未完成のブログ

未完成のブログ

Nov 10, 2024
XML
カテゴリ: DHHU
DHHUその30

――列車ダンジョンの少し前。ユウが新宿御苑ダンジョンの後気絶している間。

――京都

 ケン達は京都最後の魔女アカネダンジョンに挑んでいた。

「大丈夫? 華月さん……」

 ケンは鼻と口を抑える華月に向かって言った。

「苦手な臭いだがそれだけだ、問題ない」

 芥子の匂いが充満する薄暗い洋館のダンジョン。

「どこかで香を焚いているのか……この洋館は迷宮になっているのか」



「んあ~」

 滑田が足の裏に違和感を覚え靴の裏を見る。べとつく粘液が廊下の絨毯にしみ込んでいた。

「どうしたの滑田君?」

「絨毯、べとべとしてる……」

「え? そうかな……?」

 ケンは自分の足裏を確認するが何もついていない。

「それよりもこの埃のような塵、鬱陶しいですねぇ」

 ジークベルトが言った。しかしケンにはそのようなものが見えない。

「なんかおかしいよ! 芥子のような匂いはしないし床はべとついてないし何も空中に舞ってないよ!」

「む?」「え?」「なんですと?」

「ダンジョンの仕掛けだよこれは! ずっと誰かの鳴き声が聞こえてるけど皆には聞こえてない?」



 ケンは洋館の中が徐々に寒くなっていくのを感じる。

「真冬の寒さだ……みんなはどうなの?」

「我は暑く感じる……気温50度湿度100程度のなまるで蒸し風呂だ」

「生ぬるくて気持ち悪い……吐き気がするよ」

「極寒の冷凍庫と言った所でしょうか……」



「何らかの攻撃を受けている……でもなんなのか分かんない」

 ケンは3人の様子を見る。華月は顎に滴る汗を拭い、滑田は浅い息をして上を向いている。ジークベルトは外套で体を包み込んでしゃがみ華月の顔を見ていた。

「汗をかくなど久しぶりだぞ」

 華月はジークベルトのハンカチで汗を拭かれながら言った。

「常時魔力で防御している華月様は終日快適な状態にしているはずなのです。なのにこれとは」


「ここの主の魔術か……」

「ちょっと確認します……これ、見てください!」

 ケンは召喚したモニターマンに現在の気温湿度を表示する。そこには23度湿度40%と映し出されていた。手に持ったモニターマンの表示を3人に見せる。

「実際の温度湿度と各々が感じているものとは違うのか」

「どんな魔術だろう?……財団の情報では魔女のアカネはジンガの部下で原因不明の死因で100人以上殺していると」

「つまり魔女アカネの魔術の事を知っている者はいないのか」

「そういう事になります」

 華月とケンの話を聞きながらジークベルトは解析を開始している。

「これは厄介な……魔法自体が上手く発動しませんね……あまり得意ではないのですが黒谷の忍法なら……」ジークベルトは両手で印を結ぶ。

「どうだ?」華月が聞く。

「気は練れますね……しかし体内で練った忍法の忍術が発動しません。いえ正確には発動しているのですが何故か効果が現れない」

「成程……」

 華月は少し考えるとドレスのリボンを解き魔力で硬化させナイフのように尖らせた。そして洋館の壁紙を斬りつける。中身のコンクリートが剥き出しとなった。

「ふむ……」

 次にリボンナイフを壁に投げつける。鋭いナイフとなったリボンナイフは壁に突き刺さると全員が思ったがそうはならなかった。柔らかい生地は壁に衝突し床にゆっくりと落下した。

「……大体解ったぞ」

「そうなの?」「流石です」「おお~」

「ケン、武器と召喚者を出してみろ。武器は使えるが召喚者はすぐに消えるはずだ」

「え? わかった……」

 ケンはカードを取り出し撃槍ゼクスミニアドと虎狩りの戦士を召喚。ゼクスミニアドはケンの手に残り虎狩りの戦士はすぐに霧のように消えカードに戻った。

「むむ?」

「この洋館が魔女アカネの魔術なのだろう。術を行使しても術者本人から離れた時点で効果を失う……いや、吸収されているのか」

 華月は自身を膜のように包み込んでいた魔力を体内に納め体温を調節する。みるみる内に汗は引いていく。戦闘用の状態にもっていくには普段とは違い体内に魔力を完全に留め身体強化と同時に魔力操作もしなくてならかった。

「これは慣れないな」

「では私も華月様に倣って……」

 ジークベルトも魔力完全に体内に納める。

「なんともむずがゆくてストレスが溜まりますねこれは。しかし魔力効率で言えば悪くない。異能者のサイコキネシスによる身体強化、あれはこういうものらしいですね」

「ほう……こういった方式の身体強化なのか」

「空を飛ぶサイコキネシスの場合は我々の魔力操作に近いようですが」

「異能者にも色んな使い手がいるのだな……ケンと滑田はなんとかなりそうか?」

「ミスリルの鎧を着て対処するよ、滑田君は盾を貸してあげる」「ありがとう~」

「しかしこれは困りましたね、攻撃手段がかなり限られます」

「そうだな……それにしても敵が仕掛けてこないのが気になるな」

 華月は廊下の壁を触りながら言った。

「時間稼ぎが目的かあるいは何かを待っているのか」

 ジークベルトは周囲を見渡す。

 4人の背後、廊下の窓にかけてある赤いカーテンの影からリボルバー拳銃を持った手が伸びる。

「む」

 僅かな殺気を感知して振り返る華月、リボルバーを発見した。

「まずいぞ」

 華月がつぶやいたと同時に弾丸が発射される。咄嗟に手を伸ばしケンを守る。

「ぐっ……」

 弾丸は棘のように食い込み華月の体に突き刺さる。

「あらあ~今ので一発昇天で終わらせようと思ったのに」

 カーテンの影から現れる赤ずきんにボンテージドレスの女。魔女アカネが現れた。

「ここの主だな」

「魔女のダンジョンにようこそ。今からお前たちはなすすべなく嬲り殺されるのみよ」

 リボルバーを構える魔女アカネ、ジークベルトが前に出る。

「このダンジョンでは魔法の類は使えないわよ!」

「忍法は例外だったようですがね!」

 瞬歩で肉迫しナイフで突きにかかるジークベルト、魔女アカネは華麗な足さばきで回避、流れるような動きでリボルバーの銃口をジークベルトに向ける。

「ぬっ!?」「あはは!」

 弾丸がジークベルトの髪を掠める。

「接近すれば魔女は容易く倒せるとでも? 甘い甘い、何のために魔女はバレットアーツを仕込まれるんだか!」

 バレットアーツとは体術と銃撃を組み合わせた魔女独自の近接戦闘術。常に銃を携帯し魔法発動の隙を狙われないように魔女の間で開発された護身術。様々な流派がありバレットアーツに磨きをかけた銃撃戦闘特化魔女なんて者も存在する。

 赤ずきんの中から羽の生えた子豚が飛翔する。魔女アカネの使い魔である。

「レットン! 勇者のガキとチビ妖怪を始末しな!」「ブキキー!」

 レットンと呼ばれた使い魔は瞬時に2mを超えるオークウォリアーへと変貌。

「ケン!滑田!」叫ぶ華月は左手を抑え苦悶の表情を浮かべている。

「あはは! 神経を蝕み魔力を吸い取る魔弾はどうだい? 通常高位の妖には魔力ガードで弾かれるんだけどこのダンジョンにおいては魔力ガードは通用しない!」

「用意周到で残虐……まさに魔女!」ジークベルトが吐き捨てるように言った。

「そんじょそこらの人間の魔術師と魔女を比べんじゃないよ? 魔法を操る為に存在してるのがアタシら魔女なんだから」

 魔弾を体術と共に繰り出す魔女アカネ、ジークベルトのスーツと外套に穴をあける。

「華月様一旦退きましょう、体勢を整えなくては!」「いや、このまま奴を討ち取る!」

 華月は魔弾が食い込んだ左手を手刀で切断した。

「華月様! なんてことを!!」

「この異空間結界から出れば再生は出来る心配するな、片手であっても魔力を放出できなくてもこの魔女に勝たなくてはならん」

 華月は腰まであった髪を肩のあたりで手刀で斬り切断した左手に巻きつけた。

「うあああっ! 髪まで!!」

「放出できなくても我自身の体であれば……問題なさそうだな」

 巻きつけた髪が硬化、鋭い銀色の刃となった。

「へぇ面白い……華月、アンタは只の尊大な妖かと思っていたけど見た目では判断できないね!」

 リボルバーを浮かべて空中リロードを行う魔女アカネ。

「行くぞ! 我に合わせろジークベルト!」「はい!」

 左右に別れる華月とジークベルト。魔女アカネは冷静に眼球を左右別々に動かし照準を合わせる。
 銃弾を避けながら華月は髪の剣でジークベルトはナイフで仕掛ける。魔女アカネはリボルバーで髪の剣とナイフをいなしながら爪先に魔弾を取り付けたブーツの蹴りで反撃。

「驚いた、二人とも素の戦闘技術が高い……魔力放出と魔術を奪われてこんなに戦えるなんて!」

「その余裕もいつまで続きますかね」

 魔女アカネに言い放つジークベルト。

「なに? 華月の動きがだんだん速く……」

「神経、血管、筋肉の隅々にまで魔力を行き渡らせている。普段の感覚と変わるので戸惑ったが慣れてきたぞ。これはこれで細胞レベルまでの強化操作が出来れば想像もできない程の力を得ることができるだろうな」

 細胞レベルでの強化。魔力操作で妖、人間ではそのレベルに達した者はいない。
 ただ例外として異能者でサイコキネシスの身体強化を細胞レベルで行える者は存在する。
 カテゴリー5に認定されたTMIの『終夜アリナ』

「調子にのるなよ妖無勢が!」

「吠えるな、貴様の動きはもう見切ったぞ魔女!」

 華月は魔女アカネの体重移動の癖を見抜いた。そこをついて攻撃を仕掛けるとほんのわずかに反応が遅れる事に気が付いた。

 すれ違いざまに魔女アカネの左手を切断する華月。

「ぎゃああああああああっ……テメェ~~~~~」

「我はやり返さんと気が済まない性質でな」

 魔女アカネの銃を拾い魔弾を全弾撃ち込む華月。

「ぎゃああああああああああああっ!!」

「おわりだな魔女」

「こんな所で終われない……ジンガ様の為にもね……レットン!」

 ケンと滑田を追いまわしていたオーク戦士レットンが魔女アカネの元に戻って来る。

「魔合体!」

 使い魔レットンと合体する魔女アカネ。オーク女戦士の姿へと変貌する。

「これで……五次元とパスを繋いだ状態を常時保てる……無尽蔵の超高速魔力供給によって受けた魔弾の効果は無効になった!」

「そうか、だがその状態では体が持つまい」

「持って1分、だけどそれだけあればお前ら全員始末できるんだよ!」

「1分だと? ならば我も全力全開で行く」

 ジークベルトから血液小瓶を受け取り飲み干す華月。身長は伸び髪は輝く銀髪、瞳は深紅へと変わる。

「華月さん、これを使って!」

 ケンはゼクスミニアドのカードを華月に投げる。受け取ると光の槍が出現した。

「死ねやああああっ!!」

 オーク魔女アカネは全ての魔弾エネルギーを込めた斧を振り上げる。

「(キヒヒ! 回避すれば地面で炸裂し破片が刺さる、防御すればその瞬間炸裂破片が刺さる、回避不能ガード不能の! この必殺の一撃で死ね!)」

 華月はゼクスミニアドで受け止めた。魔弾エネルギーは光の力で霧散する。

「なにぃ!? 何だその槍は!!」

「うぅ……」

 華月の後ろでゼクスミニアドの魔力消費が激しく呻き声をあげるケン。

「そこだ!」

 華月はゼクスミニアドの連続突きでオーク魔女アカネを刺していく。

「ぐふっ……(だが超高速回復魔術で対応可能だ)」

「ケン、必殺の一撃の準備をしろ。我の合図で発動させるのだ」

「でもこのダンジョンの中では発動できないよ」

「この空間の中ではな」

「?」

「よいな、我の合図でやるのだぞ」

「は、はい」

 華月は左手に巻きつけた髪でオーク魔女アカネの斧を絡めとる。

「クソ! 魔弾をチャージできない……」

「むん!」

 ゼクスミニアドを腹に深々と突き刺す華月。

「今だやれケン!」

「撃槍! ゼクスミニアド!!」

 オーク魔女アカネの体内でゼクスミニアドの光の破壊エネルギーが螺旋状に炸裂する。

「ごへえああああああああああっ!」

「やはり思った通りだ、空間で無ければ発動できる」

 光のエネルギーで塵になっていくオーク魔女アカネ。

「バカナぁ~……再生が間に合わない……ジンガ様~……」

 魔女アカネは塵となって消えていった。

 ダンジョンは徐々に薄れ元の場所に戻されるケン達。

続く





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  Nov 10, 2024 09:39:28 PM
コメントを書く
[DHHU] カテゴリの最新記事


■コメント

お名前
タイトル
メッセージ
画像認証
上の画像で表示されている数字を入力して下さい。


利用規約 に同意してコメントを
※コメントに関するよくある質問は、 こちら をご確認ください。


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

PR

×

Free Space

Profile

長月(ながつき)

長月(ながつき)

Calendar

Archives

Oct , 2026
Sep , 2026
Aug , 2026
Jul , 2026
Jun , 2026
May , 2026
Apr , 2026
Mar , 2026
Feb , 2026
Jan , 2026

Comments

長月(ながつき) @ Re[1]:Fallout:NewVegas 第1話2話「目覚め」(11/19) Keyさんへ ありがとうございますがんばり…
久 遠@ Re:FalloutNewvegas121話「ストレンジトランスミッション!」(07/20) やほーい(=゚ω゚)ノ 何周遅れか分からないけ…
長月(ながつき) @ Re[1]:近況(12/30) あけましておめでとうございます。 今年も…
久 遠@ Re:近況(12/30) あけましておめでとうございます。 今年…
長月(ながつき) @ Re[1]:FalloutNewvegas103話「Vault22」(07/09) こちらもFO4までに終わらせるつもりです!…
くおん@ Re:FalloutNewvegas103話「Vault22」(07/09) やあ( ´ ▽ ` )ノ EDーEとの意思疎通方法、…

Favorite Blog

まだ登録されていません

Keyword Search

▼キーワード検索


© Rakuten Group, Inc.
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: