日本語で話そう

November 1, 2013
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カテゴリ: 中山道六十九次



雨の中、熊にも会わず、然してずぶ濡れにもならず藪原宿に着いた。
無情にも出て行ってしまった電車を見送り、食堂かレストランを探すもそんなものはどこにもなく、駅からすぐ畑と山間を縫う自動車道路が有るばかり。

おばさんが1人待合室にいる村の公民館で雨宿りしながら、喜多さんと作戦会議を開く。

スマホで次の宮ノ越駅から塩尻に戻る特急が出る木曽福島宿までの普通電車の時間と木曽福島発の特急の時間を調べる。

そしていつも参考にしている地図と今回奈良井宿でもらった木曽路用の中山道地図で、今いる所から次の駅の宮ノ越駅までの距離を見積もった。地図ナンバー68の藪原から、次の地図の宮ノ越までせいぜい6キロ。
1時間半あれば楽勝で行かれる。

そんなこんなを話している脇で、集まりが有ると皆を待っていたお婆さん、だれも来ないのでどこかに公衆電話で電話を掛けていた。そして、集合時間を1時間間違えていたらしい。公民館を出て行った。
「お婆さんだからねえ、間違えちゃたんだねえ。だいじょうぶかねえ」

「あのお婆さん雨の中、なんで帰って行ったと思う?自分で軽トラック運転して帰って行ったよ」

交通の便が悪い木曽路、強くなきゃ生きられない。



そして、公民館を出て弥次喜多珍道中再開。

そこからはほとんど車のびゅんびゅん行き交う国道の脇の歩道を歩く。
歩道には柵が有るといっても、ひっきりなしに通るトラックからの風圧はすごい。傘を持つ手がしびれた。

そしてついに、車道の水たまりを通過したトラックが、それまで運よく濡れなかった私のパンツにバシャンと水をかけたのである。

レインコートから出ている下半分ずぶ濡れ。

山間の狭い空間、国道と川と鉄道が橋やトンネルや洞門や鉄橋で何度も交差する。
しかし、歩いても、トンネルを抜けても、歩いても、橋を渡っても、なかなか宮ノ越駅には着かないのであった。

私より年を取っている喜多さんが遅れ始める。
また電車が行ってしまったらどうしようと弥次さんは焦る。


宮ノ越の村に入る手前で、中山道は木曽義仲の資料館の方向に、川を渡り国道から離れる。

そして、そこに表示が有った。
中山道、宮ノ越駅まで1.8キロ。

「まだ1.8キロも有るじゃない。絶対無理だよ」喜多さん叫ぶ。

そうだ絶対無理だ。



負の連鎖。

私はほとんど競歩状態で進む。川向こうの中山道は、観光で来た時、歩いたことが有る。2度歩く必要はない。なんて、無理矢理自分を納得させて線路のすぐ脇の中山道ではない道を歩いた。いや競歩した。

後、10分。
夫がこの速さに付いて来られるか心配しながらほぼ走り状態に突入。

街並みに入った。

道路から駅に曲がる道から駅まで50mの登り坂。
後5分。心臓が早鐘を打つ。

何で駅はいつも高いところにあるのかとぶつぶつ言う。

幸い駅員がいない。改札も自動切符売り場も無い。
後は上り線に渡る線路橋の階段を登って、階段を降りるだけ。

後3分。
下りの階段はもう足ががくがく、心臓がバクバク。

そしてホームに降り立った時は残り時間2分。

自分でドアを開ける普通電車がゆっくりと入って来た。

  • IMG_1098.JPG






座席に座るのもはばかられる濡れ鼠で、レインコートを脱ぎ、リュックを降ろす。

そして、傘と一緒に握りしめ歩きながら見たよれよれになった地図を仕舞おうと確認したら、

何と

68番の次が70番になっているのであった。
私が印刷し忘れたのである。

しばらく放心状態。

そこに無い抜かしてしまった69番の地図の距離はたぶん4km。
地図は無くても歩いた距離は見積もりプラス4km。

「そんなことだろうと思ったよ。弥次さんの言う通りなら、僕の計算でちゃんと着くはずだからな」

喜多さん、呆れ顔でずぶ濡れの靴下を脱いで、昨夜履き替えた洗濯してないけど、乾いている靴下をリュックから出してまた履いていた。





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Last updated  November 1, 2013 08:36:39 PM コメント(10) | コメントを書く
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