2006.11.16
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「オレ脱藩しちゃおうかな?」

間違った方針を次々と打ち出してことごとく失敗していったり、勘がにぶくて小心者の上司をいつまでも重要なポストに配置させ続けていたり、結果我々がいつも尻拭いをさせられている羽目になっても、なんの改善策も打ち出そうともしないどころか、そんな状況にすら気づかないような体制を宿した腐った組織に、従業員である我々が見切りをつけたいという意思表示として、会社を辞めるということを、幕末になぞらえて「脱藩」と表現した同僚くんのセンスのよさをオレは讃えた。
「竜馬がゆく」によるところの幕末では、サムライが所属する藩から無断でその外に出るということだけで「国抜け」の大罪を着せられていた。罰としてもれなく切腹である。当時は「無礼討」といって、百姓がサムライに無礼を働いたら斬ってもいいことになっていたらしく、つまり殺人が法律によって許されていた時代だったとしても、それなりの社会的制裁はあっただろうが、切腹までにはいたらなかった。とすると、国抜けすなわち「脱藩」は、殺人より重い罪として設定されるほど、当時の藩という組織からすれば深刻で許しがたい行為だったことが伺えるのである。
いまでこそ従業員が会社を辞めるということには何の罪もないどころか、うしろめたさのこれっぽっちも感じられず、むしろ自分のためにはいいことだという価値観さえあり、そんな価値観で考えると当時の脱藩の罪の重さは想像もできない。
こと自分自身のみをかえりみて語るならば、オレはどこの組織にも属しているという実感はないし、属していたいという欲求もなければ、属す必要もそれほど感じられないと思っているから、今にあっても昔のことでも、組織に縛られて生きるのは非常に息苦しく感じてしまう。オレが例外とは思わないけれども、それでも日本は昔から、組織のためには己を捨てて、組織の利益と安定のために身を奉じたてまつるのは、絶対的な価値観として信仰され続けてきた。
黒船がやってきてやがて戦争に負けて、そんな絶対的な価値観をいともあっさりと捨て去ってしまって今に至るわけだけれども、果たして本当に捨てきれたかどうかは疑わしい。大きな会社では今でも、依願退職したい社員を何人もの重役がひきとめようとするときく。育ててきた人材をむやみに放出させたくない実利もこめられてはいようが、そこに「見切りをつけられてしまった」というような、組織のプライドにかかわる問題が全く無いとはいいきれないように思われる。
サムライの制度が廃止されるのが明治何年。やがて日本に竜馬が思い描いた自由で平等な社会が訪れるまでそれほど時間はかからなかった。余談だがサムライ制度廃止に反対した士族の反乱が西南戦争。人斬り半次郎に担がれて大将になったのは、幕末の権力闘争において暗躍した西郷どん。竜馬暗殺の黒幕は実は西郷どんだったというまことしやかな説もこのごろにわかに脚光を浴びてきている西郷どんの戦死とほぼ同時に、日本からサムライが消失した。ラストサムライである。
かくしてサムライはこの世にいなくなってしまったが、「はいやめた」といって大小を捨てたところで、直ぐに人格が切り替わるはずもない。元サムライ、略して元サムの手で造られていった新体制で、あえて「組織への忠誠も捨てろ」という条項が掲げられない限り、いくらルールが変わっても、プライドの持ちようはかわらないんじゃなかろうか。

子どもにナイフを持たせるべきだ。子どもよプライドは与えられるものじゃない獲得するものだ。いじめを完全になくすには武装するしか手段はない。プライドを保つために、捨てていいもんなんかいくらでもある。





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最終更新日  2006.11.16 23:27:19
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