長い上にややこしいところでした、お疲れ様でした。
2004年06月12日
今日から第1~5章の応用編に入ります。この6章では1章の応用編と言うことで、契約前の問題点についてさらに突っ込んだ問題を検討しようと思います。第1章では「清水君」と「三島さん」という生身の人間を例にしました。このような生身の人間を、法律上「自然人」といいます。では、自然人以外は売買できないのでしょうか。そんなこと無いですよね。皆さんがスーパーで物を買うとき、売買は皆さんとスーパーとの間でなされています。レジの人と取引しているわけではありませんね。そこで、法律上も売買ができるのは自然人に限定していません。スーパーのような団体とも売買することを認めています。そのように、売買などの取引をすることを法律上認められた団体を「法人」といいます。(33条以降)一定の手続を経れば「法人」になれて団体としての売買ができます。しかし、その手続が結構面倒なのです。定款(ていかん)という団体の決まりごとを定めて、官庁の許可を得なくてはなりません。ということは手続を経ていない団体はやはり売買できないのでしょうか。それも困りますね。例えば、サークルで何か備品を買うときサークル員と備品屋がそれぞれ契約を結ばねばならないのでしょうか。それではあまりに煩雑となります。そこで、判例上一定の形式を持った団体は法人を同様に扱うことを認めています。具体的には、1、団体としての組織があること(*団体としての形式があれば充分です)2、多数決原理が採られている事3、構成員の変更に関わらず団体が存続していること(*メンバーが卒業などで抜けても新入生が入って団体が継続すること)4、代表の方法・財産の管理などについて定めがあること。(*代表の選び方について決まりがあること・会計係がいること)が条件です。このように手続は経ていないが法人と同様に扱うことを認められた団体を「権利能力無き社団」といいます。社団とは耳慣れないことばですが、人の集まりを言います。例えば、サークルでは、団体として行動していますから1を満たします。そして、サークルで何か重要なことを決めるときは多数決でしょうから2も満たします。さらに、サークルでは卒業生追い出しコンパをやって、新入生勧誘活動をしますから3も満たします。最後に、代表の選挙方法・会計係もいるサークルは4を満たすことになります。ですから、大抵のサークルは「権利能力無き社団」といえるでしょう。従って、民法上、売買ができるのは自然人・法人・権利能力無き社団と言うことになります。自然人だけではないのです。
2004年06月11日
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