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レイトショーで『マッドマックス フュリオサ』を観てきました~! これ、前作『マッドマックス 怒りのデスロード』の前日譚でありまして、どうしてフュリオサが砦を出て、かつて緑豊かな女の園があったところへ戻ろうとしたのか、なぜ彼女は片腕が義手なのか、といった謎が明らかにされます。ネタバレになっちゃうので、これ以上は言いませんが。 『怒りのデスロード』も迫力があって、かつちょっと馬鹿げたところもあって、面白かった記憶がありますが、今作も同じような方向性の面白さがありました。一見の価値ありです。教授のおすすめ!これこれ! ↓『マッドマックス フュリオサ』公式サイト それにしてもちょっと驚いたのが、前作の『デスロード』を観たのが2015年の今頃の時期だったこと。 2015年って、9年前じゃないですか・・・。私の感覚だと、3年くらい前のことだとばかり思っていたのですが、実際にはその3倍前だったという・・・。 そうか、前作を見た時は、まだ父も生きていたのか・・・。まだ自己啓発本の研究を始めて間がないころだったのか・・・。 もし次作『マッドマックス ウェイストランド』が公開されるのが9年後だとすると、その頃にはワシは古希だよ、古希。 そうならない前に、次作公開してほしいわ~。
June 26, 2024
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昨夜レイトショーで『帰ってきた あぶない刑事』を観てきました~。 まあね、ストーリーとかは、この際どうでもいいの。要するに、舘ひろしさんと柴田恭兵さん、中村トオルさんと浅野温子さんが躍動してくれさえすれば、っていう。 で、実際、躍動しておりました。舘さんと柴田さんは既に70代ですが、そうとは思えぬダンディさで、歳を重ねた分、むしろ余計カッコよかった。 で・す・が・・・ しかし、そうは言っても、やっぱりみんな歳をとったな、という感じはあるのよね。 テレビドラマとしての『あぶない刑事』がオンエアされたのが1986年。私が大学院修士課程の頃。二十代前半、身体にも脳みそにも皺ひとつないお年頃ですわ。その頃、舘さん・柴田さんも三十代半ばで、当然、若かった。 そこから38年経って、『あぶ刑事』が帰ってきたわけですけれども、さすがにもうこれでおしまいだろうなと。あと5年後とかに『帰ってきた あぶない刑事 リターンズ』とかは作られないだろうなと。もうその頃には、舘さんなんか80歳目前だもんね。80歳近くになって、手放しで大型バイクに乗りながら、ショットガンとかぶっぱなせるかっていうね。柴田さんも、後期高齢者になってまで、横浜の街を疾走できるかっていう。 そういう風に考えると、人生って短いなと。 映画の最後のシーンで、横浜の港の風景の中、舘さんと柴田さんが走っていって飛び上がるところを見ながら、お二人とも、「これが最後の大ジャンプ」と思っていらしたのかな、なんて思うと、なんか、切なくなってきちゃってねえ・・・。 はあ・・・。 私は舘さん・柴田さんより一回り歳下ですけれども、あと10年もすれば、色々なことが「これが最後の・・・」となっていくんだろうな。「これが最後の海外旅行」とか、「これが最後のクルマ購入」とか。 はあ・・・。 なんか、ポジティブな私にしては珍しく、人生の短さ・むなしさを感じておセンチな気分になってしまった昨日の映画鑑賞だったのでした。
June 3, 2024
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映画『アイアン・クロー』を観てきました。ので、心覚えをつけておきましょう。以下、ネタバレ注意です。 「アイアン・クロー」といえば、私のような往年のプロレス・ファンには懐かしいフリッツ・フォン・エリックのこと。リンゴを握りつぶす握力で、相手のこめかみを握りつぶす荒業で知られた名レスラーでございます。もっとも、役柄としてはヒールだったので、実力はありながらNWAのヘビー級チャンピオンにはなれなかった。 で、NWAのチャンピオンになれなかった、という無念さが、彼をして息子たちを鍛え上げ、自分の跡を継がせて、何としても一家からチャンピオンを出したいという執念に結び付くわけですよ。で、最初は次男(長男は若くして亡くなったので、実質彼が長男的存在なのですが)のケビンと三男のデビッドがプロレスラーとなり、次に陸上選手でモスクワ・オリンピックを目指していたものの、アメリカのボイコットで夢破れた四男のケリーも兄たちに続いてレスラーとなる。 で、いよいよタイトル戦ができるほどの実力をつけた兄弟でしたが、ベルトへのチャレンジを父から最初に許されたのは、次男ではなく三男だった。で、三男もその気になって頑張るのですが、あと少しでタイトル戦という時に、日本遠征中に急病で亡くなるという悲劇が一家を襲います。 で、次こそは次男がベルトにチャレンジと思いきや、またもや父親に許されたのは四男のケリーの方。で、この時はケリーが実際にタイトル戦に勝利してチャンピオンになるのですが、ベルトを獲ったその日、バイク事故を起こして片足を切断することに。その後彼は義足をつけてレスラーとして復活しますが、元のようには活躍できず。 一方、三男の死と四男の悲劇をみて、五男のマイクがレスラーになることを志願しますが、もともと体格的に向いていなかったのか、練習試合中の怪我がもとで昏睡状態となり、奇跡的に命拾いしたものの、障害が残ってしまう。その後、マイクはそのこともあって自殺してしまいます。 そして、さらにその後、四男のケリーも自殺。 結局、次男のケビンは、一番、父親の期待に応えたかったのにそれが出来ず、しかも仲の良かった弟たちがすべて亡くなってしまうという状況に見舞われるわけ。本当の彼は、真のファミリーマンであり、家族が一緒にいるということを誰よりも大切にしていた男だった。その男が、可愛がっていた弟たちすべてを失うという。そこがね、本当に悲しいの。 でも、この一家で唯一、生き残ったケビンには、いい奥さんがいて、いい子供たちがいて、フリッツ・フォン・エリックの息子たちの中で唯一、一家の名を後世につなぐことになるのよ。色々あったけど、ケビンが生き残って、ここを起点に4人の子供たちと13人の孫が生まれ、大家族となって今は牧場経営をしながら幸せに暮らしている。その結末がこの映画の救いになっているわけね。 『アイアン・クロー』は、そんなプロレス一家の歴史を描いた佳作だったのでした。これこれ! ↓『アイアン・クロー』公式サイト
April 23, 2024
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昨日の夜、レイトショーで『デューン Part 2』を観に行ったんですわ。 で、チケット売り場でチケットを買おうとして、ふと手が止まった。ん? これは「吹き替え版」ではないか?! 驚くべきことに、その映画館ではもはや字幕版の上映がなく、吹き替え版しか上映していなかったのでした。いやあ、洋画観に行って、吹き替え版しかやってない、なんて状況にこれまで立ち至ったことがなかったので、面食らったわ・・・。 あとで調べたら、他の映画館でも字幕版の上映が間もなく終了するところばかり。『デューン』ほどのSF大作が、今や日本ではこういう扱われ方をするのね。 とにかく、洋画を吹き替え版で観るなんて無粋なことはワタクシにはできないので、『デューン』はあきらめ、急遽『オッペンハイマー』を観ることに。まあ、いずれ近々に観る予定ではあったので、順番は逆になったけどいいかなと。 というわけで、予定外に『オッペンハイマー』を観ることになったのですが(以下、ネタバレ注意)、「原爆の父と呼ばれたオッペンハイマーの栄光と苦悩を描く」という謳い文句通りの映画でした。原爆の開発をめぐるエピソードが全体の6割くらい。後半の4割は、「ソ連のスパイ」疑惑をかけられ、檜舞台から引きずり降ろされていくオッペンハイマーの後半生のゴタゴタを描くことに費やされております。 まあ実際、オッペンハイマーも脇が甘いというか、女性関係のモラルがないし、共産主義の理想に共鳴するのはいいとして、そこを突かれて人に利用されることも多かった。まあ、天才物理学者とはいえ、オッペンハイマーはそこそこ欠点の多い人なわけよ。そりゃ、仕事上の才能が傑出している人に対しては、人間としての人格も一級品であってほしいとつい思ってしまうけれども、必ずしもそうならない、なんてことはどこにでもある話でね。 オッペンハイマーだって、ある意味、どこにでもいる普通の人なんですな。 でも、その普通の人が、大量殺人平気たる原爆を作っちゃった、というのは事実であって、その責任は重い。もちろん、それを開発している時には、それを開発しなければならない国家的・時代的な理由があったし、仮にナチス・ドイツがアメリカより先に原爆を開発していたらどうなったか、ということも考えなければならない。ユダヤ系のオッペンハイマーにしたら、なおさらそう。 しかし、原爆が完成してしまうと、もうそれはオッペンハイマーの手を離れ、アメリカのものになってしまう。そしてオッペンハイマーの意図とは関係なく、実際に使われてしまう。開発だけさせられて、その後は梯子を外されてしまうわけよ。しかし、そんな風に梯子を外されたにもかかわらず、原爆の父という倫理的責任だけは負わされるというね。 まあ、哀れなもんですわ。ある意味。その哀れな男の、茫然とした表情で映画が終わるというのも、実にふさわしい。 人間に火をもたらしたプロメーテウスは、その後、永遠の罰を受けることになる、という、映画冒頭に示されるテーマが、最後のシーンに引き継がれる。そういう感じでしたね。 というわけで、3時間の大作、非常に面白かったのですが・・・ではこの映画が映画史に残る傑作かと言われると、うーん、どうかな。 まあ、史実映画の限界というか、史実(あるいはその解釈)を超えるものではないからね。「そういうことだったんですよ」で終わっちゃうから。それ以上でもそれ以下でもないという。 それだったら、同じノーラン監督の史実映画でも『ダンケルク』の方がはるかにドラマチックだったかな。『ダンケルク』は二度観てもいいけど、『オッペンハイマー』をもう一度、3時間かけて再見したいとは思わないもんな。 っつーわけで『オッペンハイマー』、面白くはあったけれども、個人的には「大傑作」というよりは「大佳作」という評価だったのでした。
April 4, 2024
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映画『デューン』のパート2が公開中。で、先日、これに備えて前作(パート1)をアマプラで見直して、パート2を見る準備をしたわけよ。 で、準備は整ったのだけど、その時点でなんていうか、その、疑問が出てきまして。 つまり・・・『デューン』って、面白い? っていう・・・(爆!) まあ、宇宙を支配する皇帝のおかげで、お父さんを殺され、流浪の身となってしまった若者が、復讐を企むっていう話なんだけど、まあ、大きなくくりで言えば『スター・ウォーズ』(エピソード4)と同じだよね。 だけど、『スター・ウォーズ』は、楽しいじゃん? ルークは愛嬌があるし、C-3POとかR2-D2とか、可愛い連れがいるし、レイア姫もステキだ。そして頼りになるんだかならないんだかよく分からないハン・ソロがいるし、チューバッカもいる。ルークがジェダイの騎士としての自覚を持ち、成長していく過程も面白いし、それをサポートするオビ・ワンも高貴な感じだ。 それに引き換え、『デューン』はどうよ。主人公の若者ポールは暗いばかりでルークほどの愛嬌がない。友達いなさそう。で、ヒーローなのにお母さんと一緒に旅をするというところがマザ・コンっぽい。それからゼンデイヤ演じるヒロイン・チャニも、なんとも微妙だ。レイア姫のようなチャーミングさがどこにも・・・。ハン・ソロ的なひねりの効いたサブ・キャラもいないし。 っつーわけで、『スター・ウォーズ』と比べて、なんかしんねりむっつりした映画だなと。 しかもさ、『デューン』のストーリーって、皇帝に目をつけられたポールの親父さんが、配置換えになるって話で、要するに、社内の争いに負けて子会社に出向させられたサラリーマンの悲哀みたいな感じじゃん? それで無念の死を遂げた父の仇をとるため、息子が頑張るみたいな。 ・・・これ、要するにアレじゃん。『半沢直樹』じゃん。ポールは堺雅人じゃん。 広い広い大宇宙を舞台に、描いているのは社内の派閥争いって。ストーリー自体がせこいよ! しかも、ポールとゼンデイヤがアラキスの砂漠を旅する絵は、ほとんどバルカの砂漠を彷徨う堺雅人と二階堂ふみと同じだ。『VIVANT』だよっ! 事実、ゼンデイヤと二階堂ふみは、どう見ても同一人物じゃないか! つまり『デューン』は、『半沢直樹+VIVANT』なんだ! しかも、『半沢直樹』や『VIVANT』より、よっぽどつまらない(ドラマがない)っていう。じゃ、それ見る価値ある? ということで、3時間の長丁場となる『デューン・パート2』、見に行くべきか、やめておくべきか、ちょっと考えてしまうワタクシなのでありました、とさ。ま、結局は見に行くんだろうけどね・・・。
March 18, 2024
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マシュー・ヴォーン監督の映画『アーガイル』を観てきました~。以下、ネタバレ注意です。これこれ! ↓『アーガイル』公式サイト ヒロインのエリー・コンウェイはスパイ小説の作者。凄腕スパイ「エージェント・アーガイル」の活躍を描く小説ももう5作目なんですが、最後のシーンが決まらず、その相談をしに母親に会いに行く途中、列車の中で謎の組織に襲われ、間一髪のところ、これまた謎のスパイ、エイダンに助けられる。なぜエリーが組織に狙われたのかというと、彼女の書く小説が、現実のスパイ組織の活動をそのままなぞったようなものだったから。つまり、エリーの描くスパイ小説の通りに現実が動いていたと。 となると、エリーの次作に、実在の組織が追い求めている秘密ファイルの行方が描かれるに違いない。そこで組織はエリーを捕まえることに躍起になっていたわけ。 さて、期せずして組織に追われることになったエリーの運命やいかに? そして謎のスパイ・エイダンとエリーの関係は? ・・・というようなお話。 まあ、何と言っても傑作『キングスマン』シリーズの監督であるマシュー・ヴォーンのこと、一筋縄ではいかない筋書き。なかなか面白かったっす。笑えるシーンも数々あり、結構楽しめたかな。教授のおすすめ!です。 しかし、この先も観たい映画が目白押し。まずはアカデミー賞を総なめにした『オッペンハイマー』を観なくては。そして『デューン』の続きも観なくてはいけないし、そうなると『デューン』の前半を思い出すために、復習しておかなくてはいけない。忙しい、忙しい。映画好きとしては、嬉しい悲鳴ですわ。
March 11, 2024
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相変わらずゼミ生からの卒論草稿を待っているのですが、全然来ない。待ちくたびれたので、この無駄な時間を有効に使おうと、映画を観ちゃった。観たのはかの有名な『コヤニスカッツィ』。 え? 『コヤニスカッツィ』知らない? まあ、知らないでしょうねえ。私もつい最近まで知らなかったもん。 これねえ、7年くらい時間をかけて作られ、ようやく1983年に公開されたドキュメンタリー映画で、ゴッドフリー・レッジオという人が監督を務めているんだけど、フランシス・F・コッポラがプロデュースの片棒を担いでいるので、むしろコッポラ作品であるかのように認識されている、レッジオ監督には気の毒な映画なの。 で、ドキュメンタリー映画とはいえ、ナレーションは一切入ってない。映像と音楽だけ。 内容は、人間の文明。人間のというか、アメリカの、かな。とにかくアメリカの現代文明が地球の自然の上に何を築き上げたか、ということ。それを批判するわけでもなく、誇るわけでもなく描くっていう。でも、まあ、一応は批判になっているのかな? というのも、本作のタイトルである『コヤニスカッツィ』とは、ホピ・インディアンの言葉で「平衡を失った世界」という意味だから。この世界は、バランスが崩れちゃったよね、と。 でも、映像自体は美しくもあるから、見ていると、ああ、キレイだなと思うことも多々ある。バランスは崩れているかもしれないけど、人間って、よくもまあ、これだけの人工物を作り上げたなという感慨はある。 だって、ちょっと前まで、人間なんてただのマシラに過ぎなかったんだよ?! そのマシラが、たかだか百年とか千年くらいのうちに随分すごいことをやってのけたじゃん、という思いはしてきますわ。 で、こういう、文明批判のドキュメンタリー映画が1970年代半ばに計画された、ってことが、私の研究的には意味があるわけ。つまり、これもまた、カウンター・カルチャーとかニューエイジの一つの成果なんでしょうからね。で、ここからさらに、アル・ゴアの『不都合な真実』とか、そういうのにつながっていくわけじゃん? というわけで、1980年代前半のアメリカを騒がせた話題の文明批判映画『コヤニスカッツィ』、しかと見届けた今日のワタクシだったのであります。これこれ! ↓【中古】コヤニスカッツィ [DVD] 監督:ゴッドフリー・レジオ 製作:フランシス・フォード・コッポラ/ゴッドフリー・レジオ
January 8, 2024
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12月もあれよあれよという間に中旬に入りまして。この調子で、あと2週間なんてあっという間に過ぎちゃうんだろうなと。 っつーことで、本年もそろそろ年末企画、「今年を振り返る」ものを順次やっていこうかなと。 で、まずは「今年観た映画ベスト5」をお届けします。では、第5位から。第5位:『ドミノ』 ベン・アフレック主演で、脳をハッキングすることのできる特殊能力を持った悪人の魔手からどう逃れ、彼らの悪だくみを阻止するか、というテーマの話で、月並みっちゃー月並みなんですけど、最後にどんでん返しがあって、観客は絶対に騙されるという仕組みがちょっと面白い。第4位:『シカゴ7裁判』 1968年のアメリカ民主党大会への乱入事件の裁判の推移を追いながら、抑圧的なアメリカ政府と、カウンター・カルチャーの闘士たちの攻防を描くもので、仕事がらみで見始めたものの、映画として相当面白いものになっていることを発見。結末も結構感動的でよかった。地味な作品ですが、熱烈おススメです。第3位:『ジョン・ウィック コンセクエンス』 キアヌ・リーヴス主演の『ジョン・ウィック』シリーズの完結編。完結編らしく、殺し屋の掟に基づく殺し屋同士の派手な殺し合い映画ですが、キアヌのファンとして、またこのシリーズのファンとして感慨無量。第2位:『ミッション・インポッシブル デッド・レコニング(前篇)』 お馴染みトム・クルーズ主演の『ミッション・インポッシブル』シリーズの完結編・・・の前篇。これは映画がいいとか悪いとかではなく、トムの代表作だから観るでしょっていう。問答無用の作品です。早く後編が見たい! そして栄えある第1位は・・・第1位:『RRR』 今年は、もう、これで決まりでしょ。3時間を超す長丁場の映画ですが、長いと感じさせない。映画の楽しみってのはこれでしょ、と改めて気づかされるほど、ハラハラ、ドキドキの連続。義理と友情が齟齬をきたす、そんな苦しい状況の中で、二人の男が対決! まあ、面白い映画でした。 さて、ベスト5は上に述べた通りなんですが、逆に観てがっかり、期待外れの映画もありました。以下、ワースト3を挙げていくと・・・期待倒れ第3位:『オペレーション・フォーチュン』 ガイ・リッチー監督、セクシー禿ことジェイソン・ステイサム主演だから面白いかと思って大分期待して観に行ったんですけど、うーん、月並み、月並み。全然ドキドキしない。続編も作れそうなラストになっていましたけど、もうおなか一杯です。期待外れ第2位:『バービー』 今を時めくマーゴット・ロビー主演、ライアンのゴズリングさんも出るということで、これも大分期待して観に行ったのですが、ダメでしたねえ。設定からして、もっと面白い作品、考えさせる作品になりそうなのに、単なる「男性支配社会に対する女性たちの反乱と、男性たちの反発」的なところに落としちゃった。イマイチでしたねえ。期待外れ第1位:『エブリシング・エブリウェア・オール・アト・ワンス』 鳴り物入りだったので、これも期待したのに、その期待に遠く届かなかった。 ま、こんなところかな。 来年は、クリストファー・ノーラン監督の『オッペンハイマー』がなんと言っても楽しみだし、あと、『ミッション・インポッシブル デッド・レコニング』の後編や、『デューン』の続きもそろそろ観られるのではないかと。まずはその辺に期待しましょうかね。
December 13, 2023
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3年生のゼミで、今日、ゼミ内発表をする予定の学生がインフルエンザにかかり、お休みすることに。で、今日のゼミはそのゼミ生の発表を中心に組み立てる予定だったので、すっかり予定が狂ってしまいました。 で、雑談でダラダラ時間を過ごすのもアレかなと思ったので、短めの映画でも見せようかと思い、研究室に置いてあるDVDを物色して選びだしたのがスティーブン・スピルバーグの出世作『激突!』。上映時間が89分なので、90分授業の中でギリギリ最後まで観られるなと。 で、ゼミ生たちと見始めたのですが、やっぱり面白いんだよね。たまたま追い抜いた大型トレーラーに、しがないセールスマンのクルマが煽られ、追いまくられるという、ただそれだけのストーリーなんだけど。 顔が出てこないトレーラーのドライバーのいわれのない悪意。田舎の住人たちのよそ者に対する親切気と他人行儀が表裏一体となった態度。一介のセールスマンの家庭内/仕事中の孤独。そういう四面楚歌の状況の中でついにセールスマンはヒロイックに立ち上がり、悪のドライバーと一騎打ちをするのだけど、相手に勝利したとて何の意味もない。20世紀の不条理って、こういうものだよな、というのがよく分かる。 でまた、舞台となっているのはカリフォルニアの果てしなくつづく禿山の大荒野で、あの辺に足しげく行ったことのあるワタクシとしては、光景からして懐かしい。 そして、日本人には『警部マクロード』で顔なじみのデニス・ウィーバー主演というところもいい。 ということで、ゼミ生たちはしらず、既に何度も観ている映画であるとはいえ、私は十分に楽しむことができたのでした。 しかし、この映画、1971年の公開なんだよね。1971年! もう52年前じゃん! 半世紀以上前の映画だったのか! いやはや。
November 21, 2023
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昨日、レイトショーで『ドミノ』という映画を観てきました。以下、ネタバレ注意ということで。 ベン・アフレック演じるローク刑事は、最愛の娘ミニー(6歳くらい?)を何者かに誘拐され、それがもとで夫婦仲も悪くなり、失意の日々を過ごしているんですな。 で、仕事には復帰したのですが、そこでいきなり銀行強盗の現場に行き当たる。 ところが、その銀行強盗をしている人物は、人の意識を乗っ取ることができるようで、誰もが皆、彼の言いなりになってしまうわけ。 しかし、なんとか彼の先回りをして、銀行強盗が狙っていると思しき貸金庫の中身を確認すると、なんと、ロークの娘の写真と、そこに書かれたメモ書きだった。 銀行強盗はなぜこの写真を狙っているのか。彼はロークの娘の誘拐に関わっているのか? 依然としてミニーの写真を追ってくるこの男の魔の手を逃れつつ、ロークは彼を逮捕し、娘を取り戻すことができるのか??? っていうお話。 あらすじだけお話するとこんな感じなんですけど、この映画の面白いところは、実は上に述べたあらすじが、本作の肝要なところでは全然ない、というところなのよ。 え、それどゆこと? と思うでしょ? 気になる方は、是非映画館に足を運んでください。なかなか面白い映画ではありましたよ。これこれ! ↓映画『ドミノ』
November 6, 2023
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現在公開中の映画『オペレーション・フォーチュン』を観て参りました。ま、私はガイ・リッチー監督のファンですし、主演のジェイソン・ステイサムも嫌いではないので。 まだ観ておられない方のために、一応、以下、ネタバレ注意ということで。 と言っても、さほど複雑なストーリーではなく、例によってイギリスが持つ重要な機密であった「ハンドル」というもの(当初、それが何なのか、不明)が盗まれ、武器商人の間で取引が行われようとしていることが判明。そこでイギリス政府は、腕利きのフリー・エージェント、オーソン・フォーチュンことジェイソン・ステイサムをリーダーとしたチームに、「ハンドル」の奪還と、それを取引している悪い奴らの壊滅を依頼する。かくしてオーソンは天才女性ハッカーのサラと、腕利きスナイパーのJJ、それに、囮としてハリウッド・スターのダニーの3人と共に行動開始。 ところが、イギリス政府は、一つのチームだけにこの重要ミッションを託すのを恐れたのか、「マイク」なる男をリーダーとする別チームに同じミッションを与えていたんですな。ということで、オーソン・チームとマイク・チームの二つのチームが、「ハンドル」を追うことになる。 で、「ハンドル」の取引をする仲介役が、ヒュー・グラント演じるグレッグという大富豪なので、チームはこの大富豪の慈善チャリティー・パーティーに潜り込み、「ハンドル」取引の実態を探り始める。 さて、オーソンたちは無事、「ハンドル」の謎を突き止め、これが悪人の手に渡るのを阻止できるのか? そしてマイク率いる別働チームとの駆け引きは? ・・・というようなお話。 まあ、構成としてはよくあるスパイもの映画の定石なので、新味はないかな。あとはジェイソン・ステイサムらが縦横に活躍するのと、おヒュー様が演じるコミカルな大富豪とのからみをどれだけ楽しめるかにかかっているという。 じゃあ、この映画、ワタクシが熱烈おすすめするかっていうと・・・ちょっと微妙かな。お好きな人には、面白くなくはないよ、っていう感じ。これこれ! ↓『オペレーション・フォーチュン』 しかし、それにしても、平日に観に行ったとはいえ、観客は入ってなかったねえ・・・。我々含めて7,8人だもん。もう、洋画って、娯楽産業として成立してないんじゃない? ガイ・リッチーも、一生懸命作ってこれじゃ泣くわ。 次は、ベン・アフレックの出る『ドミノ』を観ようかと思っているのですけど、こっちも閑古鳥かもね。
October 18, 2023
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『ジョン・ウィック』シリーズの最終章、『コンセクエンス』を観てきました。 ネタバレしないよう、中身については触れませんが、コンチネンタル・ホテルで殺しをしてしまったがために、首に賞金がかけられ、世界中の殺し屋から狙われることになったジョンが、身分の回復と、組織からの自由を得るために最後の闘いをする、というお話。 本作のトレードマークとなった戦闘シーンの激しさはいつも通り(いや、いつも以上)であり、かつ、今回は真田広之とかドニー・イェンとか、ゲストもすごいメンツが揃っているので、見ごたえは十分。真田にせよ、ドニーにせよ、ジョンとは親しい友人同士なのに、互いに争わなくてはならない立場に置かれているというところがなんとも切なくて。 3時間の上映時間が短いと感じられる内容。まだ観てない方には、教授のおすすめ!と言っておきましょう。 なお、コンチネンタル・ホテルのコンシェルジュたる「シャロン」役の俳優、ランス・レディックさんが亡くなられたということで、本作はランスさんに捧げられていましたが、彼が冒頭の方だけチラっと出演しているのがちょっと寂しい。いい役どころでしたからね。これこれ! ↓『ジョン・ウィック コンセクエンス』
October 3, 2023
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ジョン・ウィックものの最新作、『ジョン・ウィック:コンセクエンス』が封切られたということで、私も近々、映画館に行くつもりなのですが、それと同時にお楽しみがもう一つ。 ネット・フリックスで、ジョン・ウィック・シリーズの前日譚として、この映画で重要な役割を果たす「コンチネンタルホテル」にまつわるショート・ドラマ・シリーズが公開されたんです。 で、これは3話構成なのですが、現在の時点で公開されているのは、第1話のみ。で、それを観てしまったというわけ。 面白かった! 殺し屋たちの巣窟というか、その種の犯罪者の憩いの場所として運営されているコンチネンタルホテル。このホテルの中でだけは、決して殺し合いを演じてはならないという不文律があるというね。 で、ジョン・ウィックもここのホテルの常連であったわけですが、映画版ではこの不文律を冒したおかげで、アメリカ中の殺し屋たちから命を狙われる危機にある。 で、このネット・フリックス・ドラマは、そんなコンチネンタルホテルの成り立ちが描かれているわけよ。 で、現在のところ、まだホテルの支配人はウィンストンじゃないの。ウィンストンの前職が勤めている。で、その前職を演じているのが、誰あろうメル・ギブソンだっていうところが、映画ファンとしては痺れるわけ。 で、結局、このネット・フリックス・ドラマは、ウィンストンがこの前職を襲って、ホテルの支配人になるまでを描くのでありましょう。 ということで、『コンセクエンス』も楽しみだし、ネトフリの方も楽しみ。秋の夜長を楽しむには、最高の組み合わせなんじゃないでしょうかね。これこれ! ↓『ザ・コンチネンタル』
September 27, 2023
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先日、『カラー・オブ・ハート』という映画の話を書きましたが、あれ、結局観ちゃったんですよね。アマプラで。まあ、400円のレンタルでしたが。 で、映画自体は1998年の作品で、この中で主人公たちは1958年の白黒テレビドラマ『Pleasantville』の物語世界の中に入り込んでしまうという設定になっている。つまり、40年前の世界にタイムスリップするわけね。 だからこの映画のキモは、1958年と1998年の間のアメリカ社会のモラルの変化を面白おかしく描くというところにあるわけ。 で、40年前のアメリカでは、子供が親に逆らうなんてことはありえないと。それから性的なことに関しても非常に奥手であったと。それは、子供だけでなく大人にとってもそう、という意味ですが。で、その辺については、未来からやってきた二人のうち、特にそういうことに積極的なジェニファーが色々教えてあげる、という話になっていく。 あと、プレザントヴィルという町の図書館には、一応本は詰まっているけど、中身は全部白紙。だけど、タイムスリップした二人の若者のうち、特に本好きのデイヴィッドが小説の内容を語ると、白紙の本が本物の本に変わるわけ。 で、その時にデイヴィッドが教える小説というのが、『ハックルベリー・フィンの冒険』と『ライ麦畑でつかまえて』なんですな(その後、『白鯨』と『チャタレー夫人の恋人』のこともチラッと出て来る)。 だけど、その後、町の保守的な人たちの反撃の中で、図書館の本は焚書されてしまう。 とまあ、そういう面白い話が続くのですが、私としては、この映画の中に『ライ麦畑でつかまえて』が登場するところが、とても面白いところだったんですわ。実際、『ライ麦』は、ある時期のアメリカで、焚書されたことがありますからね。 要するに、1950年代のアメリカでは、『ライ麦』は非常に性的なほのめかしに満ちた本だと思われていたことの傍証になるわけですよ、この映画は。実際には全然性的なところのないこの小説が、それでも当時の大人たちからすればそういうものに見えたというところが、私には非常に面白い。 なんでそういう風に見えたのかといえば、多分、この小説のペーパーバック版の表紙絵のせいだと思うんですよね。中身を読んだらそうじゃないというのが分かるはずなのだから。中身じゃなくて、表紙を見て、子供に読ませたくない本だと、当時の大人たちは判断したに違いない。 その辺について、今度、インタビューを受けることになりそうなので、いい材料ができました。 っつーわけで、400円払ってもこの映画を観た甲斐はあったかな。
September 6, 2023
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伝説のヤッピー映画『アメリカン・サイコ』を観ました。以下、ネタバレ注意ということで。 ヤッピーってのは、1980年代のアメリカに登場した若い都会派エリートのことなんですが、その生態をクリスチャン・ベール演じるパトリック・ベイトマンを通じて描くという映画。 パトリック・ベイトマンは、フィリップ・エクセター・アカデミーからハーバード大学、そしてハーバード・ビジネス・スクール(大学院)を出た俊秀で、自分の父親が所有する金融会社ピアース&ピアースの若き副社長を務めているという設定。超高級アパートに住み、最高級の服装に身を包み、ボディ・ケアも完璧。実際に働いているシーンはなく、常に自分と同じような身分の同僚たちと一流のクラブやレストランにたむろしている。 その遊び仲間は、仲間とはいえ、互いに人間的な付き合いはなく、身を包んでいる服のブランドで相手を認識している始末。よって、相手の名前すら取り違えていることも多く、その間違いすら訂正しないので、結局、誰が誰なんだか分からずに付き合っているような状態。 そんなある日、ベイトマンに衝撃を与える出来事が。仲間の一人、ポール・アレンが、自分の持っている名刺よりもっとセンスのいい、上等な名刺を持っていることに気が付いたのだ。そしてそのことが許せなかったベイトマンは、アレンを自宅に呼び、殺してしまう。そしてアレンの自宅(これも自分の自宅よりも高級だったので、ベイトマンはさらに嫉妬する)に忍び込み、旅行鞄に旅装を詰め、彼がロンドンに旅立ったように偽装する。 で、人を殺すことに味をしめたベイトマンは、以後、娼婦やら何やら、次々と猟奇的に殺し始めると。 しかし、ベイトマンの言動に疑惑を抱いた探偵に追われることになり、ついにベイトマンは自分の顧問弁護士に電話をし、自分が何十人も殺したことを自白。 ところが、翌日、その弁護士に会うと、その弁護士は、ベイトマンを別人と勘違いしていたこともあり、彼の自白をジョークとして受け流してしまう。その上、弁護士自身、ロンドンでポール・アレンに会ったとも。また彼が殺した被害者を隠していたポール・アレンの高級アパートは、いつのまにか売りに出されていた。 かくして、パトリック・ベイトマンは、自分の犯罪を自白したにもかかわらず、なんのお咎めも得られず、なんのカタストロフも得られないことが判明。途方に暮れたところで、ジ・エンド。 という話。 さて。 どゆこと? パトリック・ベイトマンが行なった犯罪のすべては、結局、彼の妄想に過ぎなかったとか? あるいは、パトリックが殺した人は、本当はポール・アレンではなかったとか? パトリックも友人から別人に勘違いされていたように、パトリックがポール・アレンだと思っていた人は全くの別人だったとか? ま、とにかく、人を殺すというようなことをやっても、もはや、パトリック・ベイトマンの日常には何の変化も得られない、そういう地獄に入ってしまったということなのでありましょう。つまり、彼が何者であるかを特定するものは何もないという状況になってしまったと。 思うに、そこなんだろうね、この映画のポイントは。 1960年代のヒッピーとかイッピーってのは、社会を変えようと思ったわけよ。ところがそれは叶わないということが判明し、反動がきた。 で、1970年代のアメリカ人は、ミー・イズムにとらわれ、今度は社会とは関係なく、自分自身を変えようとした。自分自身の意識改革ですな。社会は信じられないけど、自分という存在は認識できるので、それを変えようと。 ところが、1980年代のヤッピーの時代になると、もはや自分自身が誰なのかもわからなくなってしまったと。自分も分からないし、他人も分からない。友人の名前すら正確に覚えていないんですからね。 そうなると、自分を確定するものは、名刺しかない。名刺に書いてある名前、それが自分であることは確かだから。だから、その名刺が自分の存在証明ということになると。 で、自分の存在を確認し、自分が他人より優れていることを確認してくれる唯一のものである名刺に関して、人が自分より優れたものを持っていたとしたら? それは許せないということになるでしょう。で、パトリックはポール・アレンを殺すのだけれども、そうしたところで、既にパトリックを確定するものは何もなくなってしまったと。存在しているのに、存在していないのと同じになってしまった。 そういう1980年代のヤッピーの在り方の諷刺として、『アメリカン・サイコ』という作品が登場したと。まあ、そういうことなんでしょうな。 映画として、決して出来のいいものではないですけど、時代考証としては、そこそこ面白かったかな。これこれ! ↓アメリカン・サイコ [DVD]
August 28, 2023
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昨夜、レイトショーで『バービー』を観てきました。以下、ネタバレ注意ということで。 バービーというのは、アメリカのマテル社が1959年に生んだ着せ替え人形なんですが、日本のリカちゃん人形と違って成人女性の体型をしているというところが画期的だった。で、1960年代以降のアメリカの女の子は、この着せ替え人形で遊んだわけよ。 ところが60年代のアメリカは第二次フェミニズム時代ですから、当時のフェミニストはこれに対して大反発。「女性はきれいなお着物を着ていればいい」というのを女児に教え込むとは、何たる遊び道具か!ってんで、猛烈にバービー人形を攻撃したと。 ところが70年代に入ると、これが逆転。バービーは着せ替え人形だから、医者の服を着せればバービーは医者ということになる。宇宙飛行士の服を着せればバービーは宇宙飛行士ということになる。つまり女性だって自分がなりたい職業に就けるのだ、ということの象徴に祭り上げられ、バービー人形はフェミニストたちから絶賛される人形になると。 かくして、70年代以降のバービーは、アメリカの女の子たちのロールモデルとなるわけ。またそれにともなってバービーも変質し、「金髪碧眼」のバービーだけでなく、黒人バービー、アジア人バービー、車椅子バービーなど、様々な亜種が追加発売されていくんですな。女性美には色々な形があるということを、人形が教えてくれるようになった。 というわけで、バービー人形というのは、アメリカにおいて、非常に重要な意味を持つ人形になっていくわけよ。まずはそれを知っていないと、この映画の意味は分かりません。 で、本作ですが、マーゴット・ロビー演じる金髪碧眼の普通型バービーが、彼女の住むバービーランドで毎日毎日、楽しい日々を送っているのですが、そんなある日、彼女はバービーランドではありえない思想、すなわち「死」とか「老い」など、否定的な思想をチラッと抱いてしまうわけ。で、その結果、彼女の身体は劣化し、その日常に異常が生じてしまう。 で、どうやらバービーランドと人間の住むリアル・ワールドの間にヒビが生じたらしいということが判明し、そのヒビを修復するため、バービーはバービーランドを出て、リアルワールドに行くことにする。そしてかつて自分を可愛がってくれた人に出会い、なぜ自分が劣化したのか、その理由を問い質すことにするんですな。 で、バービーはリアルワールドである現在のカリフォルニアを訪れるのですが、バービーランドの世界とリアルワールドにはもちろん違いがありますから、そのカルチャー・ギャップに遭遇したバービーは様々なことに面食らうことに。一方、バービーランドからバービーが一体、人間社会に紛れ込んだという報せを受けたマテル社でもひと騒動が持ち上がり・・・ さて、この騒動、どういう風に解決されるのか!? っていうお話。面白そうでしょ? 実際、面白いのよ。 冒頭、バービー人形の創生を描いたシークエンスが抜群にいいし、そこからバービーランドの日常を描くシークエンスもすごくいい。マーゴット・ロビーも、バービーを演じるのにピッタリ。ハーレイ・クイーン役よりいいんじゃない? で、バービーのボーイフレンドたるケン役のライアン・ゴズリングもいいよ。 ただ・・・ 私はてっきり、バービー人形の今日的な意味が揺らいでいる、という話になるのかと思ったのよ。特に、バービー人形が暗示する「若さゆえの美」という基準が、現代に合わなくなってきた、とか、そういう話が展開するのかと。ところが、実際にはそうではなくて、バービーワールドにおける女性上位の世界観と、リアルワールドにおける男性上位の世界観がぶつかって、後者が前者に侵入するという話になって行ったのは、ちょっと意外というか。 結果、この話はバービーの覚醒というより、マチズモに陥ったケンの覚醒に力点が置かれてしまうことになり、出発点と着地点に齟齬が生じてしまったような・・・。 というわけで、思っていたよりも喜劇的な展開になってしまって、そこが、ちょっとワタクシ的には不満だったかな。ま、喜劇的な側面が強調されているので、ドタバタ喜劇的に面白いものにはなっているのだけれども。 ところで、この映画、アメリカでは興行的に成功を納めているらしいですが、日本ではさっぱりだね! 昨夜も、観客数は大きなスクリーンには申し訳ない、たったの6人だったからね。 例の「原爆ヘアー・バービー」の悪評がもたらした結果かもしれないけど、バービーの何たるかがそもそも理解されていない日本では、ヒットは無理なのかもね。これこれ! ↓映画『バービー』
August 23, 2023
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ジェリー・ルービンへの興味から、『シカゴ7裁判』という映画をネットフリックスで視聴しました。 そしたらね、これがまた、意外なほどに素晴らしい映画だったのよ。どうせよくある実話モノでしょと思って、さほど期待していなかったんだけど、その低い期待を大きく上回るものでした。 1968年の8月に、アメリカ民主党の大統領候補を定める民主党大会がシカゴでありましてね。これは結構重要な政治ショーなんですが、この当時、アメリカはベトナム戦争遂行中。っつーことで、革命家ジェリー・ルービンとしては、この政治ショーを利用して、反戦運動を盛り上げようという腹づもりがあり、大衆を煽動して他州からシカゴへ向かったわけ。「イッピー」の同志アビー・ホフマンも一緒にね。 で、これとは別に、学生運動の指導者トム・ヘイデンとレニー・デイヴィス、良識的な政治活動家デイヴ・デリンジャーなど総勢7名が、それぞれ立場の違いはあれど、シカゴ民主党大会での煽動活動に携わることになり、警察とのいざこざから逮捕され、時の大統領から告訴されるという羽目に陥ると。これが後に言う「シカゴ7」という奴で、本作はこのシカゴ7の面々の裁判を描いた映画ということになるわけ。実際には、ブラック・パンサー党のボビー・シールも途中までは同じ裁判で裁かれたので、被告は8人なんですが。 で、この裁判がもう、滅茶苦茶なのよ。何せ原告は大統領だからね。大統領が負けるわけにはいかない。検察側もエリート中のエリートを持ってくる。判事も徹底的に原告寄り。原告に有利な証言をするのは、FBIとかCIAとか警察の犬ばっかり。これに対し、被告側弁護を担当する良識的弁護士のウィリアム・クンスラーとレナード・ワイングラスが、何度も法廷侮辱罪を適用されながらも、シカゴ7の弁護に努めるという図式。 とはいえ、シカゴ7の方も、政治的な立場がそれぞれ違うし、政治的アプローチも違うので、決して一枚岩ではない。ケンカや仲間割れもしょっちゅう。でも、根本的なところで、現行のアメリカの政治体制への不満というところは一致しているので、そこで辛うじてつながっているというところがある。 とまあ、こういう四面楚歌の中で、どうやって裁判を戦うのか、っていうのが本作の見どころ。 で、これがね、すごく良かったの。アメリカの闇と光のせめぎ合い。アメリカって、本当に馬鹿で愚かしいこともするけれど、それでもこの国には信頼するに足る良識があるなと思わせてくれる、そういう映画。 ほんと、一見の価値ありです。興味のある方は是非!これこれ! ↓シカゴ7裁判
August 22, 2023
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この夏最大の話題作、『ミッション・インポッシブル デッド・レコニング』(正確に言うと、その「パート1」)を観てきました~。 まあ、ネタバレになるので細かいことは言いませんが、このご時世にちなんで、今回の「敵」は「AI」ね。で、そのAIをコントロールできるものが世界を支配できるっちゅーことで、その鍵となる鍵の所有をめぐって悪い人たちとIMFのメンバーとの壮絶な奪い合いが始まると。 まあ、ストーリー自体は月並みですけど、その争奪戦の映像はスゴイからね。迫力満点。お金を払って大スクリーンで見るだけの価値はある。 ただ、前々作から持ち越したヒロインの一人、イルサちゃんがね、イルサちゃんがね、イルサちゃんがーーーー(涙)。 私は『ミッション・インポッシブル』のみならず、『007』も加えた歴代ヒロインの中で、この人が一番好きだったのに・・・(涙)。 っつーことで、その点は不満ですが、とにかく「パート2」の上映が待たれる作品であることは確か。教授のおすすめ!です。これこれ! ↓『ミッション・インポッシブル』トレーラ―
July 26, 2023
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私の好きな『リトル・ミス・サンシャイン』でアカデミー賞助演男優賞を獲ったアラン・アーキンが亡くなりました。享年89。 で、アーキン死去のニュースを読んでいたら、彼がかつて『暗くなるまで待って』でオードリー・ヘップバーンと共演していたとあったので、「ん? そうだっけ?」と思い、どの役だったっけなあなどと思いつつ、たまたま大昔に録画してあったこの映画を観直してみました。 すると・・・ 観直すも何も、私はそもそもこの映画を観たことがなかったことが判明! 道理で、アーキンがどんな役で出ていたか、知らなかったはずだわ・・・。 っつーことで、とにかくこの映画を初めて観たわけですけれども・・・ うーん・・・、たしかにアーキンは本作一番の悪役として登場しておりましたが、全体として大した映画じゃないね。もちろん、ヘプバーンが出たからといって、すべてが名画になるとは限らないわけですが。 (以下、ネタバレ注意)まあ、筋書としては、麻薬の密輸の話で、麻薬を人形に隠して密輸しようとたくらんだ女が、あとで取り返すつもりで空港で赤の他人に一時的にその人形を託すのですが、託した男の家に出入りしている手伝いの少女が、その人形を自分の家に持ち帰っちゃうんですな。 だもので、密輸女を殺したアーキンら悪党どもがこの家に踏み込んで人形を探すも、それがあるはずもない。そこで、悪党たちは一計を案じ、この家の主人が麻薬密輸女の愛人で、既にその愛人も殺してしまったということにして、主人の妻を脅すことにするわけ。人形さえおとなしく手渡せば、主人が殺人容疑をかけられることもないぞ、と。 で、その脅した妻というのが、オードリー・ヘップバーンなのよ。しかも彼女は盲目という設定。 だけど、さすがヘップバーンは賢いので、悪党どもの策略を見ぬき、何とか彼らの魔の手を逃れようとするのですが、なにせ盲目というハンデがあるので、なかなか簡単には悪党どもを出し抜けない。 さて、ヘップバーンは悪党どもの魔の手を逃れ、無実の罪を着せられそうになっている夫と再会することができるのでしょうか? ってな話。 最後に、悪党の親玉、アラン・アーキンとヘップバーンの一対一の対決となり、ヘップバーンが盲目であることを逆に利用し、家じゅうの照明を全部壊して、悪党が暗闇の中で動きが取れないようにするというところが見どころなんですが、そこで深手を負ったアーキンが、思わぬところからピョーンと飛び出してきて、ヘップバーンの足を捕まえるシーンがあるのよ。 で、そのピョーンにビックリした私が思わず悲鳴をあげてしまい、一緒に見ていた家内と大爆笑するという・・・。 まあ、その私の悲鳴が、この映画で一番面白かったかな。 ということで、アラン・アーキン、若い頃よりも年を取ってからの『リトル・ミス・サンシャイン』での名演で記憶にとどめておいた方がいいな、と確信した次第。 『リトル・ミス・サンシャイン』で面白い爺さん役を演じたアラン・アーキンのご冥福をお祈りいたします。合掌。 これこれ! ↓リトル・ミス・サンシャイン【Blu-ray】 [ アビゲイル・ブレスリン ]
July 3, 2023
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マッツ・ミケルセンの主演映画『アナザー・ラウンド』をアマプラで観たので、心覚えをつけておきましょう。 本作でマッツは高校の歴史の教師役。でも、全然仕事に熱が入らず、生徒からも保護者からも不安視されている。また私生活の方も二人の息子たちに愛想を尽かされ、奥さんとの仲もあまりうまくは行ってない。 マッツはかつてはやる気満々の先生で、博士号を取得し、大学の先生になることを目指していた時期もあるのですが、子育ての大変な時期と重なったこともあり、その夢を断念。その辺りからやる気を失って、平凡な先生になってしまったのでありましょう。 で、同じ高校に、気の合う仲間が3人いるのですが、それぞれ、マッツと同じような状況にある。 そんな時、仲間の一人が「アルコールの血中濃度を0.05%に保つと、やる気が出る」というような言説を聞きかじってくる。で、マッツを含めた4人はこの言説を実際に試してみようと思うわけ。 すると・・・ アルコールでハイになった彼らは、今までとは打って変わった授業ぶりで、生徒受けも急上昇。かつて若く、教育に情熱を燃やしていた頃の記憶が蘇ってきて、至極いい調子・・・ だったのですが・・・ あまり調子がいいものだから、4人はさらに実験を過激化しちゃうわけ。アルコール血中濃度をさらに上げたらどうなるか、もっと素晴らしい授業ができるようになるのではないか、という幻想を抱いてしまうんですな。 で、そこから先は転落するごとし。アル中のようになってしまって、生活が一方的に荒んでいく。そしてついにある悲劇が・・・ さて、彼らはこの悲劇を乗り越えられるのか? アルコール摂取実験のその先にあったのは? というようなお話。 まあ、しょぼい高校の先生を演じても、マッツ・ミケルセンはカッコいい。それだけは確かに言えます。それで総合評価はといいますと・・・ うーん。佳作マイナス、くらい? なんでもそうですけど、酒に頼ってはダメってことですな。これこれ! ↓『アナザー・ラウンド』 映画としては、そこそこって感じでしたけれども、デンマークのごく普通の家の様子がとてもいい。こういう家(アパート?)に住みたいと思うほど、部屋の間取りとかインテリアが素敵。そこはね、私も大いに楽しむことが出来たのでした。
April 30, 2023
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今年のアカデミー賞を総なめにした『エブエブ』こと『エブリシング・エブリウェア・オール・アト・ワンス』を観てきました。以下、ネタバレ注意です。 だけど、ネタバレっていうほどの筋はないんだよね・・・。 実はこの映画の筋って、すっごくシンプルなんじゃないかと。 ただ、その意味するところは、「人の人生には、色々なところに結節点があって、そこに二股に分かれた道がある」っていうこと。どちらかの道を選ぶことで、どちらかの道を捨てたことになるわけだけど、それは要するに、「もし捨てた道の方に行っていたら、こういう風になっていたかも知れない」というパラレル・ワールド(今風に言えば「マルチ・バース」ね)が無数にある、ということでもある。 で、そういうマルチ・バースを沢山積み上げながら、とにもかくにも、今の自分がいると。 だから、今の自分というのは、見方によれば、「後悔」でしかない。あの時にああしていれば、あの時にあの人の方と結婚していれば、とか、そういう後悔が積み重なっての今。 で、『エブエブ』のヒロインも、その後悔の只中を生きているんだけど、最終的に彼女は、自分の今の姿と和解するのね。 それと同時に、彼女は自分の娘とも和解する。それまで彼女は、娘が自分の人生をある方向に進もうと思っていることに反対・・・まではいかなくとも、後ろめたいように感じていたわけよ。だけど、自分の人生と和解した時に、娘には娘の人生があって、それは娘が選ぶものであり、その結果、娘が幸せになろうが、後悔しようが、それは娘が自分で責任を持つべきものなんだ、ということを悟るわけ。 そういう映画。 だから、筋書きとしていはものすごくシンプルなんだけど、それを表現する方法が妙に凝っているので、果たして、それは映画を観ている人全員に理解されたのか? 私の近くの席に、70代と思しき老夫婦がこの映画を鑑賞していたんですけど、ふたりともちんぷんかんぷんだったらしく、映画のところどころで「どういうこと?」みたいなことを二人で呟いておりましたわ。 そういうことも含め、この映画は、評価が難しいですね。 私個人としては、あまり評価しません。この映画にアカデミー賞をたっぷり配分するくらいなら、『RRR』に配分した方がよほど良かったと思います。『RRR』は、3時間の上映時間を短く感じたけれど、『エブエブ』はちょっと退屈しちゃった。 ということで、この映画については、教授のおすすめ! は、なーしーよ。
March 16, 2023
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ひと月ほど前に映画館に観に行き、チケット完売で結局観られなかったといういわくつきのインド映画、『RRR』をついに観て参りました。いや~、面白かった! これは評判になるのも分かるわ。圧倒的に面白いもん。以下ネタバレ注意で。 時は1920年代、イギリス支配下のインドなんですが、史実かどうかはともかく、映画の中ではイギリスによる横暴な支配にインドの民は苦しめられていたと。特に時の総督、およびその奥さんというのが特にひどい連中で、インド人をひどい目に逢わせていたわけ。そのため、革命の兆しが徐々に高まりつつあった。 で、そんな中、インドの部族の中でもとりわけ穏やかな部族がありまして、総督とその奥方がその地方に行った時、絵を描くのが器用な小さな娘を気に入り、その娘をコインで2枚ほどのわずかな金とひきかえに連れ帰っちゃうんですな。で、この部族は穏やかではあるのだけど、仲間を失うとなると、その奪還のために「羊飼い」と呼ばれるリーダーがその仲間を取り返しに来るというしきたりがある。しかも羊飼いはいかなる艱難辛苦もものともせず、どんな手を使ってでも奪還に来るらしい・・・。 で、実際、ビームという名の男が羊飼いとして、連れ去られた少女マッリの奪還のために、総督のいるデリーにやってきて、少数の仲間たちと密かに奪還のための策を練っていると。 ところが、支配者側にもすごい奴が一人いたんです。 このラーマという男、インド人ではあるのですが、イギリス警察に勤めていて、まさに出世の鬼。出世のためならどんなことでもするという冷血漢。総督の命令ひとつで、自分の身の危険も顧みず、どんな困難な状況でも、命令を執行する。まさに狂気の男。 さて、そんなおっそろしいラーマがビーム一味掃討に動いている中で、ビーム一行は、無事、部族の娘マッリを奪還できるのか? ・・・というようなお話し。 ・・・なんだけど、実はそういう単純な話ではない、というのが分かってくるのよ! まあ手に汗握る、笑いと涙とまた笑い、みたいな。 いやはや、ワタクシは森に生まれて無知だったため、インド映画の実力を存じでおりませんでした。まじでお見逸れしました。 とにかくね、3時間の上映時間が短く感じるほどの、壮絶感動面白巨編でございます。これを観ずして映画好きだなどというなかれ。不幸にしてまだご存じない方は是非、映画館へ Go!これこれ! ↓映画『RRR』
February 20, 2023
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昨夜も五十肩の痛みで熟睡できず、3時間ほど眠った後、朝6時頃起床。やれやれ、私のQOLは大分低迷しておりますな。 それでも、今朝は7時頃から書き物を始め、3日分くらい捗ったという・・・。朝の執筆って、こんなに冴えているんだ・・・。まあ、気を散らすものがないからねえ。今後もこの調子で五十肩が続くと、私は1年で3年分くらいのモノが書けるのかもね。 さて、そんな調子で捗ってしまったので、今日は夕食後、アマプラで映画を観ることに。観たのはカンバーバッチ主演映画の『クーリエ』です。以下、ネタバレ注意ということで。 これ、米ソ冷戦時代を象徴するキューバ危機の時の実話なんですが、ソ連の政府上層部にアレックスなる良識的な男がいて、彼がフルシチョフの暴走を止め、世界を第三次世界大戦から救おうとしているわけ。で、彼がソ連の機密情報を西側に流すことになるのですが、その受け手として、東欧諸国と取引のあるイギリスの某ビジネスマンが選ばれる。それがカンバーバッチ演じるウィンなんですけども、彼はCIAともMI6とも関係のない一般人なので、KGBにも怪しまれないだろうということで、彼がアレックスとCIA/MI6との間の橋渡し役、運び屋となる。 で、ウィンはアレックスと接触し、その任務を終えるのですが、その過程でアレックスの人となりに触れ、友情を抱くようになる。で、アレックスがいずれ家族と共に西側に亡命できることを望むのですが、そこでキューバ危機が勃発して、KGBがソ連上層部に西側に情報を漏らしているヤツがいるということに気づいてしまうわけ。 で、アレックスの身に危険が迫っていることを知ったウィンは、最後の仕事として、アレックスの国外脱出の手助けをする任務を自ら買って出る。 さて、アレックスはKGBの手を逃れて亡命できるのか? それを助けるウィンは、うまいこと仕事を済ませてソ連から脱出できるのか? っていう話。 まあ、実話ですからね。変に脚色して、結末を変えることは出来ないわけでありまして、アレックスもウィンも、結局数奇な運命に翻弄されることになるのですけれども、しかし、ソ連/ロシアってのは、昔から変わらないね・・・。ろくなもんじゃ・・・。 というわけで、いい人たちがとっても嫌な目に逢うという意味で、ハラドキ映画だったのでした。ま、あんまりカタストロフィを感じられる映画じゃないけどね。007やトム・クルーズが助けに来てくれるわけじゃないから。これこれ! ↓クーリエ:最高機密の運び屋 [ ベネディクト・カンバーバッチ ]
February 18, 2023
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今日は辛い辛い期末レポート採点作業。で、あんまり辛いので、午後、さぼってネットフリックスでライアン・ゴズリング主演の『グレイマン』という映画を観てしまいました。以下、ネタバレ注意。 ライアンは弟と共に子どもの頃からマッチョな親父に鍛え上げられたものの、弟があやうく殺されかけるほどの訓練に危険を感じ、親父を殺してしまったという過去の持主。それで刑務所に入っていたところをCIAのフィッツなる人物からスカウトされ、「シックス」としてターゲットの殺害を請け負うエージェントとして働くことになるんですな。 で、今回もとあるターゲットの殺害を請け負い、実際に殺すのですが、そのターゲットは息を引き取る前に、自分もかつて「フォー」というエージェントであったと告白する。そしてフォーはCIA内部の腐敗をネタにかつての上司を強請っていたところ、逆に殺されることになったとシックスに伝え、その腐敗のネタが入ったチップをシックスに託すわけ。 で、シックスはそのチップの中身を確かめるべく、CIAにはそれを渡さなかったんですな。で、そのために今度はシックスがターゲットになり、世界中のやばい連中に狙われる羽目に。 で、特にロイドという、CIA内部の悪い奴から汚い仕事を請け負っているヤツがやばくて、このロイドがシックスの元上司で、ある意味彼の親代わりのようなフィッツと、フィッツが面倒を見ている姪っ子を誘拐、二人を人質にしてシックスを始末しようとする。 さて、シックスはCIAの送り込む殺し屋たちの攻撃をかわし、フィッツと姪っ子を救い出し、さらにロイドの上に居るヤツ、あるいはさらにその上に居る悪い奴らをやっつけることは出来るでしょうか? ・・・っていう話。 まあ、よくあるCIAもので、テーマ的には何一つ目新しいものはないのですが、採点疲れを癒す程度には面白かったです。 それにしても、CIAは、ちゃんと人事をしっかりした方がいいよね! 最近の映画、いっつも悪い奴はCIA内部のお偉いさんじゃん。もう、社会人なんだから、ちゃんとしよう!これこれ! ↓『グレイマン』
February 10, 2023
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最近、子どもの頃にテレビで見た『コンバット!』を久しぶりにネットで見ているのですが、これがまた面白くてですね。 やっぱりね、ヴィック・モロー演じるサンダース軍曹がカッコいいのよ。痺れる。今まで「あなたにとって理想の上司は?」という問いには躊躇なく「鬼平」と答えていたのですが、サンダース軍曹もいいかなと。あのとっつきにくい感じがいいんだ。 そしてカービーやケリー、リトルジョン、カーターといった、サンダースの麾下にあるお馴染みのメンバーのことも少しずつ思い出されて、そうだったそうだった、カービーの使うマシンガンは他の人のものとは違うんだよな、とか、リトルジョンは大男の優しい奴だったよなとか、ケリーはフランス語が話せるんだったよなとか、カーターは兵隊というよりは看護兵だったよなとか、そういうのがまた懐かしい。子供の頃に見た記憶ってのは、案外、間違ってないんですよね。 昭和のテレビ番組は面白かったねえ・・・。 なにせ百数十話のドラマですから、当分は楽しめそう。いいものを見つけました。 さて、実家での冬休みも今日で終わり。今日は名古屋に戻って参りました。また明日から名古屋からのお気楽日記、どうぞお楽しみに~!
January 4, 2023
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ネットフリックスでダニエル・クレイグ主演の映画『ナイブズ・アウト:グラス・オニオン』を観ましたので、心覚えを。以下、ネタバレ注意ということで。 ダニエル・クレイグが南部訛りのある名探偵ブノワを演じる『ナイブズ・アウト』シリーズの第二作目ですが、前作が割と面白かったので、今回も期待して観た次第。 IT企業の創業者社長で億万長者のマイルズが、同社の創業に力を貸した仲間をギリシャの島に招待し、マイルズ自身が殺されるという筋立てのミステリー・ゲームを楽しむのですが、そこで本当の殺人が二件勃発。たまたま招待されていた名探偵ブノワがこの殺人事件の真相解明をするというストーリー。 なんですが・・・ なんか取って付けたようなストーリーで、億万長者が自らの殺人ミステリーを仕組むというのも陳腐な話。そして実際の解決も納得できないことばかり。せっかく出だし好調だった『ナイブズ・アウト』の第二作としては、大失敗だったのではないかと。私の評価点としては、55点。赤点不合格でございます。 だけど、観終わった後でrotten tomato を確認したら、評論家点も一般店も90点台でえらく評価が高い。はい、いつも通り、私と世論はこれほどかけ離れているというね。 でも、アレだね。007シリーズを降りたダニエル・クレイグ。この先、どういう風になるのだろうか。『ナイブズ・アウト』では、南部訛りの名探偵というちょっとおちゃらけたキャラを演じ、ジェームズ・ボンドのイメージからの脱却を試みているのかも知れないけれど、必ずしも成功しているようには見えず。一度染みついたボンド俳優のイメージを払拭するのは、苦労するかもね。 でも今回の第二作でも、ブノワと同居する男性(ヒュー・グラント)がチラッと登場したところを見ると、ブノワはゲイという設定なのかな? まあ、ボンドから離れるために、そこまでやらないといかんのかと思いますが、第三作にはおヒューも登場するのかも。なんか惨状が思い浮かびますが、おそるおそる、クレイグの将来に期待することにしましょうか。これこれ! ↓『ナイブズ・アウト:グラス・オニオン』
December 26, 2022
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今年も年末が近づいてきたということで、そろそろ「今年を振り返る」企画を始めましょうかね。 ということで、第1弾は「今年観た映画ベスト」。まあ、先生稼業は師走は忙しすぎて、この先、年内に映画を観る機会があるかどうか分かりませんのでね。 では、第5位から。第5位:『トップガン・マーヴェリック』 映画としていい悪いとか、そういうことを論じ始めたらリストには挙がってこない作品ですが、あのトップガンが帰ってきた、お帰りなさい、という意味で、どうしても挙げざるを得なかったという。そういうひいき目がなかったら、第5位に韓国映画の『モガディッシュ』を入れても良かったかも。第4位:『ファーザー』 見どころは、アンソニー・ホプキンスの一人芝居。年老いて頭がぼけていく様を、これほどリアルかつ幻想的に映像化したというところを評価して。まあ、自分もじきにこうなるのかということを考えると、観ていて辛くなりますが。第3位:『ホドロフスキーのDUNE』 カルト映画監督のホドロフスキーが計画し、半ば実現しかけながら、ついに幻に終わったSF映画『DUNE』の顛末を描いたドキュメンタリー映画。映像化不可能と思われたSF小説を、なんとか映画化しようと奔走するホドロフスキーの情熱と工夫のすばらしさ。実現はしなかったまでも、ホドロフスキーが集めた鬼才・奇才たちのその後の活躍を見ると、ある意味、1970年代半ば以降のSF映画は、この幻の映画化計画がなかったら存在しなかったんじゃないかと思われるほど。存在しない映画が後の映画に影響を与えるってどういうこと? と思いますが、実際にそうなんだから仕方がない。まあ、面白いドキュメンタリーでございます。第2位:『グランド・ブダペスト・ホテル』 かなり昔に封切られた映画を今年になって観た、ということなんですが、この退屈そうなタイトルの映画が、実に面白かった。ファンタジーのようでいて、実にリアルな話でもある。映画という形式でなければ語れない語りの世界。素晴らしい。 そして栄えある第1位は・・・第1位:『キングスマン ファースト・エージェント』 『キングスマン』シリーズはどれも傑作ですが、この作品も素晴らしかった。マシュー・ヴォーン監督作に駄作なし! キングスマンという秘密エージェントがいかにして設立されたか、そのエピソードを語る本作は、スリルとユーモアにあふれ、まったく観る者を飽きさせない。映画の楽しさを堪能できる作品でありました。 っつーことで、今年のベスト5は以上の通り。 ところで、これとは別に、今年は映画以上にテレビ・ドラマを堪能した年でした。 特に面白かったのは、アマゾン・プライムで観たアメリカのテレビ・ドラマ『ファーゴ』の「シーズン2」。これは実に面白い作品で、全10話を一話ずつ堪能しました。最近、ハリウッド映画は不振ですけど、ひょっとしてこの業界、今は映画ではなくテレビ・ドラマの方に注力しているのかなと思わせるほど、力の入ったサスペンス・ファミリー・ドラマ。これがあまりに面白かったもので、ついネットフリックスにも加入しちゃった。というわけで、今後はネトフリが制作した映画とかも観られるようになったので、来年のリストは、そっち系の映画・ドラマで占められるかも。 まあ、映画も、時代によって変わっていくものですな・・・。
December 12, 2022
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ケネス・ブラナーの映画『ベルファスト』が、アマゾン・プライムで観られるようになっていたので、短い映画だし、と思って観ちゃった。師走のクソ忙しい時に。以下、ネタバレ注意。 これ、1969年という時代設定で、当時のアイルランド、ベルファストを舞台にし、そこで暮らすある一家の物語を、その一家の少年(バディ)の視点を中心に描くというもの。ケネス・ブラナーの自伝的映画ということですから、バディはケネス・ブラナーその人なのでしょう。ブラナーは1960年生まれだから、映画の中の少年の年齢と一致します。 で、当時のベルファストは、プロテスタント住民とカトリック住民との折り合いが悪く・・・というか、その地域の内部では両者の折り合いはいいのですが、それが気に食わない外部の過激派(特に若い連中)が、カトリック住民を地域から追い出そうと、暴徒となって襲ってくるわけ。それで、その一角は軍隊によって取り囲まれ、その警備下で息をひそめて暮らすような感じになっている。 で、そもそもそういう地域トラブルが発生した原因としては、ベルファストの景気の悪さもあるんですな。それで主人公の一家も、お父さんはベルファストには仕事がなく、ロンドンまで出稼ぎに出ている。家族に会えるのは二週間に一度の週末だけ。だから、主人公のバディとその兄は、実質、母親に育てられている。そういう、経済的な不安があるので、たまに帰宅するお父さんとお母さんは、ケンカばかり。 とは言え、ケンカの原因は経済的な不安によるものであって、二人の関係が悪いわけではないのね。むしろ二人はすごく仲がいい。仲がいいのに一緒に居られないことが、しばしば起こるケンカの原因なのであって。 それにバディは、母親だけに育てられているわけではない。父親の両親が近くに住んでいて、このおじいちゃん、おばあちゃんにも可愛がられているし、近所の住人にも可愛がられている。だから、バディは、父親がたまにしか帰ってこないことを除けば、幸福な少年時代を過しているんですな。学校でも、キャサリンというガールフレンドが出来たし。 そんな時、父親は、ロンドンの勤め先から、好条件を示され、いっそロンドンで働かないかという話を持ち掛けられるんです。で、父親はその話に惹かれていく。何しろ、政情不安のあるベルファストで一家を養っていくのは大変なので。 でも、母親の方はベルファストに愛着があり、どうしても動きたくない。そしてそれはバディも同じ。で、ロンドンに引っ越すか、ベルファストに留まるかが、一家の悩みの種、火種としてくすぶり続ける。 でも、その後、ベルファストの政情はますます不安なものとなり、バディまでその暴動に巻き込まれてしまうと言うことが起こる。そして、一家の精神的支えでもあった祖父が亡くなるということも起こる。 かくして、一家はベルファストを離れる決意をするんですな。 とまあ、ベルファストという町で過ごした幸福な少年時代、そしてそこを離れることになってしまった一連の事情、そういうものをバディの心情から描きつつ、ある時代のある地域のことを語った映画、それが本作ということになるわけ。 少年が町を離れる映画、ということになると、『リトル・ダンサー』というスゴイ映画があって、本作をそれと比べちゃうと、大分見劣りはする。だけど、『ベルファスト』は、これはこれで、ノスタルジー溢れる佳作ではあります。私はケネス・ブラナーという俳優・監督が嫌いで、彼が出る映画や監督した映画は、とりあえず観ない方なんですが、本作はブラナー臭がそれほど出てないところがいい。 っていうか、俳優さんたちが結構いいのよ。おばあちゃん役のジュディ・デンチはちょっと演じすぎだけど、おじいちゃん役がいい。で、そういう脇役がいいので、それに支えられて成立しているっていうか。 といういわけで、ある時代のベルファストを描いた『ベルファスト』、興味のある方にはおススメです。 ちなみに、ケネス・ブラナーと私は3歳差で、ほぼ同世代と言っていい。だから、ケネス・ブラナーがベルファストで暮らした少年時代と、ワタクシの少年時代はほぼ同じ頃ということになるわけですが、ワタクシは暴徒に襲われるなんてことなかったですからね。世界の違う場所に住んでいると、違う経験をするものだなと。そんな感慨も得たことでありました。これこれ! ↓ベルファスト ブルーレイ+DVD【Blu-ray】 [ ジュード・ヒル ]
December 11, 2022
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ネットフリックスで、アンソニー・ホプキンス主演の映画『ファーザー』を観ました。この映画で、ホプキンスはアカデミー賞の主演男優賞を獲ったんですよね。 まあ、ネタバレと言っても、ストーリーというほどのものはない。ただ、アンソニー・ホプキンス演じる老人の認知症が進み、次第に現実の把握が難しくなってくるのを淡々と描いているのですが、まあね、ホプキンスが名演なものだから、認知症のリアルがすごい。 でまた、映画の脚本というか、演出もすごくて、映画を観ている方も、どれが本当にあったことで、どれがホプキンスの見ている幻想なのか、分からなくなってくるという。 でも、とにかく、ホプキンス演じる老人の世界が次第に崩壊していく様が本当に哀れで。最後、何もかも分からなくなってしまった老人が、「私の葉っぱが皆、無くなってしまう、雨とか風で・・・」と嘆く場面なんて、もう・・・。人間が最晩年に、自分自身を失っていく寂しさってのは、そういうものなのかなと。 はあ~。もう、アレだね。まだちゃんとした意識のあるうちに死ぬってのは、ある意味、恵みなのかもね。 というわけで、映画『ファーザー』、観て楽しくなる映画ではないですけれども、アンソニー・ホプキンスの名演を堪能するという意味では、必見の映画でございます。これこれ! ↓ファーザー【Blu-ray】 [ アンソニー・ホプキンス ]
November 18, 2022
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昨夜、レイトショーで『アムステルダム』を観てきました。前々からちょっと興味があったのですが、もうすぐ打ち切りと聞いて急いで出掛けた次第。以下、ネタバレ注意ということで。 この映画は、最近よくある「事実に基づいた映画」ということで、元ネタはいわゆる「ビジネス・プロット事件」。第二次大戦前の1933年、ヒトラーやムッソリーニのような独裁者に魅せられたアメリカの一部資本家たちが、第一次大戦の英雄で人気のあった某将軍を独裁者として擁立し、アメリカにも独裁政権を作って、その下で甘い汁を吸おうとした。で、その目論見が、擁立しようとした将軍自らの手で暴露され、ぽしゃった、という事件ですな。で、これを下敷きにして、将軍による暴露の裏側に、恋愛と友情で結びついた3人の男女がいた、という想定で映画化したもの。 で、その3人の男女を、クリスチャン・ベール、マーゴット・ロビー(ハーレイ・クインを演じた女優)、ジョン・デビッド・ワシントン(『テネット』に出ていた人で、デンゼル・ワシントンの息子)が演じるわけ。ベールとワシントンは第一次大戦の戦友で、二人が戦場で大怪我をした時、それを看護師として救ったのがマーゴットという設定。しかもマーゴットは資産家の出で、看護師と言いながら、実は連合国側のスパイ的なこともやっていた。 で、ワシントンとマーゴットは恋人同士となるのですが、何しろ白人と黒人の恋ですから当時のアメリカでは受け入れられないだろうと、ベールを含めた三人はしばしアムステルダムに滞在し、自由を謳歌する。 しかし、ベールはもともと医師で、しかも既婚者(妻の親は資産家で、ベールと折り合いがよくない)だったので、一人アメリカに帰ることになる。で、アメリカで傷痍軍人などの治療にボランティア的に関わっていたのですが、違法のクスリなども使うので、逮捕されちゃう。で、戦後法律を学び、弁護士になっていたワシントンは、ベールを救うべくアメリカに戻るわけ。だから、この時点で3人のアムステル時代は終わりを告げるんですな。 しかし、ベールとワシントンの戦争時代の上司であった将軍が亡くなったことを機に、事情が変わってくる。将軍の死に不審を抱いた娘さんからの依頼で、将軍の解剖をしたベールとワシントンは、将軍の死が毒殺であることを突き止めるのですが、それを告発しようとした将軍の娘は殺され、ベールとワシントンはその犯人であることにされちゃうわけ。 で、二人は警察の追っ手を逃れつつ、将軍毒殺の真相を探ることになるのですが、その過程でなんとマーゴットに再会することになり・・・ ・・・という話。だから、この映画の作り手側としては、この映画をコメディ・タッチのサスペンスにしようとしていたんだろうなと。 だーけーどー。 残念! 成功しているとは言い難いかな・・・。 この映画の映画評を見たら、「これほど沢山のスターが出ているのに、映画の魅力はスターの総和をはるかに下回る」というのがあったんだけど、まさに言い得て妙。また映画のタイトルである「アムステルダム」というのもよく分からなくて、たしかに1930年代のアムステルダムは寛容な街で、白人と黒人の友情、白人と黒人の恋愛を許容し、奇妙な三人組が自由を謳歌した、ということを言いたいのだろうけれども、それが映画の内容とどこまで関わっているかというと、大して関わっていないのよ。だから、なんかタイトル負けしちゃっている感じ。 サスペンスと言っても、別に大したサスペンスもなく、手に汗握る感じもない。結局、いい人は誰も死なないし――いや、将軍の娘(テイラー・スウィフト!)はあっさり死ぬけれども。 ということで、うーん、残念ながら私の基準からすると、この映画、作り手の目論見通りの映画にはなってないかな。この映画が日本で短期間で打ち切りになるのもよく分かる。 もっとも、だからと言ってつまらないというわけでもない。やっぱり、次から次へとスターが出るし、スターたちのキャラの魅力というのはあるからね。 ま、もうすぐ打ち切りになりますが、興味のある方はどうぞ!これこれ! ↓映画『アムステルダム』
November 13, 2022
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アマゾン・プライムで観られるアメリカのテレビドラマ『ファーゴ』のシーズン2・10話を見終わったのですが、非常に面白いドラマでした。 コーエン兄弟が撮った映画『ファーゴ』はなかなかの佳作でしたが、そのテレビドラマ版が作られたと知り、とりあえずシーズン1を観たのですが、これは映画と同じストーリーをテレビ用に作り直したということではなく、映画の舞台となったファーゴという町を舞台にし、映画に出て来る話もちらっと使いながら、まったく別なドラマとして作ってあるんですな。 で、テレビドラマ版の『ファーゴ』シーズン1もそこそこ面白かったので、続けて「シーン2」も観てみたわけですよ。そうしたら・・・ もうね、「シーズン1」をはるかに凌駕する面白さ! これはドラマとして傑作ですわ。 で、続けて観るのが惜しくて、毎週1話ずつ観ると決め、10週にわたって楽しんできたのですけれども、ついにその第10話を見終わり、ずっしりとしたドラマの手ごたえに大満足した次第。 シーズン2は、時代設定がまた微妙で、1970年代の終わりごろの話なわけ。まだレーガン大統領が大統領候補として遊説に回っている頃。だから、景気も悪い頃で、ガソリンを入れるのに列を作って並んでいる、みたいな話が出て来る。そういう中で、アメリカのド田舎の町で繰り広げられる地元マフィアと、もっと大きなマフィア組織との争いが繰り広げられることになるのですが・・・もちろん単なるマフィア・ドラマではないんですな。そこに、まあ、色々な他のドラマが絡んできて、まあ、面白いのよ。 最近、アメリカ映画は下火もいいところだけれど、テレビ・ドラマの方は面白いのが次から次へ作られますなあ。そこに才能が集中しているのですかねえ・・・。 ま、とにかく、アマゾン・プライムのドラマ『ファーゴ』の「シーズン2」、教授の熱烈おすすめ!でございます。
October 18, 2022
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『ホドロフスキ―のDUNE』という映画を観ましたので、心覚えをつけておきましょう。これはドキュメンタリー映画なので、ネタバレとか、そういう話ではないとは思いますが、もし事前の情報抜きで観たいという方がおられましたら、この先は読まないようにしてください。 映画『DUNE 砂の惑星』が公開されたのは昨年の今頃ではなかったかと。で、あれは長大なサーガの一部ですから、今後続編が放映されるのだと思いますが、フランク・ハーバートが1965年に発表した小説版『DUNE』は、前々から映画化は不可能なのではないかと言われてきたわけですよ。実際、デヴィッド・リンチが監督した1984年の映画版『DUNE』は、一部のリンチ・マニアには受けたものの、全体としては駄作扱いになっております。 ところが、それ以前、1970年代半ばに、この作品を映画化しようとした大胆な男がいた。それが、アレハンドロ・ホドロフスキーというチリ出身の映画監督だったと。 で、本作はそのホドロフスキーがいかにしてこの映画を作ろうと格闘したかを、本人はもとより、その協力者たちの証言を元に再現したものなんですけど、まあ、面白いよ。 ホント、マジで面白い。 そもそもホドロフスキーも、カルト映画を二本くらい制作しただけの若い監督だったのですが、ある時、彼の映画をフランスでヒットさせたフランスのプロデューサーがいきなり電話をかけてきて、何か映画を作らないか、作るなら支援するが、と。で、この申し出にホドロフスキーは反射的に「だったら、『DUNE』を映画化したい」と言ってしまうわけ。 でまた、この時、まだホドロフスキーは『DUNE』の原作を読んでもいないのよ。ただ、友人が面白いと言っていたという理由だけで、そう答えてしまった。それで歯車が回り出しちゃうのね。 で、ホドロフスキーはようやく原作を読み、これはすごいと。そこから先はもう、彼のすべての情熱をかけて、この作品の映画化に無我夢中で取り組むんですな。で、『DUNE』の原作者のフランク・ハーバートも、ホドロフスキーの作品を知っていて、あの監督なら、ということで、非常に安い値段で映画化権を売ってくれるわけ。 で、以後、フランスに借りた城で脚本を一気に書き上げたホドロフスキーはキャスティングに入るのですが、これがまたすごい。 まずカリスマ的なリーダー役みたいなのを、ダリに演じさせようとするのよ。あの、画家のダリに。 なにせダリは高慢なところがあるので、要求してきた出演料が半端ない。1時間当たり10万ドルとかを要求してくるわけ。で、当然、そんな額は払えないのですが、そこで一計を案じたホドロスキ―たちは、撮影時間ではなく、映画の出演時間でその額を払う約束をするわけ。だって、出演時間なんて3分とか5分とか、そのくらいなんだから、それなら「1時間あたり10万ドル」でもなんとか払えるというわけ。 しかし、それだけじゃないんですな。ダリとの交渉の中で、ダリがホドロフスキーを試すんです。 ダリ曰く、「私が海に行くと、砂浜にやたらに時計が落ちている。君はどうかね?」というわけ。この問いにどう答えるか。 「ええ、私も海に行く度に落ちている時計を見ます」などと答えたら、つまらぬヤツということになる。逆に「そんなもの見たことありません」と答えるのも、当然、ダメ。さて、どうするか? ホドロフスキーは、瞬時に考えて、こう答えた。「時計が落ちているのを見たことはありません。でも私も砂浜でしょっちゅう時計を落とします」と。これでダリは機嫌がよくなり、出演を承諾したと。 悪の帝王役にオーソン・ウェルズを配役した時もすごいよ。もう映画には出演しないというウェルズを説得するため、彼のお気に入りのレストランのシェフを捕まえて、撮影中ずっとあなたの食事担当にしますから、といって、食い物で釣るわけ。それでウェルズも出演を承諾。 でまた、音楽担当でピンク・フロイドと契約しようとして話をしていると、メンバーがビッグマックかなんか食べている。で、頭に来たホドロスキ―が、「これは映画史に残る傑作だっつってんのに、ビッグマックなんて食ってんじゃねえ! お前らなんてこっちからお断りだ」といって席を立ったら、ピンク・フロイドの方が慌てて追っかけてきたとか。 まあ、そんな感じで、色々な才能をホドロスキ―はあちこちから集めてきて、壮大な映画を計画するわけ。 が! 周到な計画、完璧な脚本と絵コンテ、そういうものを提示しているのに、ハリウッドは食指を動かさなかったんですな・・・。で、クランクイン直前でこの計画はご破算になってしまう。 だけど、この映画の計画で明らかになった絵コンテなどは、色々な映画制作会社のところに行っていたので、それを見た他の映画監督たちがこれに刺激を得て、次々とSF映画を作り始めるわけよ。 例えば、『スター・ウォーズ』の剣劇とか。当時、カンフー映画は流行っていたけれども、SF映画の中でチャンバラをやる、なんていうのは全然、発想がなかった。しかし、ホドロフスキーの幻の『DUNE』の中にそういうシーンがあるので、おそらくそれが参考にされたのではないかと。 あと『エイリアン』の映像に大きな役割を果たしたギーガーは、ホドロフスキーが『DUNE』のために発掘したアーティストだったわけで、ギーガー以降のSF映像というのは、要するに『DUNE』の影響下にあると言っていい。 その他、『DUNE』の絵コンテに影響されたと思しきSF映画は数限りなくある。だから、ホドロフスキーの『DUNE』は幻に終わったけれども、これほど影響力の大きなSF映画はない、とすら言えるわけ。そこが実に面白い。 そしてその後、ついにデヴィッド・リンチの『DUNE』が公開されることとなり、ホドロフスキーはとても見られないと思っていたのですが、息子から「戦士であるならば観に行くべきだ」と諭され、いやいやながら観に行ったら、あまりの駄作で嬉しくなった(!)とか。やっぱり、あれを作れるのは俺しかいない、というのが明確になったわけですからね。 とまあ、ホドロフスキーが命をかけて作ろうとした映画とその挫折のドラマというのは、本当に面白い。 で、それでもホドロフスキーが、その挫折に打ちのめされなかった、というところが、またなんとも感動的なのね。そこがホントにカッコいい。 いいよ、このドキュメンタリー! 必見だよ! というわけで、まだこの映画を観ておられない方には、教授の絶賛おすすめ! と言っておきましょう。これこれ! ↓ホドロフスキーのDUNE【Blu-ray】 [ アレハンドロ・ホドロフスキー ]
September 20, 2022
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昨夜、レイトショーでブラピの新作『ブレットトレイン』を観てきました。 まあ、良くも悪くもB級映画で、運の悪い運び屋のブラピが、悪の親玉が仕組んだ壮大な復讐劇に巻き込まれ、親玉が復讐のために殺そうと思っている殺し屋たちと共に東京発京都行きの新幹線に閉じ込められるという話。ブラピは、たまたまカーバーという男の代理で送り込まれただけで、悪の親玉に恨まれていたのはカーバーの方だったという。ついてない男の、「なんて日だ!」という一日を描いたドタバタ映画。 まあね。名画を期待してはいけない。つっこみどころ満載のストーリーに身を任せ、ブラピの一喜一憂に共感していればいいっていう。そういう種類の映画。まあ、レイトショーの1100円分は十分に楽しみましたけれども。 しかし、こういう映画って、アメリカ本国ではどういう風に受け取られるのかねえ? B級ギャグ映画として? また作る側としては、おふざけで作ったのか、それとも、本気でヒットを狙って作っているのか。主演がブラピで、ちょこちょこ有名な俳優も出ているんだから、まるでおふざけで作っているわけではないでしょうけど。 しかし、どうなんだろうね、ブラピ。彼は私と同い年だから、もうすぐ還暦。そろそろこういうおふざけを卒業して、もういっちょ代表作になるような作品に主演することを目指した方がいいのでは。いい俳優なんだから。しぶい老人を演じるブラピを、見てみたいなあ。アクションじゃなくて。
September 13, 2022
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『エクストリーム・ジョブ』を観て以来、韓国映画って面白いなと思うようになった私ですが、今日は『モガディッシュ』という映画を観てきました。 以下、ネタバレ注意ですが、この映画は1990年のアフリカ・ソマリアでの話で、当地には北朝鮮と韓国、それぞれ大使館があった。当時韓国は国連への参加を望んでおり、国連での一大勢力であるアフリカを味方につけたいと外交努力をしていたと。一方、事情は北朝鮮も同じで、しかし両国はライバル関係にありますから、韓国の外交努力に対して北朝鮮が邪魔をするというようなことが頻繁に行われていた。 そんな時、ソマリア内戦が勃発。反乱軍の勢いはすさまじく、どこの国の大使館もいつ襲われるか分からない状態。しかも、韓国政府はこの事態を把握していないようで救援機も来そうにない。そうこうしている内に、大使館を反乱軍に取られた北朝鮮大使館の一行が、韓国大使館に逃げてくるという事態に。人道的配慮で大使館内にかくまいはしたものの、そのこと自体、韓国政府に知られたらまずい。 かくして、動乱のソマリアで呉越同舟状態になってしまった韓国と北朝鮮の大使館スタッフ、いがみあってばかりですが、互いに協力しないととても脱出はおぼつかない。さてさて、両者はこの危機的状況をどう逃れるのか・・・ ・・・っていうお話し。 多分、実話に基づいた話なのでしょうが、反乱軍のハイテンションな暴動の映像が実にリアルで、マジやばい状況に観客も思わず手に汗握るというか。なかなか迫力のある映画でした。特に韓国大使の俳優が、予想外の状況をぼやきながらも、(北朝鮮の連中も含め)全員の脱出のために奮闘する様を巧みに演じていて素晴らしかった。 ということで、観て損のない映画でしたね。面白かったっす。これこれ! ↓『モガディッシュ』
July 27, 2022
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アメリカ文化系の授業で今週・来週と学生に『アメリカン・ビューティー』を見せているのですが、久々に見たら、やっぱり面白かった。さすがアカデミー賞5部門受賞の傑作。 でも、久々に見返して思ったのだけど、案外地味な映画だなと。なんか、スケール的には映画というよりテレビドラマのような感じで。 この頃はケビン・スペイシーも絶好調だったねえ・・・。今はもう見る影もないけど。もったいないというのか、自業自得というのか。 ちなみに、何でこの映画を見せているかというと、この映画がヘミングウェイの「フランシス・マコーマーの短く幸福な生涯」の翻案だと思うから。 で、ヘミングウェイの作品を読ませた後で、この映画を見せているのだけど、やっぱり学生もそれが分かるようで、なるほど確かにこの短篇の映画化だと感想を述べておりました。最後まで見たら、もっとそう思うんじゃないかと思うのですが。 ま、学生の反応が良かったので、この映画見せた甲斐があったかな。これを機に、学生たちがアメリカ映画に興味を持ってくれるとさらにいいのですけどね。
July 12, 2022
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観たい観たいと思っていた『トップガン マーヴェリック』をようやく観てきました。 ちゃんと前作を見て予習をしてから行ったのが功を奏して、そうでない場合よりもはるかに楽しめました。 ま、内容からすると、前作よりむしろいいんじゃない? もちろん、娯楽映画の域は出てないですよ。ご都合主義的な部分も多分にあるし。でも『トップガン』ってそういうものだから。 それに、声を失ったかつてのライヴァル、アイスマン(ヴァル・キルマー)と対話をするシーンとか、なかなか泣かせる部分もありましたしね。実際にヴァル・キルマーが咽頭がんで声を失っているということも併せて、ちょっと感動的でした。 それにしても、トム・クルーズは元気だ! わしとほぼ同い年とは思えん。この年でスタントなしでアレを撮るんだからな・・・。大したものですわ。 映画館を埋めた私とほぼ同世代の観客の群れと共に、何だか青春を取り戻したような気になった今日のワタクシなのでありました、とさ。
July 10, 2022
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『モガディッシュ』という映画、案外面白そうじゃない?これこれ! ↓モガディッシュ・トレイラー トレイラー見ると、なんか迫力ありそうだよね! このほか、『リコリス・ピザ』とか、面白そうな映画が上映中。 どれも観たいんだけど、とりあえず『トップガン マーヴェリック』を観ないと! あーん、時間が足りない!!
July 4, 2022
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『トップガン マーヴェリック』を観に行くための予習として、旧作の『トップガン』をアマゾン・プライムで観ました。1986年の作品ですから、36年前の作品?! 当時私は大学院修士課程の1年坊か・・・。あれから随分歳をとったものです、トムも私も。(以下ネタバレ注意) 伝説のパイロットながら職務中に不慮の死を遂げた父親の後を継いで海軍のパイロットになったコードネーム「マーヴェリック」ことピート(トム・クルーズ)。彼は仮想敵であるソ連のミグと空中戦ができるほどの腕前の最高の戦闘機パイロットを養成する訓練所「トップガン」に所属し、仲間と切磋琢磨しているのですが、チーム・プレーができず、自暴自棄的に無謀な操縦をするところから、仲間からは信頼を得られていないところがある。 で、唯一、彼を信頼する親友「グース」と共に、ライバルの「アイスマン」チームと最高成績を争うのですが、その過程で彼が無理をしたために事故を起こしてしまい、グースは亡くなってしまうと。 これで自信を失ったマーヴェリックは、一度はトップガンからの脱落をしかけるのですが、彼のことを理解する上司の助けもあり、再び、任務に戻るんですな。 で、このタイミングで、アメリカの空母にソ連機が攻撃を仕掛けてくるとの情報を受け、トップガンのメンバーは実践に駆り出されることに。 さて、マーヴェリックは、親友グースを失ったショックから立ち直り、ソ連機を撃墜することは出来るのか?! あと、トップガンでの訓練中、上司であったチャーリーなる美女とマーヴェリックの恋の行方は??!! っていうお話。もちろん、両方、出来るんですけどね。 それにしても大した内容のない映画だねえ・・・。この程度で大ヒットか。トム・クルーズの初々しさと、戦闘機同士のドッグファイトの迫力、それに映画音楽に助けられたってところかな。 でも、まあ、これを観たことで、『トップガン マーヴェリック』の予習はできた。さあ、近いうちにこの新作を観に行くことにいたしましょうかね。これこれ! ↓トップガン スペシャル・コレクターズ・エディション【Blu-ray】 [ トム・クルーズ ]
June 3, 2022
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私の周辺の同年代の間では、『トップガン:マーヴェリック』観てきたよ! という報告が相次いでおります。 うーむ! そうか! ワシも観たい!! で、彼ら曰く、「ちょっとストーリーがご都合主義的なところもあるが、そんなことはどーでもいい、だってトムが出るんだから」と。 ただ、彼らが口を揃えて言うには、「でも、前作の『トップガン』は見直しておいた方がいい」と。 なるほど。では、ワシも観直しておこう・・・ というのはウソ。 実はですね、私は前作の『トップガン』を見たことがない、というね。 私は基本的にトム・クルーズ・ファンなんですが、この作品は観たことがないんですよね。私の世代だとあまりにもドはまりしすぎて、みんなが観ていたので、天邪鬼な私としては「だから観ない」のカテゴリーだったのよ。 でも、新作を観るならば、旧作を観ておかないと、らしいので、近いうちにアマゾン・プライムで観て、しっかり予習してから新作を観に行かなくちゃ!
May 31, 2022
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先日、BSでトム・クルーズ主演の『ジャック・リーチャー ネヴァー・ゴー・バック』をやっていたので、つい観ちゃった。もちろん、既に何度か観ていますが、トム・クルーズ映画好きなので。 だけど、何度観ても頭に来るのは、この映画にトムの「娘」(実際には血のつながった娘ではないことが判明するが)が登場し、この娘のおかげで何度もトムが窮地に陥ること。このバカ娘がトムに黙って勝手にケータイを使って、そのために敵に居場所を逆探知されるとか。あるいは敵の人質になってしまうとか。要するに、常に足手まといになるわけよ。でまた、それならそれでしおらしくしていればいいのに、いちいちトムに食って掛かったりする。 で、この不仲の父―娘関係が、最終的に和解に至るというのが本作のポイントなんだろうけど、それは制作側の意図であって、観る側としては、このバカ娘の行動にいちいち腹が立って仕方がないという。 でも、この種の「不仲な父―娘関係→和解」ってのが、アメリカ映画は好きなんだよね! 例えばリーアム・ニーソンの『96時間』もそうじゃん? この映画に出てくる「キム」ってのが、これがまた札付きのバカ娘で、まあ、こいつのおかげでリーアムがどれだけ窮地に陥るか。 ジェイソン・ステイサムの『トランスポーター3』にも、これまたしょーもないバカ娘が登場して、ジェイソンが苦労するのよ。 なんなの、このバカ娘の系譜? まあ、こういう足手まとい、こういうハンデがないと、ヒーローが強すぎて映画にならない、ということなのかね。ウルトラマンのカラータイマーみたいなもんか。 ハリウッド映画の公式なのかもしれないけど、こういうバカ娘を演じさせられる女優さんも苦痛なんじゃないの? 女性の登場人物を増やすという意味ではアレだけど、「女=足手まとい」として描いているんだから女性蔑視なんじゃないかしら。私は、映画を観ていてこの種のバカ娘が登場すると、「You too!」って思うけどね。
May 23, 2022
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先日、地元ケーブルテレビ「キャッチ」の方からお電話をいただきまして。何かと思ったら、知立市にある有名なジャズ喫茶「グッドベイト」のマスター、神谷年幸さんのドキュメンタリーを制作したので、視聴して欲しいとのこと。 実は「アメリカ文化史」の授業でジャズの歴史を講じているワタクシ、毎年最後の授業のトピックとして「ジャズ喫茶」の話題を取り上げ、宿題として「グッドベイト」でコーヒーを飲んでくることを課していたんですわ。そんなこともあって、神谷年幸さんとも知り合いであったことから、そういう話が飛び込んできたと。 で、送っていただいた番組のDVDを視聴したのですが、これがねえ、なかなかよく出来たドキュメンタリーだったのよ。 番組では、神谷さんがGISという特殊なガンを患い、最後の闘病生活から亡くなるまでを描いているのですが、体調が悪いはずの神谷さんも、ジャズの話になると病気のことを忘れたように元気になるので、重病人を扱ったドキュメンタリーのようには全然見えない。 むしろ人生の最後の最後までこよなくジャズを愛し尽くし、そして仲良しの奥様と二人三脚でジャズ喫茶を経営してきた、その一途で底抜けに楽しい人生の航跡が描かれているわけ。 私は、神谷さんが亡くなるほんの2週間前にグッドベイトを訪れていたのですが、ドキュメンタリーもそのあたりのことを映像化しているので、結構、個人的にも感慨がありました。 それにしても、ただ純粋にジャズが好きだというだけで、別に取り立てて裕福でもない神谷さんが、あれほどのジャズアルバムのコレクションを作り上げるんだから、人の執念ってのはスゴイものだなと。無駄なことにお金を使わず、ただ好きなジャズだけに専心すると、日本でも有数のコレクターになれるし、またそのことを通じて色々な人と出会うことができるわけだからね・・・。 いま、そういう形で文学をやっている人間がどれほどいるか。お仕事としてではなく、ただ好きで好きでっていうだけで文学研究している人がどれほどいるか。自分のことも含め、なかなか神谷さんに叶う人って、いないんじゃないかな。 でまた、神谷さんと奥様の関係が、とてもいいんだよね。理解のある奥様で。またその奥様が大好きな神谷さんで。 というわけで、この番組、非常に優れた人間ドキュメンタリーになっていたのでした。今年も後期にジャズの授業をやりますが、その際、どこかでこの番組を学生に見せようかな。これこれ! ↓ジャズ喫茶「グッドベイト」マスター、神谷年幸:自分らしい人生の終い方
April 24, 2022
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アマプラで『ナイト・マネージャー』なるTVドラマを見始めたのですが、これがまた面白い。テーマソングが流れる冒頭のオープニングの映像も実に洒落ていてね。アメリカって、ハリウッド映画こそ低調が続いているけれども、TVドラマはずっと好調が続いているような気がする。それこそ『24』あたりから。 で、『ナイト・マネージャー』ってのは、某高級ホテルの夜間のマネージャーのことで、そういう職にある人のとある体験を描いているのですけれども、そう言えばこの間見てえらく感動した映画『グランド・ブタペスト・ホテル』も、ホテルのマネージャーの話だったなと。 ホテルのマネージャー。 オーナーではないから、雇われ人ではあるのだけど、すべてを司る立場にある。顧客とも良好な関係を保たねばならず、マナーも完璧である必要があり、かつエンターテイナー的な才能も必要になってくる。つまりはそのホテルの顔。 そういう意味で非常に面白く、またやりがいのありそうな仕事ではあるんだけど、私自身のことを振り返って、「ホテルのマネージャーになりたい!」って、子供の頃思ったことがない、という。そういうのになるために、努力しよう!とか思ったことがない。なかなか、子供の夢にはならない職業ではありますな。まあ、子供の目にふれるような職業ではないんだから、当たり前だけれども。 でも、よく考えてみると、面白そうな職業ではある。その辺に、アメリカの映画界/テレビ業界が気づいたってことなのかしらね。 例えば、最近で言えば『ジョン・ウィック』シリーズとかね。アメリカ中の殺し屋を束ねるホテルがあって、そのマネージャー(及びコンシェルジェ)には絶大な権力がある、という設定。 さて、『ナイト・マネージャー』は、第一回目からして、主人公のマネージャーが、とんでもないことに巻き込まれてしまうのですけれども、この先、どうなるのか? ちょっとずつ見ていくのが楽しみです。教授のおすすめ!
March 21, 2022
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今日は祝日。でも外は寒いし、何か家で出来る娯楽はと考えて、録りためてあった映画を観ることにしました。今日観たのはウェス・アンダーソン監督の2014年の作、『グランド・ブダペスト・ホテル』。 タイトルもあんまり興味を引くほどのこともないし、あまり期待しないで観始めたのですが、まあ、これがまたビックリするくらい面白い作品でありまして。以下、ネタバレ注意です。 架空の国の話なんですが、場所的には東欧という設定で、そのため、大戦争の度にファシスト国家に領土を侵され、時代に翻弄される(なんか、いつの話なんですかね?)んですが、その国の端っこの方にあって、かつては豪華ホテルとしてヨーロッパの一流の人士たちの社交の場となっていたものの、今では落ちぶれて、廃墟になりかけているホテル、それが本作の舞台となる「グランド・ブダペスト・ホテル」なんですな。 そんなホテルに、一人の作家が泊まりに来る。で、たまたまそのホテルのオーナー(その名も「ゼロ」)と知り合いになった彼は、ゼロがいかにしてこのホテルのオーナーになったかの、長い長い物語を聴かせてもらうことになると。 実はゼロは、戦争で国を追われたインド系の移民で、元々、このホテルのロビー・ボーイだったんですな。ロビー・ボーイというのは、要するに一番の下っ端。しかし、あることがきっかけでホテルを切り盛りしていたコンシェルジュの目に留まり、彼の指導の下でホテル・マン修行が始まるわけ。 ところが、この名門ホテルの顧客(実はコンシェルジュの愛人でもある)にして大富豪の貴婦人が突然亡くなるんですな。で、その知らせを受けたコンシェルジュはその葬儀に参列するのですが、そこで彼は貴婦人からある名画の遺贈を受ける。もちろん、遺族の反対は目に見えているので、彼はその絵を同行したゼロと共に盗み出し、ブダペスト・ホテルに逃げ帰ります。 もちろん、その後、警察がホテルにやってきて、コンシェルジュは逮捕されるのですが、その容疑は絵画の盗難ではなく、なんと貴婦人殺しだった。そう、遺族(特にドラ息子)の陰謀で、彼は殺人犯に仕立てられてしまったわけ。しかも、彼は殺し屋を雇って、関係者を次々に殺害。遺産の独り占めを目論んでいる。 で、コンシェルジュは投獄されるのですが、ゼロとゼロの恋人のケーキ職人の娘の協力、それにコンシェルジュが刑務所で培ったムショ仲間の助け合いを使って、彼は見事脱獄に成功! コンシェルジュは、例の名画をブラックマーケットで売って、弟子のゼロとゼロの恋人の3人で連れ立ってどこか外国に高跳びしようとするんですな。しかし遺産の独り占めを目論むドラ息子(財産に物を言わせて、今はナチスのSSを想起させるような軍隊特別部隊を率いる将校のようになっている)がコンシェルジュの逃亡を察知し、グランド・ブダペスト・ホテルを軍の宿泊所として接収し、脱獄したコンシェルジュが名画を取り戻しに来るのを待ち構えているんですな。しかも、彼の雇った例の腕利きの殺し屋も、コンシェルジュをしつこくつけ狙っている。 さて、コンシェルジュと弟子のゼロ、そしてゼロの恋人は、無事、絵を取り戻せるのか? そして名門グランド・ブダペスト・ホテルの運命は?? ・・・というようなお話。 もちろん、全体としてはおとぎ話的なコメディではあるのですが、その中に喜怒哀楽、悪と正義、師と弟子の友情、若い恋人二人の純粋、そういうものが詰め込まれていて、面白いったらない。特にコンシェルジュの造形の面白さ。しかも、彼以外でも、本作の中で重要な役柄を担うのが驚くほどの名優ばかり。ええ、この俳優が、この役?! というような驚きが満載。そしてウェス・アンダーソン映画の特質というべき色彩の鮮やかさとテンポの良さ。そして全体にかかわる映像センスの良さ。私は同じウェス・アンダーソン監督の『ロイヤル・テネンバウム』はあまり評価しないんですが、『グランド・・・』は、すごくいいと思います。 いやはや、この映画を観たおかげで、今日はいい祝日らしいいい日となりました。この映画、教授の熱烈おすすめ!です。これこれ! ↓グランド・ブダペスト・ホテル【Blu-ray】 [ レイフ・ファインズ ]
February 23, 2022
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『キングスマン ファースト・エージェント』を観てきたのですが、これは面白いわ。さすが、マシュー・ヴォーン監督に駄作なし。 『キングスマン』シリーズは第1作、第2作とも面白い映画で、まず必見の部類ですけど、その前日譚である本作は、この作品だけ独立して観ても面白い。 でまた、内容が面白いのみならず、映像のセンスが素晴らしい。美しく、また時にユーモラスでもあり。伏線の回収も含め、何から何までほんとによくできている。 これが芸ですよ。芸。この芸を観るために、お金を払う価値があるという、そういうレベルの芸になっている。もうね、ちょっと前に観た『マトリックス・レザレクションズ』の面白くなさぶりとは正反対の出来よ。 というわけで、この映画、必見です。観てない方は是非! といいつつ、今日、この映画を観ていた人は、私たち夫婦を含めて数名。まあ、別にいいんだけど、何なんだろうね、日本人って。何が面白い映画なのかもわからなくなったの? かつては世界の映画界の中でもトップクラスにいた映画大国であったはずなのにね。
January 7, 2022
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さてさて、「今年を振り返る」企画として、「今年観た映画ベスト」を考えてみましょう。まず第5位から。第5位:『007 No Time to Die』 全然評価しない映画ですが、ダニエル・クレイグ版の007最終作品として、ベストに数えないことが耐えられず、ここに入れてしまった次第。第4位:『イエスタデイ』 2019年の映画で、世界中からビートルズの存在の記憶が無くなってしまった、という仮想空間の中で、只一人、ビートルズの曲を知っているがゆえに、それを自作曲と偽ってスターになってしまう男の悲喜劇を描いたもの。あり得ない条件下のシチュエーション・コメディとして秀逸。イエスタデイ [ ヒメーシュ・パテル ]第3位:『その男ゾルバ』 60年近く前の映画ですが、つい最近観て、非常に印象深かった。ストーリーはともかく、ゾルバという男の造形と、白黒映画の映像美が素晴らしくて、いつまでも記憶に残りそうな感じ。「いつまでも記憶に残る」ことこそが名画の印ですよね。【中古】その男ゾルバ(特別編) [DVD]第2位:『エクストリーム・ジョブ』 これは2019年の韓国映画。私は普段、韓国映画に興味がない方なのですが、これは抜群に面白かった。作品のテンポといい、上質なユーモアといい、完璧と言っていい出来。エクストリーム・ジョブ [ リュ・スンリョン ]第1位:『インサイド・マン』 これ、2006年の映画で、今年になって久しぶりに見直したのですけど、すごく面白かった。ひょっとしてスパイク・リー監督の映画の中で一番好きかも。 ポイント5倍【中古】インサイド・マン [DVD] しかし、ベストに挙げた映画の大半が、今年以前に作られたものであることからして、いかに昨今の映画界が不作かっていう事が良く分かるよね! 一方、ワーストの方も言っておきましょう。今年観た映画のワーストは・・・ワースト1位:『ミッドサマー』 もう、これはダントツの最低。今年に限らず、過去20年位に観た映画の中でもワースト。思い出すだけで吐き気がする。最低の中の最低。の中のさらに最低。の最低。【中古】◎ミッドサマー【レンタル専用DVD】 それにしても、先日映画館で観た『マトリックス・レザレクションズ』ですが、広い館内で、これを観ていたのは私たち夫婦を含めて5人くらい。今の洋画界の不振ぶりが思いやられます。 若い頃、例えば中3の夏に『スター・ウォーズ』を友達3人で観に行った時なんて、新宿コマが満席、立ち見が出るほどだったからね。映画ってのは、そういうもんだと思っていたことからすると、今の洋画の不振が信じられない。 新年早々、『キングスマン』の新作を観に行こうと思っているんですけど、これまた広い館内に5人とか、そんな感じなのかもね。コロナ禍では、ありがたいけど、洋画ファンとしては、複雑な気分だねえ・・・。
December 27, 2021
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『マトリックス・レザレクションズ』を観てきました。一応、以下ネタバレ注意ということで。 で、その感想なんですけど・・・ うーーん・・・。 そうね・・・。 何というか・・・。 まあ、この映画は第1作だけがいいので、その後の2本は駄作。そして本作も・・・別に作らなくてもいい作品だったかな・・・。 第1作は、「今、我々がリアルだと思っている社会は、実はコンピュータに見させられている夢に過ぎず、本当の人間は、電源としてコンピュータに利用されていた」というショッキングな前提がまずあって、その上で、そのことに気づいた主人公ネオが、機械を主・人間を従とする現実世界を逆転し、人間の復権を図るという壮大なストーリーがあったわけじゃん? しかもその上で、ネオを救世主と信じるモーフィアスの純情と、自分が救世主であることが信じられないネオ自身の葛藤があったり、仲間内の裏切りがあったり、トリニティとネオの恋があったり、「人間は地球にとってウイルスみたいなものだ」と言い放つエージェント・スミスの人間社会に対する説得力ある批判があったりと、ドラマとして非常に重厚なものがあった。 ところが本作に至っては・・・うーん、なんつーの? 単なるネオとトリニティの復縁話に過ぎないという。もう、二人がもう一度一緒になれれば後はどうでもいいです、みたいな話で、機械に支配された人間の復権などという高尚な話はぶっ飛んでしまっております。見どころは戦闘シーンしかなく、それにしたところで、ネオが相手の攻撃を超能力で跳ね返すだけだから、「やられてしまうのではないか」という不安がなく、まったく冷や冷やしない。 その他、細部の作り込みも雑で、第1作のような洗練された、ファッショナブルな部分がまるでない。で、そうなってくると、いかに若作りしていても目に付くネオとトリニティの「二人とも歳とっちゃったなあ・・・」という残念感だけが残るというね。 まあ、退屈な映画ですよ。2時間半近い放映時間が長く感じました。 というわけで、もう『マトリックス』は復活しなくていいです。強制終了~!
December 23, 2021
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1964年のギリシャ・イギリス・アメリカ合作映画『その男ゾルバ』を観ましたので、ちょいと心覚えをつけておきましょう。 アメリカ人で作家のバジルは、ギリシャ人の父親が遺産として残したクレタ島の炭鉱を復活させるためにこの島にやってくるんですな。で、島に渡る船でゾルバなる男が彼に近づいてきて、自分は何でも屋だから、自分を雇えば何かと便利だと強引に売り込み、結局、バジルは彼を雇う。 で、島に着いて島で唯一のホテルに二人は泊まることになり、ここでホテルの経営者マダム・ホーテンスが登場する。かつてはパリの売れっ子の踊り子で、こちらに来てからも若い頃はモテモテだったと自称するマダムですが、さすがに今は寄る年波で容貌は衰え、村人たちの笑いものになっている。しかし、それでも彼女は今なお夢見がちな乙女であり、純粋なところがあって、女性には目がないゾルバは、すぐにマダムに取り入ってしまう。 一方、島には美しい未亡人が一人いる。島の有力者の息子パブロが彼女にべたぼれであるものの、彼女にその気はなく、端から相手にしない。だけど、それがあまりにもそっけないということで、彼女は村の男たちから(女たちからも)嫌われ、嫌がらせを受けている。そんな彼女にバジルは一目ぼれしてしまい、彼女の方もバジルに気があるようなのですが、バジルはゾルバと異なり、堅物なので、彼女にモーションをかけるというようなことができない。 で、肝心の島の炭鉱ですが、もう長らく使われていなかったということで、現状使い物にならないことが判明。これを再建するには、急斜面の山の上の方にある修道院所有の森から木を伐り出して、その材木で炭鉱の坑道を作り直さなければならないのですが、材木を山から降ろす手立てがない。そこでゾルバが一計を案じ、山の上からワイヤーを張り、そのワイヤーに材木を吊るして一気に山から降ろすことにし、そのワイヤーなどを買うために、ゾルバはバジルからお金を託され、一人、街に買い出しに行くことにする。 といってゾルバは楽天家なので、暖かい懐をいいことに街で女たちと相当楽しむのですが、それでもバジルとの約束はきちんと果たし、やがてケーブルを仕入れて島に戻ってくると。 で、ゾルバが不在の間、ゾルバに影響されてか、バジルは先の未亡人に思い切ってアプローチするんですな。で、それは受け入れられるのですが、二人の逢瀬を目撃した村人が、パブロにそのことを告げ、悲嘆したパブロは自殺してしまう。 で、それに怒った村人たちは、未亡人を衆目の中辱めて殺してしまうわけ。ゾルバとバジルは、多勢に無勢でそれを阻止できなかった。 一方、あるいきさつからマダム・ホーテンスは、ゾルバが自分と結婚してくれるものと誤解し、島に戻ったゾルバを面食らわせるのですが、ゾルバはホーテンスを可哀想に思って、彼女との婚約することにする。ところが、その幸せの絶頂でホーテンスは年齢のせいもあって死んでしまう。で、身寄りのないホーテンスの財産は、そのままだと政府に没収されてしまうということで、村人は彼女が死んだ途端、彼女のホテルになだれ込み、そこにあるすべてのものを略奪する。しかも異教徒という理由で、彼女の葬式を執り行うことも拒否。バジルはそのことに憤るものの、ゾルバは「マダムは死んだんだから、もう何とも思っていない」と取り合わない。 で、ゾルバが計画したワイヤーが完成し、村人が集まって、材木を山から降ろす式典が始まるのですが、山からワイヤーで下した材木は、勢い余って施設そのものを破壊。計画はすべて無に帰してしまう。 バジルが思いを寄せた未亡人は村人に惨殺され、ゾルバが婚約したマダムは死んで略奪され、事業は大失敗、バジルは財産もすってしまい、もう踏んだり蹴ったりなんですが、ゾルバはそれでも意気軒高。そんなゾルバの影響で、バジルはこの失敗にくじけることなく、またどこかで本を書く仕事に戻ろうと決意。二人は別れることにするのですが、最後にバジルはゾルバに「ダンスの仕方を教えてくれ」と頼むんですな。ゾルバは悲しい時も嬉しい時も、ダンスで自分を表現してきたんですが、そんなゾルバの生き方に、バジルは開眼したわけ。で、それを聞いて有頂天になったゾルバは、盟友のバジルにダンスを教える。まあ、ダンスというか、人生の生き方を教えるわけ。 で、二人が海辺でダンスを踊っているシーンで、この映画は終わります。 まあ、未亡人の惨殺にせよ、マダム・ホーテンスへの仕打ちにせよ、客観的に見ると、この島の連中は一体どうなっているんだ、と思いますけれども、そんなことよりも、やっぱりこの映画で目が離せないのがゾルバという人物。どんな辛いこと、どんな失敗にも負けず、ただ人生の楽しい面を強烈に楽しみながら、飄々と力強く生きていくこの男の魅力たるや! まあ、ある意味、ギリシャ版の寅さんみたいな感じですけれども、太陽みたいな男なのよ、ゾルバって奴は。で、そのゾルバと、インテリのバジルの組み合わせってのがまたよくて、バジルがゾルバの影響で、頭だけで考える人間から、心と腹で生きる人間に少しずつ変貌していくところがとても良い。いい映画でした。映画の最後のゾルバ・ダンスもいいよ!これこれ! ↓【中古】その男ゾルバ(特別編) [DVD] それにしても、ゾルバ役のアンソニー・クインはいいねえ。DVDに付属していたドキュメンタリーによると、アンソニー・クイン自身が、まるでゾルバのような人物だったようですが。 というわけで、すっかりアンソニー・クインのファンになってしまったワタクシ、今度、フェリーニの『道』を観ちゃおうかな。これほど有名な作品なのに、今まで敬して遠ざけていたんですけど、アンソニー・クインが主役の一人で出ているのであれば、やっぱり観ておくべきかなと。
December 22, 2021
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アマゾン・プライムで『サウンド・オブ・メタル』という映画を観ましたので、ちょっと忘備録を。ネタバレ注意ですので、まだ観ていない人、これから観るつもりの人は、以下、読まない方がいいかも、です。 これ、ルービンという男と、その恋人のルーという女の話なんですけど、二人はメタル・バンドを組んでいて、ルービンはドラム担当、ルーはギターとボーカル担当で、ギンギン大音量のメタルを演奏しながら、家兼用の改造バスに乗って全米各地を経めぐっていたわけ。 ところが、そのルービンが、突如、失聴してしまう。耳が聴こえなくなるんですな。メタル・バンドとして大音量の音楽に耳を晒し続けたのが悪かったのか・・・。 で、なにせ耳が聴こえなければバンド活動なんかできやしない。それどころか、日常の会話すら出来なくなり、ルービンはとまどいと苛立ちで荒れます。で、とりあえずルーが、耳の聴こえない人たちが集団で暮らすコミュニティみたいなのを探し出してきて、ルービンをそこに預け、自分は実家のあるフランスに帰ってしまう。ルーは、実の父親とはあまりいい関係ではないのですが、父親は富豪だし、背に腹は代えられないということで、そういうことにしたわけ。 で、最愛のルーもいなくなってしまったルービンは、そのコミュニティの中で暮らすことになり、コミュニティを主宰するボスの指導を受けながら、子供に混ざって手話を習ったり、そこで暮らす耳の聴こえない仲間たちと少しずつ心を通わせたりすると。 で、ルービンも少しずつ状況にも慣れ、コミュニティに溶け込み始めるのですが、やはり音楽への未練もあり、また耳が聴こえない苛立ちもあって、結局、音楽機材やバスも売って資金を作り、思い切って耳の手術をすることにするんですな。 とはいえ、手術をしたからと言って全治するわけではなく、要するに機能しない耳の代わりに、電気信号を直接脳の神経に伝えて、鼓膜の代役をさせるという手術なので、今まで通りというわけにはいかない。むしろ、頭の中に常に不協和音が鳴っているような状態になってしまうんです。でも、とりあえず、少しは人の言葉が聞き取れるようになった。 で、そこでルービンは一旦、コミュニティに戻るのですが、ボスはルービンをもはや受け入れません。 このコミュニティは、もう、一生耳が聴こえない人たちのコミュニティであり、そういう人生を受け容れている人達だけで構成されている。そこへ、まだ耳の聴こえる世界へ復帰するためにじたばたしているルービンが入ると、コミュニティの輪が壊れると。だから、ルービンはもはや受け入れられないっていうわけ。 ってなわけで、このコミュニティにも居場所を失ったルービンは、ルーを追ってフランスに行く。 で、リッチな父の下で暮らしていたルーと久々に再会するのですが・・・もうそこに、彼の知っていた彼女はいなかった。もう、元の父の娘たるフランス娘がいるばかり。 それをルービンも感じるんですが、それでもあきらめられない彼は、ルーに向って、早く元の生活に戻ろう、また一緒にバスに乗ってツアーをやろう、と誘うのですが、その時のルーの反応を見て、あ、これは駄目だ、と悟るんですな。もう彼女は、自分との生活には戻れなくなってしまったんだなと。 で、翌朝、まだ寝ているルーを残して、ルービンはアメリカに帰ることにする。その途中、フランスの街角のベンチに座っていた彼は、自分の頭に取り付けた機器を外すんです。そして無音の世界に入る。その無音の世界の中、ポツンとベンチに座ったルービンの顔がクローズアップされる。 まあ、結局、ルービンは、じたばたするのをやめて、無音の世界で生きることを選択した――。まあ、そういうことをほのめかして、この映画は幕を閉じます。 まあ、降ってわいた不幸の中で、苦しんで苦しんで、とうとう自分はすべてを失ったということを悟って、ルービンは新しい、耳の聴こえない人生を、ついに選択したんでしょうな・・・。悲しいけれど、しかしそれはそれで一つのスタートの物語でもあって、その意味では妙にすがすがしいところもあるというか。 ま、傑作とは言わないけど、ルービンを演じたリズ・アーメドの印象的な顔立ちもあって、佳作ではありましたかね。これこれ! ↓サウンド・オブ・メタル ところで、この映画の最後のシーンを観て、一つ思い出した別な場面がありまして。 それはアニメ『サスケ』の17話『霧消し』に出てくる伊吹兵馬のこと。合戦で視力を失ってから、自分の心臓の鼓動を聴きながら自己催眠をかけ、心眼で相手を見て斬るという盲目の天才剣士。まあ、『大菩薩峠』の机竜之介みたいなものなんですが、目が見えないことから心も荒んで、道場破りなんかしながら旅をしている。その伊吹兵馬が、たまたまサスケの父親・大猿と再会して久闊を恕するのですが、その時、大猿は伊吹の心の荒れを見抜くんですな。しかしその時の大猿は、自身、目を怪我していて、動きが取れない。そこで大猿は仲間の霧隠才蔵に頼んで伊吹の往く道で待ち伏せさせ、そこで決斗して彼を峰打ちで倒させるわけ。要するに、しょせん盲目では目の見える剣豪には太刀打ちできないということを、伊吹兵馬に悟らせるわけですよ。 で、倒された伊吹は、目が覚めてから怒りに任せて刀を振り回すのですが、やがて大猿に「知り合いのいる寺があるから、そこで仏に仕える身になってはどうか」とアドバイスされたことを思い出し、「俺に坊主頭は似合うかな・・・」と言って、刀を捨てて去っていく。 無論、失聴と失明は違うし、メタルバンドのドラマーとかつて徳川軍を恐れさせた必殺の剣士では大分立場が違いますが、身に降りかかった不幸と、そこからどう立ち直るかというストーリーはよく似てますよね・・・。だから、ルービンが無音の世界の中、ベンチに座ってじっと空を見ているのと、伊吹兵馬が「俺に坊主頭は似合うかな・・・」と呟くのが、重なっちゃって。 ま、そういうことですよ。 でも、伊吹兵馬がひょっとして仏門に入ったかもしれないように、ルービンにもまた、今までとは違うけど、やっぱり意味のある新しい生活が、彼を待っているんじゃないかな。そう思うと、ちょっと救われますよね。
November 24, 2021
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ダニエル・クレイグが007映画から卒業ということで、それを記念して作られた「Being James Bond」というショート・フィルムを、昨夜、アマゾン・プライムで観ちゃいました。 で、へえ~っと思ったのは、ダニエル・クレイグがジェームズ・ボンド役に決まった時の、イギリス中のアンチの反応ね。まあ、当初、「黒目黒髪でない」とか「背が(ボンドにしては)低い」とか言われていたことは私も知っていましたが、「ダニエル・クレイグは007には似合わない」という批判があそこまでひどかったとは知らなかった。 ちなみに私と家内は、クレイグが主演していい仕事をした『レイヤー・ケーキ』という映画の大ファンだったので、その彼が007を演じるならまさに理想的じゃん、と思っておりまして。まあ、イギリス本国の人たちよりも、遠い日本に住む我々の方が、よほど先見の明があったというとでございましょう。これこれ! ↓レイヤー・ケーキ コレクターズ・エディション [ ダニエル・クレイグ ] ちなみに、先の「Being James Bond」の中で、全5作の「クレイグ007」がざっと回顧されておりましたが、その中では、やはり最初の『カジノ・ロワイヤル』と三作目の『スカイフォール』がダントツでいいよね! さて、『Being James Bond』を観終わった我ら夫婦は、ついでにクレイグの前の007俳優だったピアース・ブロスナンの『007 ゴールデン・アイ』をチラ見してみたのですが、もう、アクションから何から3流のギャグ映画にしか見えず、最初の10分ほど観てあきれ果て、観るのを止めてしまいました。このこと一つ取ってみても、ダニエル・クレイグによって007映画が各段の質的向上を果たしたってことは一目瞭然ですな。ようやく、大人の鑑賞に堪える映画になった、というべきか。 だから、そのクレイグなき後、誰が新しいジェームズ・ボンドになるのか、興味津々であると同時に、誰がやってもクレイグほどの存在感は示せないのではないか、という不安もある。結局、次は誰なのでしょうか? 『コードネーム・アンクル』でナポレオン・ソロ役を演じたヘンリー・カヴィルあたりはどうかとも思うものの、やっぱりどこか月並みなプレイボーイ・スパイみたいな感じになってしまうのではないかという懸念があり、クレイグと比べると・・・となっちゃうかな・・・。 まあ、「ダニエル・クレイグ、以外の007」ってのは、想像することすら難しいってことですかね。
November 15, 2021
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昨夜、『デューン』を観た後、なんとなくあれこれ考えていたんだけど、結局のところ、映画ってのは大概、「父の承認」を巡る物語なんじゃないか、っていう気がしてきた。別の言い方をすれば「父―息子関係」の物語っていうことなんだけど。 父親から見たら息子というのは、「自分を越えた息子」か「自分を越えられなかった息子」か、そのどちらかしかないわけですよ、理論的に言って。 ところが、父親というのは、普通、前者を認めない。だから世の父親にとって、息子というのは、良くて自分と同等、残りの大半は「自分ほどではない」のばっかり、ということになる。 一方、息子というのは、父親の承認――それも、「お前は俺よりすごい」という承認――が欲しくてたまらない。 だから、ほとんどすべての父―息子関係は、悲喜劇になるわけですな。だって、欲しいものが与えられないことの方が圧倒的に多いんだから。 まあ、この中で一番幸福なのは、こういうパターンじゃない? 例えば創業者の息子が、銀座の老舗を引き継いで二代目になり、可もなく不可もなく経営が続いている状況。これだと、父親からすれば「息子も、店を創業した俺ほどではないが、まあ、とりあえず安心して任せることができる程度にはなったな」という、まずまずの承認を与えており、息子からすれば、店を任されたという時点で、父親の承認を得た、という実感があるだろうから。 でも、このパターンは絶対的に少数派だし、全然面白く無いから映画にはならない。 じゃ、こういうのはどう? 親父から仕事を任され、無事、それを引き継いでいるが、どうも自分は親父ほどの実力がないのではないか、と悩む息子。つまり、父親からの承認はあったが、自分ではその承認が信じられない、というパターン。 はい、これを映画化すると『ゴッドファーザー』になります。 あるいは、父親だってダメダメで、むしろ息子の方が優れている点が多いのだけど、どうしても親父が「お前は俺を越えた」って言ってくれないから、その承認を求めて無駄に悪あがきをする息子。 はい、これを映画化すると『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』になります。 「親父なんてダメな奴だ」と思っている息子が、自分を承認してくれない父親と仲たがいするんだけど、最後の最後になって、両者和解し、親父は息子を承認、息子はそれを受け入れるというパターン。 はい、これを映画化すると『ビッグ・フィッシュ』になります。これはハッピーエンドね。 こんな感じで、延々と続けることができるような気がする。つまり、父―息子の間の、(承認・非承認)/(受け入れ・拒絶)の組み合わせで、いくらでも映画ができるような気がする。 『デューン』の場合、主人公が王家のプリンスだからね。親父を継ぐ者としてその資格があるかどうか、ということが問題になるわけだけど、肝心の親父が承認を与える前にあっさり死んじゃったから、プリンスとしては、死んだ父の承認を(別な形で)どうやって取りつけるかが問題になる。だから、きっと、そういう話になるんでしょう。 ちなみに、私の父は、やっぱり最後まで私を「自分以上のもの」とは認めなかったですなあ。自分も大学教授だったから、私が教授になって「自分と同等のもの」になったとは思っただろうけれども。 さて、そんなことを考えていたら、ふと、女性の場合はどうなんだろう、と、そんなことがふと思い浮かびまして。 果たして娘は、母親からの承認を求めるものなのだろうか? 私の予想としては、母―娘関係には、そういう側面はないんじゃないかしら。 でも、女性の中でもメンタルが男性的な女性の場合、そこに父親からの承認を求めるモーメントが生じるような気もする。 そう考えると、例の「〇塚家具」の、「社長」と「家具屋姫」の間の争いが、俄然、面白い話題として浮かび上がってくるような気がするんだけど、如何?
November 10, 2021
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