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正月になってワーグナーのオペラのことをうだうだ書いてきたが、オランダ人にしても、タンホイザーにしても、ローエングリンにしても、はたまたトリスタンにしてもワーグナーのオペラの女性主人公は圧倒的に「男性から好かれたい」というよりも「男性を好きになりたい」というタイプの女性ばかりだということにいまさらながら驚いている。ワーグナーは女性に「自己犠牲」を求めるのだ。「自己犠牲」とは難しい言葉だが、これはぼくにいわせれば、なんということはない。酔っぱらって溝に嵌まったぼくを、新しく買ったばかりのシャネルのスーツやフェラガモの靴が汚れるのを犠牲にして、助けてくれることを意味している。ワーグナーは自らを犠牲にしてまで自分を助けてくれる女性が好きなのだ。これとは逆に、自分が好きにならなければ意味がない、まず自分が好きになってこそ恋愛には意味があると考える男性もいる。良い例がブラームスだ。ブラームスはその生涯を通して年上のクララを思い続けて、クララに尽くした。女性に犠牲を求めるワーグナーとは正反対だ。ワーグナーはひとを熱狂させるが、ブラームスはワーグナーほど人を興奮させることはない。けれどもブラームスはじっくり、ねちねち型だが、間違いはない。小泉ワーグナーから安倍ブラームスに総理が替わって、安倍ブラームスの支持率はジリ貧だそうである。けれども、安倍ブラームスはじりじりと人気を得てくるとぼくは思う。ワーグナー的ハッタリが無いぶん、時間はかかるだろうが、安倍ブラームスの真紅の薔薇のような暗い情念がほのかに、いづれ我々に伝わってくると思う。2007年の1月の下旬にこんなことを考えた。
2007.01.24
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2006年も暮れかかっていた。忘年会の三次会から行きつけのバーへと流れてきた男は、カウンターのいつもの座り慣れた席に知らない女が一人座っているのに気づくとしげしげと女を眺めた。年の頃は30代の半ばか、愁いを帯びた切れ長の目になぜか男は郷愁に似た淡いときめきを覚えた。気がついたら男は女の隣の席に座っていた。ぶつぶつ喋りながらウィスキーを飲む男と、黙って男の話を聞く女。二人揃ってバーを出たのは午前1時過ぎ。もう電車は終わってしまっている。それほど飲んだつもりはなかったのに、バーを出た男の足取りはぎこちない。六本木の交差点で溝に嵌まりそうになった男、そんな男を見捨ててスタスタと足早にタクシー乗り場へと急ぐ女。女はこうつぶやく。「あんな酔っぱらいの中年おやじになんかカマッテられないわ。わたしは白鳥の騎士と結婚してセレブになるんだから…。」やっと見つけたタクシーで小手指へと向かう男はタクシーの中で細川たかしの♪矢切のわたし♪を口ずさむのだった。「♪連れて逃げてよ~、ついておいでよ~、風が吹く夜霧のたわーし♪」これがワーグナーのオペラ、「ニュールンベルグのマイスタージンガー」のあら筋だ。
2007.01.20
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あれっ、ミュミュの靴が…2006年も暮れかかっていた。忘年会の三次会から行きつけのバーへと流れてきた男は、カウンターのいつもの座り慣れた席に知らない女が一人座っているのに気づくとしげしげと女を眺めた。年の頃は30代の半ばか、愁いを帯びた切れ長の目になぜか男は郷愁に似た淡いときめきを覚えた。気がついたら男は女の隣の席に座っていた。ぶつぶつ喋りながらウィスキーを飲む男と、黙って男の話を聞く女。二人揃ってバーを出たのは午前1時過ぎ。もう電車は終わってしまっている。それほど飲んだつもりはなかったのに、バーを出た男の足取りはぎこちない。六本木の交差点で溝に嵌まりそうになった男、男を助ける女。男は女に何やら真剣に語りかけている。タクシーを捕まえようとして、思わずよろける二人。その時、買ったばかりのミュミュの靴の踵が溝に嵌まってしまって、倒れてしまう二人。溝に嵌まった二人を無常にも疾走してきたタクシーが轢き殺してしまう。これがワーグナーのオペラ「トリスタンとイゾルデ」のあら筋だ。
2007.01.17
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はじめて出会ったその日から恋の花咲くこともある。不倫の恋の言い訳の、ごくごくオーソドックスな第一のものは「好きになってしまった後で、相手が結婚していることを知った」というものだろう。けれども実際の社会生活ではなかなかそううまくはいかない。夫も子もいる奥さんを好きになってしまった。会社の妻子ある上司に恋をした。最初から相手が結婚していることを知っていて、恋におちる場合の言い訳は何がいいだろうか?ワーグナーはそれに明解な答えを出している。惚れ薬を飲んだことにすればいいのだ。ワーグナーが「ぼくが結婚しているか、と訊いてはいけない」オペラの次に作った作品は「わたしは夫を捨ててあなたのもとへ、惚れ薬を飲むわ」オペラだった。
2007.01.14
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運命の過酷さを嘆く女性のまえに突然現れた白鳥の騎士は、「けっしてぼくの素性を訊いてはいけない」と言った。訊いてはいけないと言われれば、訊いてみたくなるのは当たり前。そして訊かれたとたんに去っていくのも当たり前。「ローエングリン」はロマンチックなオペラだ。何よりも音楽が素晴らしい。この「ローエングリン」に魅せられて国を滅ぼした指導者が二人いる。バイエルン国王ルートヴィヒとアドルフ・ヒットラーだ。音源はヨッフムの1954年バイロイト盤が良い。
2007.01.07
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ねえ、あなた、結婚してる?2006年も暮れかかっていた。忘年会の三次会から行きつけのバーへと流れてきた男は、カウンターのいつもの座り慣れた席に知らない女が一人座っているのに気づくとしげしげと女を眺めた。年の頃は30代の半ばか、愁いを帯びた切れ長の目になぜか男は郷愁に似た淡いときめきを覚えた。気がついたら男は女の隣の席に座っていた。ぶつぶつ喋りながらウィスキーを飲む男と、黙って男の話を聞く女。二人揃ってバーを出たのは午前1時過ぎ。もう電車は終わってしまっている。それほど飲んだつもりはなかったのに、バーを出た男の足取りはぎこちない。六本木の交差点で溝に嵌まりそうになった男、男を助ける女。男は女に何やら真剣に語りかけている。「良いわよ、送って行くから」と女は言い、タクシーに乗り込む二人。「小手指までお願いします、運転手さん」そう言ったかとおもうと眠り始めてしまう男。タクシーが石神井公園付近まで走ると不安になる女。女はついに不安に耐え切れず男に訊ねてしまう。「ねえ、あなた、あなたって結婚してるの?」目を閉じて苦しそうな息をしていた男は急に目を覚ますと女にこう言う。「ぼくがあれほど“訊いてはいけない”と言ったのに、きみはぼくについに、訊いてしまったな。ぼくはきみから去らなければならない。」そう言ったかとおもうと、男は信号待ちで停車したタクシーから咄嗟に降りてしまう。ひとり残され途方にくれる女。残された女はこうつぶやく。「だって、つらくて悲しい不倫の恋はわたし、もうしたくないんだもん。あああ、あのまま、溝に嵌まったまんまにしておけば良かったわ。」これがワーグナーのオペラ、「ローエングリン」のあら筋だ。
2007.01.06
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ねえ、タクシー代、持ってる?2006年も暮れかかっていた。忘年会の三次会から行きつけのバーへと流れてきた男は、カウンターのいつもの座り慣れた席に知らない女が一人座っているのに気づくとしげしげと女を眺めた。年の頃は30代の半ばか、愁いを帯びた切れ長の目になぜか男は郷愁に似た淡いときめきを覚えた。気がついたら男は女の隣の席に座っていた。ぶつぶつ喋りながらウィスキーを飲む男と、黙って男の話を聞く女。二人揃ってバーを出たのは午前1時過ぎ。もう電車は終わってしまっている。それほど飲んだつもりはなかったのに、バーを出た男の足取りはぎこちない。六本木の交差点で溝に嵌まりそうになった男、男を助ける女。男は女に何やら真剣に語りかけている。「良いわよ、送って行くから」と女は言い、タクシーに乗り込む二人。「小手指までお願いします、運転手さん」そう言ったかとおもうと眠り始めてしまう男。タクシーが石神井公園付近まで走ると不安になる女。女はついに不安に耐え切れず男に訊ねてしまう。「ねえ、あなた、タクシー代、持ってるの?」目を閉じて苦しそうな息をしていた男は急に目を覚ますと女にこう言う。「ぼくがあれほど“訊いてはいけない”と言ったのに、きみはぼくについに、訊いてしまったな。ぼくはきみから去らなければならない。」そう言ったかとおもうと、男は信号待ちで停車したタクシーから咄嗟に降りてしまう。ひとり残され途方にくれる女。残された女はこうつぶやく。「だって小手指に送ってから浦安のわたしの家まで帰るとタクシー代、幾らになると思ってるの、あの男。あああ、あのまま、溝に嵌まったまんまにしておけば良かったわ。」これがワーグナーのオペラ、「ローエングリン」のあら筋だ。
2007.01.03
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