不安とプライドと自己嫌悪

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テーマ: 鬱病(2271)
カテゴリ: 鬱と戦う生活記
昨日から、隣の席の超音波声の主任さんが休んでいる。

反対側の隣の人も、今日から1週間休暇に入る。
お気に入りの先輩は対面だけど、この人も今日は代休。
おかげで身の周りは閑散とした日になるだろう。
インフルエンザの主任さんには申し訳ないけれど、とても心が安らかだ。
彼女の常時テンパり気味なハイトーンを聞かなくて良く、
自分のペースで仕事が進められるなら、あの事務席に座っているのも苦ではない。

今日は、会社にタバコを持っていこう。

美容と健康と・・タバコを嫌う配偶者(仮)のために。
そして吸ってしまった後の罪悪感と、肉体的苦痛(吐き気・めまい)を味わわないためにも。

インフルエンザが流行っている。
あの病気には、思えば罹ったことがない。
肺炎はある。気管支炎もある。扁桃腺炎もあるけれど、
インフルエンザには罹っていない気がする。
ついでに言うとおたふくかぜと麻疹もまだである。
二十歳を過ぎたとき、注意された。
大人になってからは危険な病気だからね、と。

おたふくかぜねぇ・・
そんなものひかなくても、素顔がおたふくみたいな顔だから大丈夫ですよ。


***
ある日、彼が彼女に言った。
「今度うちに派遣で来た女の子がさ、『死にたいって思うの』って言うんだよ。
信じられないなあ。女性には多いんだね、そういうの」
彼女は驚いた。

「ない」彼は即答する。「ないよ」
「本当に一度も? 高校生とか、思春期のときにも? すごく辛いことがあったときにも?」
「ないよ」彼はまたしても即答だ。
「それどころか、『死んだらどうしよう』っていつも思ってたね」
彼は懐かしそうに目を細める
「小学生のとき、跳び箱に失敗して頭を打ったんだ。
脳出血で死ぬんじゃないかって、一晩悩んで眠れなかった」
それを聞いて彼女は更に驚いた。
死にたいと思ったことが一度もないなんて?
「変わってるね」思わずそう言っていた。
しかし彼は目を見開いて、さも驚いたという表情を作って答える。
「変わってないよ、死にたいと思う方が少数派だ」
「・・・」
「人間はほうっておいてもいつか死ぬんだよ。絶対死ぬんだよ。
なんでそれを早める必要がある? せっかく生まれてきたのに。
死にたくないのに死ななければならない人が世の中にはいっぱいいるんだよ。
なのにどうして、生きることを許された人間が、わざわざ死を選ぶ必要がある?」
彼の言い分はもっともに思えた。
それは正論だ、と思った。
彼女はしばらく沈黙した。
いろんな思いがすごい勢いで頭の中をぐるぐる回って、
言葉は口にしようとする端からするりと逃げて行った。
ようやく言えたのが、河童の話だった。
「ねえ、芥川龍之介の『河童』読んだことある?」
もちろん彼は怪訝な顔をする。
「あるけど忘れちゃったな」
彼女は話す。それがどこに帰結するのかわからないけれど、
とにかく今、それを話さなければならない気がしたから。
「河童の世界ではね、子供が生まれる直前、父親が訊くの。
お前は生まれたいか生まれたくないかって。
生まれたくないって答えると、そのまま消滅してしまうんだよ。
・・・芥川龍之介は生まれてきたくなかったんだね、きっと。
そして彼は、『将来に対するある漠然とした不安』のために
自殺してしまったんだ」
「・・ふうん?」
ふたりの会話はそこで終わった。
目指すお店に着いたからだった。
もう少し道が続いていれば、あと少し話し合っていたら、
どんな結論が出ていたんだろう?
それはきっと誰にもわからない。


高校時代、わたしにとって「死」は身近だった。
拒食症と過食症。糖尿病。不整脈。
それでなくても、死ぬということが、わたしには特別なことじゃなかった。
だから「自殺」もまた特別なことじゃなかった。
今すぐ死にたいって思ったことは少なかったけれど、
いずれ自分は飛び降り自殺をするだろうって奇妙な確信を持っていた。

死のうと思ったことが一度もない?
それが世の中の多数派なの?
自殺が特別なことでなく、
しかも一度でも本気で死を願ったことのあるような人間は、
やっぱり「普通」じゃないのだろうか?

今でも自死への思いは変わらない。
病死も事故死も自死も同じだという気がしてしまう。

わたしはマイノリティなんだろうか?
マイノリティでもかまわないけど。
配偶者(仮)。
そんなマイノリティなネガティブ人間を、あなたは本当に愛せますか?
死にたいって思うなんてありえないなら、
その有り得なさを体現しているわたしを、あなたはどう思っているの?






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Last updated  2005/02/22 09:32:43 PM
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