健康コラム
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とても仲の良い母子がいました。かつては母と娘だったのかもしれませんが、娘さんが大人になってからは二人の関係は少しずつ変化し、まるで気心の知れた親友のようになっていました。 二人はよく懐かしい思い出話をしては、時を忘れたかのように過ごしていたのですが、いつの頃からかそんな二人の会話がスムーズに進まなくなり、娘さんが苛立っている姿を見るようになってきていました。 大好きなお母さんのはずなのに、一緒にいると苛々してしまう。つい辛く当たってしまって、後で自己嫌悪に陥ってしまう。仲良しの二人の関係を変化させてしまっていたもの、それが徐々に進行していくお母さんが患っていた認知症でした。 いつもと変わらず元気で、見た目も何も変化していない。しかし、徐々にその人がその人でなくなっていく。私の中で認知症はその人がその人として存在しなくなるという意味で死と同じものとして捉えられ、怖ろしいものの一つとなっています。 急速に高齢化が進んでいるとされる日本で、既に認知症の患者は65歳以上の7人に1人の割合とされ、2025年には700万人にも達するとされます。認知症で最も多いのがアルツハイマー型の認知症で、全体の7割を占めていて、次いで多いのが脳の血管障害による脳血管性認知症の2割、残りの1割がレビー小体型をはじめとする認知症となっています。 大多数を占めるアルツハイマー型認知症ですが、原因ははっきりとは判っておらず、効果的な治療法の確立には至っていません。現在、アルツハイマー病と診断されて処方される処方薬には、「認知症の進行を抑制するものではない」「本剤の有効性は確認されていない」といった趣旨の一文が注意書きに添えられていて、アルツハイマー病治療の難しさを窺わせてくれます。 アルツハイマー病の原因は脳内にアミロイドβと呼ばれる特殊なタンパク質が蓄積する事で、蓄積によってダメージを受けた神経細胞が死滅して機能不全を起こすと考えられてきました。そのためアミロイドβを発生させない、蓄積したアミロイドβを除去する事がアルツハイマー病の治療法確立の方向性とされてきました。 しかし、このコラムでも幾度か取り上げた事があるのですが、アミロイドβの蓄積は結果であって原因ではなく、原因が的確に捉えられていないために解決が遠のいているのではという考え方も根強く存在していました。 火災が起こると建物が使えなくなり、建て替えが利かないので火災が繰り返されるとやがて街が機能しなくなる。そこで建物が使えなくなる過程を観察すると、その場にはたくさんの消防士が集まってきている。街を守るために消防士が集まらないようにする、もしくは消防士を追い返す、消防士自体の数を減らすといった事が行われているのではないか、本当に必要なのは消防士の排除ではなく火災の予防なのではないか、そんな観点から確立された新たな治療法、それが「リコード法」とされます。 リコード法ではアミロイドβは脳にダメージを与えるものではなく、脳を守るためのものとし、脳に起こるダメージは炎症によるものとしています。脳に炎症を引き起こす原因は食事などで摂取した成分によるものから栄養素の不足、重金属やカビといった毒素など、36種類があげられています。 認知症は36種類の原因が複雑に絡む事から、「36個の穴が開いた屋根」に例えられていて、それぞれが認知症を引き起こす原因でありながら、どこにどのような穴が開いているかは個人によって相当違いがあり、個別に大きいものから塞いでいく事が治療に繋がるとされます。 脳が炎症を起こす原因を探って解毒を行い、ダメージを受けた神経細胞の再生治療を施す事で回復へと繋げる事ができるそうで、リコード法を実践している医院ではすでに100件以上の症例で投薬治療を行い、そのほとんどで神経細胞の再生と認知機能の改善が確認されているといいます。 アルツハイマー病は原因不明の治らない病気から、視点を変えた事で治せる病気へ。挙げられている36の原因は一般的で多くの人が当てはまるだけに、リコード法が広く普及する事を願ってしまいます。
2019年03月22日
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