偐万葉田舎家持歌集

偐万葉田舎家持歌集

2014.03.20
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カテゴリ: 銀輪万葉

承前

  おふさ観音から飛鳥川自転車道に戻る。

飛鳥川と梅? (飛鳥川)

  おっ、梅が満開、と近寄ってみると、どうも梅ではなさそう。木の肌は桜の木のそれ。早咲きの桜の一種なんだろうと思うが、何と言う桜なのかは知るよしもない。

飛鳥川と梅? (2) (同上)

  接近して見るとこんな花。

飛鳥川と梅? (3) (梅か桜か)

  こちらは間違いなく梅。違っていたらまた悩むから近寄らないで置こう。花は遠目がなべてよし。

飛鳥川辺の梅 (梅の花いま盛りなり)

  甘橿丘の近くまでやって来ました。そこに大伴家持殿の歌碑。

飛鳥川畔の万葉歌碑(巻8-1448大伴家持) (大伴家持万葉歌碑)

わが 屋外 ( やど ) ( なぞ ) へつつ見む
                    (大伴家持 万葉集巻8-1448)

  しかし、まあ、何と空気の読めない家持殿であることか。
  梅だの、桜だのと言いつつやって来たヤカモチを「なでしこ」の歌で出迎えるとは。

甘橿の丘 (甘橿丘)

  甘橿丘には蘇我蝦夷・入鹿の屋敷があったとされる。
  眼下に天皇のいます板葺宮を見下ろすことになるのであるから、尊大・不敬の謗りは免れない。彼らも亦空気が読めなかったと言うべきか。

甘橿の丘の茶屋の前の梅 (甘橿丘・茶屋前の梅)

  甘橿丘には犬養万葉歌碑の第1号歌碑がある。

甘橿丘犬養万葉歌碑 (犬養万葉歌碑  2009.11.26.の記事 に掲載の写真)

采女の 袖吹き返す 明日香風
       都を遠み いたづらに吹く (志貴皇子 巻1-51)

犬養万葉記念館の万葉歌碑
(犬養万葉記念館庭の万葉歌碑  同上の記事 に掲載の写真)

山吹の 立ちよそひたる 山清水 汲みに行かめど 道の知らなく
                    (高市皇子 万葉集巻2-158)

  甘橿丘から水落遺跡を経て飛鳥坐神社の前で暫し休憩。取って返して、飛鳥寺、万葉文化館、板葺宮跡を経由して、「めんどや」で昼食。
  昼食後、犬養万葉記念館から石舞台へ。
まあ、昼食の「めんどや」を除き、何れにも立ち寄らずその前を走り抜けただけであります。石舞台で引き返し、飛鳥川沿いの道へ。
  橘寺東門への道と交差する手前に飛鳥川の碑と犬養先生揮毫の犬養万葉歌碑がある。

飛鳥川畔の万葉歌碑(巻13-3267) (2) (飛鳥川の碑と犬養万葉歌碑)

明日香川 瀬瀬の玉藻の うちなびき 心は妹に 寄りにけるかも
                        (万葉集巻13-3267)

  橘寺もパス。いつ出来たのかは知らぬが橘寺の北西に人麻呂の泣血哀慟歌のまだ新しい歌碑。何でこのような場所に泣血哀慟歌の歌碑が、と思ったら、ここからはるか後方に竜王山、三輪山、巻向山が並んで見えるのでありました。

橘寺前の万葉歌碑(巻2‐210人麻呂泣血哀慟歌) (橘寺前の万葉歌碑・人麻呂泣血哀慟歌 巻2-210)

左から、竜王山、三輪山、巻向山 (左・竜王山、中央・三輪山、右・巻向山)

  亀石、天武・持統天皇合葬陵などを経て欽明天皇陵へ走り下る。
  亀石、天武・持統合葬陵などの写真は以下の記事参照。
2009年11月26日の記事

欽明天皇陵近くの万葉歌碑(巻7-1109) (欽明天皇陵近くの犬養万葉歌碑)

さ檜の隈 檜の隈川の 瀬を早み 君が手取らば 言寄せむかも
                         (万葉集巻7-1109)

  欽明天皇陵から、岡寺駅前を通り、橿原神宮前駅の東口へ。
  駅舎の外壁にも万葉歌のレリーフが。

橿原神宮前駅東口駅舎外壁の万葉歌レリーフ (橿原神宮前駅東口駅舎外壁の万葉歌レリーフ)

  橿原神宮前駅東口から地下道を潜って駅西口に出る。駅西口から西方向に延びている道が県道133号。これを進み、高取川を渡った処にある公園が益田池の堤跡。
  なお、この高取川は上の歌碑「さ檜の隈 檜の隈川・・」の歌に詠われている檜隈川のことである。
  どうやら、文字制限数一杯のようなので、以下は説明を端折ることとします。

056益田池の堤 (3)
(益田池の堤跡)

056益田池の堤 (2)
(同上)

  益田池堤跡から少し西の交差点を左に入ると、継体天皇の息子の宣化天皇の御陵。その奥が垂仁天皇第三皇子の倭彦命の墓。

059宣化天皇陵 (2)
(宣化天皇陵)

061倭彦命陵 (2)
(倭彦命墓)

  駅方向に戻り、畝傍山麓の天皇陵を廻る。

063懿徳天皇
(懿徳天皇陵)

064安寧天皇陵
(安寧天皇陵)

065梅 (畝傍山北西麓の梅)

066山本太子堂 (山本太子堂)

067二上山 (二上山夕照)

068綏靖天皇陵 (綏靖天皇陵)

069神武天皇陵 (神武天皇陵  背後の山は畝傍山)

  畝傍山をぐるり一周したことになる。日も暮れて来たので橿原神宮前駅へ。これにて明日香・橿原銀輪散歩は終了であります。(完)






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最終更新日  2014.03.24 08:04:37
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おはようございます  
なんだかしべが長いような気がしますね。

もちろん私が桜の品種など知る由もありませんが・・・ (2014.03.20 06:07:36)

Re:おはようございます(03/20)  
けん家持  さん
ふぁみり〜キャンパーさんへ
 仰る通り、やたらに芯が目立って花弁が影薄くなって本末転倒ならぬ弁芯転倒であります。
 桜の仲間も色々なんでしょうが、これなんかは花の風情からして「桜」とは呼びたくない気がします。兼好さんなら「一重なるも、こは異様のものにて・・」と間違いなく言いそうであります。
 天皇陵も結構訪ねていますが、宮内庁のホームページに歴代天皇陵の位置が分かるページがありました。
天皇陵(歴代順で探す)
http://www.kunaicho.go.jp/ryobo/successive_list.html (2014.03.20 10:57:55)

人麻呂泣血哀慟歌・補注  
けん家持  さん
うつせみと 思ひし時に 取り持ちて わが二人(ふたり)見し 走出(はしりで)の 堤(つつみ)に立てる 槻(つき)の木の こちごちの枝(え)の 春の葉の 茂きがごとく 思へりし 妹にはあれど たのめりし 兒らにはあれど 世の中を 背(そむ)きし得ねば かきろひの 燃ゆる荒野に 白たへの 天(あま)領巾(ひれ)隠(がく)り 鳥じもの 朝立ちいまして 入日なす 隠(かく)りしにかば 吾妹子が 形見に置ける みどり兒(ご)の 乞ひ泣くごとに 取り與ふる 物し無ければ 男(をとこ)じもの わきばさみ持ち 吾妹子と 二人わが宿(ね)し 枕(まくら)づく 妻屋(つまや)の内に 昼はも うらさび暮(くら)し 夜(よる)はも 息づき明(あか)し なげけども せむすべ知らに 恋ふれども あふよしを無み 大鳥の 羽易(はがひ)の山に わが恋ふる 妹はいますと 人の言へば 石根(いはね)さくみて なづみ来(こ)し 吉(よ)けくもぞなき うつせみと おもひし妹が 玉かきる ほのかにだにも 見えぬ思(おも)へば(巻2-210)
(訳)
(亡き妻が)この世の人だと思っていた時には、手に取り持って二人で眺めた門口の堤に立っているケヤキの木の、あちらこちらの枝の春の葉が繁っているように、深く思っていたいとしい妻であるが、頼みに思っていたあの子であるが、(人皆死ぬという)この世の道理に逆らうことはならず、かげろうの燃える荒れ野に、白い美しい領巾に身を隠して、鳥のように、朝家を出て行き、入り日のように山の陰に身を隠してしまったので、わがいとしい妻が片身として置いていったみどり子が物を欲しがって泣くたびに、取って与える物も無いので、男の身で、脇にかかえて、妻と二人で寝た枕もなつかしい妻屋の中で、昼間は心さびしく思い暮らし、夜は夜でため息のつき通しで、嘆くのだが、どうしてよいか分からず、恋しく思っても逢うすべもないでいる処に、大鳥の羽易の山にわが恋しい妻がいると人が言うので、岩を押し分けてやって来たが、よいことはない。この世の人だと思っていたそのいとしい妻は、ほのかにすらも見えないことを思うと。
(注)
うつせみ=ウツシオミ→ウツソミ→ウツセミと変化。ウツシ(顕)オミ(臣)で、この世の人の意。転じて現世、人の意にも、その枕詞にも使用。そこから、「はかない」という意味も帯びるようになる。
走出=門を走り出たすぐの処
槻=欅・ケヤキの古名
かきろひ=かぎろひ、かぎるひ。「かぎる」は光を放つ意。ここは「かげろう・陽炎」の意。
みどり兒=幼児。正倉院文書では1~3歳を緑児(または緑女)と表記。大宝令では3歳以下を緑としたが、養老令では黄に改めた。大宝令の「緑」は和語の「ミドリ」からと考えられている。
枕づく=妻屋の枕詞。妻屋は母屋に対する語。結婚すると両親の家(母家)の近くに妻屋を立て若夫婦は暮らした。或いは男がそこに通った。
大鳥の羽易の山=「大鳥の」は「羽易の山」にかかる枕詞。藤原宮跡あたりから眺めると三輪山の後方に見える竜王山と巻向山(または弓月が嶽)が三輪山の左右に両翼をなして見えるところからの名。三山の総称とする説もあり、羽易の山、引手の山ともに竜王山を指すとの説もある。
さくみて・なづみて=「さくむ」は「裂く」を再活用させた語で「押し分け、踏み分け進む」意の動詞。「なづむ」は進行を妨げられて滞る意の動詞。

●短歌二首
去年(こぞ)見てし 秋の月夜(つくよ)は 照らせども 相見し妹は いや年さかる(巻2-211)
(訳)
去年見た秋の月は今年も同じように照らしているが、一緒に眺めたいとしい妻はいよいよ年月とともに遠ざかってゆく。

衾道(ふすまぢ)を 引手(ひきて)の山に 妹を置きて 山路を行けば 生(い)けりともなし(巻2-212)
(訳)
衾へ行く道よ。引手の山に、妻をのこし置いて、その山道をたどっていると、生きている心地もしない。
(注)
衾道を=継体天皇の皇后(仁賢天皇の皇女)の衾田陵の辺りの地名と考え、そこへ行く道とする。これに対して「衾ぢ」を「夜具の乳(紐などを通すための輪状の金具)」と解し、「引く」にかかる枕詞と考える説もある。この説だと「衾ぢを引くの「引く」ではないが、その引手の山に・・」という解釈となる。
(2014.03.20 11:44:06)

Re:明日香・橿原銀輪散歩(その2)(03/20)  
ウーテイス  さん
5人の貴公子のモデル[編集]
竹取物語には壬申の乱で活躍した実在の人物が登場していることも本作品の特徴である。5人の貴公子のうち、阿倍御主人、大伴御行、石上麻呂は実在の人物である。
また、車持皇子は藤原不比等とされ、不比等は天智天皇の落胤との説があり、母の姓が「車持」であるためといわれる。
石作皇子のモデルは多治比嶋と推定され、多治比嶋が宣化天皇の四世孫で、「石作」氏と同族だったためである。
時代設定[編集]
この5人はいずれも壬申の乱の功臣で天武天皇・持統天皇に仕えた人物であることから、奈良時代初期が物語の舞台だったと考えられている。
また、この時期に富士山が噴気活動中の火山として描かれていることから、科学論文に成立などが引用されることがある古典のひとつである。 (2014.03.20 17:31:20)

ウーテイスさんへ  
けん家持  さん
 竹取物語のWikipediaの記事の一部抜粋ですね。本文記事とは直接関係ありませぬが、丹比嶋は宣化天皇4世の孫とされていますか。そうすると、大伴家持は、女系が一部介在しますが、宣化7世の孫ということになります(笑)。
 丹比嶋は家持と関係があります。家持の父・旅人は丹比嶋の息子の池守、水守、県守の何れかの娘の許に通っていて、その女性との間に生まれたのが家持だと言われているからです。嶋は従って、家持から見れば母方の曽祖父に当たります。また、大伴御行は祖父安麻呂の兄になりますかね。
 以前、群馬県にある上野三碑を訪ねて銀輪散歩したことがありますが、そのうちの多胡碑には、左大臣・石上麻呂、右大臣・藤原不比等と並んで丹比県守の名も刻まれていました。
<参考>
上野国銀輪散歩(その1)2009.4.12.
http://plaza.rakuten.co.jp/YAKAMOCHI35/diary/200904120000/
(2014.03.20 22:20:28)

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