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2019年10月10日
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カテゴリ: 本



「ミチクサ先生」とは、明治の文豪夏目漱石のことだということが、すでにわかっています。本日の連載が30回目になりますが、時は明治7年、養子に出された金之助少年(漱石)が当時新政府によって創設されたばかりの小学校に入学しようとしていたころのことが描かれています。

一昨日の第28回では、筆者はこの年明治5年12月3日を明治6年の1月1日にするという暦の改変と一日を24時時間にとする定時法の導入についても、触れています。

新暦の導入を聞いた町場の高利貸が、仰天してこう言ったと。

「これはまずい。ひと月分の利息が消えちゃう」と。


明治5年の年の暮れに突然実施された改暦については、学制の制定や軍隊の創設、鉄道の施設など矢継ぎ早の政策を実施したことにより、新政府の財政は破綻寸前にまで追い込まれていて、急遽の策として編み出されたのが、太陰暦から太陽暦への突然の改暦であったという話をものの本で読んだことがあります。

たまたま翌年の明治6年が閏月のある年であったので、このタイミングで新暦に切り換えれば給与をはじめとする人件費などの経費が大幅に省略できると、当時の大蔵卿大隈重信が発案したものだと。

まあ、さぞかし町場の高利貸しは嘆いたことでしょうが、大隈重信はほくそ笑んだというわけですね。(笑!

また、月の満ち欠けを基準にひと月を定めた太陰暦では、毎月の15日は満月、晦日は新月ときまっているから、月の満ち欠けを見るだけで日にちを容易に知ることが出来た。これが新暦の太陽暦となると、日にちがよめぬということになり長年太陰暦に慣れ親しんできた当時の人々は、 「晦日に月の出づれば、玉子の四角もあるべし」 とおおいに嘆いたと。


一日を24時間とする定時法についても触れておきましょう。
現代の我々であれば、時計を見れば、今が何時かすぐにわかるというものですが、どうも当時の人々は1日を24等分したものが1時間、それをさらに60等分したものが1分という新しい時間の単位は、感覚的にも受け入れることが出来なかったらしい。

時代小説の名手・浅田次郎は、これを題材にした 「遠い砲音」 という短編のなかで、新政府の近衛歩兵師団砲兵中隊の士官の当惑振りを、おもしろおかしく、そして悲しく描いています。

「遅刻じゃあっ、急げ、遅刻じゃあっ」

「中隊長殿、時間は」

「11時と、ええ・・・50ミニウトか。いや、40」

「あと何ミニウトでござるかっ」

「ようわからん。ともかく急げ」


そういった激動の時代に幼年期を過ごした夏目金之助少年は、長じていかなる人間となっていくのか。漱石はどんな「ミチクサ」を歩んだというのでしょう。

伊集院静氏の手腕が待たれます。





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最終更新日  2019年10月10日 11時50分06秒
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