2003年09月06日
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十数分・・・車を走らせ、店に着いた。私はいつものように店を開ける準備をした。
大して忙しくもならないが、少し気分的には忙しく感じる時間だ。
準備も終わり、私は店の扉に掛る札をCLOSEからOPENに返す。

「一日の始まりだな・・・。」

私は小さく呟いた。

店の端のソファーに腰掛け、片手で本を器用に捲りながら、私の特製ブレンドを飲みながら好きな音楽を聴く。これがしたいが為に店をやっているようなものだ。
いつも、客なんて来なければいい・・・などと思いながら過ごすのだが、そういう訳にも行かず客は必ず来る。
店を開けてから数十分経った。いつもなら毎日来るサラリーマン風の男も不思議と今日は来ない。
私は「珍しいな?」と思いながらも気にせず、自分の時間を満喫した。


「今日はもう駄目だな。」
何時まで経っても客は来ない・・・。
「開けている意味も無いな・・・。」そう思った私は店を閉めた。

店を閉め、家に帰ろうと車に乗り込んだ。
今日は一体何の為に出て来たんだろう?こんなことなら部屋でゆっくりしていれば良かった・・・。」
そう思いながら煙草の煙を吐き出した。車を走らせているとおかしな事に気付く・・・。
「また、車が居ない・・・。」
いや、車だけでは無い!人影すら無いではないか!
よく考えてみると、私は今日一日、誰一人として出会っていない!
「おかしい!!」
そういえば、二十四時間営業しているコンビニ以外の店は電気すら点いていないではないか。

この世の私以外の人々は全て消えてしまったのではないか?ならば、全てが私の自由。
ふと、我に返る。自分の馬鹿な考えに思わず吹き出しそうになった。
「そんな馬鹿な話がある訳無い。」
私は小さな声で呟き、そのまま車を走らせ家路を急いだ。

家に着いた私は上着を脱ぎ、敷きっぱなしになっている布団に腰を下ろした。

最近、私は映画をよく観る様になった。
昔の私はどんな映画を観ても何も感じることも無く、観ることを拒んでいたのだが、ある女性に影響を受け観るようになった。
その人はもうこの世には存在しないが、自分自身を保つ為に映画や小説などを読んでいると言っていた。
日々、人間関係や仕事、自分自身の能力の限界などに悩み苦しみ、救われることなくこの世を去ってしまった。
私が唯一、自分の全てを曝け出し、心から愛せた人だ。
現存する自分が否ならば、逃げ出せば良い。映画の中、小説の中に生き抜いて、目が覚めれば新しい自分になれば良い。
毎日が同じ事の繰り返しに見えてもよく目を凝らせば全然違うから、新しい自分を見つけられる筈。
人から見れば現実逃避だと言う人もいるだろう。弱い人間にも見えるだろう。でも、それが強さになるのなら、生きて行く力になるならば素晴らしいものだ。

私は一日人と遭わないことで、彼女のことを思い出していた。

「こんな日も良いな。」

優しく話しかける様な口調で独り言を呟いた。そのまま思い出と共に時間が流れる。
暫くして、時の流れが私を現実に引き戻す。
「あっ!!」
ビデオの返却日が今日なのに気付く。そのままビデオを握り締め私はレンタルビデオの店に向かった。





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最終更新日  2003年09月09日 18時10分25秒
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