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ラビット・アンダーグラウンド13話 井之頭と芹沢の二人の刑事は車を降りると第二区のサイバーウェアを取り扱う店に入る。 「なんだ刑事さんじゃないか」 全身を如何にもな機械剥き出しのサイバーウェアで身を包んだ店主が応えた。これは見せかけで宣伝の為だけであり実際に身体の40%を超えるサイバネは危険とされている。 「こいつを見てくれんか?」 芹沢刑事は写真を店主に見せる。そこには虫型ドローンが映っていた。ブラックヴァリー・テンゾウが使用しているものと同じである。 「BGOY01っすね、それが何か?」 「こいつはお前の店以外でも入手可能なのか?」 「元々軍用で民間に流れて来た品っすからね~本土ならまだしもこの島で手に入れるとなれば違法なルートか院瀬見に太いパイプがある奴しか無理ですわ。あるにはありますよ?二区で取り扱ってるのは院瀬見の高級サイバネショップか違法な六区の流れ者ですがね」 「例えば図面を入手して個人で量産する事は可能か?」 「本体は可能っすね。でもプログラムを組むのが無理なんすわ。キーコードがいるんで」 「どういう事だ?」 「BGOY01は使用する者の意思で自在に多くの機体を操れるんすよ。でもキーコード入手しないと只の高性能ドローンに過ぎないんす。AIを搭載して代わりにする事は可能なんすけど学習の手間と臨機応変さに欠けますかね。普通に配達とか運搬とかイベントとかショーに使うならコイツでなくてもいいですし敢えて使うのなら頑丈さを重視する者とか」 店主はBGOY01が編隊を組み人を乗せて自在に動き回り空中で戦闘訓練を行っている様子の動画を見せた。 「BGOY01を使えば兵士一人で爆撃、挟撃、制圧、狙撃などなどこなせるんすよね。あ、院瀬見の企業部隊は普通に持ってるはずです。警察は使わないんで?」 「こんな高そうな装備回ってこねえよ。寄ったついでだ左腕の調子みてくれ、小指の反応がいまいちでな」 「へへ、毎度」 芹沢刑事の左腕はサイバネで握力は3トン程度ある。精密さよりも頑丈さとパワーを重視した物。ライフル弾でも破壊できないが重量はある。 「そっちの刑事さんは?」 井之頭刑事を見る店主。 「俺は神経系と内蔵系だからな、この店では弄れねえよ」 「あ、なるほど。確かにウチの設備じゃ無理だ」 井之頭刑事のサイバネは強化心臓と肺に反応速度上昇の神経サポートで全て体内にある為専門の施設や病院でしか触れない。 「マツさんとツルは今頃なにしてんのかねぇ」 井之頭は同僚の刑事を頭に思い浮かべて呟いた。 *** 「俺は頭が痛くなってきた……ツル、おまえがコイツらの相手をしろ」 松上刑事(通称マツ)は立ち上がって部屋を出てった。資料室に残されたのは鶴河刑事(通称ツル)、柄留、才賀愛来薔薇(さいがめぐるーじゅ)の三人であった。 「マツさんはしょうがないっすね~俺たち若者のノリについていけないんだよ」 柄留、愛来薔薇の二人を見て肩を竦める鶴河刑事。 「え?」 「いやいや、ツルさんウチらと一緒にしないでよ」 柄留と愛来薔薇は棚の資料を戻しながら言った。 「こんなん面倒だって、さっと行ってニンジャ全員捕まえればいいっしょ」 柄留はいつの間にか取り出したグレイブラスターをガンスピンさせながら言った。 「まーウチとえるえるで動く方が速いっつーか煩わしくないし、ツルさんはマツさんの介護してなよ」 愛来薔薇は棒付きキャンディーを取り出して咥えた。 「いやいやいや! 酷くない? ひどくなくなくなくなくなくなくなくない?」 「キモ」 一言放つ愛来薔薇。 「ツルちゃん先輩邪魔だしこなくていいよ」 笑顔で言う柄留。 「ギャル刑事と同じチームで捜査させてくれよ~!」 「は? 無理だし、行こえるえる」 「残念、ツルちゃん先輩、別行動で!」 資料室を出て行く柄留と愛来薔薇。 「はぁ~あ……(今度の休日はギャル風俗行くか)」 廊下で「ちょっと待てお前ら!」と松上刑事の声がした。 「おいツル! なんでアイツら出て行った!」 松上刑事は鶴河刑事を睨みつける。 「や、なんか別行動したほうが効率いいって言って……俺らも行きます?」 「あの馬鹿女どもが……しょうがねえツル、俺たちは二人でIDと写真の照合やるぞ」 「ええ~……マジっすかこんなん捜査AIに任せればよくないっすか?」 「馬鹿野郎! 人間しかわからねえ部分を俺たちが見つけんだよ!」 「それって刑事の勘とかってやつですか?」 「そうともいう。何か違和感があったら絶対に無視するなよ?」 「違和感ねぇ……了解っス(ま~外より快適だしテキトーにすっかな)」 *** 柄留と愛来薔薇の覆面ミニパトは環状線から第二地区に入る。 「愛来薔薇、ここで車止めて」「あいよ」 車外に出る柄留。グレイブラスターを既に手に持っている。 「何か見つけたのえるえる?」 「ニンジャ見つけた!」 「マジ? で、どうする?」 「とりあえず声かけるよ。愛来薔薇はそこで待機してて」 柄留は速足で対象に接近する。柄留に気が付いたのか僅かに腰を落として振り返った。 「どーもどーも……特殊犯罪対策課でーす!」柄留はIDカードを見せながら近づく。 「はぁ、何でしょうか?」 答えたのは変装した狐理子であった。 「色々聞きたいことはあるけど……一番聞きたい事をストレートに言うね。きみ、ニンジャでしょ?」 「え……」 「ボクを舐めちゃいけないよ。ニンジャの雰囲気分かるんだから。剣の白魔女の力の一部なのかな、まとっている気で分かるんだよ」 「あの何を言ってるのか……」 「と言いながら逃げる手段を考えている。ボクからは逃げられないよ? グレイブラスターと白魔女の力があるからね」 「すみません何のことだかサッパリ……」 「ふーんまぁいいよ。尋問弾を撃ち込めばいいだけだし」 「……(マズい、この警官只者じゃないどうすれば)」 狐理子はSliMEコンキチに対応策を聞く。 『兜金柄留、彼女は二つの異能を持つ警官だよ。特に注意すべきなのは瞬間的に撃てるグレイブラスターと呼ばれる銃で様々な効果を持つ弾丸を放つよ。変な動きを見せたら撃たれるからここは動画撮ってると言ってみるのはどうかな?』 「あ、あの……今動画撮影中でして……このやり取りも映ってるんですけど」狐理子は咄嗟に携帯を取り出して見せた。 「え、そうなの? どうしよっかなぁ……」と言いながらも柄留のグレイブラスターは1㎜もブレていない。その時柄留の耳につけたインカムから声がした。 「はいはーい」『柄留と愛来薔薇、今すぐ第六区のゲートに向かえ。違法デモ隊が暴れている』 課長の比留山陶子からの連絡だった。 「了解! すぐいきまーす! って事でニンジャちゃん職務質問はまた今度ね!」 柄留は愛来薔薇の待つミニパトに飛び乗りサイレンを鳴らしながら走り去る。 「助かった……これからは変装だけじゃなくてもっと街中でも気を張らなきゃ」 『そうだね、自分ももっと警戒度あげるよ』 「なゆかにも連絡しておく、警官が沢山いるからって。辺に意識させるのもおかしくなるけど一応ね」 *** ――第一地区。 なゆかは地図を確認しながら歩いていると狐理子からメッセージが入った。『警官が多いから面倒に巻き込まれないように』と。 「なにもやましい事ないけど……根掘り葉掘り聞かれてまた垓に色々言われるのは嫌だなぁ……どうしよっかポポリン?」とSliMEのポポリンに話しかける。 『ウロウロしないでどこかのお店の中に入ってたらどう?』 「それもありだね。この近くに図書館あるしそこに行こう」 なゆかは図書館のあるビルに入る。奥のエレベーターに向かう途中でポポリンが警告を発した。 『なゆかおかしいよ! 急に人が居なくなった!』「え!?」 周囲に居たはずの人々の姿が消えている。突然煙のように消え失せた。 「ヤバイ、外にでよう!」 出口に向かって駆けるなゆか、すると上から落ちてきた男が立ちふさがった。 「グッフッフッフ……逃がさんぞ!」 忍者装束にアーマーを取り付けたテンゾウが現れた。 「え!(確かこの忍者って……SliMEネットで見た……)」 『狐理子の追っているテンゾウだよ! すぐに狐理子に連絡する!』 「さぁ来い女! 俺のモノにしてやる!」 手を伸ばすテンゾウ、なゆかはバックステップで離れた。 「ほう? 運動神経は良いか……グッフッフッフそういう女を無理やり捕らえるのも楽しみよのう……」テンゾウは顔を出し舌なめずりする。 『なゆか逃げなきゃ!』 「(簡単に逃げれるかな……やるしかないんじゃないかな)」 『なゆか!?』 「(攻撃は避ければいい、反撃は距離を保って行えばいい。ポポリンのシミュレーターで私にできそうな戦法は解った。だからサポートして? サキュバスハーフの力解放して見るから)」 なゆかは覚悟を決める。目の前の相手は説得や話合いには応じないというのはこれまでの映像で見ている。生き残るには戦うしかないそして何とか逃走するしかない。ここでやらなければ終わりだと。 「(ポポリン、戦闘スーツになって!)」『了解!』 なゆかのカバンから流体金属のポポリンが飛び出してなゆかを包み込み白銀の戦闘スーツスーツに変わった。咄嗟になゆかがイメージした装甲が頭部、四肢に取り付けられていた。 「グッフッフ……やはりLavaGerdenの女は一味違うか……いいぞいつもくノ一ばかりで飽きてきたからな味変も必要だ」 テンゾウはフードからヘルメットを取り出し虫の足めいたサイバネアームを肩から伸ばしてかぎ爪を装着する。 「(LavaGradenから出てきた所を追跡されてたのか……)」 「サイバネムシ忍法ジャイアントファイバー拳!」 テンゾウのサイバネアームを展開したこの状態は虫の巨大神経線維(ジャイアントファイバー)を模した人工神経と拡張外殻脳による超反射神経から繰り出される人間を超えた動きを可能とするもの。 「グヒャヒャッ!」 弾丸めいたテンゾウの突進。しかしなゆかを外れ後方の壁に激突した。 「おっとっと……久しぶりで感覚が鈍ったか?」 「……」 なゆかの目はさくら色に輝いている。 「(サキュバスハーフの力、効いている)」 「グフフフ、まずは四肢切断で達磨にしてやるか!」 ジャンプで襲い掛かるテンゾウ、なゆかはシミュレーションで覚えたLavaGerdenのメンバー、ジャッカルのステップを繰り出す。小刻みに体重をかけながら反動を使って体重移動。テンゾウの攻撃を軽く躱した。 「ほう……中々の動き。だがニンジャの前でどこまで通じるかな?」 「(ポポリン、何か武器は無い? できれば飛び道具が良いんだけど)」 『ポポのエネルギーをチャージしたプラズマ弾なら少し撃てるよ。今の状態なら6発が精一杯、なゆかのスーツの指先から撃てるようにするね』 「(その6発を使って逃げ切る)」 空を切り裂く音を響かせサイバネアームを振り回すテンゾウ。なゆかは軽いステップとアクロバティックな跳躍で回避を続ける。 「ちょこまかと逃げやがって……ウサギ見てぇな女だ!」 「(このニンジャ速いけどサキュバスハーフの力で誘導しやすい。動きが読める、実戦チュートリアルにいいかも) 『油断しないでなゆか、このニンジャフル装備じゃないからなんとか捌けてるだけだよ』 「(確か……色んなロボットとかを使うんだよね? SliMEネットで見たよ、大丈夫)」 なゆかは益々サキュバスハーフの力を解放する。目の前にいる相手は大量殺人者で明確なる敵。狐理子の敵でもある為ポポリンに連絡を頼んである。 「(狐理子ちゃんに絶対最後は決めさせる。その為に私はこのニンジャを弱らせて逃げ切る)」 なゆかに攻撃が当たらない事を苛つきだしたテンゾウ。遂に飛び道具を手にする、手裏剣銃だ。 『なゆか!』 「(きっと大丈夫、当たらない。当てさせない)」 テンゾウの銃から鉄製の棒手裏剣が発射される。しかしなゆかから大きく外れた。 「グフ、グフフフ? 何かおかしいぞ……」 「どうしたんです? 当たりませんよ?」 腰に手を当てて言うなゆか。 「挑発しやがって……なにか術を使っているな女!」 「伝説のニューロンサイバーハッカーでもエスパーでもありませんよ」 「……俺のサイバネアイも正常だ。脳波も……だがなんだこの違和感は!」 「なんでしょう……ね!」 虚を突いたなゆかのプラズマ弾がテンゾウの右膝に命中、ズボンが破れ特殊合金製の戦闘スーツが見えた。 「(効いた?)」 『少しはね。でも深刻なダメージは与えられていないよ、ポポの今のプラズマ弾では』 「(生身の部分に当てなきゃ駄目かな)」 『流石に顔面に当てれば効くよ。だけど死亡の可能性もある』 「(それはちょっと……)」 距離を取るなゆかを見て歯を見せるテンゾウ。 「女……今のがお前の武器か、残念だったな。このテンゾウの戦闘スーツには効かなかった、今のが最初で最後のチャンスだった、もうお前の武器は当たらんぞ?」 「(ヤバ、今ので逃げればよかったかな……でも……)」 なゆかは天井と火災報知器を眺める。テンゾウはなゆかとの間合いを詰める。大ジャンプでテンゾウを飛び越え天井を蹴り一気に火災報知器にまで滑りこむ。 「火災報知機を鳴らしたとて消防が来るまで5分、それまでお前をヤルには十分な時間だ」 「消防を呼ぶのが目的じゃないと言ったら?」 「何?」 続く
Apr 12, 2026
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