亡者の家 新装版【電子書籍】[ 福澤徹三 ]
しかし本作はミステリーと言えるのかそれともホラーなのかは不明であるけれどもたとえホラーだとしてもちっとも怖くないと言う,それから結局人と人のつながりを後出しジャンケンでつなげて言っていわゆる読み手を騙す手法ですか,いかにも殊勝な小綺麗な美人が最終的には綾をなしているというくだり,これなんざミステリーリーダーにとってみろっとめろっとお見通し状態ということになろうか。
それにしても東野を頂点とするその世代のミステリー作家と比べて本作の作者は見劣りすることは否めない。
そもそも事件の展開が遅すぎて,冒頭のような評価につまり一体本作は何なのかという疑問を読み手に呈してしまうのだ。
さて本作は冒頭の流れ,出だしはとても良かったと思う。
それはともかくサラ金のベテラン取り立て屋がビルの屋上から転落死するという事件の展開まであまりにも長すぎた。
したがって本作はサラ金ものなのかと見紛う流れであった。
さらに主人公のガールフレンドとの仲が一体どうなるのかみたいな,朝ドラ的な状況もあり,こんなくだらない話を読むんじゃなかったなあなどと思いつつ読み進んで行くと,先述のビルからの転落死から,殊勝な女の外出やら,最初に出してきた登場人物を次から次へと繋げて行く手法など,こういうつまらない描き方はまるで小説の書き方という教科書にでも基づいているような,そんなつまらないもので,ミステリーリーダーには物足りなかった。
すなわちミステリーにしろホラーにしろ恋愛にしろどのジャンルに入れても本作は小説として中途半端だったということである。
しかしそれでも何らかのテーマあるいはポリシーが見えればいいのだろうけれども,最終盤にかけてのごたごた感はどうにも私には理解できない。
最後のシーンの説明があまりにも不十分だった。
それでもうこの作者の作品は読まなくてもいいやと思った。
そこでKindle Unlimited のやり方をつらつら考えてみるに,こうやって kindle unlimited で人を釣っておいて,その先有料の同じ作者の本に誘い込むという作戦なのだろうけれども,逆に言うと本作の作者のような作品になるともう後はないという,kindle unlimitedの手法そのものが問われることになるのではなかろうか。(2/18記)
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