VAMPIREEYE92「橡襲撃2」
「キキキキー!」
怒る化け猿はこれまで以上に連続で投石を始める。
「ちなみに山根さん、 8 万匹爆弾ボールはどのくらいの威力に?」
「やったこと無いから分かんないけど…… 1 万匹で大体体育館くらいの広さの爆風です」
「……では変更しましょ。 2 万匹でお願いします」
「それならもうすぐ完成するよー」
「ムキャー!!」
思いつく限りのフェイント入れて接近を試みる化け猿。燿子は冷静に見極めて動きの先に狐ビームを置いて狙っていく。
「できたよ燿子さん!」
「ほな、いきますよ」
飛び上がる燿子、トンボ返りして 7 本の尻尾で巨大なトラック大のネズミボールを撃ちだす。ゆっくりと飛んで行くネズミボール。その動きを見てあざ笑うかのように側転を繰り返して回避を始める化け猿。
「ああ~駄目かなぁ~でっかいと遅いんですよねー」
「これでいいんです、ふふふ」
林の中に落ちていくネズミ爆弾ボール。燿子は狐火ビームをネズミ爆弾ボールに撃ち込んだ。
「あっ!!」
大爆発を起こすネズミボール。爆炎が周囲に広がり油断していた化け猿たちを焼く。
「ムギャアアアアアアアアッ!!」
「 2 万に減らして良かったですねぇ」
「やばっ!燿子さんのビームで大爆発だし!!ネズミボールだけであんなにならないよ多分……」
「魔力は消えましたね、元気が良すぎるお猿さんは亡くなりはったようで」
「お寺に戻る?燿子さん」
「戻りましょ」
***
魔猿・橡のブーメランからの追いラッシュ、屍人化巳島はプラズマ六角棍で迫る。萌絵は舞子が作った石を糸で固めた斧を持ち、舞子は痺れ毒をしみこませた粘着弾を撃つ。後ろに控えるは金熊童子。
「もっぺん死んで来い!!」
斧を横薙ぎに振る萌絵、石斧が巳島の六角棍に激突。
「シュラァァ……」「てめぇの動きは見切ってんだよクソ蛇が!!」
大きく口を開けて強酸性毒を吐きにかかる巳島、萌絵は大きく開いた口の中に角を伸ばして刺しこんだ。
「オラァ!!」
巳島の口に角を突き刺したまま大きく体を振りスイングする萌絵。巳島は空中に放り出される。
「オオラアアッ!」
落ちてきた巳島に石斧を叩き込む萌絵。巳島の体は真っ二つに裂け赤黒い血と煙のような蟲をまき散らした。
「いやぁん、クソ蛇さん臭すぎぃ!これはポイっと……」
萌絵は舞子を追いかけまわす魔猿・橡に向かって血の付いた石斧を投げつけた。
「ぬ!」
手に持ったブーメランでガードする魔猿・橡。舞子は一瞬の隙をついて粘着糸で両足を固める。
「鬱陶しい!!」
爪で糸を引きはがす魔猿・橡、石斧を手に取った舞子が振り下ろす。難なく石斧を受け止めた魔猿・橡であったが違和感を感じ腕を振るも石斧は離れない。粘着糸を纏わせた石斧は瞬間的に手に接着している。
「こんなもの着けたところで!」
「……」
舞子が指を動かすと石斧は爆発し糸をまき散らす。石の破片が魔猿・橡に襲い掛かり同時に糸が体にまとわりついていく。
「よし、萌絵これを!やっちゃって!!」「はーい!!」
舞子は寺の砂利と糸を固めて作った巨大棍棒を萌絵に渡す。
「ぶっ飛んでくださーい!クソ猿が!!」
糸で固まった橡に対し萌絵は渾身の力を込めたスイングで打つ。鈍い音を響かせて放物線を描いて飛んで行く。
「やったぁ!ホームラン!!燿子さんと妃羅莉ちゃん気付くかな?」
「多分ね」
「あのお猿さんちょっと変な感じだよねただの妖怪じゃないっぽい」
「今の攻撃で退散してくれるとありがたいかな……」
舞子は口から赤黒い血の塊を吐いた。
「舞子ちゃん!?」
「排毒よ……あの猿の爪は厄介、直接触れられた訳じゃないのに体に病気うつされたわ。萌絵は平気?」
「実は物凄く体ダルイ……この原因はあの猿の爪だったのぉ~……クソが!!」
「ひょっとしたらこの寺にいる皆うつされた可能性がある。萌絵がふっ飛ばしてくれて助かった、あれ以上長引いていたら危なかったわ……」
「この病気ヤバイ!?死んじゃうの!?」
「分からないけど……病気の原因を体から出す必要がある。皆が私みたいに自分で排毒出来るわけじゃないから何か考えないとね」
舞子の後ろに控えている茨木童子と金熊童子は肩で息をして座り込んでいた。
「やっぱりあの二人も病気に……猿が何回も投げてたブーメランは攻撃だけじゃなくて病気をばら撒いていたって事ね」
「病気で弱らせたところに屍人に変える蟲を仕込んでたんだね……」
萌絵に吹き飛ばされた魔猿・橡は山肌に激突し転げてゴルフ場の脇にある林に落ちた。
「思ったよりやるじゃないか……ぶっ殺すのは今度にしてやるか。まぁいい、仕込みは済んだ。じわじわと苦しむがいい、弱り切った所に再度襲撃で屍人化してやる」
体に巻き付いた糸をゆっくりと爪で裂いて自由になる橡。そして魔猿姿を解除する。数歩歩いたところで膝をついた。
「カカ……ちょっとあいつらを嘗めすぎたな……思ったよりもダメージが大きかったか。痛み分けという事になったな」
***
―翌日明命館学園
「(ん?奥寺の奴休みか……?)」
二郎はいつも先に来ている舞子の席が空いてる事に気が付いた。
程なくしてホームルームが始まる。そこで担任の教師から奥寺舞子は病気でしばらく休みになると聞かされた。
―昼休み。二郎は屋上へと続く階段の踊り場で吹雪、恭一と会っていた。
「土蜘蛛が病気というのは信じられないわ。病気や毒に耐性があるからまずそんな事にはならないもの。別の理由で休んだと考えた方がいい」
吹雪は冷たい目をして言い放った。
「相変わらず白峰ちゃんは奥寺にキビシイねぇ。あいつアイドルやってるし仕事関係じゃないの?」
恭一は壁にもたれながら言った。
「事件に巻き込まれた可能性はないかな?ほら例の正体不明の連中関係とか?」
二郎は舞子の言っていた 大北山松鴎山町の事が気になっていた。
「……あり得なくもないわね。大北山松鴎山町で何かあったのかも」
「二郎の知り合いの坊さんがいるって所か?んじゃあ今日はそこに行くのか?」
「いや、やめておこう。それよりもセンジョーに行かないか?あのプログラム攻略の練習にうってつけのものがあるんだ」
二郎は華月の忠告を思い出し二人を妖怪連合に関わらせないように話題を変える。
「二郎、練習ってセンジョーの施設にそんなのあったか?」
「これだよ。ハイパーキングファイター( HKF )さ。調べてみたら昨日やったあの VR プログラム戦と似てるんだ」
二郎は携帯端末の画面を見せる。
「ほほ~……面白そうだな」
「この前知り合った平安新聞社の人も HKF やってて興味があったんだ」
「……ゲームで遊んでいる場合では無いと思うのだけど」
吹雪は不安そうに言う。
「これは特訓だよ白峰さん。試しに一度やってみようよ。あのセキュリティプログラムを攻略できなきゃ碁盤の目町に入れないんだしやる価値はあるよ」
「そうだぜ白峰ちゃん、やってみないと分からないって!」
「今日も教会と連絡取れない状態だし……いいわ、やってみましょう」
吹雪は自分で検索した HKF の情報を見ながら言った。
「じゃあセンジョーの前に 4 時半待ち合わせでいいかな?ちょっと寄るところがあってさ」
「いいぜ、 4 時半な。今日は授業 5 時限だし余裕あるな、いったん着替えに家に帰るか」
「わたしも一度家に帰るわ。須原の車でしかしばらく移動できないから時間に余裕がある方がありがたいもの」
―放課後校長室
二郎は吹雪と恭一と別れた後校長室に向かう。
「失礼します」
二郎が入ると目の前には更に成長した華月とその横に沖田。校長は半裸で仰向けに転がり恍惚の表情で痙攣している。
「あ……あのこれは?」
「気にするな、校長が自ら行ったのだ。我に踏んで歩いて欲しいらしい」
「そ、そうなんですか……」
「この者は我がこの校長室で快適に過ごせるように尽力しているのでな、時々褒美を与えてやってるだけだ。二郎それよりも……解っているな?」
「はい」
二郎はいつものように華月に精製した生気塊を渡す。
「よし……」
華月は高級椅子に戻る前に一度校長を踏んだ。
「あひぃ達する!達します!華月ちゃん……もっと!!」
「図に乗るな、いつ踏むか我が決める事だ」
「あひひぃ!」
「そうですよ校長、私の術で声が外に漏れないようにしているのもお忘れなく!」
沖田は校長を睨みつけた。
「華月ちゃん、僕ちゃんも従者に加えてください……なんでもしますやって見せますぅ」
「校長、わきまえなさい。本来なら貴方のような者は華月様に口を利く事すら許されないのですよ」
沖田の目が光り校長の体が海老反りになる。
「金縛りの術をかけました。しばらく静かになるでしょう」
「……」
「ここ数日ただ回復を待つだけでは退屈なのでな、仮死していた間に世界はどう動いていたのか調べていた。それと読書だ」
華月は携帯端末を操って電子書籍を宙に表示させる。
「これには驚かされた。電気通信網に関する法が整備された事により我のような死亡扱いの者はアクセスできないようになった。だが黒谷月として使えるように従者の皆が手配してくれた」
「はぁ……」
二郎は相槌を打つ。
「我が仮死になる前は電気通信網は匿名で誰でも使えていた。だが今は違う、光伝送通信に変更され個人識別番号と生体認証集積回路を国が発行し数年ごとに更新させるようになり、個人の端末は登録制となった」
「インターネットと呼ばれていた昔は匿名だったらしいですね……今は光伝送通信になって車とかと同じ扱いで登録制ですね認証チップが車のキーみたいな」
「噂ではまだ電気通信網は健在で一部の物が独占しているとのことだ」
「なんでもかんでもネットでやりたい放題だった頃のが残っているというのですか?」
「あくまで噂だ。さて、前置きが長くなったな。霄と蓮也が探している源藤高雅の物と思われる光伝送通信の反応を警察の近藤、斎藤が探知した」
「!!」
「罠である可能性もあるのでな、霄、蓮也に現在付いている吉良に加え、我の配下の佐久間を加勢させる事にした。源藤高雅の反応は宇治市小倉町の住宅からだ。 4 人に行かせる」
「それなら俺も!」
「二郎お前にはお前のやるべきことがある。勝田と協力して結界と隔壁の突破だ。そのために電脳空間での戦闘技術向上、そして対結界の術師の探索が優先すべき事のはずだ」
「っ……そうでした」
「蓮也と霄達の心配は無用だ。何かあればすぐに知らせてやるそれに……」
「それに?」
華月は椅子から降りてカーテンを開け窓の外に視線を向ける。二郎はつられて窓の外を見る。
「ここでこうしていられるのも今日が最後だと思っておる」
「どうしたんです?」
「 1 町ほどの距離に教会と灰色と思わしき監視が居る。この距離だと我に気付かれないと考えての事だろうがな。もしくは警戒させるのが目的か」
「ここは危ないと?」
「危険なのはこの学校の者達だ。我はどうとでもする二郎、明日からは我の指定する場所に来い、良いな?」
「はぁ……」
カーテンを閉じる華月。沖田が寄って来る。
「華月様、偵察の輩はいかがいたしましょうか?」
「こちらからも使い魔を出して牽制してやれ」
「は!」
沖田は懐からカードサイズのドローンにトカゲを思わせる生物を乗せ窓から放った。
「二郎、今日はもういいぞ」
「あ、はいそれでは失礼します」
続く
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