日本語で話そう

July 20, 2017
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カテゴリ: スイス2017
前回の解答

さて回らない頭で私の取った行動は策4

バームクーヘンさんいい線いっています。35km歩いたと書きましたから。歩いたんですよ。その後も。
2万円ほど出せばクライネシャイデックの山小屋ホテルの簡易宿泊施設に泊まれ、帰国後気付いたのだが、なんとメインリッヒェンにも4万円ほど出せば泊まれる小綺麗な山岳ホテルが有ったのだ。

何を血迷ったのかその時は斜め移動でもう1つ下の駅に行けば終電に途中で乗れると思ってしまった。そして、アルピグレン迄はまさかそんなに距離はないだろうと。

写真に見える道は急降下の道。こう見えて斜度がきつい。疲れた足で1,200m直降下はきつい。

メインリヒェン
メインリヒェン posted by (C)灰色ウサギ

確かに緩やかに下る道では有ったが、40分ほど歩いてもなかなか駅が近付かない。なんと見上げると200mほど上に策1のクライネシャイデックの山ホテルが見えるではないか。その場の標識はアルピグレン迄は40分ほど。クライネシャイデック迄は45分直登。クライネシャイデックまでの電車は間に合わないし登りだ。

ここでまた決断を迫られる。まだアルピグレン迄ならなんとか電車に間に合うかもしれない。登ったらホテルが満員だった場合困るし。


よく言われる。山ではリーダーの判断間違いが遭難の一因になることもと。

しかし、斜めに下る見通しだったのが殆ど横移動していたとは。だからそこからはアルピグレンに向かって車の通れる道では有るが、かなりの急勾配で下る。一度谷に下りて又アイーガー北壁直下の駅に向かって登る。なんだか無駄な動き。

なんとかぎりぎり間に合いそうだ。

と、道はいつしか牛のたくさんいる牧場内を通過している。やな予感。

当たり。
その日の予感は遅め遅めに当たる。
夕暮れ時で牛がどこかに向かって移動中だった。勝手に移動中。我らが進む道の真ん中でたくさんの牛が「モウ、モウ」とこっちを見て鳴く。睨まれている気分。威嚇されている気分。
そういえばちょっと前、オーストリアでハイキング中の女性が牛に襲われて死亡というニュース読んだばかり。
怖いよう。

我ら4人、道を避けて脇の低木、岩石ゴロゴロの斜面に登る。牛だってそんな斜面は平気のへっちゃらだけど。
「こっちこないで、こっち見ないで」



10m牛を避けているうちに10分過ぎ15分過ぎ。

反対側からをマウンテンバイクの青年が登って来て、道の真ん中で牛の頭を撫でた。
「え?」
我ら全員、斜面に凍りついているのを見て彼は言った。
「大丈夫だよ。ほらスペインの闘牛の牛とは違うから」

牛たちの行列の前に出た。
「ありがとう」
でも、今度は牛の行列が後から追いかけてくる。「モウモウ」鳴きながら。牛って本当はすごく早く走れる。

やっと駅まで10分ほどの所、電車の踏切と道が交差するところに来た時、山を下る登山電車の音が聞こえて来た。

踏切で立ち止まる。
呆然と電車を見上げると、運転手さんがにこやかに窓から身を乗り出して手を振っていた。

釣られて手を振ってしまう。我らの今の心境などわかるまい。のんびりハイキングを楽しんでいると思っているだろう。

万事休す。

後に残された選択肢は1つのみ。ただひたすら眼下に見えるグリンデルワルドの村を目指して下山するのみ。真っ暗になる前に。標識はそこから約2時間と出ている。今の我らの足では2時間では着くまい。

がっくり。

急勾配の緑の牧草地の所々にシャーレや農家。砂利道を滑らないように慎重に下る。足が棒のようだ。登山靴の中の足の指が下りで靴に当たり痛い。

日暮れは遅いのでまだ明るいが午後8時を過ぎればだんだんに暗くなる。真っ暗になるまでに着くだろうか?

少しでも早い小道を選べば斜度がきつくズルズル滑る。転倒の危険を回避すればくねくねと遠回り道。

だんだんと暗くなり始めた農家の陰にマーモットが動く。今は可愛いとも感じる余裕もなくただ惰性で足を動かす。

このまま遭難するのか?野宿は嫌だ。凍え死ぬかも。

暗くなる、さっきいたメインリッヒェンがシルエットになってその向こうに陽が沈む。後少しで夜が来る。闇が来る。午後9時過ぎ。

「あ、アイガーが赤く染まっている」アイガー大好き長女が言った。

そんなこともうどうでもいいけど、という気持ちでアイガーを見上げる。北壁はもうはるか遠くだ。それでも繋がりの山が真っ赤に燃えていた。綺麗。

アイガーの一部
アイガーの一部 posted by (C)灰色ウサギ

電気が着いた村の灯はそんなに遠くはない。賑やかに夕飯を食べているだろう声のするシャーレの数も増えて来ている。

娘たちがスマホの電灯で照らしてくれる。谷を降りきり、川を渡り又駅に向かって50mほど登ればグリンデルワルドのメインストリートだ。

しかしもう歩けそうもない。
娘たちが励ましてくれる。ずっとアルピグレンあたりから気遣ってくれていた。

老体に鞭打って最後の丘を登りアパートにたどり着いたのは午後11時ごろになっていた。

全員ご飯も食べずに即寝たのだった。

誰かが息絶えているといけないので、互いに早朝一回部屋を巡って点呼、安否確認して又10時ごろまで寝たのだった。

遭難しなくてよかった。
ホテル代ケチらなくて、着替えなどなくても山岳ホテルに泊まれば良かった。後悔と安堵。

(どうせそういう状況は後でやって来たのだから。飛行機が遅れた記事へ。)







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Last updated  July 20, 2017 04:38:51 PM
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