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2014.05.23
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カテゴリ: エッセイ
郵便機のパイロット時代の出来事を書いたエッセイ。
サン=テグジュペリが始めて仕事についた時の話、同僚メルモスが様々な定期航路を開拓した末に消息不明になった話や、同僚ギヨメが冬のアンデス山脈に墜落してから五日四夜歩きとおして生還した話や、サハラ砂漠のムーア人(モール人)を手なづけた話や、ムーア人が誘拐した黒人奴隷バークを買い戻して奴隷から開放する話、サン=テグジュペリがプレヴォーと共にサハラ砂漠に墜落して水がない中で幻覚を見ながら歩き回った末に遊牧民に遇って助かる話など、エピソードとして面白いものの、日付が不明瞭だったり、状況の説明不足だったり、比喩がくどかったりして、小説ならまだしもエッセイとしては読みづらい部分がある。各エピソードがどうこうというより、全体にサン=テグジュペリの人生観が表れているのがこの本の見所。
飛行機乗りは当時の最新の機械を操縦する花形の職業でありながらも、サン=テグジュペリは飛行機をあくまで道具としてみなしていて、視線はあくまで人間に向いている。サン=テグジュペリの思想が出ている文章をいくつか引用してみる。

「何ものも、死んだ僚友のかけがえには絶対になりえない、旧友を作ることは不可能だ。何ものも、あの多くの共通の思い出、ともに生きてきたあのおびただしい困難な時間、あのたびたびの仲違いや仲直りや、心のときめきの宝物の貴さには及ばない。この種の友情は、二度とは得がたいものだ。」
「ある一つの職業の偉大さは、もしかすると、まず第一に、それが人と人とを親和させる点にあるかもしれない。真の贅沢というものは、唯一つしかない、それは人間関係の贅沢だ。物質上の財宝だけを追うて働くことは、われとわが牢獄を築くことになる。人はそこへ孤独の自分を閉じ込める結果になる、生きるに値する何ものをも購うことのできない灰の銭をいだいて。」
「人間であるということは、とりもなおさず責任をもつことだ。人間であるということは、自分には関係がないと思われるような不幸な出来事に対して忸怩たることだ。人間であるということは、自分の僚友が勝ち得た勝利を誇りとすることだ。人間であるということは、自分の石をそこに据えながら、世界の建設に加担していると感じることだ。」
「現代技術のあまりにも急速な進歩に恐れをいだく人々は、目的と手段を混同しているようにぼくには思われる。単に物質上の財宝をのみ希求している者に、何一つ生活に値するものをつかみえないのは事実だが、機械はそれ自身がけっして目的ではない。飛行機も目的ではなくて一個の道具なのだ。鋤のように、一個の道具なのだ。」
「ぼくらはすべて、いまだに新しい玩具がおもしろくってたまらない野蛮人の子どもたちなのだ。ぼくらの飛行機競争もこれ以外の意味をもちはしない。あの一機はより高く上昇し、この一機はより速く飛ぶ。なぜそれを飛ばすかということを、ぼくらは忘れている。競争のほうが、さしあたり、競争の目的より重要視されている。これはいつの場合にも同じことだ。」
「たとえ、どんなにそれが小さかろうと、ぼくらが、自分たちの役割を認識したとき、はじめてぼくらは、幸福になりうる、そのときはじめて、ぼくらは平和に生き、平和に死ぬことができる、なぜかというに、生命に意味を与えるものは、また死にも意味を与えるはずだから。」


ひとつの過ぎ去った時代の、ある職業に就いた者にしか書けない物語を描いたという点で、サン=テグジュペリは現代でもユニークな作家であり続けているのだけれども、その人間観がすばらしいからこそ魅力的なのだ。

★★★★☆






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最終更新日  2016.03.22 00:53:25
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