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2025.04.01
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カテゴリ: 報徳記を読む
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報徳記  巻之四  【2】中村玄順先生に見え教へを受く その4

報徳記&二宮翁夜話198

【4】細川候が中村玄順をして先生に領中再興の事を依頼させた。

 細川候はすでに60歳を越えていらしたが、男の子がいなかった。
だから有馬候の次男の辰十郎君を養子とされた。
辰十郎君はまだ細川家を継いではいなかった。
この君は大変英才であった。
細川家が衰弱し、上下とも艱難しているのを憂慮され、一度国家を経営し救って再興したいと願われていたが、その方法を得なかった。
ある時、玄順が君前にあって、古今その人によって国家の盛衰があることをお話した。
辰十郎君はこれを聞かれて感銘を受けて沈黙して聞いておられたが、近くに侍る者たちを退かして、ひそかに玄順に聞いた。
「私は有馬の家に生長して、かって艱難ということを知らなかった。
この家に養子にきて、上下の困窮が比類ないことを知った。

一度家政を改革して一家を再興し、養父の心を安んじ、領民の困苦を除きたいと願っているが、能力が及ばずその方法がわからない。
なんじもし思慮するところがあれば、国家のためにその言葉を尽くしてみよ。
私はひそかにそれを参考にしよう」と問われた。



「誠に殿様が憂慮されますように、連年このようにして年月を経過いたしますとどうにもすることのできない事態になりましょう。
私は医業をもってお仕えするもので、どうして国家の政治に関与できましょう。
そうであるのに、殿様が郡臣に問うことなく、ひとり私に質問されるということは、私がその職でないながら、国事を憂慮する忠義を推察されたからでございましょう。
そうであるのに、思っていることを残らず言上しないならば、必ず不忠の罪も免れますまい。
よって言上いたします一事がございます。
国家の衰廃を挙げることは非常に優秀な人物でなければできることではありません。
ましてや私のような愚かな者がどうして国家のためになることを知っておりましょう。
ところがここに世にもまれな優れた人物がおります。
名を二宮と申しまして、もとは相州(神奈川県)の小田原の民間の出身で、尋常でない行いを立て、知略も徳業も万人を飛び越えています。
小田原候がこれを挙用して分家の宇津家の領有が廃衰していたのの再興を任せられ、数年で成功して、三村の民は非常な艱難を脱して、平安の地を得ることができました。租税ももとのようになり、宇津家も積年の艱難をこれによって免れております。
小田原候はその功績を賞賛され、いずれは11万石の領地の再盛を任じたいとお思いになっています。
その事業や徳行の詳細にいたっては一言では尽くせません。
実に世にもまれな人傑であります。
私は理由がございまして二宮に一度面会したことがございます。
その高論を聞くに、とうとうとして大河のようで、治乱盛衰存亡吉凶の生ずるところの根元を談論するに、こんこんとして尽きることがありません。
殿様がもしこの人物に国家の再盛を委任され、その指揮にしたがって政治を改め、仁術をほどこすならば、十年を出ずして上下ともに艱難を免れて、おおいに国家の大きな幸せを開くことは疑いありません。
その良法を行うということであれば、私は愚かではありますが、その教えを受けて、上下のために一身をなげうって、再興の事業に心力を尽くしましょう。
殿様には復興の大枠を守っていただき、私がその正しい行いに力を尽くすならばなしとげることができましょう。」

玄順がそう申し上げると、辰十郎君はおおいに喜んで、
「本当にお前のいうとおりであれば、比べるもののない英傑といえよう。
二宮の力を借りて、その指揮にしたがって、おまえと心をあわせて勉め励むならば志願は必ず成就しよう。
ただ一つ難しいことがある。
群臣は何年ものあいだの困苦にせまられて、大変仁義の風を失って、みずから功業を言い立てることを好んで、人の功はさまたげ、他の善は忌み嫌う心が盛んで、国家のために私心を去って忠義を尽くそうとするものは少ない。
いま大業をおまえとともになそうとすれば、それを聞いてその是非を論ずることなく、ただもうこれを拒もうとすることは必然である。
私はいまだに部屋住みの身であり、命令することはできない。
このことを公にして命ずれば、きっと成功は難しいであろう。
おまえはひそかに私が辛苦しているわけと、二宮の道を行って国家を再盛したいという意思を、二宮のところに行って精しく告げて、当面行うべきところを聞いてまいれ。
二宮が私の辛苦を察すれば、必ず憐れみ大知をもってよい方法を示してくれるであろう。
そうすればまたそれに応じて行うことができる道を得るであろう。
おまえはこれを過ってはならない」と命じられた。

玄順はよろこんでこう言った。
「殿様ごあんしんください。
 私は古代中国の弁論家の宰我や孔子の弟子の子貢のような弁舌をふるって殿様の意思を貫通させ、二宮の良策を得て再び言上いたしましょう」
そう言ってその場を退出した。
そして再び先生のもとへ赴いたのであった。




巻之四【四】細川候中村玄順をして先生に領中復興の事を依頼せしむ

細川候齢(よわひ)既に耳順(じじゅん)を越え玉へども男子なし。
故に有馬候の次子(じし)辰十郎君(ぎみ)を養子となす。
時に辰十郎君(きみ)未だ世を繼(つ)がず。
此の君(きみ)頗(すこぶ)る英才あり。
國家(こくか)の衰弱上下の艱難を憂ひ、一度經濟(けいざい)の道を行ひ再興せんと心を盡(つく)すと雖も其の道を得ず。
一時(あるとき)玄順君前(くんぜん)に在りて、古今其の人に由(よつ)て國家の盛衰することを談ず。
辰十郎君(きみ)慨然として沈黙此の事を聞き、近習(きんじふ)の人を退かしめ、竊(ひそ)かに玄順に謂(いひ)て曰く、
余(われ)有馬の家に生長し曾(かつ)て艱難の事を知らず。
此の家に養はるゝに及びて上下(しやうか)の困窮比類なきことを知る。
此の如くして歳月を送らば負債山の如く、遂に亡國(こく)に類せん。
一度家政を改革し一家を再興し、養父の心を安んじ、領民の困苦をも除かんと欲すれども、不肖にして其の道を得ず。
汝若し思慮する所あらば、國家の爲に其の言を盡(つく)すべし。
我私(ひそ)かに之を參考せんと問ひ玉ふ。

玄順兼(かね)て先生良法の事を言上(ごんじやう)し、君家(くんか)を興(おこ)し、功業を立て一身の榮利をも取らんことを謀(はか)り、其の時を窺ひしに、今是の如きの問(とひ)を得て心中大いに悦び、時至れりと平伏して言上して曰く、
誠に君の憂ひ玉ふ所の如く、連年此の如くにして年月(としつき)を經(へ)ば、如何(いかに)とも爲(な)すべからざるに至らん。
微臣醫(い)を以て業とす、何ぞ國家の政(まつりごと)に與(あづか)らんや。
然るに君群臣に問はずして獨(ひと)り愚臣に問ひ玉ふは、臣兼(かね)て其の職にあらざれども國事(こくじ)を憂ふるの微忠を察し玉ふの故なるべし。
然るに意中を殘(のこ)さず言上せずんば、必ず不忠の罪を免れず。
因(よつ)て言上し奉るの一事(じ)あり。
國家の廢衰(はいすい)を擧(あ)げんとすること非常の俊傑(しゆんけつ)にあらざればあたはず。
況んや臣の愚蒙(ぐもう)の如き何を以て國家の有益を知らん。
斯(こゝ)に希世の英才あり、名を二宮某(ぼう)と云ふ。
元相州(さうしう)小田原民間に人となり、非常の行ひを立て、知略徳行萬(まん)人に超過(てうくわ)す。
小田原候之を擧(あ)げ分家宇津家の采地(さいち)衰廢(すいはい)再興を任じ、數年にして功業成就し、三邑(いふ)の民危急の艱苦を脱し、平安の地を得、貢税往時に倍し、宇津家積年の艱難之が爲に免れたり。
小田原候其の功を賞賛し玉ひ
盡(つ)くすべきにあらず、實(じつ)に希世(きせい)の人傑なり、臣故(ゆゑ)ありて二宮に一面することを得。
其の高論を聞くに滔々(たうたう)として洪河(こうが)の如く、治亂(ちらん)盛衰存亡吉凶の生ずる處(ところ)其の根元を談ずるに、混々(こんこん)として其の盡(つ)くる所を知らず。
君若し此の人に國家再興の道を委任し、
其の指揮に應(おう)じ改政仁術を施し玉はゞ、十年を出でずして上下(しやうか)の艱難を免れ、大いに國家の大幸を開かんこと疑ひあるべからず。
其の良法を行ひ玉はゞ、臣愚なりと雖も其の教示(けうし)を受け、上下(しやうか)の爲に一身をナゲウち、再興の事業に心力を盡(つく)すべし。
君は興復の大體(だいたい)を守り給ひ、臣は其の正業に力を盡(つく)さば何事か成らざらんやと辯(べん)をふるひて言上しければ、辰十郎君(ぎみ)大いに悦び、誠に汝の言の如くならば、無双の英傑といふべし。
二宮の力を借り、其の指揮に隨ひ、汝と心を合せ勉勵(べんれい)せば志願必ず成就せんか。
斯(こゝ)に一つの難事あり。
群臣數年の困苦に迫り頗(すこぶ)る仁義の風を失ひ、自ら功を立てんことを好み、人の功を妨げ、他の善を忌むの心盛んにして、國家の爲に私心を去り、忠を盡(つく)さんとするもの鮮(すくな)し。
今大業(だいげふ)を汝(なんぢ)と共に擧(あ)げんとせば、之を聞き其の是非を論ぜずして徒(いたづら)に之を拒まんこと必(ひつ)せり。
我未だ部屋住(へやすみ)たり、專(もっぱ)ら令することあたはず。
此の事を公然として發(はつ)せば必ず成すことあたはず。
汝竊(ひそ)かに余が辛苦する所以(ゆゑん)と、二宮の道を行ひ國家を再興せんとするの意中を、二宮に往きて具(つぶ)さに告げ、當時(たうじ)の處置(しょち)を問ふべし。
二宮余(よ)が辛苦を察せば、必ず之を憐み大知を以て處置(しょち)の宜(よろ)しきを示さんか。
然らば又之に應(おう)じて爲す可きの道を得ん。
汝此の事を過(あやまつ)つ勿(なか)れと命じ玉ふ。
玄順悦びて曰く、
君勞(らう)し玉ふことなかれ。
臣(しん)宰我(さいが)子貢の辯(べん)を振ひ、君意を貫通せしめ、二宮の良策を得て、再び言上し奉らんと云ひて退き、再び先生の許(もと)に至れり。





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最終更新日  2025.04.01 00:00:25


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