2006.12.04
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人は死ぬ。竜馬も死ななければならない。
主題は、いま尽きた。その死をくわしく語ることは、もはや主題のそとである。

というような名文ではじまり、事実だけ淡々と述べられる竜馬暗殺のシーンは非常にせつなくて何度読んでも泣ける。通しで3度目の今回は電車の中でその場面をむかえたからさすがに涙を流すわけにはいかなかったけれども、もし酒を飲んでたらヤバかった。

「風雲 幕末伝」という大好きなゲームがあって、主人公は倒幕派か佐幕派かになって人を斬りまくるという内容なんだけれども、これが司馬遼太郎の原作をコピーしている。その中でも、ゲーム中に坂本竜馬と出会うか倒すかするとゲットできる特典映像の中に竜馬暗殺のシーンがあって、藤吉が軍鶏を買ってくるところとか、近江屋の階下が騒がしいことに対して竜馬が「ほたえな」というところとかも含めて、小説のイメージをほぼ完璧に再現している。
これでも泣ける。
ついでながら言うと、竜馬を暗殺したとされている佐々木唯三郎が最後の敵として出てくるのだけれども、そいつと戦うときにはものすごく燃えるし、ついでついでにいうと、高杉晋作が死ぬシーンでは、時世の句「おもしろきこともなき世におもしろく」の他にも、「三全世界の烏を殺し、主と朝寝がしてみたい」の都都逸も繰り広げられていて盛りだくさんなので幕末好きの方はぜひお試しあれ。

1ヶ月とちょっとかかって「竜馬がゆく」を今日読み終えた。3度目も面白かった。忘れたころにまた読むかもしれない。
でも誤解されると困るのは、坂本竜馬が一番大好きで、他をさしおいて尊敬すべきと思ってるとかそういうことではない。たしかに愛すべきひとがらだし仕事は一流だし見習うべきところは多い。ヒーローとしての竜馬は大好きである。でもそれはこの小説があってこそそう思える。坂本竜馬が好きかどうかというよりも、この小説が好きなんだろうなとは思う。
というところからすれば、佐幕派かそれとも倒幕派か、なんていうのも実はどちらでもよくて、新選組の土方歳三もカッコいいし、オレ自身ドッチ派と名言したことはないし、考えれば考えるほどどちらにも属したくない。歴史上の人物で誰が好きかということについても、もうほとんど答えられないほどわけがわからない。

わかりやすい型にはめて、パターン化して性格を分類するのは、余興としては楽しいかもしれない。しかしそれでホントに誰かのことをわかったような気になってしまうのは間違っている。とか言ってるオレも血液型占いは気になるし、人をよく「バカか、そうでないか」という見方で分類してしまう。一方では型にはめた見方はよくないと思っていながら、もう一方ではきちっと型にはめて人を見てしまう自分がいる。このことだけをとってみても人とは一枚岩でないということがわかるし、今まさに自分自身のことを語っているのに、「人とは」などと大げさに一般化してしまっている。「一般」や「常識」ということもまたひとつの型でもある。
幕末にあって竜馬はただひとり「型やぶり」だった、ということを竜馬がゆくのあとがきで作者が語っていた。幕末の型やぶりは百年経って、坂本竜馬型という型になった。小説が出て広く親しまれてから数十年、その型も古ぼけてほとんど陳腐化してしまっている。
歴史上の誰それが好きと言ってしまうことは、自らが古い型にはまり込もうとする後ろ向きの行為だから抵抗があるのかもしれない。過去の人を尊敬して近づこうとしても過去の人と同じところにしかたどり着かない。竜馬はつねに前を向いていて、誰もたどり着かないところにたどりついた。そこだけは見習わなくてはならないと思うのである。
と、なんとなくまとめてしまおうとしているあたり、まだまだ小さい。





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最終更新日  2006.12.05 00:29:28
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