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今夜、世界からこの恋が消えても【電子書籍】[ 一条 岬 ] とにかく原作は大ヒットして、特に韓国で大売れだったそうな。 映画興行収入も15.3億で大ヒット。 私は、先に映画を観た(夕顔絵夢二郎の江戸ハブ日記 231022)。 そしてこの度原作を読んだ。 映画を忠実に原作がなぞっている、いや、逆か。 それほど映画は忠実だったなと私は思う。 本作は、原作も映画も泣け作だ。 とにかく涙腺が緩んでしまう。 本作の病名は、前向性健忘。 この病名をテーマにした映画は結構ある。 たしかに映画あるいは小説になりやすいテーマだ。 そのテーマをいかに上手に料理するかが腕の見せ所となる。 そして本作は今様も今様、とにかくデータを改ざんしてヒロインから彼氏くんの気配を消しちまえってんだから、ここのところのドタバタは、もう少し何とかならんかったかねと思う。 思い起こせばもう20年くらい前になるのか、セカチュー、あの映画は長澤まさみ主演で大ヒットしたけれど、私にはあの映画と本作がダブってしまうのだ。 考えてみればもう20年もの年月が経っているんだな。 あの時の喧騒が私は欲しい。 でももう昔には戻れない。 セカチューですらもう、懐かしの、なんて枕詞が入ってしまう時代になった。 あー、なんという時代だ。(10/11記)
2023.12.27
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鸚鵡楼の惨劇【電子書籍】[ 真梨幸子 ] 小説の読み方は人それぞれ感じ方も人それぞれだから、読み手には読み手の自由があり、書き手には書き手の自由がある。 しかし小説というものはあるいは文学というものは、すべからく書き手と読み手が存在して成立するもので、そのどちらか一方が立つことはない。 従って読み手から見て不快と感じられるものはその読み手にとって不快以外の何物でもなく、読みづらいと思うものは読みづらい以外の何物でもなく、理解できないというものは理解できないということ以外の何物でもない。 つまりだ、小説は書き手と読み手のハーモニーの芸術なのだ。 そうでない書き物はもはや小説ではない。 そして読み手にとって不快であるとか理解不能というものはつまり、書き手の独りよがりに過ぎないということになろう。 本作はまさに独りよがりモノでしたな。 巻末に黒木瞳がなにか小文を出していたが、それほど評価できる作品であったか。 第一本作はミステリーと呼べる代物だったか。 そうであれば触法少年時代の犯罪を法の解釈も加えずに書くことの愚かさをどう考えるべきなのか。 この法の無知が日本国民を法的総白痴にしているのではないのか。 ミステリーを少しかじって自分のテリトリーで勝手に解釈してそれを世に出すなんてなんとハレンチな行為なのだ…。 少なくとも彼女の作品は私のこのブログではカテゴライズされない。 特に推奨もしたくない。 それを推奨した黒木瞳も好きになれない。(9/17記)
2023.11.25
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取り扱い注意【電子書籍】[ 佐藤 正午 ] 平成13年初出というから22年前のお話ですか。 特に古臭いということもない。 でも時代が高速化していることは事実で、ケイタイなどという言葉も死語化し、マジェスタなどという車は世界の廃車化してしまった。 つまりその時代を生きた人には何でもないことでも今の人には何のことかわからない話なんだろうな。 読んでもちんぷんかんぷんというやつだ。 本作のような話をなんと表現すべきなのかな。 とにかく人間関係が単純なようで複雑なのだ。 そのうえ、太平洋クラブライオンズなんて、懐かしいプロ野球チームも出てくる。 あのチームやら日拓ホームフライヤーズの着ていたユニホームは、実に彩り鮮やかで、当時の人には理解してもらえなかったのだが、今のプロ野球はそれが当たり前のことになってしまった。 そもそもホーム球団は白が基調のはずなのに今は普通に色がついているユニホームを着ている。 かと思えば、夏の甲子園はたまたま慶応カラーのチームが決勝に残って、どっちがどっち?状態になっていた。 高校野球もユニホームに関してルールが必要なんじゃないかね。 なんてあらぬ方向に論点を向けてしまったが、そもそも本作が楽天ブログでは受け付けてもらえぬ内容ばかりで、そんなことを書いたらいきなり、ブー、だもの、当たり障りのないことを書くほかないのだ。 それはともかく強奪した金が結局犯人が捕まらぬまま犯人の思うがままの状態では、これはいかんですよ。 ロリコンという点も楽天コードに引っかかるでしょう。 だが読んでいて実に楽しい小説であったことは間違いない。 それは主人公の悪びれぬ性格から来ているんだろうね。 深刻にならず遊び心でやりまっしょい!という作者からのメッセージだね。(8/29記)
2023.11.11
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聖母の深き淵【電子書籍】[ 柴田 よしき ] 不快以外なにものでもないまま読了。 500ページ弱では拷問ですな。 まあしかし読了するのは作者への礼儀だろうから、ひたすら読んだ。 電子本には電子本ならではの読み方がある。 まず字の大きさを変えることができる。 一面4行から最後どれくらい小さくなるかまでマジに考えたことがないけれど多分30行までの字の大きさを変えての読み方ができるということは、紙の本ではできないこと。 そして読み上げ機能。 聞き流しているうち眠くなって寝ることもある。 そんなふうにして本作と格闘して、なんとか読了した。 たしかにこの本が書かれた平成10年ころは警察では生安も刑事もシャブを追っていたことは間違いない。 生安から刑事にシャブが移管されたのは平成16年のことだ。 しかし防犯が生安に変わったのは平成5年頃の話だ。 それから本作のようなひどい警察官がいたとしたらどいつもこいつもクビになる。 それほど警察内部の引き締めは厳しい。 本作は今をときめくLGBTQの問題が大きな嵩を締めている。 全くどいつもこいつも…。 まあ、これだけ泥に塗れた警察官を好きな人もいるだろうからなんとも言えないけれど、正義の味方たる警察官がこれだけ違法であったなら日本の治安が伝統的に守られては来なかっただろうな。 そして大山鳴動ネズミ一匹。 誘拐事件が嘘っぱちなんてのっけからみろっとめろっとお見通し状態だった。(8/26記)
2023.11.10
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月の満ち欠け【電子書籍】[ 佐藤正午 ] 本作は直木賞受賞作品である。 先に映画(夕顔絵夢二郎の江戸ハブ日記 230911)を観た。 理解できなかった。 きっと原作はこんな話じゃないと確信した。 まあにその通りだった。 流石に直木賞だ。 本当によくできている。 映画のように理解できない内容ではなかった。 前世、生まれ変わりの話だ。 そしてこの小説は、まさに瑠璃なのである。 こんなにキラキラ輝いている小説を読んだことがないと思えるほどの傑作だ。 もう映画の話などしたくない。 そしてたしかに大正史も大森村もさらに大東野も映画化を良しとしているのだけれど、原作とかけ離れた映画など観たくもない。 本作の話が作者の文章力により、スーッと脳内に入りあまつさえその映像もまた明らかに脳内で再現される。 そこには申し訳ないが大泉洋も柴咲コウも田中圭もいないのだ。 これほど原作と映画が乖離した作品も珍しんじゃないのか。 そんなことを思いつつ読了した。 さて実際本作のような経験をした方がおられるのだろうか。 興味のあることである。(8/19記)
2023.11.02
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その手をにぎりたい【電子書籍】[ 柚木麻子 ] その手とは寿司職人の手である。 舞台は銀座の高級寿司店。 ここの一ノ関という寿司職人が青子というヒロインに次から次へと本物の寿司を食べさせる。 その結果この青子は一流の寿司の見分け人になる。 年代は昭和末期から平成初頭。 書かれた時期は2014年というから今から9年前。 青子の勤める不動産業やらバブルのハジケやら何やらかにやら当時の世相を背景に寿司職人とそれを食べる立場人の話が続く。 読み手は寿司の蘊蓄にどっぷり浸かる。 そういう仕掛けの小説であった。 何よりコラム的に話の端々に寿司職人のまかない飯としてチャーハンやらなにやらが登場してきてこれも面白い。 何より一ノ関以上の男が出てこないのもいい。 この作家尋常ではありませんな。 素晴らしい作家さんだ。 こういう語り口の良質な小説を読むことができればまだまだ日本文学界大丈夫だなどとも言いたくなる。 けれどもどうなんでしょうねえ本当のところは。 何しろ私はミステリーリーダーなので日本文学界云々についてはあまり関心がないのだ。 けれどもたまに良質な小説に出会うとそれが活力になるということは感じる。 そう文学は活力足り得るのだ。(8/15記)
2023.10.26
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警視庁心理捜査官上【電子書籍】[ 黒崎視音 ]警視庁心理捜査官下【電子書籍】[ 黒崎視音 ] とっても気に入らない警察小説だった。 ただ下巻の奥書前に参考文献が羅列してありこれらの警察資料を元に本作を紡いだことはよく分かったが,結局おそらく取材先は警視庁当たりの公安警察官なのかどうかわからないけれど, はっきり言ってリアルに乏しい警察小説になった。 作者は性別さえ明らかにしていない。 そうなんだけれども書きっぷりからどうやら男性じゃないのかなと思えた。 それはともかく結局文献からだけでは警察の真相は分からなくて例えば無線のやり取り,警視庁より各局などとは絶対言わない 。 多分警視庁本部,から,〇〇(署)になると思うし,よりはからであるから警察署の名前を呼ぶわけであって結局この作者は警察小説を書きたいがばかりに警察の文献をあさったものの本当の警察のことがわからなかったのではないのかなと思った。 つまり取材力不足だ。 上巻は能書きだらけなんだけれども, 結局その能書きがあまりにもうざくてもう本当に3度はこの本を読むのやめようと思ったほどだ。 実況検分の検分は見分, 主席管理官の主席は首席,後で任意提出をお渡ししますので などということはなく,警察官が技官なわけもない。 この辺は本当に最悪の警察ドラマ京都府警の榊マリコが主人公の科捜研の女以下。 ひどいもんだ。 本作における心理特別捜査官は,警察官であってはならない。 なぜなら警察官は捜査官なのだから。 捜査のの一方が強くなることは許されない。 第1次捜査機関である警察は証拠収集し事案の真相を明らかにすることが使命なのであって,そのことを例えばプロファイリングするような心理捜査官と呼べるようなものが警察官であってはならないのだ。 公平に欠ける。 逮捕術, 射撃などの教練?これは術科と言うもんです。 爽子の同期生たちには交通機動隊の白バイ婦人小隊や通称 カラーガードと呼ばれる鼓笛隊専任を志望するものなど様々だったが爽子は留置係を希望していた。 そして偶然警視庁で数少ない女性留置場を持つ第三方面碑文谷署か爽子の配置を希望した。 爽子は希望通り警務課女性留置係に入って配属されたなどという記載はありえない。 が読んだ文献にしっかり書いてあったはずだ。 次,ありがとうと女性は呟いた,そして3日目から立会いを爽子にすることを条件に聴取に応じその結果国選弁護人の助言に対し自分が薬物の影響がない状態だ, 犯行に及んだこと,また撮影があったことさえ自供したというのはダメ。 捜留分離に違反している。 刑事課保安係などというものはない 。 昔から生安の保安係であり,刑事課で保安係で売春,拳銃の摘発取締り, 薬物捜査など様々なジャンルを扱うことはなく平成16年に拳銃と薬物は 刑事部に移った。 とにかく警察官が司法警察員としての職務権限を剥奪されるなどということは考えられない。 減給処分されたものが,経歴に傷がつかないようにご配慮くださいなどとばかくさい話もない。 そして極めつきは逮捕状は司法警察員なら誰でも請求できる,通常は幹部である警部が請求するではなくて ,これは指定司法警察員たる警部が通常逮捕状を請求するものである。 そして被疑者が任意同行のうち自供すれば逮捕状は必要なくなるなどということをなぜ書いているのか。 こうなるとこの作者はただただ文献からのみの取材によったんだなと考えざるを得ず,その結果数多の推理小説評論家をしてリアルを感じ刺さることができず,その結果賞受賞がなかったと考える。 それからニューナンブM 64 ,シリンダーと呼ばれる回転弾倉にに初弾が装填されていないことなどと言ってもありえん話でニューナンブは5発しか入らないのですよ。 そして人権上の配慮から夜明けから日没までしか認められていないなどというバカな話があるわけがないじゃないか。 それじゃあ悪人が跋扈するだけじゃないか。 ということで 本当にもう私はこの作者の本はもう読む気がしない。 何よりこの作者の作品が何の賞も受けていないということがその証左である。 こんなばかばかしい小説をよく最後まで読んだものだと自分で自分を褒めてあげたい。(6/11記)
2023.08.22
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アイネクライネナハトムジーク (幻冬舎文庫) [ 伊坂幸太郎 ] 小説にねじりとかひねりを入れられるとなんだか愕然とするな。 私にはそんなことに拘泥してそれを解明しようなんて意思もないから,そう言う面倒くさいことはしないでほしいなと思うわけだ。 しかも後半がなぜかボクシングの話になってしまって,一体作者はこの作品で何を訴えたかったんだろうなと,これまたそのなぞの解明もしなければならないのかと思うといささかむっとしたのだった。 後書きで作者がいみじくも書いていた通りこの作品にはトリックも泥棒も犯人も殺人者も出てこない,自分にとっては珍しい作品なのだ,ということだった。 だから本人は自分のことをミステリー作家だと思っているのだろうな。 それならその矜持にのっとってミステリーを書いてみろよ,と言いたいのだ。 それはともかくクレーマーに絡まれたら,この娘の父親が誰だか知っているかというと相手はおとなしくなるなんて逸話は,これは面白い話だなと,それくらいかな面白いなと思った話は。 この頃映画もミステリーも外れだらけ。 やっとこの間東野の白夜行という大作を読んで,東野と他の作家の差が大きくなってしまったなと,それから映画と原作の差もかなり大きくなっているなと,思いはじめた。 ミステリーにおいてはリアリズムが欠かせない。 嘘を書くのだったら,警察官など出さない方がいい。 とすれば,ミステリー作家はミステリーなど書かなければいい,とでもなるのかな。 そうしたら作者はたいしたもんじゃないか。 でもやっぱりミステリーには挑戦してほしいものだ,自分がミステリー作家と自認しているのであれば。(6/6記)
2023.08.19
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教場【電子書籍】[ 長岡弘樹 ] それにしても取材元は誰だろうか。 警察学校の中がこれだけ荒れていては日本の治安もそれまでだ。 だが人々はそういう不完全性を望んでいるのかもしれない。 だから視聴率が上がる。 このシリーズをどのように理解したらいいのかは不明だ。 ただ胸に一物もった人間だけが警察官になりたいわけではない。 だいたい本作のような酷い人間だけでは,警察が成り立たないだろう。 警察学校を篩と表現している点,そう考える方もおられるんでしょうなあ,警察幹部には。 だが思っているほど酷い人間が入ってくるわけではないから,大概きちんと卒業して第一線に配置されていると思うよ。 そもそも私怨を晴らすため警察に入るなどということがあるのだろうか。 白バイに乗る為入った警察学校で耳をやられて白バイ乗りを諦めるなどということがあるだろうか。 警察学校内部で便利屋をするバカが居るのだろうか。 そんな事考えつつ,本作のようなどうしようもない警察学校があったら面白いだろうなと思うのが現代人なのだ。 だから売れるんでしょう,本シリーズは。 プロットは面白い。 だが文章力にもとる。 耳読しても脳内スパークしない。 それは作家として問題だ。 などと思いつつ読了はした。 たしかに本シリーズは今までの警察モノとはちと違う。(6/1記)
2023.08.15
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すぐ死ぬんだから (講談社文庫) [ 内館 牧子 ] ヒロイン忍ハナは87歳。 夫岩蔵との夫婦仲は良い。 その夫が転倒して脳に血腫ができていたにもかかわらず放置していたものだから,数ヶ月後あっけなく死亡してしまう。 本作はそれからが絶妙な話に展開していくのだ。 ネタバレになるから(岩蔵の死もネタバレだが),これ以上詳しくは書けない。 といいつつ話したくてうずうずしてしまう話なのだ。 それほどすごい話の展開で,トリックも叙述もないのにこれほど驚かせられる話は他にはないだろう。 さて本作においては老後のあり方についてとつとつとかかれている。 いわく静かにゆっくりと衰えるとか、見た目で勝負とか、ナチュラルはいけないとか、それはまた内館牧子の考えそのものなんだろうな。 その考えに賛成。 やっぱりジジババ臭いことはしたくないよ。 孫から敬老の日に"ぎっきって敬老じゃないよね"と言われたときは本当に嬉しかったね。 孫から敬老の日のプレゼントなんてもらったら本当じゃないよ。 だから本作における内館牧子節は本当に私の心にグサグサと突き刺さるのだった。 さてこれから私はどんな生き様をしようか。 少なくとも終活などということはせんぞ!(5/24)
2023.08.09
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情報系女子またたびさんの事件ログ 暴走ロボットアームとひきこもり少女の相関【電子書籍】[ 日野イズム ] AIが世の中を席巻している。 本作はそのような現代の中暴走ロボットアームによって引き起こされた学生被害にかかる業務上過失傷害容疑事件である。 結局日野イズムが書く舞台は母校立命館で,ミステリーとは言っても自分の得意分野でなければ書けないという欠点を持つ。 たしかに人工知能が人類の知能を凌駕する時代がいつかは来るのだろうが今の段階で本作のような暴走ロボットアームによる業務上過失傷害は,どんどん起きても不思議ではない時代になっているんだろうな。 ただ本件を擬律判断するに捕まえた犯人に故意が存在していたから明らかな傷害事件に切り替えということになる。 理系の人間はこの法律の擬律判断まで思いもよらないだろうがね。 卯月という事務職員の思いは現代人類のAIに対する危惧だね。 卯月は大見得を切って吠えるけれど,それは多くの人の考えでもある。 現実に卯月は自分の仕事をAIから取られた。 またたび先輩の過去も明らかになる。 彼女は前の研究室を破壊したのだった。 それは後輩に対するパワハラめいた指導が原因だった。 それが本件の動機になった。 ということで話としては実に合理的で不快感はない。 けれども日野イズムがこれから先ミステリー作家として食べていくにはまだまだ修行が足りないとしか私は言いようがありませんな。(4/24記)
2023.07.24
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情報系女子またたびさんの事件ログ【電子書籍】[ 日野イズム ] 明らかに立命館大学を舞台にして作られた学園もの。 厳しい評価をすれば果たしてミステリーと言えるのかどうか。 難しい話は置いといて(ここでいう難しい話とはいわゆるデジタル系の話のこと。ミステリーのことではない)本作が学園祭を舞台にした学園祭妨害モノ,そして副実行委員長逮捕監禁事件の謎を解くもので,写真の合成やらそしてこういう世代の作家の得意技叙述トリックだので何とかまとめ切ったということころかな なぜこうも叙述トリックを今の人たちは使いたがるのかわからない。 いつ親しいと言った?ってか。 その段階でもう犯人はみろっとめろっとお見通し状態ではないか。 ただ本作のヒロインが実に個性的なのである。 それが効いているね。 木天蓼という苗字。 小学校時代から頭脳明晰なるも博士課程にいる今その姿は中坊のようなものだとか。 しかし研究室では遠慮なく学部生の研究を酷評する。 大きな理屈は特に不快ではない。 ただその各論部分が私たち文系人間にはお手上げだ。 彼女が言うことはほとんど正論だ。 小学校時代にもう教師を論破している。 彼女は研究室に棲んでいるような感じの研究者だがデジタルを駆使して本件学祭妨害事件の謎を解いたのだった。 さて日野イズム,自作では血を見せるのか。(4/24記)
2023.07.23
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砂の家【電子書籍】[ 堂場 瞬一 ] 丁寧に書いたつもりなんだろうが冗長すぎた。 話が先に進まないのである。 なんでも清張の砂の器を意識した作品だとか。 どこがやとあたしなんざあ突っ込みたくなる。 共通点は父子というだけ。 主人公は無理心中の結果母と妹を父に殺されてその父が刑務所に収監され残された弟と対照的な人生を送ることになった。 その父が出所する。 そして主人公がひょんなことから救ってもらった会社の社長のスキャンダルと絡んでサスペンスが進行する。 これまた今の段階では私にとって不快感漂う作品であった。 その不快感は二宮ともまた違う不快感だ。 何が不快かと言って先に書いたように冗長で亀のように歩みがのろいこと。 ばかりか面白みが不足している。 最終盤のまとめも中途半端だ。 結局無理心中の果てに不幸になって行った家族の話でまとめ上げられるではないか。 サスペンスも荒い。 脅迫犯人が弟君ではねえ。 その弟君を殺しの前科のある父親に殺させようとするその根性が情けないうえ本当に不快なのだった。(4/21記)
2023.07.20
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夫が邪魔【電子書籍】[ 新津きよみ ] 全編を貫く叙述トリックの嵐。 叙述トリックに一矢を報いた我孫子武丸はミステリーの本質をよく理解していたのだ。 あの我孫子の叙述トリック論はけだし名作だということが本作を読んでわかった。 新津きよみは本作でミステリーを書きたかったんだろう。 しかし全編が叙述トリックではミステリーのミの字もわからなぬぺえぺえの駆け出しの作家のなせる技,いやさ,高校の文芸部員よりもまだひどい,それなのにこうして商業ベースに乗っているということが信じられない,というのが私の感想である。 二宮がやっとこさミステリーっぽいものを書き出したけれど,この新津なる作家はなぜこうも叙述にこだわるのか,つまりミステリーというものがどういうものかわかっていない,基礎力不足を否めない作家ということになろう。 ミステリーというジャンルあるいはカテゴリーで本作を書いたというからこういう評価になる。 一体新津はミステリーというものが叙述だとでも思っているのだろうか。 言葉で文章で構成で人を騙すことが到底ミステリーとは認められない。 新津に何が不足しているかといえば稽古だ。 つまりミステリーをきちんと読みこなしていないことがバレバレなのだ。 だから叙述に逃げ込むことになる。 それをこうして商業ベースで出す出版側にも問題があろうが。 新津に言いたいのは一作でもいいから東野モノをきちんと読んでほしいということ。 きちんとしたトリックなしのミステリーは私は認めない。 もう本当に叙述にはうんざりだ。 叙述トリック論を書いた我孫子はそういう意味で慧眼があった。 まさに過ぎたるは及ばざるがごとしである。(4/17記)
2023.07.17
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セカンドライフ【電子書籍】[ 新津きよみ ] 私にとっては不快極まりない短編小説集であったが全作読了した。 とにかくkindle unlimitedには当たりはずれがあるから仕方ない。 何が不快かというとイメージ的に定年を終えた男が離婚をする話だらけだったからだ。 しかし人間はそんなに不幸な人生を過ごすようにできているのだろうか。 夫婦が一生添い遂げるということが美談をとおりこしてギネスブック的になっているというのがこの作家の価値観ではないのか。 そのような中で,見知らぬ乗客,は上質な短編ミステリーだった。 文子をどう読むか,ふみこ?あやこ? 300万円もの大金を電車の中でやり取りする。 それは夫の殺し賃だった。 しかも死刑の公訴時効がなくなり…。 雲の上の人,は年またぎの一卵性双生児の話。 こういうのが叙述トリックというんでしょうな。 でも熟練のミステリーリーダーはそんなこと全部みろっとめろっとお見通し状態。 閑話休題(こんな言葉出すのは高校の文芸部で文章を紡いでいたとき以来か)。 夫婦は仲が悪くなるのが世の常道というのか。 なかよしでは悪いのか。 まあそれにしても本当に話というのは数多あるもんだ。 作家の頭というのは本当にどうなっているんだろうねえ。 面白い作り話をよく考えるもんだなとつくづく思う。 そして私は一回読んだ小説の筋を全部忘れてしまう症候群に陥ってる。 小説筋全忘症候群。 また新たな造語だ。(4/12記)
2023.07.09
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相続レストラン【電子書籍】[ 城山 真一 ] たまに良い小説に会うと気持ちいい。 著者の出自はわからないけれど,相続法などに詳しいところを見ると税理士関係の方かと推測した。 それはともかく動かしようのない法律に巧みに相続人を絡ませて少しはミステリーのような雰囲気も漂わせて,本作は進んでいく。 レストランの成員は元司法書士,元税理士,元警察官と訳あり人物だ。 彼らが何故集まっているかは本作では明らかにされていないけれど,元税理士の冬木を中心にしてそれぞれが情報収集をし,複雑な相続問題,不動産問題を読み手に考えさせながら解決に導こうと奮闘する。 書き手がただただ流れに沿っていたんでは物語がつまらない。 そこを何度もどんでん返しを準備して読み手をまるでジェットコースターの乗り手のような気分にさせてくれる。 なんとも地味な相続法とか会計の問題を小説に仕立て上げることのできる作者は並の小説家ではないと私はみた。 冒頭イノシシに襲われるシーンが出てくるがこれが終盤にその意味をなしてくるという点,小説に無駄なところはないということだろう。 ミステリーリーダーたる私はそのイノシシ襲撃もまた人為的なものじゃないかなんて思いつつ読んだのだがそのことについては結局その時やられた二人が結びついていたということの材料だったに過ぎなかったということがわかり誠に残念な思いをした。 これだけ込んだ小説をコンスタントに書くことは難しいんじゃないかな,多分作者は一発屋かななんて思いつつ,明日にはこの作者のことをググってみようかと思っている私だった。(4/10記)
2023.07.05
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耳すます部屋【電子書籍】[ 折原一 ] こういう作品はミステリーとは呼べないだろうが,短編集とはいえかなり吟味した作品群に仕上がっていた。 ただこの作家の弱点は,捜査実務に関する取材力が甘いことだ。 一つ一つの話は,話として面白いのだけれど,今は公訴時効のない殺人罪に関し,2000年刊行当時15年だったことから,15年に厭にこだわる少女とか,業務上過失致死で罰金50万円を食らった被疑者の再捜査をしようなどという話なんざあ,素人の域をこえていない。 まずもって行為時触法の場合そもそも公訴などということがないから,時効を気にする必要はないし,一事不再理の大原則から決まってしまった判決は変えることができない。 それからいわゆる叙述トリックでしょうな,ところどころ高校の文芸部あたりで書いていそうな話もあった。 それでも今回はきちんと読了させてもらった。 結局ホラーとミステリーの違いは何かと言えば,超常現象で決めようとするのがホラー,きちんと根拠を示すのがミステリーということになりましょうな。 そういう意味で折原一はミステリー作家にあらずということに相成りましょうぞ。 まあそれでもkindle unlimitedに載せてくれているから上等でしょう。 それにしても耳読の破壊力はすごい。 目だけでは入らない情報がきちんと脳にしみこむように入ってくる。 だから本作のような作品でも具体的に読める。 また優れものが出てきたものだ。(4/5記)
2023.06.29
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黒衣の女【電子書籍】[ 折原一 ] 叙述トリックの典型のような作品。 こういうのをミステリーとは呼びたくない。 読んでいる端からこいつぁー叙述だぜと感じるくらいひどい作品だった。 我孫子武丸の叙述トリック試論にあるとおりこの手の作品は後出しじゃんけんの極みである。 あたしゃあはやくから時間差を疑ったがまったくそのとおり。 こうなるとミステリー文学がくだらないものと一蹴されてしまうじゃないか。 まあそれにしても私自身良くこの作品を読み終えたものだなと自分自身をほめてやりたいほどだ。 そうだね,ビルから飛び降りて死んだかどうかとかね,電車待ちして押されたかどうかとかね,愛情のない妻が夫の死体を見て悲しみを出すかとかね,そんなこまごまとしたことを並べ立てていったら本作の核心には迫れるだろうよ,それと先に書いた時間差の問題もね。 あたしゃあこの前我孫子武丸の叙述トリック試論を読んで初めて叙述トリックの存在を具体的に意識したのであるが,ようするに叙述トリックというのは後出しじゃんけんのことなんだなあと本作を読んで理解したところだ。 やっぱりさ,ミステリーには真摯に取り組んでほしいね。 ミステリーは書き手と読み手の真剣勝負,小手先のトリックで読み手の時間を割くことだけはよしてほしいのだ。 この叙述という禁断の手を使うか否かが作者の評価を分けるんじゃないのかな。 まず今回の殺人現場の詳細な記述,検視結果,解剖結果,その後の捜査機関の聞込み等による捜査情報の提供,これらがそろっていなければミステリーとは言えないじゃないか。 ということで全くひどいミステリーを2作続けて読んでしまった私だった。(4/3記)
2023.06.27
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母性という名の狂気【電子書籍】[ 貫井徳郎 ] 本作は短編である。 ミステリーとして最終盤に大どんでん返しを図ってみたが滑ったという感じかな。 児童虐待という今風な問題をサイコの面から切り込んでもかみ合わない。 いくら短編とはいえ本作はフェアでない。 最後に虐待していたのが誰かということに関しあやふやにしているのはいただけない。 しかも後妻話が後で出てくるのだ。 これもいただけない。 アンフェアなミステリーは,なんじゃこりゃあ!なのである。 ただね、そういう卑怯な話はなぜか心に残るんだよねえ。 最終的に多重人格で片付けようとしているのだけれど,児童虐待という極めて今日的な現実に対して失礼な話になるよね。 この問題の論点は幼稚園女児が果たして守られたのか守られなかったという問題であって,父親が幼年時代実の父親から被った虐待のせいで多重人格に陥った話は本論から大きく外れてしまったのではなかろうか。 つまり小説であっても扱うテーマによっては世の大きな流れから外れる話になってしまってミステリーとして驚くわけにはいかない,いわゆる笑えない話になってしまうということなのだ。 事程左様に小説を書くということは難しいことである。 安易な話を人前にさらしてほしくない。 人には不快という感覚があるのだから。(3/28記)
2023.06.17
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そして誰も死ななかった【電子書籍】[ 白井 智之 ] さて東野の次の代を誰にしようかと思うのだが,なかなか見つからない。 それにしても東野の世代は百花繚乱だ。 ようするにこの世代を抜く世代がまだ現れていないという残念な状況にミステリー業界はあるわけだ。 いわば跡継ぎが見つからないお家断絶状態なのである。 というのは今もって東野の世代が江戸川乱歩賞も推理作家協会賞も受賞している状況なのである。 だから東野の世代の子供の世代に当たる今40代の作家を探しているのだ。 またはそれ以下の孫の世代でもいいのかもしれない。 しかし一向に見つからない。 今回読んだ白井智之はちょうど東野の子供の世代に当たる。 ということで少し期待してみたが,一言で言ってだめだね。 そもそも本作は最初ホラーの様相から入るのだ。 ある未開部族の男たちが一気にいなくなったという逸話、そのあとヒーローが付き合っていた女が首が放れるような状態にもかかわらず痛みも感じず話をする。 この辺なんざあ不快の極みだ。 そして題名を見てわかる通りお約束の離れ孤島に成員が誘われ事件が開始して犯人捜しが始まる。 不快なホラーに作者の独り善がりトリック入りミステリーが相まって,だめだこりゃあ,となる。 それでも最後まで付き合った私は偉い,自分で自分をほめてやりたいほどだ。 本作がダメなのは,不快なホラー,説明しつくしていないわかりずらいトリック,そしてなによりも文章力のなさ。 それでも最後まで付き合ったのはそんな粗削りながらもそのアイディアは買えるぞなんてばかばかしい思いにかられたからだ。 ただ市井の評価は正しく,作者は,推理作家協会賞にも江戸川乱歩賞にも選ばれていない。(3/17記)
2023.06.12
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定年就活 働きものがゆく【電子書籍】[ 堀川 アサコ ] しかしそれにしても世の中には面白い小説があるものだなあと感心する。 私はにやにや笑いながら読んだのだった。 そもそもヒロインの状況は私が共鳴できる。 つまり定年後の就活ということで,よくよく考えてみれば,何も年金だけで暮らせるのであれば就活など必要ないのだけれども,ある程度の生活を維持したいということ,それからただ家に引き籠もって残りの人生を暮らすのはいかがなものかということなど,そんなことがこの小説との共鳴点なんだなと私はつくづく思った。 さて本作で特に共鳴したこと,それは, 私ね,「為せば成る亅って言葉,大嫌い。 私も最初はあなたみたいに,ずっと働き続けるつもりだったのよ。 社長が何かにつけ,「為せば成る亅って言うじゃない? それが本当に許せなくて,早く辞めちゃった。 (略) 為せば成るなんて,自分に向かって言うならいいのよ。 だけど,他人に強要するなんて,わからずやの専制君主が言うことだわよ,話せばわかるという人を,問答無用って言って殺しちゃうのと同じ。 文句を言うな,物を考えるな,無理でも不可能でも絶対に実現しろってことじゃない。という意見だ。 ともかく現役時代は上司からできないと言うな,と言われたものだ。 したがって仕事にはかなり無理が掛かっていたと思う。 さらに上記の為せば成るという言葉は,まさに米沢藩主上杉鷹山の言葉であり,米国ケネディ大統領の座右の銘と言うではないか。 すなわち私はその言葉にずっと騙され続けていたんだなあ,本作でズバリと否定的に切ってもらったということは感動ものだった。 しかしそれで上杉鷹山に決別するというものでもなかろうが…。 そこでもう一度為せば成ると言う言葉を考えてみると,この言葉はもう今の時代には通用しない,人道的に外れた言葉,働き方改革を進めていく上では障害になる言葉なんだなとつくづく思ったことである。 ここまでをまとめるとこうだ。 60歳定年と65歳定年の二つを取ることができる会社にヒロインは勤めていたが成り行き上60歳定年退職を選んでしまいその後就活をして潰れかかったような家具会社やら広告会社に入ろうとするものの,何かが働いていたんでしょうな,結論から言えば眼科の医療事務におさまるのだけれども,その間に根暗の娘その娘が特別養子に迎えた歳のいった孫が絡んできてそしてまた親友との女子会のような会話が素敵な小説で,読み手は伸び伸びと読むことができ,そっちこっちで軽い笑いをしてしまうほどのポップな話だったなと思ったのだった。(3/12記)
2023.06.06
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旅人たちの迷路【電子書籍】[ 夏樹静子 ] 本作は長編と銘打った二つの中編からなる作品である。 一つは焼死体は一体誰かという話。 もう一つは100 mも離れた場所から窓越しに人を射殺した容疑事件を捜査する話。 本作のヒロインは遠山怜子巡査部長。 ガリレオの内海薫に匹敵するような活躍をするクレバーな刑事である。 そのような個性的なキャラクターを作り出しておきながら残念ながら本作はミステリーリーダーからみれば駄作と言うほかない。 なぜなら警察庁と警視庁の区別もわからないようだし,警視庁本部に勤めている捜査一課の刑事が本庁から来ましたなどというわけもない。 つまりリアリティに欠けるのである。 それから書いた時代が悪かったのだろうな,焼死体の身元についてはいまや DNA 鑑定で寸分も違わぬ特定が出来る。 そのようなことを抜いても本作は所々歯がゆいのである。 つまり焼死体をもとにそっち行きこっち行きをして話が定まらないため安定感がないのだ。 さて本作のように廃車のトランク内で人を灯油で焼いてそんなに綺麗に焼け切れるのだろうか。 これもまたリアリティに欠ける話である。 2作目もまたリアリティに欠けた。 そもそも本作のような100mも離れたところから射撃をして寝室の寝ている人間の急所に命中などできるわけがないじゃないか。 フレデリック・フォーサイスのジャッカルの日も出しているけれども,あれは本当のスナイパーの話で,日本の猟師にあんな真似ができるわけがないのだ。 要するに突っ込みどころ満載の話,ちなみにミステリーリーダーたる私は最初から本作の犯人は…と睨んでいたが,大当たりで,全部みろっとめろっとお見通し状態でした。(3/21記)
2023.05.16
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ある晴れた日に、墓じまい【電子書籍】[ 堀川 アサコ ] こと小説に関しては耳読が威力を発揮する。 本作も耳読によった。 その意味で小説に関しては紙の本vs.電子書籍の戦いは電子書籍に手が上がる。 今まで推してきた第五祖東野の作品も電子書籍で耳読したらもっとすごい世界が開けるに違いない。 それはともかく本作であるが,この作家の卓越した文章力がほろりとした涙を流させる。 まず設定が良い。 ヒロインは三人兄弟,長兄は結婚して札幌に,長姉はダウン症で施設に入り,自分は古書店を経営する。 そして父親は小児科の開業医師,母はすでに他界している。 このヒロインの家族を軸にヒロインのがん闘病,薄っすらと墓じまいを考えていたときの父の急死,兄の倒産騒ぎが入って,それでも樹木葬という今日的な墓じまいに成功するという話だ。 何より今日的な話をサラリと書きこなすこの堀川アサコという作家は一体何者なんだ,と2作めを読んで思ったことだった。 このままだとこの作家の小説を定期的に読むことになりそうだ。 話の随所に作家の考えと思われる箇所がでてくる。 庶民感覚的で妥当な意見であり私なんざあほぼほぼ賛成してしまうのだ。 私は墓じまいのことも古書店のことも開業小児科のこともよく知らないから,本作のようなことなんだろうなあと思って読んでいる。 でも相続に関してはたしか遺留分があったので,兄に一銭もいかない手はない。 そこくらいが納得の行かなかったところかな。 ページ数も200ページ足らず。 ちょうどよかった。(3/18記)
2023.05.15
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亡者の家 新装版【電子書籍】[ 福澤徹三 ] しかし本作はミステリーと言えるのかそれともホラーなのかは不明であるけれどもたとえホラーだとしてもちっとも怖くないと言う,それから結局人と人のつながりを後出しジャンケンでつなげて言っていわゆる読み手を騙す手法ですか,いかにも殊勝な小綺麗な美人が最終的には綾をなしているというくだり,これなんざミステリーリーダーにとってみろっとめろっとお見通し状態ということになろうか。 それにしても東野を頂点とするその世代のミステリー作家と比べて本作の作者は見劣りすることは否めない。 そもそも事件の展開が遅すぎて,冒頭のような評価につまり一体本作は何なのかという疑問を読み手に呈してしまうのだ。 さて本作は冒頭の流れ,出だしはとても良かったと思う。 それはともかくサラ金のベテラン取り立て屋がビルの屋上から転落死するという事件の展開まであまりにも長すぎた。 したがって本作はサラ金ものなのかと見紛う流れであった。 さらに主人公のガールフレンドとの仲が一体どうなるのかみたいな,朝ドラ的な状況もあり,こんなくだらない話を読むんじゃなかったなあなどと思いつつ読み進んで行くと,先述のビルからの転落死から,殊勝な女の外出やら,最初に出してきた登場人物を次から次へと繋げて行く手法など,こういうつまらない描き方はまるで小説の書き方という教科書にでも基づいているような,そんなつまらないもので,ミステリーリーダーには物足りなかった。 すなわちミステリーにしろホラーにしろ恋愛にしろどのジャンルに入れても本作は小説として中途半端だったということである。 しかしそれでも何らかのテーマあるいはポリシーが見えればいいのだろうけれども,最終盤にかけてのごたごた感はどうにも私には理解できない。 最後のシーンの説明があまりにも不十分だった。 それでもうこの作者の作品は読まなくてもいいやと思った。 そこでKindle Unlimited のやり方をつらつら考えてみるに,こうやって kindle unlimited で人を釣っておいて,その先有料の同じ作者の本に誘い込むという作戦なのだろうけれども,逆に言うと本作の作者のような作品になるともう後はないという,kindle unlimitedの手法そのものが問われることになるのではなかろうか。(2/18記)
2023.05.07
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蟻の棲み家(新潮文庫)【電子書籍】[ 望月諒子 ] これは完全な独り善がり作品。 そもそも脳内スパークしない。 話があまりにも複雑すぎる。 ミステリーの根本的な約束ごとをこの作家はどれだけ覚えているのだろうか。 まずもって本作がこのまま終わったら,冤罪を抱えたまま,犯人は女性記者の推理のみで明らかにされただけの話。 これじゃああーた,ミステリーリーダーは釈然としませんな。 それからミステリーライターとして基本のキの字である起訴の件ですな。 平気で警察が起訴できなかったなんて書いちゃあいけません。 それを西京病という。 女性記者木部美智子が気にした真犯人の生い立ち,環境,本件動機が本作の柱だ。 作者はそこを書きたかったわけだ。 だから最終盤だけは光り輝いている。 そこに至るまでの訳のわからん話は全く読めない話。 こういうのが商業主義に乗るのもどうもあたしゃあ納得できませんなあ。 ここまで数多のミステリーを読んで,あるいは小説を読んで独り善がりと断定できる作品のあるいは作者の共通点は,ずばり作者の文章力のなさだと思う。 本作の作者にもう少し文章力があったら,本作はきっと光り輝く作品になったに違いない。 そしてミステリーを書くに当たって必要なのは捜査機関に対する取材力と現行刑事法(刑法,刑訴法等)の理解だ。 つまり,文章力,取材力,法知識の3点セットが揃って初めてミステリーライター足りうる。 残念ながら私は作者の力不足を感じざるを得なかった。 次回までの精進を祈る。(2/17記)
2023.05.06
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津軽百年食堂 [ 森沢 明夫 ] しかしそれにしてもミステリーばかり読んでいると普通の小説がかなりライトに感じてしまうな。 そもそも津軽と東京を舞台にした津軽の食堂の跡継ぎ問題的な話なのだが,ミステリーのような強い凹凸がないまま話がどんどんどんどん進んでいく。 さてまもなく終わりというところまできて,そうか本作は創業者とその孫にスポットライトを当てたんだな,二代目はあまりこの小説には出てこないのだ,なんてことに気づいたのだった。 それはともかく本作から私はいったい何を感じたらいいんだろうね,なんて読了後思っている。 したがってこれといった感動はない。 さらにシチュエーションがなんでこんなことなのかなんて作家にダメ出しをしてしまうのだ。 すなわちなぜピエロなのかなぜ写真家なのかなぜリンゴ農家の一人娘なのかなどなど,いまいち必然性がなくてぴんと来ないのだ。 しかし最初の賢治とトヨのくだりは面白い。 それでその時代の話をずっと続ければよかったのにね,なんて思いつつそれはちょっと無理だったんだろうな,結局小説は取材力の差が出るんだね。 そこでまた立花隆流に,小説を読んでいる暇がないとでもいおうか。 言うまいか。 最近本当にショックだったのはたしかに読んだ形跡のあるミステリーを読み直した時,何も覚えていないということに気づいたことだった。 ここまでをまとめるとこうだ。 小説を読むことは難しい,それ以上にミステリーは難しい。(2/13記)
2023.05.02
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神様の裏の顔【電子書籍】[ 藤崎 翔 ] 上質な舞台劇とでも言えるのかな。 たしかにミステリーっぽい。 でもこれと言ったトリックはなにもない。 まずもって話の1/3が過ぎたあたりでミステリーリーダーにはひとつの全部みろっとめろっとお見通し状態が出る。 神様と崇められた名校長に実は裏の顔があったというもの。 ここは表題名から誰もが気づくものだろう。 そこから延々と名校長坪井誠造がなしたのではないかという疑惑が語られる。 それは通夜の席でである。 この話の作り,一体どこでまた坪井誠造の犯罪ではなかったと持っていくのかとミステリーリーダーは少々心配になる。 そしてそこから祭文語りの売れない芸人が出てきて一つ一つの疑惑を裏返していく。 そういう作りだ。 そのキーが千葉県には2つの白子海岸があるということ。 おいおいそこかなんて読み込んで,一つ一つまた裏返されて,それは裏の裏の顔?作中マイナスがゼロになっただけなんて登場人物に語らせているけれど,あたしゃあそうじゃなくてそこで,神様の裏の裏の顔とうい表題に変わったと理解しましたぜ。 横溝正史賞を受賞したくらいの作品だから,まさかこれでおしまいじゃないだろうなとミステリーリーダーは密かに先を読む、 結局ペルソナモノだったとわかる。 そういう仕掛けの本だった。 たしかに賞を受賞するだけの力量のある作家なんだろうがこれからミステリー作家として行きていくには,まだまだ様々な取材をして自分を鍛えていかなければなるまい。 目先を変えるテクニックではもはやミステリーリーダーを騙しきれないよ。(2/12記)
2023.04.30
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スプラッシュ マンション (PHP文芸文庫) [ 畠山健二 ] 本当に私の記憶力はどうしてしまったのだろうか。 本作については,(今日、何読んだ? 201127)と一度読んでいた。 今回読んでいるうちデジャブ感があったものの,最終盤の高嶋理事長の立てこもりシーンにいたるまで読んだことを思い出せなかったのである。 前回は,こんなにすごい小説があるんだと感心しているようなことを書いているが,今回はさらに深読みして,その話の構成の巧さとか、実際にあるようなマンション住民の総会の様子とか,すなわちリアリティが半端ないことにまた新たな感動をしたところである。 それはともかく本作を読むと人の心理がなんと薄っぺらなものかと思えてならない。 たしかに本作の登場者は一癖も二癖もありそうなキャラなんだが、実は仕事にも家庭にも疲れ切っている人が多くて,ソープ嬢に慰めてもらわなければならない輩が二人。 殺人希求者が一人。 そんな人達が綾を作る。 折しもこの記事を書いている建国記念の日まさに町内の総会があり,こんなスプラッシュマンションのようなあれた総会にならんだろうなと,副会長兼会計兼衛生委員の私は今から気をもんでいるところだ。 願わくは平穏に終了し給え。 思えば今年の1月4日から何回か会長やら顧問とあって調整してきたのだけれど,こういう役は簡単に引き受けるべきではないなと悔やんでいるところである。 まあ,悪役理事長をやっつけるには度が過ぎた方法を取ってしまって,結局理事長殿の立てこもり事件を惹起してしまうんだけれど,そこまでの話の持っていきようがそんじょそこらにはいない筆の使い手なんだなと改めてこの作家を高評価した次第である。(2/11記)
2023.04.29
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上流階級 富久丸百貨店外商部 [ 高殿 円 ] さて本作のヒロインは静緒という関西の有名デパートの外商部にいて,身長173センチにもかかわらずヒールを履いているもの,マンションをシェアする同じ外商部の男性は桝家といい彼女を, 「引き出しをあるだけ引っぱりだして出すものがなくなったらおしまい。いつもいつもすごく情熱的ですごく熱烈かもしれないけどさ」と評価する。 彼はまた, 「仕事ばかりで潤いのない女が格好いいともてはやされる時代だからか,仕事さえできれば恋愛しなくてもいいって思ってる人多いですよね。 でも俺に言わせればそれは仕事ができるんじゃなくて,たまたま運良くそうなってるだけでいずれ行き詰まる。 恋愛は往々にして人間的魅力によって発展するものだ。 だから恋愛力のない人間には魅力がない。 魅力がないってことは,自分のいいところをうまく発信できてないってことでつまりコミュニケーション能力が低いってこと」という核心的な恋愛論をぶち彼女を批判するが,彼女はバツイチでもある。 上記の言葉は今日の少子化の原因の一つとも考えられる。 それにしても久しぶりのミステリー以外の小説,読み始めてから読了するまで結構な時間がかかったが,それはでだしがまったりとしていて,ミステリーリーダーにとってはじつにかったるい状況だったからだ。 または本作の表紙から私は勝手に大正とか昭和初期のデパートの話とばかり思っていてその齟齬に自分自身がついていけなかったからだ。 だから途中で何度放り投げようとしたかわからない。 しかしそれでも読むのをやめなかったのは私の読書屋としての矜持,つまり決して途中で放り投げずとにかく読了するに準じたからだ。 まただんだんにエピソードがつながりはじめて興味深い内容になってきた。 つぎに作者は泣き所を心得ていた。 孫話はいけません,泣いてしまう。 いっぽうクリスマスイブのケーキ話というのがあってこれも泣かされた。 というのは20年以上前外商部の大先輩が,お得意さんからイブにケーキを頼まれたのだが,先輩はクリスマスケーキと思って持って行ったところ,実は誕生ケーキが必要だったことがわかり,当時そのデパートのケーキ屋でバイトをしていた静緒がショーとケーキを並べて生クリームをかけ誕生ケーキに仕上げたことが契機になって先輩がそのことに感激し外商部にスカウトしたのだったという話にもあたしゃあもらい泣き。 そもそも最近本当に涙腺が弱くなってきたね。 ようするに老化か。 いわば老化した読み手は泣かされるのに弱いということ。 とりわけ本作のような作品は心に残るね。 以上のように本シリーズは名作ですな。 たしかに素晴らしい作家だ,高殿円は。 他方ではまだまだミステリーを読まなくっちゃという声も聞こえる たまのミステリー箸休めでした。(2/3記)
2023.04.23
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侵蝕 壊される家族の記録 (角川ホラー文庫) [ 櫛木 理宇 ] 一言で言えば不快。 終盤までそのサイコを引っ張るのかと思いきや,そうじゃない。 何を最後に温情かけてるんでしょうねえ。 不快なら不快なりにそのまま駆け抜けていけやー! 家庭が侵蝕されていく過程の表現は見事ではあるが,それが読み手の共感を得られるかというとそれは不明。 否,共感は得られまい。 そしてなぜ傷つけ合うのが姉妹なのか。 それからリアルの問題。 これだけの異常な家庭について,おしゃべりおばさんまで入っていて,行政なり警察が一体入り込めないなどということがありうるのか。 作中では,あそこの交番はやる気がない,などという表現をしているけれど,今どきそんな交番があったら大問題でっせ,あーた。 まあそれでも読了したからね。 不快ではあったが独り善がりでなかった点は評価できる。 実を言うとこの頃読み物に恵まれなくて超特急で飛ばしに飛ばした本が数冊あるのだ。 そういうのと比べたら本作はきちんと読了したものねえ。 しかしそれにしても何はともあれとにかくなんでもいいから読んじまえ的な形でしか読書の入りがないので,つまり,とにかく先入観念を排除しているので,そう言う事態に陥るのだ。 でも私はそのことだけは大事にしたいのだ。 読書に予習は不要だ。(1/2記)
2023.03.26
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透明人間【電子書籍】[ 浦賀和宏 ] この作家の2作目ということだがやはり冗長さは否めない。 本作も500ページ超えの作品で,ミステリーの体をなしてくるのは100ページを超えてからの話,それで一体なにをいいたいのかがわからないという困った小説だった。 ところでこの作家は早逝したらしい。 Wikipediaにれば,40代で脳溢血で逝ってしまったということ。 そのようなことも知らずに私はただただこの作家に関し, 独り善がりもいいところじゃねえかと書き続けてきたわけだ。 ちょっと申し訳ないような気もするけれども,残念ながら本作もその域を出ない。 一気にネタバレしてしまえば,透明人間が本作ヒロインを救ったと言う大きな幹があって,そこから派生する様々な殺人やら何やらが出てくる話になる。 無理矢理地下何階建ての建物まで考案しなんとなくトリックを使ってまるで乱歩や正史の世界に入り込むようなそんな気配もあったのだけれど,乱歩,正史をしっかり読み込んだミステリーリーダーからみれば,残念ながら彼らの足元にも及びもしないという評価になる。 ただ読んでいて,朝ドラ理論的な部分は,ヒロインが好きになった男性と最後の最後まで離れることがなかったということくらいかな。 あと2冊この作家の作品を Kindle Unlimited で手にしているので読まなければならないが,なんだか非常に苦痛だ。 またまた冗長な長い本を読まなければならないのかな。 そしてこんな愚痴を聞いてほしい当の本人はすでに他界しているときている。 そういうのが世の常というものなのだろうけれども,それにしてもやはり Kindle Unlimited は,当たり外れがある。 ま,しょうがないか。
2023.03.06
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HELL 女王暗殺【電子書籍】[ 浦賀和宏 ] それにしてもあたりが良かったか悪かったか不明だが,本作一作で決めることはしないで,シリーズをもう2冊購入しているから,まずもってそれらを読んでから決めてもいいのかもしれない。 もっとも既に,乱歩,正史,清張,森村の先に東野を読み始めているので,その域にこの作者が入っていないのはたしかだ。 さて本作は600ページ超えの大作である。 そもそも300ページが標準だからその倍ということになる。 それはともかく話が冗長で,しかもテーマが,女王暗殺,つまりときの時期総理候補が女性だというシチュエーションからなるのだけれど,それが推察できるようになるのは,話の終盤だった。 しかしそもそも話し手が自分はサイボーグだなどという語りから入るのだもの,あたしゃあ,SFものかと思いましたぜ。 たしかにそのあとの登場人物もようするにこの世からドロップアウト寸前の人間どもで,ある意味読み手の共感を得やすい作りになっている。 要人暗殺ということがテーマで,そのことで思い出すのは,かつての名画,ジャッカルの日だが,まさかあのような形をパクるんじゃあるめえな,などと思っていたら,なんと大暴投も大暴投,ルール無視ですな,暗殺相手が違っていただと。 暗殺者がそれまで信じていた女は警察官だった,なんてなんというドタバタ劇なんだ。 この調子で次作も読まなければならないと思うと情けなくなる。 すぐに東野で口直ししなければならない。 ここまでをまとめるとこうだ。 冗長な小説にまともなものがない。
2023.03.04
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密室殺人ゲーム・マニアックス (講談社文庫) [ 歌野 晶午 ] まずもってやっと本シリーズ3作を読了できたことに自分で自分を褒めてやりたい。 もっとも本シリーズに対する低評価は変わりないけれど,そのトリックに対する作者の思い入れだけは高評価してあげたい。 さて本作であるが,結局本ゲームが一人芝居だったということで終わってしまうのだ。 その意味で前に読んだ同シリーズ2.0と齟齬をきたす。 しかしそのことはこの作者にとってどうでもいいことなんでしょうなあ。 それにしても相変わらずの独り善がり,近未来を読み解けなかった作者にも責任があろう。 そもそも今やデジタルはコロナ禍を機になんと小学一年生まで巻き込んでいるのだ! そうしたら本作などたちまち古臭いものと評価されてしまうだろう。 そのうえなんと読みづらい本なのだ。 それはともかく倫理性皆無の作者,とにかく平気で人を殺す。 たしかに犯罪は偶然の産物。 ようするにミステリーは偶然を必然に見せるという作業が必要になるのだ。 ところがなんと作者は堂々と偶然が続かなければ本件犯行はあり得なかったなどとうそぶく。 それはルール違反ですね,ミステリー作品上の。 本作ではかなりの力技がある。 たとえば遠隔殺人ということで,東京のアパートの本の柱の上に睡眠薬で眠らせた被害者を置き名古屋から電話をかけて被害者の頭を天井にぶつけ殺すなど。 ここまでをまとめるとこうだ。 まあなんとか本シリーズを読んだけれど,多分当分彼の本は読むことがなさそうだ。 とにかく不快感に苛まれたから。(12/11記)
2023.03.02
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密室殺人ゲーム2.0【電子書籍】[ 歌野晶午 ] まずもってまたも独り善がりの最たるものと書かなければなるまい。 もっとも前作よりもひどくはないけれども…。 さて本作は,一つの短編集であり,倒叙ものである。 しかし本作の仕掛けについて詳細に読み込まなければ理解できないのは確かだ。 それにしてもこの作家の規範意識の薄さよ,別の作品に大麻を容認するような,信濃譲二なる探偵が出てくる作品があったけれども,本シリーズにおいては,今で言う SNS あるいは Zoom のような仕掛けの成員がそれぞれ推理パズルを持ち寄るだけでなく,それぞれの成員が犯罪を仕掛けるのだ。 そもそも我々読み手は正義の確信のもとミステリーを読んでいるわけで,Zoom に入っている成員それぞれが殺人を犯すことなど誰も予想などしていない。 それはともかく本作がミステリー大賞を受賞したということを聞くと, びっくりしてしまう。 たしかにこの作品が書かれた2000年前半の一桁の年代は,本作のようなコンピューター,インターネットの仕掛けが目新しく,たとえ本作のように動機もなく,ストーリー性もないなどということよりも,インターネットを介した新たなミステリーに酔いしれることになったのだと思う。 ようするに新し物好きの人たちがこの作品を推したということなのだろう。 しかしながらこの先が書かれた時代よりもさらに先にいる現代,このように Zoom のような現場に全員が集まるなどということは決して新しいものではなくなり,さらにおそらく作者もまた当時の読み手も最後の大きな仕掛けにびっくりしたことなのだろうけれども,実はミステリーリーダーたる私は,全部みろっとめろっとお見通し状態で,多分本作のオチは…と考えた通りであったことを申し添えておく。(12/11記)
2023.02.28
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京都嵯峨野殺人事件【電子書籍】[ 山村美紗 ] まずもって本作を読んだ限りはっきり言って山村美紗は箸にも棒にもかからないということになろうか。 もっとも彼女の作品の多くは一昔前のサスペンス劇場などと銘打たれたテレビドラマの原作になったのだから,それはそれで大衆受けしたと評価すべきなのかもしれない。 それに娘の山村紅葉が必ずそのシリーズに出なければならないという特約もあったと聞く。 さて本作における京都の紹介はなかなかのものですぞ。 観光ガイドを書かせれば京都に関しては山村美紗は超一流なのかもしれない。 しかしそれにしてももう3年以上京都に行っていないので,フラストレーションが募りましたぞ。 そもそも京都は,何があっても行きたい観光地,行けば行くほどまた行きたくなるところだ。 それはともかく本作においては冒頭2人の男子学生と4人の女子学生でとてつもない将来の計画が立てられ,時いたり京都に集まったところから殺人事件が発生する。 たしかにこのシチュエーションはとても面白いのだが,トリックやら殺害方法が稚拙で読むに耐えない。 ようするに山村美紗は女性西京なのである。 そして多作家症候群に明らかに罹患している。 つまりミステリーリーダーの研究対象にはならないのだ。 したがって当該作家を勇んで読むことはないと思うな。 ここまでをまとめるとこうだ。 多作家症候群の作家を読むことは時間の無駄だということ。
2023.02.26
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密室殺人ゲーム王手飛車取り (講談社文庫) [ 歌野 晶午 ] この作家は本当に独り善がりだ。 いったいこの作品において何を訴えたかったのか意味不明。 ただただ殺人の方法を羅列するだけではミステリーたりえないのではなかろうか。 ミステリーとしての体裁は方法の他に動機,機会が必要なのである。 その意味で既にこの作品はミステリーというものを逸脱している。 コンピューターによるやり取りで,匿名性の中,それぞれの成員が自慢の殺人方法を披瀝するという話なのかなと私は本作を読み解いたが,それでよかったのかな。 このシリーズも2作ほど既にKindle Unlimitedで手にしているので,それも読まなければならないんだろうねと思うと,気が重い。 この作品の後私は,乱歩,正史,清張,森村の後継として東野圭吾を読み始めたのだが,逆に言うとこの作品のおかげで東野圭吾がさらに私にとっては価値の高いものになったのだった。 反面功労があったということかな。 ミステリーパズル的な作品であり,読み手もそのゲームに参加して犯人を当てたりその方法が可能か考えたりしなさいと言う書き手の目的があったろうが,いかんせんはっきり申し上げてこの作家には文章力がない。 したがって文章が脳内に飛び込まず,脳内スパークすることがないのだ。 残念! いずれにしても次のバージョンを読まなければなるまいが,それが一体いつのことになるのかは私にも分からない。
2023.02.25
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新装版 動く家の殺人【電子書籍】[ 歌野晶午 ] 本作はだめだね,私は。 まずもって大麻を認める信濃譲二が気に入らない。 もっとも探偵で同じような麻薬常用者にシャーロック・ホームズもいるけれど,彼の場合はヘロインで,依存症になっているジャンキーだ。 さて信濃譲二は明らかに大麻に関して世の中の規制に対し挑戦している。 しかしそれにしても歌野晶午そのものがそもそも大麻常用者ではないのか。 なぜなら明らかに本作は駄作だからだ。 しかも読み手に響かない。 つまり独り善がり本なのだ。 そういう意味で歌野作品の質は一定していないと言ってもいいのではないのか。 とはいえ今まで彼の作品を何作も読んだわけではないから,大きな事は言えないけれど。 それはともかく私はこれから彼の密室三部作を連続して読もうとしている。 たしかに本作が大麻絡みの駄作,独り善がり本ではあるけれど,全てそうではないのではなかろうかと淡い期待もあるのだ。 ようするに私は,ミステリーに飢えているのだ。 そう,乱歩,正史,清張,森村の後継ぎ探しで,歌野も候補ではあるのだ。 それが,信濃譲二が大麻狂いではねえ。 なんともやりきれない作品だった。 ただいま大麻は覚醒剤等違法薬物のゲートウエイドラッグと捉えられている。 それを探偵が応援して一体どうしようってんだい!
2023.02.23
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安達ケ原の鬼密室/歌野晶午【3000円以上送料無料】 安達ヶ原の鬼密室 歌野晶午は私から見れば異質な作家だ。 などと書いたけれども,この作家の作品を多数読んだわけではないので,一概には言えないことだろうけれども…。 しかしながら本作における密室は,非常に手が込んでいて読んでいてなるほどと思わせられる。 けれども本作のような水を利用した密室というのは机上の空論であって,実際にはありえないことではないのか。 ただしミステリーとしては,私は最上級の作品ではなかったかと思う。 なぜならこの密室は(本作において密室は戦中,現代と二つあるのだけれども)なるほど自然のもの,つまり 満潮干潮を利用したものとか,浴室全体を水で満たすなどと言う想定は,これまでのミステリー作家にはなかった斬新な方法であった。 けれどもいずれにしてもこの両方の密室には,かなりの偶然が練り込まれているのだ。 まずもって自然の摂理という干潮満潮が12時間おきに起きるとして,たまたま目撃者が水のない時だけ現場を見るなどということがあろうか。 また泥酔した被害者が浴室で寝入ってしまったバスマットに横たわらせられ,その後,浴室に水が入ってきて, 浮上した寝入ったままの被害者が天井に着く前に気づかないなどという偶然があるだろうか。 またこの手の込んだ密室で排水口に錘が残ってしまうなどと言うことを,ここまで緻密に殺人を計画した被疑者が考えなかったということがあろうか。 何より私が犯人なら,この犯罪が可能かどうか実験をしてみるに違いない。 そもそも八神一彦という名探偵は,部下に現場を見させて材料を持って来させだけで想像による推理を働かせ犯行の真相を暴くという,今までにない探偵なのだ。 この作品の強みは要するに探偵が想像だけで動いているということであり,それを考えれば我々ミステリーリーダーがなんだかんだ言えるようなものではないとは思うのだけれども,リアルを求める私は,本作があまりにも夢みたいに浮いていて,他のミステリー作家とはまた違うと感じてしまうのだ。 つまり冒頭に書いたように歌野晶午は異質なミステリー作家なのだというのが今の私の歌野晶午評である。(12/3記)
2023.02.21
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終わった人 (講談社文庫) [ 内館 牧子 ] 定年後終わった人とは一般的に、 悠々自適だよ。 朝寝して、ジム行ってとか、 定年を迎えた人たちの少なからずが「思い切り趣味に時間をかけ、旅行や孫と遊ぶ毎日が楽しみです。わくわくします」などのイメージなのだろうが、これはちがいますよ。 そもそも60歳定年後1年間同じポストに再任用後同じ職場で会計年度任用職員として仕事をしその後同様の仕事を別の職場で会計年度任用職員をしている身にとっては、そして、このコロナ禍では、また、息子の出向などで、プールには行っているが、朝寝はできないし、その水泳を含めた絵手紙、ギター弾き語りの趣味を楽しんでいるけれど、旅行は簡単にできなくなったし、孫とも会えなくなってしまった(いよいよ来春帰ってくるけれど)。 それはともかく主人公田代壮介は、イメージ通りの外見上悠々自適の定年後の生活をしていたものの、知人経営の会社の顧問の声をかけられ、その経営者が死んで社長にまつりあげられたが、海外の取引会社の倒産で負債を負ったのである。 田代の個人財産は、1億3千万円くらいあるのだが、その負債を返せば、1千万円になる。 田代は、 「社長になる前は1億3千万円あった財産が1年後の今1千万円か」と独り言ちる。 そして妻の千草からは、卒婚を申し渡される。 卒婚という言葉はこの作品で有名になったんじゃないかな。 田代は、結局故郷岩手に帰ることになるのだが、 ただひたすら窓外の風景を見ていた。 福島あたりを通過しているとき携帯電話が鳴った。 千草からだった。という場面では、あたしゃあ、涙がポロリと落ちてしまいましたよ、感動的でした。 「終わった人」という作品は、定年退職者の、The text bookじゃないかな。 本作についてちなみに私は今まで・ 小説2回(夕顔絵夢二郎の江戸ハブ日記 180721)(夕顔絵夢二郎の江戸ハブ日記 190721)・ 映画1回(夕顔絵夢二郎の江戸ハブ日記 190817)読んだり観たりしており、今回が小説3回目ということになる。 身につまされて身につまされて本当にどうにもならぬ作品である。 今年は史上最低の年だと私は思っている。 それはコロナ禍でどこにも行けず、そのコロナの4回目のワクチン接種で2日間も寝たきりの副反応に襲われ、夏季休暇は散々になったほか、孫たちも結局戻らず、ウクライナの戦争、元首相が暗殺されその後の国葬で国論が二分されたほか、そのバックの宗教が与党に影響していたのではないかと言う疑惑が生まれ、幼稚園バスに幼児が取り残されて死亡、キックボードで外出した小学一年生が川で発見されたり、大雨の日乳幼児が一人外に出て流されたり、異常気象、北朝鮮の挑発的なミサイル発射、中国やロシアの領土侵犯に近い行為、そして毎日の片道37キロ弱の通勤による体力の低下など、これだけあげれば自分的には最低の年と思いたくなる。 しかし、来年がそれ以下にならないという保証がどこにもなく、いつどこでどういう評価になるかは、全て自分のその時の気持ち次第、絶対という言葉はない。 本作に見るように婚姻後30年以上を経た夫婦ですら卒婚という道を選ばなければならないという人生の危うさ。 評価の基準とか評価軸が変われば物事は大きく変わってしまう。 いみじくも作者は本作で夫婦に関し、30年以上よく他人が一緒に過ごせたものだ、などと書いているけれど、私はそれは逆だと思う。 他人だからこそ一緒にいることができたんだよ。 その評価は様々だろうが、世の中の人がみんな鶏肉好きではないのと同じ、みんな幸せな家族、家庭をもっているわけではない。 それぞれがそれぞれの生き様の中で自分の評価軸をもとに生きているのであり、今話題の、生き方の多様性というのは、そういうことなのだと本作をまた読んで思ったのだった。
2022.12.27
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ホワイトラビット (新潮文庫) [ 伊坂 幸太郎 ] あーあ、それにしてもなぜこうも分けのわからない小説家に遭ったりするんだろうか。 これは遭うですよ、あーた。 なんのことはない、作家としての基本がまるでなっていないのだ。 まず文章力がない。 それなのに実に複雑な時系列を作り出してしまっている。 取材力不足。 SITは警視庁に初創生時、Sousa Ikka Tokushuhanだったそうな。 それがのちに、Special Invistigation Teamと言い換えられた。 つまり警察捜査一課主管の特殊犯担当の部隊なのだ。 だから、課長の、課長代理のなどという人がSITの責任者足り得ない。 しかも本作で責任者とされる夏之目課長はなんと部隊を差し置いて別現場に吹っ飛んでいってしまう。 構想はね、とてもよかった。 オリオオリオを警察に探させるとか、隣の空き家が監禁現場、立て籠もり現場に思わせる手法とか、誘拐を業とする会社などの発想はとてもユニークで面白い。 しかし文章力不足、そして全作でも指摘したような独り善がり、その上取材力不足でリアル不足、という三重苦四重苦の作品になっちまったんだな。 リアルがないので臨場感がない。 その結果読み手の脳内をスパークさせることができない。 しかしながら著者が日本国内の商業ベースで生きているんだから、この世はなんと不思議な世界なんだろう。 とにもかくにも著者が森村のあと、ということには、あるいはその後にも続かないといことがはっきりした。 残念だ。
2022.11.20
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オーデュボンの祈り(新潮文庫)【電子書籍】[ 伊坂幸太郎 ] 結論。 こんな読みづらい小説は読んだことがない。 案山子は最初からいない、群集心理だとかもうシッチャカメッチャカ、こんな作品もう読みたくない。 こんな独り善がりもいいところの話がなぜ賞をもらえるのか。 なのに全く分けのわからぬ話をこうも長々と読み続けたのはなぜだろう。 それはミステリーリーダーとしての矜持からか。 一体この話の核心はなんだったのか。 案山子が殺されたこと? 犯人が誰かということ? しかしそれにしても、Who done it? であるとしても材料がないのだもの、ミステリーとしての評価などできるわけがない。 主人公の同級生の城山という警察官の犯罪が明らかになるのかと思ったらそうでもない。 日比野という主人公の島における案内人が殺されたかと思ったら何故か生き返る。 とにかく疑問だらけの話だ。 こうして私は大きなため息を1つ吐き、一旦この小説から離れ、酷暑の中水分補給をして、じゃあもう一度読むことにしようなんて再開したのだが、結局本作の真意がわかることはなかった。 それでも読了したのは読書家の矜持である。 はっきり申し上げてこの作者は読み手に対して実に傲岸不遜失礼なやつだ。 全くこの記事を書くのも含めて無駄な時間を過ごしてしまった。 残念な作品というのはあるものだな。 とにかく記事まで書き上げた。
2022.11.19
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新装版 白い家の殺人【電子書籍】[ 歌野晶午 ] さて本作は密室殺人事件なのかなあ…? それはともかく書かれた時代は昭和の最後平成の最初あたりであるけれど本作に用いられたトリックは古くもなければ新しくもないもので特に難しいものではなかった。 問題は本件が明らかに殺人事件であるにも関わらずその件をお家の一大事とばかり隠匿してしまおうとするその行為にあるわけだ。 問題はそこに司法の介入はなくそして信濃譲二という探偵が介在してくるわけだ。 つまり殺人事件の解明については司直の手にかからず私立探偵によって解明されて行くことになる。 信濃譲二の相棒は本作では特に祭文語りとなるわけではなく一人の登場人物としてまあいつものように彼が語ることはつまり本線から外れているもっともな説ということである。 そのようなことを読んでいるとこの市ノ瀬徹と言う男に対する読み手としての敵意がメラメラと湧き上がる。 この本が300ページを超えたのはこの市ノ瀬徹の無駄な話がずらずらと続いたからだ。 さて本作における殺人事件は3件。 3人の女性が殺される。 一人はうら若き女性。 別荘の部屋において絞殺されたうえ宙吊りにされる。 それが密室。 次に中高年の女性が青酸カリをコーヒーに混ぜられて殺される。 さらに中年の女性が絞め殺され雪の上に放置される。 その距離はかなりなものがあったということだ。 これらの密室殺人それから毒を入れるトリックそして死体を遠くに飛ばすトリックなどはミステリーとしては面白い。 ただ歌野晶午の場合偶然をあまりにも利用しすぎていてそれが不自然だ。 そして何よりヴァン・ダインの二十則について作中書いている点実はこれが大きなヒントになり本作を面白くないものにしている。 そもそも信濃譲二は本件殺人の犯人については思い当たったもののその動機が判然としないという言い方をしているのだけれどその動機の物語性については今まで様々なミステリーの中で書かれてきたものによくあるいわゆる普通のもので特筆すべきものでもない。 それらの話は特に正史辺りが好んで使っていたものでもある。 家の問題とでも言うか先述のヴァン・ダイン二十則に戻るけれどこの作中で書いていた通り召使いを犯人にしてはならない。 これは不文律であるとミステリーリーダーである私は思う。 結局本作のようなトリックが使われようが使われまいがどうでもいいのであって結局最後に自殺などという手も考えられたのであり、犯人は誰でも良かった。 つまり市ノ瀬徹が話していた医者でもよかったということになるのだろうか。 どうも後味の悪い作品だった。
2022.09.29
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緋色の研究【電子書籍】[ コナン・ドイル ] 本作は栄えあるシャーロック・ホームズの第一作である。 その後本シリーズは本作を含む長編4作、短編60作となりいまなお推理小説界のバイブルとして君臨している。 なお本作はポプラ社の少年版では、深夜の謎、という題名で広く子どもたちに読まれている。 読書の楽しみを知る第一歩である。 かくいう私もそもそもの読書生活の入はシャーロック・ホームズだった。 当然本作、緋色の研究、こと、深夜の謎、も何度も読んだ、はずだった。 と書いたのはなんと今回緋色の研究を読んでみて、全く初物のような感覚だったからだ。 この名作を今までただただホームズ物の第一番の作などというとらえたかたのみで本作の詳細を全く忘れてしまっていた。 緋色の研究がここまで素晴らしい文学であったということに気づかぬままミステリーリーダーとして生きてきたのは不覚だった。 本作はホームズ物の序曲としてその鑑識眼から繰り出される推理力の素晴らしさが見事に描かれている。 なにゆえホームズが優れた探偵なのかが本作を読むとみろっとめろっとわかる仕掛けになっているのだ。 ダラダラした推理小説の仕掛けでは本作のように作品の半ばにして犯人が割れるなどということはない。 探偵は大概一番最後に出てきて犯人を指摘しその謎解きを図るのだ。 しかるに本作は犯人逮捕の後その壮大な復讐譚が語られる。 モルモン教に関し事実と相違することが書かれているとの出版社側の指摘がなされているけれど作者サー・アーサー・コナン・ドイルは本作のようにモルモン教を捉えていたんだろう。 そのことがまた悲劇の中枢になる。 しかしそれにしても他の三作つまり、バスカビル家の犬、恐怖の谷、四つの署名、に関してはそれなりにうろ覚えになんとなく覚えているというのにね、この名作の筋を全く忘れていたなんて本当に我ながらびっくりぽんだ。 本作は紛れもなくミステリーのバイブルである。
2022.09.11
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シャーロック・ホームズの回想【電子書籍】[ コナン・ドイル ] ミステリーかくあるべし。 まことサー・アーサー・コナン・ドイルのシャーロック・ホームズ譚はミステリーのお手本だ。 本シリーズを凌駕したミステリーはこれまで未だ出ていない。 その大きな特徴として短編のうちに物語の真実が凝縮されているというものがある。 本短編集もそのとおりだ。 本集には有名なモリアティ教授との激闘の末滝壺の露と消えた最後の事件が掲載されている。 読み手はそれで終わりではないことを十二分に知っているので悲嘆に暮れることはない。 それよりも今、少年時代から何度も何度も読みついできた本シリーズと今読み分析中の乱歩、正史、清張との対比が、ミステリーリーダーたる私に求められていることなんじゃないかななどと思い始めた。 そもそもドイルがいて乱歩がいる。 乱歩がいて正史がいる、のである。 しかし今までの私の研究結果、その流れに決して清張は入らない。 清張はミステリー作家ではない。 それを読むことによって精神が患う悪い作家とでもいうべき作家だ。 ここまではよろしい。 しかしほんの小さな短編に盛り込まれた細かい鑑識眼の面白さがミステリーのもう一つの要素ではないのかとドイルを読んで思うのだ。 すなわち、動機、方法、機会+鑑識である。 この点、つまり鑑識の部分ですな、正史は後出しで堂々と出してくる時があり、清張は、トリック等無いにも関わらず、筆跡などというものを出したりする、その点で清張はミステリー風なときもある、乱歩にはほぼない、と言えるんじゃないかな。
2022.07.30
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司凍季 《ギャラリー蜂の巣の事件録》ユトリロの呪い さて著者は本作を皮切りに本シリーズを書き継いでいくつもりだったらしいが残念ながら事故に遭い一度は視力を失い数度の手術で視力は取り戻したものの気力の回復に至らず作家を引退したのだという。 だからつまり本作が著者の最後の作品ということになる。 だがそうはいっても私とてミステリーの読み手であり文章の鑑賞家、最後の作品とは言え決して甘い点数はつけませんぞ。 むしろこういう作品を最後だからといって出してしまう本人と編集者はどうかしているんじゃないか。 つまりです、これまで乱歩を読み正史を読んできた私にとって本作は赤子の手をひねるよりも簡単であったことその上読みにくい文章に辟易したとということである。 作者が本作に書いてあるような高価な図録を手にし勉強したのかどうかはともかくその絵画の価値が読み手に伝わらないのは本当にまどろっこしかった。 そこに心霊現象を重ねたことや美月という女性を婆さんだと思わせる下手な読み手に対するトリックつまり騙しですなこれもとても不快そのものだった。 絵を観て人が倒れるなんてそりゃあどう考えてもアナフィラキシーショックしかないじゃないか。 つまり調っていないんですな作品が。 だから小説を読む暇なんかないと故立花隆から言われたんだ。 たしかに著者が一線を引くことはとても悲しいことではあるが、さりとて商品にもならないような作品を 読み手に仕掛けられてもねえ。 ということである。
2022.05.15
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司凍季 頸折れ人形考 本作は1992年つまり平成4年の作品である。 30年前ということになるわけだ。 主なトリックはエレベーターにおける自死である。 突っ込みどころは小品ではあるが満載だ。 まず主人公は一体殺人犯だったのだかそうでなかったのかはっきりしないまま幕を閉じた点。 これは読み手は全く納得がいかない。 その点について読み手が勝手に想像しろというのはミステリーの書き手として無責任極まる。 ミステリーを純文学風に考えたのか。 もし主人公が殺人犯だった場合は作品中の主人公の言動は全て虚偽ということになる。 主人公が殺人犯でなかったら犯人が全くわからないまま終わるミステリになる。 被害者涼子と腎臓病を患っているその弟の関係は本品において重要な伏線だ。 それがあってはじめてミステリーの体をなしているといえよう。 もう一つの突っ込みどころはエレベーターにおける自死だ。 自死を決意した者がエレベーターに乗り込んで自死しようとするスナックに向かっていたわけだが、エレベーター内で縄跳びをしている子供の縄を見てひらめいたというのはあまりにも突然すぎる話だし、本品のような索条の使い方が果たして自死が可能なのかどうか実験してもいないのではなかろうか。 現代ならば本件のようなエレベーター内での自死は不可能だ。 エレベーターは停止してしまうだろう。 だから自死を決意したものはエレベーター内で死のうなどとは思わない。 最近よく思うことは女装の男性を見誤ることがあるのかということだ。 そもそも本件は主人公が着物の女は嫌いで何重も巻き付けたような洋装の女性を好むことに端を発し愛人をフランス人形のように仕立てるという嗜好が話の軸になっているわけだからその流れで誰かに殺された涼子の代わりにその弟が女装した場合主人公あるいはその他の涼子を知っている人が見誤ることはないと思うのだ。 また涼子がそのような洋服を実家に持っていたという話も本編においては蛇足だと思う。 残念ながら本品は楽天では扱っていなくて Kindle Unlimited 所載のものということで冒頭に貼ったのは Kindle Unlimited の本品のリンク先である。
2022.05.08
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貨客船殺人事件【電子書籍】[ 鮎川哲也 ] 閑話休題。 ちょっと正史は休んで(というよりKindle Unlimitedの正史が底をつきつつある)頭を使う犯人当てクイズにでも挑もうかななんて考えて本書を読んだ。 本書は全部で9つの問題があり後に解決編として解説される仕組みである。 ミステリーの立ち位置をどのように考えるか。 本作のような犯人当てゲームかはたまたトリックを含んだ文学か。 文学の方が格が上だなどとはもうすまい。 しかし単なる犯人当てパズルクイズが果たして楽しいものだろうか。 そのようなゲームであればそれは動画でも可能なのではなかろうか。 さて本作であるが、夜の散歩者、という作品これは私は勝利した。 なぜ拳銃の弾が当たらなかったかを子細に検討すれば登場人物から犯人が割り出せる。 二つの標的ではいい言葉が出てきた。 いわく、推理作家は推理するだけです、というもの。 私が提出したミステリーはゲームであるか文学であるかの分水嶺になるのではなかろうか。 推理作家が推理するでは駄目なのであってきちんとした文章力と豊かな想像力でその世界を読み手の脳内にスパークさせなければならないと言うミッションがあるのだ。 この二つの標的も連勝である。 2−1=1の補充話。 怪しいのは一番近くにいたものである。 白馬館9号室は証拠品であるカセットテープをなぜその場で焼却しなければならなかったかを考えると隠し場所のない着衣であったものが犯人ということに帰結する。 本書の表題作である貨客船殺人事件はこれまで読んできた乱歩や正史によく見られる人違い殺人事件だった。 その他倒叙形式でなぜその犯行がバレたのかを考えさせる作品もあれば砂時計でアリバイを作るなどと言う作品もあった。 しかしやっぱりミステリーはストーリーがなければ成り立たない。 私はミステリーはトリック付きの文学だと思う。
2022.03.31
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サマータイムリバース 赤井五郎 連続殺人事件を遡る話だ。 そこに悪魔を登場させ蘇りを実行させるという奇手を使う。 大きなトリックはこの蘇りに潜んでいる。 なるほどそういう蘇りはありだろうな。 だが何かが不足している。 それは作者の文章力不足だ。 骨格はいい。 しかし物足りなさが半端ない。 つまり先の文章力不足と相まってストーリー性のなさもこの作家の致命傷になってしまった。 ところがこの作家はKindle Unlimitedで5作目だと豪語して憚らない。 素人ミステリー評論家である私は違うと思うな。 メジャーデビューしなければだめじゃないのか。 それから本作の大トリックに最終盤までこだわり続ける手法もいかがかと思う。 つまりそれだけストーリー性がなくて同じトリックに拘泥する他なかったのだな。 結局ミステリーが他の文学と違うのはトリックがあるかどうかで、ストーリーがなければ文学とはいえまい。どんなつまらない話でもいいから紡いでほしかった。そしてKindle Unlimitedに5作目などという自慢話は金輪際してほしくないな。とにかく今のミステリー作家こそ乱歩を読んでほしいと私は考える。
2022.01.18
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エジプト十字架事件【電子書籍】[ エラリー・クイーン ] 私はエラリー・クイーンのような20世紀初頭の作家によるミステリーはクラシックと呼んでいる。 時代背景を理解しながら読み進んで行かないと、頭の中が混乱して何が何やらわからなくなる。 本作はまさにそんな作品の代表だ。 決して作者や時代のせいにしてはいけないしあまつさえ、訳者のせいにしてはいけないだろうが、とてもじゃないが、本作を通読するのは苦しくてどこで投げだそうかと思案にくれた。 しかしとにかく読了。 先に時代背景について書いたけれど、ミステリーにおけるトリックもまさにその通り、本作の肝が首なし死体であるところから、吾々21世紀に生きる者は、すでにそのトリックの深奥を読み解いているわけで、クイーンが最後に読み手にチャレンジしてくるところ、首なし死体のトリックゆえ、すでにみろっとめろっとお見通しだというのか21世紀読み手の解答なのだ。 しかしそれにしても実に読みづらくて、人のせいにしたくはないけれど、訳者の技量不足じゃないのかと思った。 作中、超スピードで走る車が出てくるが、果たしてあの時代そのような車が存在したのかは疑問だ。 あの時代であれば故障やらパンクやらで車はかえって足手まといになるのではなかろうか。 またエラリー・クイーン本人が作中の紹介でつまり本文に入る前の登場人物の紹介の欄で特別捜査官とか書いてあったけれど、そんな役職が本当にあったのかも疑問だ。 結局そんなところに目がいってしまう作品だった。 結局話が冗長すぎた。 ようするに連続殺人の犯人はWho done it?なのであり、そこだけ読んだらいいという代物ならそれもありなのだが、作者はあえてそれ以上にあるいは読み手の目くらましのため冗長な環境を作り上げたんだろうな。 そういうところが魅力に欠けるのだ。
2022.01.07
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月の娘にスープを送る 高山環 そうですね、この手の小説は何と言ったらいいですか、独り善がりであります。 作者だけが分かっている、そして読み手が全く理解できない小説を私は独り善がりと言っています。 まさに本作は独り善がり本。 その反面作者はサイバーのことをどれだけわかっていたのだろうかはなはだ疑問です。 今の世の中で本作のような人間関係からすぐに犯人を割れてしまうようなそんなミスをサイバー犯人が犯す理由がない。 サイバーですよハイパーではない。 何がハイパー犯罪対策課の田淵だ。 四十七都道府県警察にあるのはサイバー犯罪対策課です、その辺も分からずしてしかも田淵と言う刑事一人だけが本件捜査をしているということ自体実に不自然な話だ。 結局何も得るところのない小説だった。 何がふとしたことで夫の浮気を疑い3年間も別居するのだ。 エンジニアプログラマーの夫婦の子供だからプログラミングに興味のある娘というわけか。 今の世の中本作のような流れではダサいのではなかろうか。 そもそも AI という突出したものが出現をしており 、AI そのものに本件犯行をさせてしまったら本件犯行の実行犯もそれを操った本犯も決してわかりはしなかったのではなかろうか。 あともう一つ本作の欠点を言わせてもらえば、非常に文章がわかりづらいということ、つまり作者の文章力の無さに辟易してしまったということだ。 文章力がないということはつまり価値のない決定的な欠点だということになるのだ。
2022.01.05
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