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(社内誌投稿分)
‘80年代の記憶
⑵
⾦塊盗難事件、犯⼈を信⽤?
金塊

そのころ⾦の延べ板が盗まれる事件もあった。現場は銀⾏でも宝⽯店でもない、北東北の⼭奥の工場。銅の産
出で知られた⼩坂鉱⼭の精錬所だ。
所轄署への朝の電話では、前夜の事件や事故は「盗難が1件だけ」。念のため被害⾦額を確認して1億円と聞き、
眠気が吹き飛んだ。精錬で、⾦塊ができる鉱⼭だとは知らなかった。
サツ回りの秋⽥⽀局員と現地を回ると、容疑者と噂される従業員Rが浮かんだ。周辺をうろついていると
気づかれ
、接触。Rは「不当な嫌疑で、⼈権問題だ」と強く訴えるのだ。
街の喫茶店で改めて話を聞くと、確かに捜査はやや強引で、理不尽な点が多く思えた。「Rはシロ
に違いない」「警察の勇み⾜だ」との印象を深め、容疑者取材は中断した。
だが話を録⾳でよく確かめると、「ウソ発⾒器にかけられたが下を向いてヒツジの数を数えて、か
わした」と、無実なら必要ないことも口にしていた。「うーん」となって、念のため話の全てを⽂字起こししておいた。
それから数ヶ⽉。捜査の動きが⾒えず関⼼が薄れたころ。記者室のホワイトボードに突然、「本
⽇の発表 ⾦の延べ板盗難事件容疑者逮捕」との⽂字が踊った。
全くのノーマーク。容疑者とは、やはりあの男Rだった。証拠となる⾦塊が、供述通りに発⾒され
た。⼈はいとも簡単に騙されるものだと反省したが、遅かった。
発表が不意打ちで、各社同列になってしまったが、こちらにはRの事前取材があった。逮捕前の単独インタビュー記事や、警察と被害企業への関連取材で紙⾯内容は充実。結果オーライと言うと能天気だが、「得失点差」で負けにはならなったというところか。
地方取材回想① 選挙 2024.12.29
地方取材回想③ 事故 2024.12.29
地方取材回想④完 郷愁 2024.12.29